GPコアエッジ、WIN「アヴァロンの鍵オンライン」インタビュー
AC版開発者を交え、オンライン版の開発秘話に迫る


12月2日 収録


鍵を持つ「ホルダー」を、他のプレーヤーが「チェイサー」として追いかけて奪い合う、すごろくタイプのカードゲーム

 株式会社GPコアエッジは、Windows用オンラインTAG(鬼ごっこ)ボードゲーム「アヴァロンの鍵オンライン」の正式サービスを、12月10日より開始した。本作は、株式会社セガのアーケードゲーム「アヴァロンの鍵」をオンラインゲーム化したもの。アーケード版の最新バージョンの稼動から4年以上が経った今、PCで復活を果たした。

 「アヴァロンの鍵」のタイトルが発表されたのは、2008年12月に行なわれた「ゲームポットフェスタ2008」だったが、それからちょうど1年が経過した。この間に何があったのか、また発表前にはどういったやり取りがあったのか、インタビューで尋ねてみることにした。

 お答えいただいたのは、GPコアエッジでプロデューサーを務める坂本亘氏と、同社広報の深澤ケンタロウ氏。さらにアーケード版「アヴァロンの鍵」の開発者から、チーフデザイナーの田口博之氏(現在は株式会社ダーツライブ所属)と、ディレクターの金澤昭一郎氏、広報の西村ケンサク氏にも同席していただいた。

 なお当初は、GPコアエッジでディレクターを務める浅沼拓志氏にも同席していただく予定だったが、残念ながら病欠ということで、内容がやや伝聞調になっている部分がある点はご了承いただきたい。




■ タイトル発表からの1年は反響の大きさに驚き

左から、金澤昭一郎氏、田口博之氏、坂本亘氏

――アーケード版「アヴァロンの鍵」の稼動開始から、6年以上が経ちました。当時を振り返ってみていかがですか?

金澤昭一郎氏: アーケード版は、当時の時流にアジャストさせるのが難しかったと感じています。オンラインのお話をいただいてからずっと申し上げているのですが、当時はコインオペ(お金を入れて遊ぶ)だったので、遊ぶ時間が限られていました。またオンライン要素が実装されておらず、店舗内だけでの対戦だったので実力差が出やすくなりました。さらに最初はカードのバランスも悪かったので、カード資産差も大きく、狙った通りの遊ばれ方を100%達成できたとは言えませんでした。今回、GPコアエッジさんの手でオンラインゲーム化されることで、遊びのペースとか、チャット機能の導入とか、マッチングだとかで、アーケードの時に足りなかった部分が消化されるのかなという気はしています。

田口博之氏: アーケード版の「アヴァロンの鍵」は、当時のセガのAM3研で開発していました。ここは「WCCF(WORLD CLUB Champion Football)」というカードゲームが大きな成功を収めていて、その次のカードゲームをAM3研が出す際に、まさか「WCCF」の次にファンタジーが来るとは誰も思ってもいなかったみたいで、いい意味でセンセーショナルだったようです。アーケードゲームの中ではかなりテクニカルなものをぶつけたので、オペレーターさんからは色々と難しいという声を聞きました。そこから考えても、よくここまで長い間残るタイトルになったなと感じています。今回、オンラインでさらに生まれ変わるということで、ここからまた10年くらい続くタイトルになればいいなと考えています。

――そして昨年、ゲームポットフェスタで「アヴァロンの鍵オンライン」を発表されました。発表後のユーザーさんの反響はいかがですか?

田口氏: 2年ぶりくらいに公式サイトを更新して、オンライン版発表とも知らせずに、ちょろっと1枚だけイラストを置きました。あの出し方も、こちらが想定している以上にいい反応がありました。こういう仕事をしていると、誰にも反応されないのが1番辛いところなので、発表できる時をとても楽しみにしていました。ユーザーさんは、「最後にこれで終われるならいいや」という気持ちで来ていた人も多かったようですが、いい流れに乗れたという感じはありますね。

坂本亘氏: 会場には50人くらい来ればいいかな、と話していたのですが、予想に反して400人以上もお客様がいらっしゃいまして。会場から「聞いてないよ」と怒られてしまうくらいの反響でした。その後しばらくは特に情報を出していなかったのですが、8月にαテストの募集をかけた時に、あまり告知もしていないのに定員よりも多くの方から応募がありました。その辺りから、やはり期待感があるのだなと実感しました。同時に、下手な物は作れないなと気の引き締まる思いです。

深澤ケンタロウ氏: 反響といえば、グループ会社のSo-netが提供しているSNSを借りて、「アヴァロンの鍵オンライン」のSNSの提供も始めました。週間登録人数のランキングがあるのですが、そこで1位になりました。今は「ボーダーブレイク」(セガの新作アーケードゲーム)が1位のようですが、競い合っています。

金澤氏: その状況はやむなしでしょうね(笑)。

西村ケンサク氏: これからも「ボーダーブレイク」がぶっちぎって勝ちます。……嘘です、嘘ですよ(笑)。

田口氏: 何しにきたんですか(笑)。

西村氏: 両方とも、頑張っていきたいです。




■ CDの縁から始まったオンラインゲーム化

「アヴァロンの鍵オンライン」のきっかけとなったサントラCD

――では次に、開発が始まった経緯をお尋ねします。まず「アヴァロンの鍵オンライン」を作るという話はどこから始まったのでしょうか?

田口氏: 「アヴァロンの鍵オンライン」の前に、アーケード版「アヴァロンの鍵」のサウンドトラックCDを、デックスエンタテインメントさんが作っていたという話があります(編集部注:デックスエンタテインメントのオンラインゲーム事業がゲームポットに譲渡され、GPコアエッジが設立された)。デックスエンタテインメントの社長だった黒川さんという方が、セガのパブリシティの元部長で、その経緯で「アヴァロンの鍵」のサウンドトラックを作るという話になりました。

 そこで1回お仕事は終わったのですが、当時「アルテイル」というオンラインカードゲームを立ち上げていた浅沼(拓志氏、「アヴァロンの鍵オンライン」ディレクター)さんが、次のタイトルをどういうものにしようかと考えていたそうです。対戦ゲームはどうしても勝ち負けが存在して、半分は負けを体感する人達がいます。そしてオンラインゲームは時間無制限でずっとできるという性質があります。その中で「アヴァロンの鍵」は、勝ち負けはあるものの、そのままずっと遊び続けられるので、勝ち負けがややおぼろげです。この「アヴァロンの鍵」のゲーム性が既存のオンラインゲームには存在しなくて、市場に求められているのではないかという考えをもとに、「アヴァロンの鍵」をオンライン化しようという最終的な判断に至ったそうです。

――では最初に声をかけたのは、GPコアエッジさん側なのですね。

田口氏: それから2年くらいは、どういう契約内容にするのかなどを詰めていました。最終的にはライセンスアウトして、デックスエンタテインメントさん、今のGPコアエッジさんでライセンスを使ってタイトルを立ち上げることになりました。

――セガさんは当時、自社でオンラインゲームをやる動きもあったと思うのですが、「アヴァロンの鍵オンライン」を自社でやろうといった話はなかったのですか?

金澤氏: PCのオンライン以外にも、コンシューマーなど、いろんなメディアの話は出ました。しかし、カードゲームとしても通信ゲームとしても、そこそこ難易度の高いことをやっていたので、容易ではありませんでした。またジャンルがファンタジーだったことも扱いが難しく、自社で本格的にやることには二の足を踏んでしまうところがありました。ただGPコアエッジさんは「アルテイル」などのノウハウをたくさんお持ちでしたから、その相性とご縁からこの結果になりました。

田口氏: 何でやるにしても、基本的にカードゲームを知っていないと踏み込めない領域なので、難しそうに見られるタイトルではありました。

――そういう難しいプロジェクトが2つの会社の中で動き始めたわけですが、実際動いてみて、お互いどういう印象を受けましたか?

金澤氏: 個人の感想だけで言うと、浅沼さんは勢いのある方だなと思いました。浅沼さんが書いた最初の企画のドラフトやゲームデザインドキュメントを見せていただいた時、「ちゃんとツボは押さえていらっしゃる」と思いました。GPコアエッジさんにお願いしてよかったんだろうなと思いましたね。


4人対戦を続行したまま、参加・退出を実現したフリーイン・フリーアウトのシステム。当時のアーケードでも斬新なシステムだった

深澤氏: 当初の話を聞くと、浅沼を始めとしたGPコアエッジのアヴァロンチームのスタッフが、「アヴァロンの鍵」のフリーイン・フリーアウト(ゲームの途中入場・退出が可能)のシステムがすごいものだということを理解していたことが、セガさんに非常に喜ばれたという話がよく出ます。

田口氏: フリーイン・フリーアウトは、アーケードではあまりスタンダードなルールではありません。「勝ち負けがはっきりして欲しい」というユーザーさんが多い市場なので。それをオンラインゲームの目線からもう1回見直してくれたことは、逆に新鮮でしたね。あとは、今のGPコアエッジの社長さんである宮本さんに最初に会った時の印象が非常に強かったですね。非常に目つきが鋭くて、でもコンテンツ制作に対する情熱はすごくある方で。ビジネスとして「アヴァロンの鍵」を見る宮本さんと、ゲームとして見る浅沼さんは、見方が全然違うのに合致しているという感じでした。正直、これを移植するのは難しいと思っていたのですが、それをここまでやりきるのはすごいです。最初から高めだったテンションが全く落ちることなく、逆に上がっていますから。

――セガさんからGPコアエッジさんに対して、何かお願いしたことはあるのでしょうか?

金澤氏: ゲーム内容については、GPコアエッジさんの提案が、ゲームの内部は基本アーケードのままにし、そこにオンラインならではのサービスや拡張性をアドオンしていくという印象でしたので、それを了承しただけですね。

田口氏: 世界観のほうも、浅沼さんが「アヴァロンの鍵」の攻略本などをすごく読んでいらして、私もうろ覚えな話を、「そうですよ、こう書いてありますから」と言われたくらいです。最初にCDを作った時も、素材を渡しただけなのに、非常にツボを押さえてやっていただけたので、世界観も全く心配なく進みました。「アルテイル」をやっていらしたので、カードの作家さんとのやりとりや方向性の定め方も心配していませんでしたし、本当にお任せという感じですね。むしろ私のほうが決まりを破るタイプなので、浅沼さんにちゃんとやってもらえてよかったです。




■ 監修ながら密接に協力するセガと、PCならではの仕様に苦慮するGPコアエッジ

金澤氏らセガのスタッフは、監修と言いながらかなり細かい部分まで見て、定期的にGPコアエッジと協議しているそうだ

――開発においては、両社でどういった役割分担をされているのですか?

坂本氏: 基本的に開発はGPコアエッジが担当しています。開発の基本的なコンセプトとして、アーケード版を移植して、そこにオンラインの要素を加えるという形になっています。そこに関して、オリジナルの「アヴァロンの鍵」の世界観や、オンラインの要素でやりすぎる部分などがないかを、セガさんに監修していただいています。新たなカードを追加する際にも1度確認していただいて、その中でコンセンサスをとって進めています。

金澤氏: カードバランスは、アーケード版のプランナーである小早川や藤澤がお話ししています。他にも内部処理の方法については、リードプログラマーの呉田も出てきます。特にカードに関しては、ゲーム性も含めて手厚くやらせていただいています。

――そういう打ち合わせは頻繁にやられているのですか?

坂本氏: 3週間に1回くらいのペースで集まって、進捗状況の確認と、それとは別にカードに関するやりとりがあります。クライアントを実際に触っていただいて、「ちょっとあれは強すぎますね」といったやりとりをしながらバランスを取っています。

――するとカードバランスは、お互いにかなり細かいところまで協議されているわけですね。

金澤氏: 浅沼さんと、小早川とかが戦っていますね(笑)。

田口氏: とはいえ基本的にはお任せです。ただ、浅沼さんもよく調べていらっしゃるのですが、やはり最終的な世に出た形からしか想像できない部分もあるので、アーケード版では本当はこういう風にしたかった、続編ならばこういうものがありえます、といった話を、私や小早川が事あるごとにしています。ただ浅沼さんには、「アヴァロンの鍵」ユーザーが求めているスタンダードな形で出したいという考えがあるようで、大きな新システムやトリッキーなカードはあえて控えて、純粋に「アヴァロンの鍵」がオンラインで遊べるというところに着地しようと決めていらした感じですね。

――なるほど。ではその中でアーケード版から変更したポイントはどんなところでしょうか?

田口氏: 1番違うのはプレイ料金の部分ですね。アーケードゲームは3分100円で設計されていて、「アヴァロンの鍵」はもうちょっと長いのですが、そういう意味でライフで縛っていました。それをどうオンラインゲームに合わせたルールにするのかは、ずいぶん悩まれていた感じはしますね。

金澤氏: 浅沼さんはライフと戦闘順を特に気にされていました。戦闘順に関しては、アーケード版は早い者勝ちで、戦闘できる人がほとんどの場合1人になってしまうので、これをどうにかしたいとおっしゃっていました。なるほどとは思ったのですが、ここがアーケード版でもプログラム的、処理的に非常に難易度が高いところで、現在は保留にされているという認識です。

田口氏: 1番目の戦闘でホルダーが入れ替わったら、他は全員飛ばされるという今の形ではなく、勝ったら次に控えている人と戦うという形を考えていらっしゃったようです。

――ゲームに不慣れでカード資産もないと、ほこらにたどり着くのに時間がかかって、行っても飛ばされてライフが尽きて終わり、というのはありましたよね。

金澤氏: ライフについては、アーケード版でもターン終了後のライフの消費量と、デフォルトのライフの数と、オーバーキル時のライフの計算は相当悩んだのですが、「アヴァロンの鍵オンライン」ではいい意味で緩めにされていました。ほこらを3つ回るのに、コンティニューを1、2回して、1時間弱かかるという感じで、チャットをしながら非常に楽に遊べました。

田口氏: 浅沼さんはライフにしても、カードの色しても、もしそうじゃなかったら、というif的なものは全て洗い出している感じはありましたね。最終的にアーケード版と一緒にしようと結論に至ったにしても、1度はそうでない場合を考えて、全て噛み砕いていると感じました。

――ではGPコアエッジさんの開発の方ではどんな苦労がありましたか?

坂本氏: やはりフリーイン・フリーアウトのところです。4人同時対戦でキャラクターが入れ替わるという通信の仕組みが難しいのです。アーケード版では、同じ性能を持った筐体で、通信を調整しながらやられているのですが、PCだとそれぞれスペックや回線の速度が違っているので、その中で4人のバランスを取るのはとても難しい部分です。例えば1番最初の開発段階では、相手は速いのに自分のはゆっくり動いていたりと、スペックの影響を受けてしまっていました。そこをいじればいじるほど重くなり、逆に省くとバランスが崩れたりと、デリケートな問題でした。

 オンラインの要素としては、新しくギブアップ機能を入れています。途中でやめたいという機能ですが、途中で1人を退場させて他の人が入れる状態を作るという仕組みもアーケード版にはなかった機能なので、それを通信環境が異なるPCを使って調節するのに苦労しました。いったん落ち着いても、他の機能を入れるとまたそこで引っかかって違うトラブルが起きるという状態で、常にそこを気にしないといけない状況です。「低いスペックでもアーケード並のスピードが出るように」ということを合言葉にやってきていまして、今はかなり改善されています。

――サービスが何度か延期してきたのも、そのクライアント周りのスピードが大きな問題だったということでしょうか?

坂本氏: そうですね。体験入学をやらせていただいた時に、動作が重いという声を想定以上にいただきました。重いと感じてフラストレーションを持ったままプレイされるのは避けたいところでしたので、そこの改善に非常に時間をかけていました。

――では今は改善できたと。

坂本氏: そうですね。自信を持ってお届けできます。




■ 基本無料、カードや“コンティニュー”を販売するビジネスモデル

坂本氏がオンラインならではのビジネスモデルを説明。カードの入手方法はアーケード版と大きく異なる

――次にビジネスモデルについて伺います。アーケード版は2プレイ500円という形でしたが、オンラインではどうなりますか?

坂本氏: プレイ料金は基本無料でやらせていただきます。スターターのカードも無料で提供させていただきます。課金が発生するのはカードの購入時ですが、それだけですと無料でプレイされているユーザーさんがカードを入手できませんので、学位が上がるとカードがプレゼントされるようにしています。

――カードの販売以外で有料となるサービスはありますか?

坂本氏: コンティニューに関して、「チップ」という別のゲーム内通貨を有料で用意しています。チップがなければコンティニューできないという形です。チップはゲーム内イベントで配る予定もありますので、課金しないと手に入らないというわけではありません。またチップはこれ以外にも使い道を増やす方向で考えています。あとはアバター要素ですが、こちらはサービス開始時には入らず、後日アップデートで入れる予定です。「マジカル美容室」というもので、性別や容姿をいつでも好きな時に変えられます。

田口氏: 性別も変えられるんですか?

坂本氏: 性別も変えられるから「マジカル」です(笑)。最初のキャラクターメイキングで好きな設定にはできるのですが、変えたい時には課金していただくという形で考えています。

――「アルテイル」ではゲームをプレイするとポイントが貯まってカードが買えたりしますが、そういう形にはしないわけですか?

深澤氏: 「アルテイル」ではカードの購入はできるのですが、ポイント用のカードということで、かなり限られたものになっています。「アヴァロンの鍵オンライン」でも、課金するとすぐカードが手に入るけれど、学位を上げてカードを集めて強化するというプレイスタイルも可能ですので、似たような形にはなっています。

――ちなみに学位の仕組みはアーケード版と同じですか?

坂本氏: ほこらを回って証を手に入れ、ある程度貯まると学位が上がるというところは同じです。ただ数字のバランスは変えさせていただき、もっと多くの学位を設定させていただいています。




■ 新規カードも多数追加。「ポイスパ君」も実装か?

「アヴァロンの鍵」でチーフデザイナーを務めた田口氏。新規カードの中にキャラクターの原案を出したものがあるそうだ

――次はゲームの中身についてお尋ねしていきます。「アヴァロンの鍵オンライン」はアーケード版の移植ということですが、どのバージョンを持ってきているのですか?

田口氏: 浅沼さんはアーケード版で1番新しい「アヴァロンの鍵 弐 -鍵聖戦- Ver2.5」をベースにしていたようです。世界観もその先の話になっています。GPコアエッジさんの「アヴァロンの鍵」として再スタートする意味もあるので、特に後ろに戻ったりはしません。ただ「昔のマップも遊びたい人はいるだろうね」といったことは浅沼さんもおっしゃっていました。

坂本氏: イベント的な要素で、過去のマップやイラストカードが出てくるといった企画は考えたいと思っています。

――カードは2.5のものがそのまま入っているわけではないですよね?

坂本氏: そうですね。そこは調整させていただきました。

――ある程度抽出する形になっていると思いますが、選ぶ際に何かポリシーはあるのですか?

田口氏: 「アヴァロンの鍵」はテクニカルで難易度が高い部分があるので、「2.5」のカード資産をある程度区切って、これを中長期的に拡張していこうという話はさせていただいています。各エキスパンションでどうしても課題になるような部分、例えばアーケード版初期の頃のカードで言うと、コモン、アンコモンと、レア以上の力の差があまりにも大きい、といった課題が発生するので、新たなエキスパンションを提供した時に、新規カードに役割を与えて補助していこうという話をさせていただきました。ですので、アーケード版に登場したカードは、「アヴァロンの鍵オンライン」のほうでは時間を追って、セグメントを切って提供していくという流れになると認識しています。

――カードのバランスは、アーケード版のカードも変更されているのですか?

金澤氏: 多少数値をいじるかも、といった話は浅沼さんと小早川の中であったと記憶していますが、特性など、基本的にはそのままです。

――そこに新規カードを加えてバランスを取っていくと。

坂本氏: そうですね。2人は新規カードのバランスの話ばかりしています。

――新規カードとアーケード版のカードの比率はどれくらいになるのでしょうか?

坂本氏: 新規カードは全体の3分の1から4分の1くらいです。

――今までになかった特殊能力などは入るのですか?

坂本氏: そういうものも入れようとはしていたのですが、技術的な問題もあって、今まで存在していたものの数字を変えたものになっています。昔の「アヴァロンの鍵」をお客様に届けるため、トリッキーなカードは今は作らないという方針もあります。


新規カードのデザインには、「アルテイル」などのイラストレーターも参加

――新規カードのイラストは、アーケード版のイラストレーターの方も描いているのですか?

田口氏: 基本的に外注の作家さんなのですが、中にはアーケード版の初期からやってくださっている方もいますし、「アルテイル」で活躍されている作家さんもいます。

――「アヴァロンの鍵」のカードといえば、裏面に田口さんが描かれたイラストがありますよね。「アヴァロンの鍵オンライン」には裏のイラストはありますか?

田口氏: ないですね。ただ今回は珍獣のデザインを何体か起こしました。

深澤氏: アーケード版のイラストレーターさんには、当然、GPコアエッジから依頼するつもりだったのですが、まだお話ししていない段階から、どこからか「アヴァロンの鍵オンライン」の話を聞きつけて、「依頼がこないんですけど、まだですか? スタンバってます」というお電話をいただいたこともありました(笑)。「アヴァロンの鍵」は本当にみんなから愛されているんだなと痛感したエピソードです。


田口氏が描いた「ポイスパ君」。ゆるキャラブームにも乗って大人気

田口氏: 廣岡さん(イラストレーターの廣岡政樹氏)なんかも、色々と活躍されているのに、「『アヴァロンの鍵』なら!」みたいな感じです。私もカードを描きたいんですが、もう「ポイスパ君」しか描けなくなっていて。モンスターとして「ポイスパ君」が出てくるのであれば、今準備してます。スタンバってます(笑)。

――「ポイスパ君」、出して欲しいですね。「ポイズンスパイク」ではなくて。

深澤氏: 珍獣族として(笑)。




■ グラフィックス面はプレイ環境拡大を優先。今後はアバターで補強

3Dで描かれたモンスターが戦うのも「アヴァロンの鍵」の特徴の1つだったが、「アヴァロンの鍵オンライン」ではカードがそのまま表示されるスタイルに変更された

――プレーヤーキャラクターが、以前は既存のキャラクターから選ぶ形でしたが、今回はプレーヤーがデザインを変えるアバターになりました。なぜこの仕組みに変えたのですか?

坂本氏: やはりオンラインゲームの視点から、オリジナルのキャラクターを作っていただきたいというのが大きいです。

深澤氏: そこはストーリーにも関係してくるところです。前回のアーケード版から数年後の魔導アカデミーが舞台になっていて、前回活躍したキャラクターは憧れの先輩という立場になっています。とはいえマジカルな世界なので、ゲームを進めていくと憧れの先輩のアバターを入手できて、「コッペリア」のパーツを集めれば、ほぼ「コッペリア」に変身できてしまう……というようにもしたいところです。

田口氏: 今回は戦闘シーンにプレーヤーキャラクターが出ていますので、キャラクターがどんどん変化して、相手が思いもかけない感じのアバターだったりすると、楽しさが広がるのではないかと思います。前回までの「アヴァロンの鍵」は、学園といいつつ6人の生徒と校長先生しかいないような世界でした(笑)。今回は生徒が増えて、新たに制服もデザインされていますので、あれを全員着ていただいて。その後は、生徒がグレて服装が乱れてきます(笑)。

――あとグラフィックスといえば、バトル時の演出が3Dモデルからカードに変わっています。これはどういう判断からですか?

坂本氏: そこは悩んだのですが、あれをそのまま入れると、要求されるスペックが高くなってしまいます。広い層の方に楽しんでいただくために、まずはプレイしていただくところを優先したというのが正直なところです。先程も申し上げました、通信が難しいという部分もありますので、まずは今できるところを提供させていただいて、そこのバランスを見て今後を考えていきたいと思います。やはりリクエストは多いのですが、高いスペックを要求されるのであれば3Dは要らないという方もいらっしゃいますので、慎重に検討します。

田口氏: 私は元々「マジック・ザ・ギャザリング」ユーザーなのですが、カードゲームを遊んでいると、段々と絵ではなく能力で楽しむようになるのはわかっていたので、「アヴァロンの鍵」も最終的にはカードで戦闘したほうがいいのではないか、という提案はしていました。ただ当時の熊谷(美恵氏、「アヴァロンの鍵」プロデューサー)が、「アーケードなんだから、ポリゴンで作らないでどうするの!」と厳しく言って、あの形になりました。確かにそれがなくなると、ユーザーさんから批判の声は上がると思うのですが、その代わりアバターが充実してくるはずで、戦闘シーンにも出ているので、愛着がそちらの方に向いてくれれば、それでいいかなと思っています。

――次の質問です。アーケード版には「課題モード」という1人用モードがありましたが、「アヴァロンの鍵オンライン」ではどうなっているのでしょうか?

坂本氏: 一応、1人用モードは入れていまして、CPUの強さを変えてプレイできます。「課題モード」というか、遊びながらゲームを覚えられるチュートリアルのようなものは、これから考えていきたいと思っています。

――1人用で学位は上がるのですか?

坂本氏: あくまで練習扱いで、学位などのデータには影響しません。そこは通常モードの「公式アリーナ」でやっていただきます。その代わり、初心者の方は移動するのもままならないところもあるかと思いまして、ほとんどのマスが白(無属性)という初心者マップを用意させていただきました。一定の学位に到達するまではこのマップでプレイしていただき、ある程度ゲームに慣れていただいて、学位も上がってカードも増えてきたところで、通常のマップに変わるという流れです。

金澤氏: 最初から対戦に放り込まれると結構つらいですからね。

――アーケードでは対戦が当たり前で、最初は負けることを理解している方々がお金を入れるわけですが、「アヴァロンの鍵オンライン」は無料なだけに、試しに遊んでみたけど操作もわからず敗北、というのは辛いですよね。

深澤氏: まずはゲームの楽しさを知ってもらわないといけませんので、初心者マップはいいフォローになると思っています。




■ 「アヴァロンの鍵」念願の全国大会も実現する?

――今後のアップデートスケジュールで、何か決まっているものがあれば教えてください。

坂本氏: アバターショップはできる限り早く、来年の早いタイミングで入れたいと考えています。今はサービスの立ち上げに集中しているので、時期的なところはお約束できないのですが……。またモーションやボイスを追加することも考えていて、少しずつ開発して入れていこうと考えています。

田口氏: エッチな下着とか、水着とかね。みんな当然求めるでしょうし、GPコアエッジさんはそういうところは外さないですよ?

坂本氏: 世の男性、女性、みなさんのニーズに合わせられるようなキャラクターができるように頑張ります(笑)。そのショップを入れた後に、もう少しみんなでワイワイできるような要素を入れたいと考えています。アーケード版でいう大会モードのような、本気で腕を競うだけのモードも検討しています。

――新規カードの追加はどのくらいのスパンになる予定ですか?

坂本氏: 2~3カ月に1回くらい入れたいと思っていますが、まずはショップを実装してからになりますので、今期中にいければいいかなという予定で考えています。

――ちなみにサービス開始時には何枚のカードが入りますか?

坂本氏: 最初は130枚前後ですね。長くそのままですとプレーヤーさんが物足りなくなってしまいますので、できる限り早く追加したいと思います。

深澤氏: オンライン版はアーケード版よりカードを追加しやすい環境なんですよ。

西村氏: アーケード版はお店の在庫確認もしなければいけないので。「お店がこんなに在庫抱えているのに、新しいカードなんて出せるわけないだろ!」と営業に怒られたり(笑)。

田口氏: あとカードは早い段階で入稿しないといけないのですが、入稿直前に能力が変わるものまでありましたから。


オフラインイベントには積極的な両者だけに、今後はゲーム内外でプレーヤーを楽しませてくれそうだ

――あと「アヴァロンの鍵」と言えば、全国各地を巡るオフラインイベント「魔導の世界へようこそ」を開催されていました。こちらは今後いかがですか?

田口氏: オフラインといっても、イベントで筐体を使っていないんですよ。

西村氏: スペースと紙とペンさえあればできます(笑)。

坂本氏: オフラインイベントはぜひやりたいですね。具体的に何かやると決まってはいませんが、そういう楽しいイベントをやっていきたいと考えています。

西村氏: あくまで運営はGPコアエッジさんではありますが、もしオフラインイベントをやるとご決断いただいた際は、我々も全面的に協力させていただきます。

田口氏: 待ってます。いつでも予定を空けてあります(笑)。

深澤氏: ちなみにGPコアエッジ自体はオフラインイベントが大好きです。「アルテイル」はオンラインゲーム業界でナンバーワンと言っても過言でないほどオフラインイベントをやっています。

――そういえば「アヴァロンの鍵」の公式大会はあまり多くなかったですね。

西村氏: 関東地区限定の大会などはやったのですが、大会を運営するには非常に困難なゲーム性なんです。1試合に20分かかって、かつ4人しかさばけないとなると、「バーチャファイター」や「WCCF」などの全国大会と同じようなレギュレーションでは運営できないのです。そこは今後、「アヴァロンの鍵オンライン」に私達ができなかった夢を託したいですね。

田口氏: すごく綺麗にまとめましたね。ゲームのルールも知らないのに。

西村氏: 3回回って最後まで行くみたいな感じでしょ?(笑)

一同: そんな感じですね(笑)。

――では最後に、「アヴァロンの鍵オンライン」への意気込みと、ユーザーに向けてメッセージをお願いします。

金澤氏: 私自身も楽しみにしていて、遊ぼうと思っています。お会いしたらよろしく。

――金澤さんとわかるようなタグが付いたりするのですか?

金澤氏: いや、付けないです。普通にひっそりと(笑)。

田口氏: 世界観のほうも、これからストーリーが進んでいくと思うので、そちらも楽しみにしておいてください。まだまだ「アヴァロンの鍵」には関わり続けますので、よろしくお願いします。

坂本氏: 「アヴァロンの鍵オンライン」には、アーケードで遊ばれたユーザーさんはもちろんですが、オンラインでプレイできるということで、違った層の方にも来ていただきたいと思っています。そういう方でも楽しめるように、もちろんこれまでアーケード版をやっていただいた方にも楽しめるように、オンラインならではの要素も盛り込んでいきますので、期待していてください。

――ありがとうございました。


【浅沼氏よりメッセージ】

 「アヴァロンの鍵オンライン」は、今からスタートラインに立ったばかりのゲームです。アーケードとは違う進化を進む事になると思いますが、オリジナルの「アヴァロンの鍵」が持っていた場の楽しさは失わないように進化させていきます。みなさん、よろしくお願いいたします!

株式会社GPコアエッジ
第1ゲーム事業部 制作チーム マネージャー
浅沼 拓志



(C)2008 GamePot Inc, All Rights Reserved.
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(C)SEGA

(2009年 12月 15日)

[Reported by 石田賀津男]