インタビュー

「FFXIV」、吉田P&メインシナリオ石川氏インタビュー

今後の物語は、思わぬ部分が伏線になっているかも?

7月15日 インタビュー

プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏と、メインシナリオライターの石川夏子氏

 ドイツで開催されているgamescom 2017には、スクウェア・エニックスブース内に、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター」の大きなコーナーが作られている。メインとなるのは、ラクシュミとスサノオに挑戦する蛮神チャレンジ。勝利するとそれぞれの蛮神が描かれたTシャツがもらえるとあって、朝から3時間超えの行列がずっと続いている盛況だ。

 その向かいには、e-Sportsが専門のタートル/ESLブースがあり、そこにはPvPを体験できるバトルアリーナブースが設けられている。2つのブースの間は売店があり休憩スペースになっているが、今年はここを「FFXIV」がハック。テーブルや売店もすべて「FFXIV」一色に染まっていた。

 今回は、一般会場から少し離れたビジネスブースで、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏と、メインシナリオライターの石川夏子氏にインタビューする機会を得ることができたので、「紅蓮のリベレーター」のシナリオを作る上での苦労話や、今後の予定について聞いてきた。

今後のストーリーは、今、伏線に見えないところが伏線になるかも

――シナリオの担当が何人かおられると思いますが、「紅蓮のリベレーター」では、どういう形で担当分けをしているのですか?

石川氏: メインシナリオは、私と織田の2人で担当しております。ざっくりと織田がアラミゴの方とクガネまでを担当しておりまして。私が紅玉海に入ってから、いわゆる東方編をまるごと担当しております。

――アラミゴ編と、東方編という形で分けているのですか。

石川氏: そうです。後は、他のシナリオスタッフ数名でジョブクエストだったり集落のクエストを分担しているような形になっています。

――シナリオのプロットはどのように作られたのですか?

石川氏: 今回の「紅蓮のリベレーター」のメインストーリーでいうと、吉田と私と織田の3人で、シナリオ合宿という名前の会議をして、そこでザックリとした、どういう順番で回るとか、このタイミングがフライング解放だよねとか、泳ぎの解放はこの辺だよねと、ゲーム的な流れを決めて、それを元に私と織田それぞれで、お互いの部分の詳細を詰めていきます。その後、再度吉田も加わって意見をすりあわせていく形になりました。基本的には詳細にする時はまず自分で作って、それに対してお互いに意見を言うという形をとっています。

――よく、ドラマのシナリオって、大箱からだんだん小箱という作り方をしますが、ゲームのシナリオもそういった作り方なのですか?

石川氏: 基本的にはそんな感じになっています。

――ゲームだと、レベルデザイン的なものがあると思うのですが、そこで苦労した部分はありますか?

石川氏: レベルデザイン的に苦労したというか、新しいマップを作る時はエーテライトがとれくらい必要だとか、どれくらいの移動があるとか、フィールド自体に対してどう巡らせるかがすごく重要になってくるので、そこに関してはすごく気を遣ったというのはあります。反省としては、エーテライトの数を決めるときに、だいたい「3.0」の数を基準にしたのですが、実際にプレイした時に、もうちょっとエーテライトが欲しかったなと思うところが結構ありました。

吉田氏: 紅玉海は、プレイしてみると足りないと感じた部分だったよね。

石川氏: そうですね。今後はそこをもう少し柔軟に考えて、うまく実装できるように調整していけたらなと思っています。

――今後、エーテライトが追加になる可能性はありますか?

吉田氏: さすがに今からは無いかと思います。バランスを考えると、単に配置だけでなく、他の拠点間移動距離に応じて色々変える必要が出てくるからです。

石川氏: 次に、もし新しい拡張が出て、フィールドを作るときにはもう少し便利にしたいなとは思っています。

――今回アジア圏が舞台で、西洋の人から見たら、物珍しい部分もあったと思うのですが、そういう感想はなにかありましたか?

石川氏: そうですね。感想を拝見している限りだと、珍しいと言うよりは、こういう所をゲームの中で歩けて楽しいという意見が多くて、あまり異文化にびっくりしたというのはなかったように思います。

吉田氏: 前にもちょっとメディアツアーで触れましたが、アジア圏のおとぎ話が下敷きになっていたりするものは、海外のロア(設定)好きなプレーヤーさんには好評です。

――ハンブルグ(ドイツ)のメディアツアーでマップを見せていただいて、ここは冒険に絡むのかなとその時は思ったのに、実際にプレイしてみると、全然ストーリーに絡まなかった場所が何カ所もありました。ああいう所は、今後のストーリーの中で使われるのですか?

吉田氏: 使うものもあれば、最終的に使わないものもあると思います。

――使わないものは、マップを探索する楽しみの中のものとして作られている?

吉田氏: いえ、マップやフィールドを作る順序が多分イメージされているのと、ちょっと違うのです。全部の作業が平行して進むので、その時点で明確な使用目的が無くとも、ひとまずはビューポイントとして、後でシナリオが使ってくれるかもしれないという理由で置いているものもあります。メインストーリー上は結局触れずに終わって、ロアやフィールドコンテンツで対応が用意されているところもあります。

石川氏: 結局そういう所は、探検手帳とかモブハントのところで語られていたりもするので、全く何も触れていないという場所は意外と少ないです。

――アメノミハシラのように、意味ありげだけど使われなかった場所は?

石川氏: 意味ありげなところは使うかもしれないし、使わないかもしれない。アメノミハシラは形的にいろいろ想像を働かせていただけるとは思います。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないという……。

吉田氏: アメノミハシラをいつどう使うかは、多分僕しか知らないはずです。僕が明確に指示したオブジェクトですね。

――ギラバニア湖畔地帯なども、ここは何かに使って欲しいなと思えるような、いい雰囲気の場所が多いですね。

石川氏: 使うことが決まっている場所もあるし、どうしようかな? と思っている場所もあります。

――ネタバレになるので言えないですか?

吉田氏: 言えないです(笑)。

――「蒼天のイシュガルド」の時には、ずっとイシュガルドという1つの地域の物語でしたが、今回は2地域ありますよね。今後のメインストーリーはどういった形で進んでいくのですか?

吉田氏: 両方の地域にスポットがあたるので、どちらにも行くことになるだろうと。今言えるのはそこまでかな……。

――どちらの地域もひとまずは決着付きましたよね。「蒼天のイシュガルド」の時には、終わり際にニーズヘッグが出てきてという形で、その後に続く伏線が張られましたが、今回は前回よりもずっと大団円に近かったので、今後どうなるのかとても気になります。

石川氏: 多分皆さんが伏線だとは思っていないことが伏線かもしれない。そのぐらいしか今は言えない(笑)。今回は祖国を奪還したいというところから始まった物語なので、ちゃんと奪還をするというところまで描こうと決めていました。おそらく今後は、わかりやすい伏線だったところも、全然伏線に見えていなかったであろうところも使って、パッチのストーリーが進行していくかなと思います。

――マグナイは人気がありますが、アジムステップのストーリーは今後何か予定されていますか?

石川氏: おそらく今週末の紅蓮秘話(第4話)でマグナイが出ていると思います。パッチの中に出てくるかどうかは、今考えていることもありますが……、確定していないから言えません!

――こういうパッチの中で追加されるストーリーは、ファンの要望というか、キャラクターの人気に左右されるところはあるのですか?

吉田氏: サブストーリーはわりと、好きに書いてもいいよと決めているので、サブストーリーではそういうこともやりますが、メインストーリーのキャラセリフにネタとして使うことはあっても、流れが変わることはないです。最初から筋は決め、伏線を張って作られているので変えると破綻します。人気があるからと、メインストーリーに絡む人の立ち位置を変えるみたいなことは今まで一度もやってきていないです。

石川氏: 「2.0」の時はレターモーグリの手紙配達クエストなどで皆様の意見を参考にさせて頂いていました。今だと、例えば「お得意様取引」のようなところで、うまく反映することができないかを模索しているところです。皆さんの声はそういったサブストーリーで回収した方が、より自由に書きたい・読みたいと思っているものがお届けできるのではないかと思います。

――紅蓮のエリアはとても広いですが、見えているのに行けない部分がありますよね。ああいった場所には、今後は入れるようになったりするのですか? アジムステップの山の向こう側の砂漠とか。

吉田氏: アジムステップの山の向こうは、各アウラの部族はここから先の広大なアジムステップ全エリアに散らばっている……という設定を生かして、あえて遮蔽していないのです。仮に遮断を解除してもデータがないです(苦笑)あと2年くらい「紅蓮」の開発ができるのなら、作ったと思うのですが(笑)。

石川氏: そうですね。広大な大陸のようなアジムステップが(笑)。

――「FF14」はこれまで、キャラクターの人気投票のようなことはあまりやったことがないですね。やらない理由があるのか、それとも今後予定されていたりしますか?

吉田氏: いえ、今言われて「ああ……」と思ったくらい、想像して無かったです。なんとかキャラを立たせることで、精いっぱいで余裕がないですね。

石川氏: そうですね。開発の中だけで、外に出ていないキャラクターの設定はたくさんあるのですが、人気投票1位のキャラにそういう設定があるかどうかと言われると、必ずしもそこはイコールではないと思っています。人気だからと語り尽くしたものを後付けしていっても、なかなか良い結果にはならないので……。今は、こちらで用意した「実はこんなものだったんだよ」というエピソードを提示することに、どちらかというと重みを置いています。人気投票的なものは、やるとしたらグッズ展開などでやった方がいいかもしれません。

吉田氏: 何度かインタビューでお答えしていますが、今でも「オルシュファンは人気が出たから……」とおっしゃる方もいて、実際にはその1年半前のそれを決め、物語がそこへ進んだのですが、人気投票をやると更にシナリオを作りにくくなりそうで……。やらない方が、僕らは自由かなという気がします。

15種類のジョブクエストをネタ被りなしに作るのは大変

ジョブクエストは、ネタ被りしないよう作るのが大変、と石川氏

――ジョブクエストは、最後のクエスト以外がアクションの習得に絡まなくなったことで、自由度が上がったのではないかと思います。遊んでみてとても楽しかったのですが、作っている側としては思いいれとか、こういうところが苦労したというところがあれば教えてください。

石川氏: まず、ジョブクエストは、ジョブが増えてくるほど数が増えていって、さらに過去のジョブのクエストも続いていくので、「その話もうやったわ」という内容が増えてくるんです。本当に、ネタを絞りだすのが辛くて(苦笑)。今回は新しい要素として、東方やアラミゴが入っていて、しかも、プレーヤーはすでにレベル60である程度ベテラン。その上で15ジョブ分もクエストを増やさなくてはならなかったので、ネタ被りにすごく気を付けなければならなくて。仮に「5.0」があって、またジョブが増える予定があったとしたら、さらにしんどくなるのかと思うと、シナリオ班はどうしていこうかと……すごく頭の痛いところですね(笑)。

――基本的には強くなるという目的はどのジョブも同じですしね。

石川氏: そうなんですよね。

吉田氏: それこそ戦士みたいに、ゴージみたいに絶対的にキャラが立っているNPCがいれば、どう絡むかだけで、どちらかというとゴージ中心に回せるからまだいいんです。暗黒騎士も、暗黒騎士としての葛藤と英雄としての葛藤というテーマが、他のジョブとかぶらない確固たるものがあるからいいけど、もう、ナイトとかどうしよう……みたいな(笑)。

――ナイトは今回、屋内だけでクエストが進むジョブとして、話題を集めていましたね。

石川氏: ナイトとして人を守るっていうことに関して語るとしても、既にもう序盤で語っていることを、繰り返し提示していくだけでは仕方がない。もちろん活かせる部分はありますが、それだけを永遠に引き継いでいくわけにもいかないし、というところで。ジョブクエストの担当は、毎回話し合って、「それ使っちゃったの?」、「そのネタ、こっちでやろうと思っていたのに……」みたいな感じで進めています(苦笑)。

――ナイトは今回、同窓会っぽかったですが、次はまた大変そうですね。

吉田氏: でも今回は同窓会にして、一通りのキャラ回収ができたことで、次回は新キャラを中心に回せることもあり、少し楽になったかなと思います。

――ここで一区切りということですね。

吉田氏: 忍者もオールスターをやったからこそ、一旦全員の物語がとりあえず片付いたので、今後は絞ってもいいし、新キャラを出してもよくなったというところはあります。カラスの詳細はもう少し語れそうですが。ですので、オールスターをやりきったところは、楽にはなったかなと言う気はします。

――今回、忍者のオボロが本編にも一瞬でていましたが、やはりジョブクエストのキャラクターが、ああいう感じで本編に絡んでくることも今後はあるんですか?

石川氏: ほかにも今回、黒魔道士ギルドの人たちが、アラミゴ攻略の時に参戦しています。彼らはそれぞれの街で、役目ややるべきことがある人たちなので、クラスやジョブのクエスト以外でも、居るべき所にきちんと居るというのは、「4.0」に限らず引き続きやっていけたらなと思います。

吉田氏: 積極的に出しているわけではなく、ウルダハが中心になってアラミゴを攻めに行くときに、急速冷却した扉を、急速に熱膨張させて壊すという時に、あれだけ強大な呪術師ギルドがいるのに参戦していないのはおかしい……。むしろあのピピンの作戦は、呪術師ギルドがあるから思いついた作戦とも言えます。このように、理由があるからこそ出演していて、人気があるないではないですね。

石川氏: 今回出てきたマスターが人気だから出したというわけでもなく、その街とかその集団が必要だったからということが大きいですね。

吉田氏: オボロもそうですね。あれだけドマから来たと言っているのに、参戦していないと、やっぱり冷めるのではないかと。「ああ、やっぱり忍者ギルドは、(メインストーリーとは関係なく)独自に作られているのね」と。シナリオチームがしっかりそこを踏まえて、出演させてくれました。

――あそこで出なかったら、何やってるの? って思いますね。

吉田氏: でもあいつ仕事したくないから……出なきゃ出ないでも……なんですよね(笑)。

――彼は話が進むにつれて、どんどんダメ人間な感じになってきましたね。

石川氏: ドマの奪還に協力しに来た時、メインシナリオとしてはなにか喋るわけではありません。ですが、あの後オボロに会った時に、どんなことを話したのかなど、忍者でプレイしている方は、ぜひ想像してもらえると嬉しいです。

零式は現在、3層と4層の間がボリュームゾーン

――シナリオ以外のことですが、今回泳ぐと潜水が入りましたが、次にこんなアクションがやりたいなというというものがあれば教えてください。

吉田氏: 何も考えてないです! 現時点では白紙です(苦笑)。

石川氏: 泳いで飛んで…あとは――。

吉田氏: 開発でも、無重力ってよく言うのですが、無重力って泳いでるのと変わらないじゃん……と。

石川氏: 私は、小さいですが、二段ジャンプみたいなのが欲しいかな。

吉田氏: え~? それでも、基調講演とかで、次の新しいゲーム体験は「二段ジャンプ」ですって言えないよ。

石川氏: 確かに(笑)。

――「登る」とか。「FF15」にあった「くぐる」のようなものはどうですか。

吉田氏: それでゲームが面白くなったり、「ハイデリンという世界に生活すること」が、より広がるのかな、という部分が気になります。仮にそれを作ったとしても、今まで以上に「2.0」、「3.0」、「4.0」エリアでは梯子に登れないの? となります。また、梯子を登れても、結局はフライングができてしまえば無用になります。MMORPGとして揃える必要があるところは一通り揃ったという印象なので、どちらかというと、今後は今ある体験を使った専用の遊びを作るという方向に、多分シフトしたほうがいいのだろうとは思います。

――逆に今後、エオルゼアやイシュガルドエリアで、潜水とか、水泳を使ったコンテンツが登場する可能性はありますか?

吉田氏: 「泳ぐ」を使ったコンテンツを作るのであれば、「4.0」エリアに作ると思います。古いエリアでやる意味があまりないのです。水中フィールドを作ったとしても、蒼天側の地域レベルではレベルが高すぎて、バランスが噛み合わなくなるというのも大きいです。

石川氏: 水遊び的なところでは、ハウジングエリアで泳ぐことは可能になるので、そういうところでちゃぷちゃぷしてもらう方が楽しいかなという感じはあります

吉田氏: 水の中に住む未知の生物とのバトルをする、といったような専用コンテンツを作るとしたら、それはやはり紅玉海の主であって欲しい。そのために広大な海がある。それをイシュガルドの湖でやりますといっても、え? なんで今更イシュガルド?と感じてしまうと思うのです。やるかどうかは別として、このように考えています。

石川氏: 後付け感が、すごいですよね。

吉田氏: そうだと思いますね。

――今回のレイドコンテンツの難易度的には、大体予想通りというか、意図どおりに行きましたか?

吉田氏: はい、想定通りに行ったと思います。

――もう、かなりの方がクリアされている?

吉田氏: はい、今までに比べ非常に多いです。4層は苦戦されている方もまだ結構いらっしゃいますが、トップ勢のクリアは、さすが別格という速さでしたね。

――ボリュームゾーン的には何層ぐらい?

吉田氏: 零式2層突破ぐらいまでは、めちゃめちゃ多くて、3層で苦戦している人と4層で苦戦される方が多いです。ただ、万物装備がそろってきて、アイテムレベルが上がってきているので、3層を抜ける人が増えてきています。3層をクリアできるかどうかくらいの人と、3層はクリアしたけれど、4層で詰まっているという人が最大ボリュームです。

――パーティ募集を見ていても、200件くらいある中の160件くらいがレイド募集だったりして、ものすごく多くの方が挑戦しているなと思いました。

吉田氏: 難易度的にちょうどよかったと思います。

――「4.1」で実装される超難易度コンテンツについては、なにか話せることがありますか?

吉田氏: それは……14時間生放送までお待ちください。

――14時間生放送で初めて内容がわかる?

吉田氏: そこでどんなシリーズコンテンツになるかをお知らせする予定です。

石川氏: バトル担当の須藤が、物騒なことをブツブツ言いながら企画していたので、すさまじそうですよ。私だったら挑まない!!(笑)

吉田氏: でも、怖い物見たさで、見たくない?

石川氏: 確かに。でも多分、怖い物見たいところまで行けなくて、なんだか分からないうちに終わって、「おー? おおー」って、口を開けながら退出していきそうな気がします。

――こちらに関しては、かなり難しいということですね。

吉田氏: ワールドファースト組はわからないですが、相当難しいと思います。

――今回の零式の難易度では、ぬるいなと思っている人むけということですか?

吉田氏: そうですね、でもぬるいと思った方でも、どうなのかなあ……。

――今まで入った中で1番難しいコンテンツになりますか。

吉田氏: 多分……。

石川氏: かつての侵攻編零式の存在を思い出しますね。

吉田氏: そうですね。侵攻編零式ぐらいだと思っておいてください。

――あれはすごかったですね。なんじゃこりゃって。

石川氏: 同じくらい、なんじゃこりゃーかもしれないので、挑みたい人だけ挑めばいいという感じのものだと思います。

――基本的には、ステージ的には1つ? ボスが1人いるだけのものですか?

吉田氏: なんとも言えないです(苦笑)。

石川氏: それは、お楽しみにというか。

――専用のストーリーはあるのですか?

石川氏: ありません。ストーリーが見たいならクリアしなきゃというものではなく、本当にバトルにチャレンジしたい人だけ、頑張ってください。

――挑戦をするためのコンテンツなのですね。

石川氏: はい。

将来は、DC内をさらに自由に行き来できるようになるかも

――今後の展開として、できるできないは別として、吉田さんが今後、MMOの中で何かやってみたいことはありますか? 先ほど、ゲーム体験を向上させるアクション的なものは、一通り入れるものは入れ尽くしたということでしたけれども。

吉田氏: アクションではなく、新しいタイプのコンテンツは、「4.X」シリーズのアップデートに向けて、いろいろ平行して計画を進めています。何回かは驚いてもらえるかなと期待しつつ、じっくり進めているところです。

――それは、今発表されているもの以外のコンテンツですか?

吉田氏: まだ発表はしてないものが殆どです。これらの新しさは、「4.1」ではまだ片鱗しか見えないかもしれないです。「4.3」、「4.4」、「4.5」など、もう少し先かと思います。

――「4.5」ですか。「4.5」が出るころには、もう「5.0」はどうなっていますかと聞いてそうですね。

吉田氏: わからないですよ。「4.6」、「4.7」……と続いていく可能性もあります(笑)。後は、システム的に話をしているのは、所持品の概念をちょっと変えたいのと、ミラプリは根本的に今手を入れ始めています。またDC内のワールドという概念をもっと希薄にしてしまいたいというところは、長期計画で進めています。今回クロスワールドパーティが入って、格段に便利になったと思いますが、もっと大きな目標に向かってこれらを進めていくつもりです。

――所持品の概念を変えるとは、どのようなことですか?

吉田氏: 単純な所持品枠の追加は、サーバーの帯域ストレス的に限界にきています。ですので、別の方法を使って、もっと持てるものの数を増やすことが目的です。後は現在開発中のスマートデバイス用新アプリとの連携だったり、新コンテンツの開発だけではなく、色々なものが進んでいます。「FFXIV」も運営5年目に突入しますが、これまでに、かなりのシステムアップデートを行なってきて、とても便利になったのではないかと思いますが、ここから更に他のタイトルを寄せ付けないよう、システム的な大きな更新なども、しっかりやっていくつもりです。

――今後は、今はできないフレンド登録などがサーバーをまたいでできるようになったりと?

吉田氏: それは、「4.1」でできるようになります、ワールド間のフレンド登録とtellは「4.1」でできるようになります。

――ほかのワールドにシャウトが届くようなチャットチャンネルがあると便利なのですが。

吉田氏: シャウトとは違いますが、チャットグループのようなものは「4.2」に向かって作っています。大きな枠組みで、少し計画が変更される可能性はありますが。

――作る予定があるんですね。

吉田氏: その手の単純機能のクロスワールド化というのも、もちろん進めていますし、想像よりは早めにリリースできるかと思っています。もっと大きな枠組みを変えていきたいですね。

――ワールド間で、フィールドパーティが組めるようなものですか?

吉田氏: ちょっと違いますが……クロスワールドパーティも制作に着手してからリリースまで7か月かかりました。準備を含めると1年近いです。そのくらいの計画で進めているものもあるということで。

――個人的な見解ですが、最近はMMOでも、実況映えを意識しているようなゲームが増えているように感じます。「FFXIV」ではそういった要素については、何か考えられていることがありますか?

吉田氏: 確かにライブストリーミングは大きな市場になっていますが、今のところそれを意識してコンテンツを作る、ということはあまり考えていないです。

石川氏: ないですねー。それこそPvPは上手い人が実況すると、すごく盛り上がりますね。

吉田氏: 「ザ・フィースト」は、公式大会に向けて、チーム登録の準備を進めているので、「ザ・フィースト」はもちろんそうですね。ただ、PvEコンテンツで実況映えと言われると……。

石川氏: そうですね。あまり意識したことがないというか、それを主眼に考えることはあまりないです。

吉田氏: 今作っている新しい機能で、実況とはまた違った動画の遊び方ができるかなとは思います。言いたいけどまだ言えないことだらけなのです……。

石川氏: 今って言えない時期なのですよね。

――14時間生放送でいろいろ出てくるでしょうしね。

吉田氏: そうですね。それもそうですし、今の時期はどうしても「どのパッチでリリースできるか」ということの当落線上になっているものが結構多いので、発表しづらいというのも大きいです。

石川氏: 結局「4.X」内では実装できないかもしれないし(苦笑)。

吉田氏: できるだけそうはしたくないけれど、中にはね(笑)。

欧州DCは人口急増中。アメリカでは菓子パンとのコラボも

Gamscom 2017の「FFXIV」ブース。蛮神チャレンジの大きなブースはもはや恒例
大勢のファンに取り巻かれていた吉田氏のステージイベント
スクウェア・エニックスブース内にある休憩スペースは「FFXIV」がハック
会場内のエスカレーターにも「FFXIV」の広告を発見

――ヨーロッパサーバーが増えましたが、現行の人口比率はどうなっていますか?

吉田氏: 圧倒的なUS、次いで日本、ヨーロッパの順ですが、ヨーロッパがもう日本に追いつきそうですね。

――そんなに増えているのですか?

吉田氏: 伸び率でいえば、ヨーロッパが一番です。

――ヨーロッパの中ではどこが多いですか?

吉田氏: ドイツが多いですが、イギリスも健闘しています。北欧もそうだし。まんべんなく伸びています。

――今後、英語圏以外の言語について、さらにサポートする言語を増やす予定はありますか?

吉田氏: やりたいのですが、スタンドアロンのタイトルなら、信頼できる外部の翻訳会社さんなどと協力すればなんとかなるのですが、僕らは常にパッチを抱えているので。ライブに今以上の言語数を入れようとすると、シナリオチームが破たんしますね……。

石川氏: 多言語で同時配信なので、例えば1カ所、バグの修正によってクエストの内容が変わりましたという時に、日本語を直した後にリリースまでに全言語を直さなくてはならない。言語が増えていけばいくほどそういった後工程が増えていくので、頭のボリュームを小さくしなければという話になってしまうのです。今のところは、内部的にも今の言語数でいっぱいいっぱいなので、やるとしたら何か根本的なところを考えないと、単純に翻訳者さんがいるから増やせますという状況にはならないと思います。

吉田氏: 少なくともスペインやポルトガル語の翻訳者が4人ずつ専属で張り付かないと無理かなと思います。

――中国と韓国でも「紅蓮のリベレーター」が発表されましたが、今後この2つのパッチの実装スケジュールは、グローバルに近づいていくのですか?

吉田氏: 近づいたとしても、絶対に翻訳ラグは発生するので、完璧に同じになることは難しいと思います。ですが限りなく近づけてはいくつもりです。翻訳というものを互い違いに走らせて行かなくてはならないので、近づいては行くと思いますが、100%完全に同期させるのは不可能とは言いませんが、いますぐには難しいです。

――ライブサーバーだけではなくて、例えばフォーラムなどの多言語化についてはいかがですか?

吉田氏: フォーラムは人が多いところに集まるので、今もドイツ語とフランス語がありますが、やはり英語フォーラムを使う傾向が強いです。そう考えると、今の段階でフォーラム言語を増やすイメージはないですね。

――ほとんどの人が日本語と英語のフォーラムにいるということなのですね。

吉田氏: もちろんだからといって、モデレーションしていないということではないですが、どうしても書き込み頻度を考えた場合に、ゲームの言語対応を増やした際、同時にフォーラム言語まで増やすと足が遅くなるので、ひとまずは英語フォーラムで代用したほうがレスポンスも早いだろうなと思います。

――「紅蓮のリベレーター」の発売に合わせて、日本ではいろいろなメディアミックスが行なわれましたが、海外で同様の予定はありますか?

吉田氏: 日本であまり報道されていないだけで、アメリカでは、Mrs. Freshley'sという菓子パンで、「STORMBLOOD」と印刷されたものを購入するとインゲームアイテムがもらえるというキャンペーンがあったり、WWEでのコラボなど、海外でもいろいろなことをやっています。今はオーストラリアでドミノピザとのコラボが動いていたり。あまり日本で積極的に言うことではないので、お話しする機会がないのですが、イギリスでの腕時計メーカーさんとのコラボなど、世界中で様々な施策を行なっています。現在ヨーロッパではオンラインゲーム系のストアでスクウェア・エニックスの商品をいくつ以上買うと、「FFXIV」のインゲームアイテムがもらえるというキャンペーンを実施する目前だったりもします。

――日本にはそういった情報があまり入ってこないですね。

吉田氏: あまりお伝えする意味がないのと、施策の数がかなり多く、お伝えしすぎても「日本ではやらないの?」という声も挙がると思いますので。

――サービスから4年経って、当初は「WoW」フォロワーと言われた「FFXIV」も独自色が濃くなってきたと思います。今後の方向性について、こんなゲームにしていきたいという考えを教えてください。

吉田氏: ゲーム体験の基盤をしっかり維持することを、まずは大切にしたいです。最近特に評価していただいていますが、短い時間でも楽しめて、一回休んでいたとしても復帰も楽だし、新規で初めても追いつきやすいというところが、「FFXIV」の一番良いところだと思っています。そして、メインシナリオが中心になって、物語がキチンと進んでいくところに「FF」らしさが凝縮している、という部分は変えるつもりがありません。核となるメインシナリオがあって、インスタンスダンジョンがあって、高難易度レイドと24人レイドがある。今はさらに高難易度のコンテンツを作ろうとしていますし、PvPにも新しいタイプのPvPが「4.1」で入ります。これらを維持しつつ、新しいタイプのコンテンツを増やし、ゲーム体験が違う遊びをたくさん用意することに注力したいです。「4.1」からいよいよグランドカンパニーの小隊を連れてダンジョンで鍛えることができるようになります。

 今後も、コンテンツの幅を広げていき、「FFXIV」という1つのゲームだけれど、色々なタイプのゲームが混ざっているというのを広げていきたいと思っています。それが結果的にテーマパークで乗り物が何でもあるよ! という部分を、もっとより完璧にしていきたいです。徹底してソロで遊べるコンテンツとか、ゴールドソーサーにもまた新しいタイプのアトラクションを足したいですし。4人で遊べる中難易度~高難易度のものも考えたいと思っています。4人パーティでコンテンツを遊びたいという声がとても多いので、この辺りは特に考えていきたいです。根幹のゲームデザインを維持し、パッケージとしての安心感を崩すつもりはない。その上で、とにかく色々なアトラクションが増えていく……というところをより突き詰めていきたいです。

 そして、その根幹にあるベースの便利さだったり、安定したシステム運用は、すごく多くの人に遊んでいただいて、たくさんの利益をいただいているので、より投資をして他のMMOがシステム的に追いつけないようなところまで更に引き上げたいと思います。

――便利な機能も、入ってしまうとあって当然になりますからね。

吉田氏: 僕らも初期は随分苦しみましたが、何より地道な積み重ねこそ、最終的には近道だなと思います。これからも、他のタイトルが追いつけないように、こうした部分は積極的に投資をしていけたらなと思っています。「旧FFXIV」以来皆さんに助けていただいたので、そこはお返しをしていきたいと思っています。

――今の「FFXIV」でこういうところが足りないとか、ここを改善したいと思っているのはどこですか?

吉田氏: 僕は今すごく忙しいので、やや満足気味でして……(苦笑)。シャカリキになってやらないと追いつけなくてやばい! というものもないし。そういう意味だと、すごくたくさんのプレイ時間をかける人たちが、吐き気がするほど周回するようなコンテンツも……もう少しあってもいいのかなとは思います(笑)。

――そういうニーズもあるということですか?

石川氏: 吐き気がするほど周回したいとは言わないでしょうけれど(笑)。

吉田氏: でも……あればやる、という方もいるだろうし。この手の遊びは、極端にならないよう、意図的に避けてきたものなのですが、そろそろアトラクションとしては良いのかも?と。もちろん通常のアイテムレベル強化や、シナリオクリアに必須ではないようにしますが、ぼんやりそんなことも考えています。

――やってもやらなくてもいいってことですね。

吉田氏: はい。8人レイドや極と同じ考えですね。

――プレーヤーの行動にデータで、奇数パッチで実装されるダンジョンの数が減りましたが、そういったデータから何か考えていることはありますか?

吉田氏: ディープダンジョンは非常に上手く活用していただいているので、遊びとしてはよりパワーアップさせて、定番の1つにしていきたいです。最近になって新規でゲームを始めた方と、「2.0」の最初から遊んでいる方では、「FFXIV」の序盤に関する感じ方がかなり異なってきたと感じています。新コンテンツもたくさん作っているので、早く1つずつ確実にお見せしていければなと思います。

――最後に、ファンへのメッセージをお願いします。

石川氏: いろんな感想をいただけて嬉しかったです。特に嬉しかったのは、海外でもいい評価でしたよと放送で言ったときに、コメントで、「FFXIV」が褒められると自分も嬉しいと言ってくださる方がすごく多くて、いいものを一緒に遊べて楽しいということだけでなく、作品が褒められて嬉しいということまで共感してくれるプレーヤーさんが付いていることが本当に嬉しかったです。これからもコンテンツを提供していくのはもちろん、いろいろなイベントもありますが、土台としていいものを作っていくということの上にみなさんと繋がっていけたらいいなと思っています。皆さんと嬉しさと楽しさを共有できる「FFXIV」であり続けたいなと思っています。

吉田氏: 皆さんのおかげで間もなく4周年を迎えることができます。「紅蓮のリベレーター」はみんなで必死に作っていて、あまり振り返る間もなくリリースしたので、若干不安な面もあったのですが、存外素晴らしい評価を世界中からいただいて、有効会員数も4年間で過去最大というくらい盛り上げていただけました。その勢いを使って、また5周年に向かって走りたいですし、次の拡張に向かって僕と石川は仕事をしなくてはいけないので、次にまた期待していただけるように頑張っていきたいと思います。まずは14時間生放送を含め、パッチ4.1にご期待いただければと思います。

――ありがとうございました!