インタビュー

【E3 2013】「PsychoBreak」ディレクター三上真司氏インタビュー

現行機版と次世代機版は同時発売を予定。プレイアブルは発売まで出さないかも!?

6月11日〜13日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center

 ついにE3デビューを遂げたTango Gameworksの純国産サバイバルホラー「PsychoBreak」。プレイステーション 3、Xbox 360、Windows PCに加え、プレイステーション 4とXbox Oneにも対応する形で2014年の発売を予定している。まだ発売は来年ということもあり、出展内容は前回のプライベートイベント「BFG」とまったく同じで、さらに言えば、4月のジャパンプレミアからデモの内容は変わってなかった。新しいトレーラーやスクリーンショットも公開されず、新しい情報は、次世代機対応のみという状態だった。

 今回E3に合わせて取材依頼を出しても「ゲームの新しい内容に関する話は一切できない」とガードが堅かったが、ディレクターの三上真司氏がインタビューに応じてくれた。ゲームの新しい話はできなかったため、制作哲学や方法論、そしてホラーに対する考え方などをメインに語るインタビューになっているが、ところどころ「PsychoBreak」に対するビジョンも語られているので、同作に期待している人はぜひご一読いただきたい。

【PsychoBreak(サイコブレイク)ティザートレイラー】
4月のジャパンプレミアで公開された動画

PS4とXbox Oneへの展開も正式発表。発売時期は全てまとめて2014年に

「PsychoBreak」ディレクター三上真司氏インタビュー
PS4版、Xbox One版の日本展開も確定し、PC水準のグラフィックス表現がゲーム専用機で楽しめる
デモの映像をお見せできないのが残念だが、ライティングまわりはどんどんパワーアップしている

――今回のE3出展タイトルの中では「PsychoBreak」が唯一発売時期が決まってませんが、いつ頃になりますか?

三上氏: 2014年です。僕の口からはこれ以上は言えません(笑)

――今回、三上さんにぜひ伺いたかったのは、ジャパンプレミアからBFG、そしてE3と3回連続で同じデモを行なったのは何故なのかというところなんですが。これはどのような意図があるんですか?

三上氏: 僕も正直、同じものを見せるのはイヤだったんですよ(笑)。

高橋徹氏: それについて僕の方から補足しておくと、それはたまたまですね。1回目は本当はメディアを極端に絞って見せる予定が、日本の多くのメディアに見せることになってしまって、BFGはメディアに見せるというよりはPre E3ジャッジイベントということで、審査員に見せるのが狙いです。で、E3ではすべてのメディアにお見せするイベントなので、3回見てしまうことになったというだけですね。

――とはいえ、BFGとE3は毎回出展内容を変えていましたよね。まったく同じというのはあまり例がないと思うのですが。

三上氏: 基本的には上の判断ということになりますが、「Wolfenstein」は見せるステージ変えてましたからね(笑)。これで8月のGamescomでも同じもの見せることになったらえらいことになるなと思ってます。

――幸か不幸か、3度同じデモを見させていただきましたが、回を重ねる毎に冷静に見られるようになってきていて、カメラの水滴の表現や、地下室のノイズ表現といったエフェクトまわりが進化していたり、鍵などのオブジェクトが光るようになっていたり、隠れられる場所がわかりやすくなっていたり、細かいところが進化しているなという印象を受けました。

三上氏: ええ、ライティングとシェーダーは結構変えていってますね。カメラの水滴も初期から見ていただいているので変化が分かっていただけると思います。

――ちなみに地下室のシェーダーも変わりましたか? 前よりもっと深くノイズがのって、現実か夢か、夢うつつな感じが表現されていてとてもいいなと思ったのですが。

三上氏: よく見てますね(笑)。そこについては設定ミスなところもあって、もともとTVがもう少し暗い予定で、ゲーム側の明るさを引き上げたんですよ。そしたらノイズが強く出ちゃって、2時間ばかり調整したのですが、ノイズが消えませんでした。ただ、ノイズ感は最初から出すようにしてるんですよ。ただ、モニターとの相性で、意図したものよりちょっと多くなってしまっている感じですね。

――バトルのデモも、地下の様子が前よりもわかりやすくなってますよね。

三上氏: そうですね。あそこはライティングを変えたので、前よりも印象が違っていると思います。

――カンテラのライティングも変わりましたね。

三上氏: よく見てますね。まさにライティングは日替わりぐらいで変わってる部分です(笑)。

――3回目だと怖さがないですからね、じっくり見れるんですよ。

三上氏: そうなんですよ。僕はそれがイヤなんです。ホラーは慣れてしまうとおしまいですから、こういう出展には向いていないんですよね。

――次の出展予定は?

三上氏: 今は8月のQuakeConになる予定で、5分、10分程度の新しいものをお見せする予定です。初めて見る方は、今お見せしてるものでいいと思うのですが、すでに見た人はこのデモは20分以上ありますから、別のものにしようかと。

高橋氏: いっそのこと、もう何も見せないという選択肢もあると思いますよ。

三上氏: 僕個人としては同じものを2度見せたくないんですよね。だから見せるとしたら別のものを見せたいですね。見せ方をわけようという話もありますし、開発にもっとゆとりがあれば、複数のデモを用意するのですが、次世代機にも対応しなければならなくなったので大変なんです。このE3ビルドを作るのに注力しすぎてしまって、製作が遅れた側面もあるんです。

――PCを含む現行機と、いわゆる次世代機の開発は同時平行して行なっているのですか?

三上氏: そうですね。現行機と次世代機を交互に勧めている感じですね。

――その次世代機の仕様についてですが、どのような形を考えていますか?

三上氏: 基本的にはグラフィックスがパワーアップします。あとはホラーゲームなので、とってつけたような機能を付けるわけにもいかないので、今まさにいろいろ試行錯誤中ですね。次世代機に対して、見えてきている部分、まだ見えない部分もあるのですが、見えてきている部分だけでもそれなりの作業工程になっているので、どうするかなというところですね。

――「PsychoBreak」はPC版があると思いますが、基本的にはそのPC版水準のグラフィックスが次世代機で動くという理解で良いですか?

三上氏: そうです。PC版をベースに開発して、他のプラットフォームにポーティングしていくという流れです。

――次世代機の特徴として、ゲーム機側で、ゲーム動画を撮り、公開するという機能を持っていることが挙げられますが、「PsychoBreak」はこれに対応する予定はあるのですか?

三上氏: いま色んなプランが合って、そのひとつに動画を使うというものがあったのですが、それは僕的にちょっとということでお蔵入りになりました。もう一個動画を使うおもしろげなプランがあるのですが、それはまだBethesdaにもプレゼンしていないものなのでまだお話しできる段階ではないですね。

――次世代機では、ゲームプレイシーンを録画して、簡単にアップできる機能がありますが、「PsychoBreak」ではそれは使われないだろうと?

三上氏: そうでしょうね。まっさきに上がってくる企画ですよね。僕は動画配信や実況そのものを否定しているわけではなくて、ホラーの見せ方としてこっちのほうがおもしろいよっていうというものがあるというだけです。中途半端な要素を付けるくらいだったら、グラフィックスだけを底上げして提供するのでもいいかなと思っています。

――次世代機版の価格は現行機版同じなんですか? それとも少し高くなる?

三上氏: 僕は売ることについてはまったくノータッチなので知らないです。

「PsychoBreak」プロデューサー木村雅人氏: 現状で言うと価格設定のルールもまだ決まっていないので、決めたくても決められないというのが正直なところですね。

――発売時期はすべて同じと考えて良いですか?

三上氏: はい、その予定で動いています。

――2014年というと、残念ながら次世代機のローンチには間に合いませんが、それでもそろそろ開発は佳境にさしかかっていないといけない時期ですよね。ゲームのコアとなる部分はすでに完成していて、峠を越えた感はあるのですか?

三上氏: 何パーできてるとかそういう表現はBethesda的にダメなんです(笑)。峠は越えたというか、まだこれからも山はいくつかありますが、ただ、触ってみて「うわ、怖いっ!」っていう感触は掴めつつあります。あとはトータルでどう遊ばせるかについてはまだ問題が山積みですね。

三上氏との楽しくて怖いホラー談義。「PsychoBreak」は遊び手をパニックに誘う

三上氏はデモで小ネタを挟んだにもかかわらず、まったく受けなかったことをめげていた。このE3でどうでもいいことを悩んでいるところが大物クリエイターのゆえんだろう
クモ女が登場するシーン。不確定、未知に対する恐怖も「PsychoBreak」の重要なテーマだ
HPバーなどのUIは左上に。UIはシンプルでオーソドックスなものとなりそうだ

――単純な興味として質問したいのですが、私でも3度見れば怖くなくなるのに、三上さんら開発者はどのように怖さを維持しながら開発に取り組んでいるのですか?

三上氏: なんでしょうね(笑)。怖いという感覚が麻痺してくるのは皆さんと同じですよ。だから、初見で「うわっ、怖ええわ」と感じたところまで絶えずさかのぼる感じですね。

――なるほど、それでは想像をかき立てながらというか、常に記憶を辿りながらというか感じですか。

三上氏: それともまたちょっと違っていて、というのは僕らは作る前から仕様書を作るから、何がどうなるか知ってるわけですよ(笑)。最初にプレイする時には、どうせこっから音が鳴り始めてこれが出てくるんやろというのが全部わかってるから、実は最初から全然怖くない(笑)。それでも、敵と戦ってるときや、敵から逃げているときに怖さを感じることはありますよね。その予測できない恐怖というか。そういうところは企画した後でも怖さを体験できるので、あとは、最初に決めた仕様の中で、ユーザーさんがどれぐらい怖がってくれるか。僕らもプロなので、怖がらせるための感覚というか、間みたいなものはわかって作ってますし、そこはずっと変わらないので、自分の感覚に従いながら作ってるみたいなところはありますよね。

――あのチェーンソー男に追われているシーンで、日頃何に使ってるかよくわからない鋭い刃の付いた回転刃が両端から迫ってくるシーンがありますが、あそこで皆さん笑うのが印象的ですよね。あそこは一種の様式美なんでしょうか。

三上氏: そうですね、一種ファミコンライクな(笑)。僕らも笑って欲しくて作ってるわけでは無くて、「え〜ありえない」って驚いて欲しいんですよね。実際。シアターの外から中のお客さんの様子が見えるんですが、皆さん口をぽかんと開けて「え〜」って見てる方が多いですよ(笑)。

――ああいった、極限の恐怖感が一転して笑いに変わってしまうようなシーンは出てくるのですか?

三上氏: そうですね、ぼちぼちありますよ。もちろんリアルな設定でトラップを張った方がシリアスになるし、怖くなるんですよ。でもああいう勢いでまくし立てるシーンも必要なんですよね。

――今後のゲームイベントで、新しいデモを行なうかもというお話ですが、どのようなデモを見せるつもりですか?

三上氏: 別のステージの別の敵でしょうね。

木村氏: まだお見せしていない「PsychoBreak」の特徴的なシーンをお見せしたいですね。

三上氏: ただ、個人的には、見せるペースがちょっと早いかなとも思ってるんです。だって、ホラー映画の15秒30秒のトレーラーでも何回も見てたら怖くなくなりますよね? 怖さがわかっちゃうから。人間って知らないことによる恐怖心があるし、知ることで安心するから。ホラーゲームは極力情報を出すべきでは無いと思ってるんです。明かさないから「なんだろう、なんだろう、わかんない、怖い」ってなると思うんです。だから僕は出したくないんですけど、会社が一杯出展の枠を用意してくれるので出さざるを得ないんですよね(笑)

――デモのラストシーンは、天変地異が起こっていたり、クモみたいなゾンビに襲われて殺されそうになったり、常に悲劇的な結末を迎えていますが、実際のゲームシーンではああはならず、解法が用意されているというか、ゲームとして先に進む方法が用意されているわけですよね? あのクモ女はあんなに強かったらどうやって倒すんだろうと?

三上氏: クモ女のシーンは実際はちょっと違うんですよ。今回はE3バージョンと言うことであそこで終わらせていますが、本当は違っていて、基本はやっぱり逃げるんですが、今来たはずの廊下が壁でふさがれていて、「えー!」ってさらに焦ると。そこで極限の恐怖感の中で機転を利かせて脱出することになります。これも答えをいってしまうと、「ああ、知ってる。ここはこうするんだよ」ってことになってしまいますから、肝心なところは伏せておきます(笑)。

――それ言ったらもうネタバレそのものですからね(笑)

木村氏: 事前の攻略情報はNGです(笑)

三上氏: 「えっ、どうして、どうして、壁なかったはずやん、ウソやん?」ってパニックになるのがいいんです。

――あるべきものがなかったり、突然現れたりするのもホラーの手法のひとつですよね。

三上氏: そうですね。いろんな怖さを組み合わせている感じです。

――ちょっと仕事抜きの発言になってしまいますが、「PsychoBreak」は本当に完成が楽しみな作品のひとつです。早く見たいという気持ちもあるし、製品版まで見たくないという気持ちもあって複雑な心境ですね。

三上氏: 見てるだけだとさすがに怖くないんですが、触ってると、全部知ってるつもりでも、怖いと思うことがあります。なので、触るとまた変わってくると思いますね。

――でも、三上さんの口ぶりだとプレイアブルは永遠に出なさそうですよね?

三上氏: 正直、その可能性はありますね(笑)。見せすぎてもダメ、見せなさすぎてもダメ。そこはチラリズムですよ。透けて見えるから創造力をかき立ててより魅力的に感じるんであって、人って常に自分の良い方に解釈するので、ブラが透けて見えた時、悪い解釈する人いませんよね?(笑)。そこはホラーも同じです。見ない方がどんどん恐怖感が増幅していくんです。女性にガバッと見せられても全然ダメなのと同じです(笑)。

――この最初の情報出し以降、まったく情報公開がないまま発売したらそれはそれで凄いですよね。ある意味で伝説になる。

三上氏: 僕はそれを希望しています(笑)。ただ、PRは本社主導で決めているので本社がどう判断するかですね。でも、プレイアブル無しはありえると思いますね。僕は正直どっちでもいいんですよ。ただ、もしプレイアブルするとしたら普通のプレイアブルはやりたくない。それこそ個室に閉じ込めて遊んで貰って、クリアするか、ギブアップボタンを押すまで、部屋から出られないとかね(笑)。

木村氏: 三上の作り方が触り心地をとても大事にしているので、プレイアブルならプレイアブルでまた良いとは思うんですけど。

――そうですね。目に見える遊び心地という点でいうと、UIのシンプルさが挙げられますが、鍵が光って見えるとか、隠れる場所がわかりやすくなったとか、同じデモでも遊び心地は増してきてますよね。

三上氏: それもまた「出過ぎ!」っていう意見が増えていてどうしようかなというところです。

――へー、三上さんに対して、そういう意見をするスタッフがいるということですか?

三上氏: それはいくらでもいます。ウチのチームは皆で意見を出し合って決める体制ですから。

――ちなみに画面下部のHPバーに関しては、いまのシンプルな赤いラインという状態で完成なのですか? 

三上氏: 聞かれるまで黙っていようと思っていましたが、あれはまだ調整中のものです(笑)。あれはあくまでE3版はというだけですね。実際の製品版では左上に出ます。

――デザインじゃ無くて場所が変わるのですか?

三上氏: そう。下はデザインとして非常にツライのと、NPCが割って入ったときに見せ方的にツライので変えます。

――画面下のHPバーはいかにも仮っぽいUIでしたが、てっきり私は「Dead Space」の背骨部分をHPにするみたいに、UIをゲーム内に溶け込ませるのかと思ってました。

三上氏: それも考えたんですよ。でも彼はキャラクター的にどうしても溶け込ませることができない。彼はいつも背を向けてますから、毛が逆立つとか、白髪になるとかでもしないと。

――彼はシーンが変わると横を向くじゃないですか。そのときの彼の表情の変化とか、歩き方とかで判断するみたいな(笑)。

三上氏: それだと敵と戦っている時にわからないし、バシッと殴られたときにダメージがいくつかもわからないので、「PsychoBreak」は割と死ぬゲームなので、そこは明快に見せておかないと、ユーザーが納得できないですよね。

――世界の三上ファンに向けてメッセージをお願いします。

三上氏: 見て「怖い!」ってのは映画でナンボでもあるので、「PsychoBreak」はやはりゲームとして、触ったときにユーザーさんが感じる怖さに的を絞って、久々にこんなホラーゲームも良いよねって感じて貰えるようなものを作っています。ぜひご期待いただければと思います。

――ありがとうございました。

(中村聖司)