インタビュー

【Tankfest 2017】「World of Tanks」プロダクトディレクターThayne Lyman氏インタビュー

果たしてシュトルムティーガーは今後実装されるのか!?

6月23日収録

会場:ボービントン戦車博物館

 「World of Tanks」ファンの皆さん、お待たせしましたということで、PC版「World of Tanks」の開発を統括するプロダクトディレクターThayne Lyman氏に、Grand Finals 2017(参考記事)に続いて、ここボービントンでも話を聞く機会に恵まれたのでインタビューをお届けしたい。

 Lyman氏に対しては、実装されたばかりのランク戦の反応と、今後のアップデート情報、現在テストが実施されている大規模戦フロントラインの開発の進捗、それから今回話題になったシュトルムティーガーがゲームに登場することはあるのかといったことを質問してみた。Lyman氏は個々のコンテンツというよりは、全体のバランスを調整する役割として、常にロジカルで、データを重視する姿勢が特徴的だ。

トレーニングモードを強化する「ブートキャンプ」を実装へ

「World of Tanks」プロダクトディレクターThayne Lyman氏
その見た目から“バスタブ”と呼ばれる砲塔を取り除いたレオパルド2。確かに埃が凄まじかった
今回公開されたシュトルムティーガーARは、「WoT」の車輌モデルが使われているが、「WoT」そのものをVR化する考えは今のところないようだ

Thayne Lyman氏:まず皆さんに来ていただいてありがとうございます。ボービントンにようこそ。我々Wargamingでは、過去に何年もこちらのイベントのサポートや、スポンサーなどもさせていただいています。今回もオフィシャルスポンサーになっています。我々は「World of Tanks」を運営し、数多くのアップデートをお届けしていますが、実際こういったオフラインのイベントもたくさんサポートしていまして、このボービントンの戦車フェスティバルもその1つです。

 「WoT」は、新しいモードなどのアップデートが最近入りましたが、それだけではなく今後もアップデートが加えられていきます。その中でも、考えている大きなものとして、トレーニングモードに「ブートキャンプ」という新しいシステムを取り入れようと思っています。これは何かというと、新しい知り合いを誘った時などに、やはり実力差や知識差があるので、よりゲームにとっつきやすくなるように練習ができるようなものをトレーニングモードの追加機能として取り入れようと考えています。こちらは近々入る予定で、いまは新規の方々がゲームを始めるのにとてもいい時期だと考えています。

――我々も先ほどレオパルド2に乗りましたが、乗ってみた印象はいかがでしたか?

Lyman氏:埃が凄かった(笑)。それはともかく、とても楽しかったです。実際に戦車に乗るというのは、あまりない機会ですし、レオパルドの機動性や加速力も実際に乗らないと体験できないものです。坂を上る時なども、あの車輌がいかに機動力があってああいった場所に行ったとしても何の問題もなく走行が可能だということは、実際に乗ってみないとわからないことです。

 ただ、今回の体験で大興奮かと聞かれると、実は正直なところ、アメリカでも似たようなイベントを体験しまして、そのとき私が一番興奮したのは、アメリカではいろんなものを地面に置いて、それを戦車が乗り越えていくのです。自動車だったり、様々なものを戦車で踏みつぶしていったのですが、そういった踏みつぶしてものを壊していく感覚というのが、非常に興味深い感覚で私は大興奮しました。みなさんもいずれそういう機会があれば、ぜひ体験していただきたいと思っています。

――E3でもVRやARが話題になっていましたが、今後のVRに対しての味付けをもう少し詳しく教えてください。

Lyman氏:大前提として私たちは基本無料のゲームを提供しているので、分母が大きくないと成り立たちません。VRに興味がないわけではないので、こういった博物館とコラボをさせていただいて、The Tiger Collectionへの展示協力であったり、ビデオを作ったり、様々な活動をしています。

 VRをゲーム内に取り入れることに関してはまだそれほど積極的に進めてはいないのですが、現段階では私たちとしてはVRの使用方法や、どういった使い方ができるのかを研究しながら、皆様とはまた違った方面で取り組んでいます。まだVR機器をもっていない人はたくさんいますから、機材であったりソフトウェアであったり、そういったものが出来上がってきたら、いよいよその段階に来たら私たちが提供しているゲームのようなもので、VRのものができる可能性はあります。

――最新アップデートでランク戦がスタートしましたが、どのような手応えを得ていますか?

Lyman氏:まず今回からβシーズンが始まったランク戦ですが、皆様からのご意見は基本的にはおおむねポジティブなものばかりになっています。実際の数字を見てもTierXの戦闘はランク戦以外でも増えましたし、今回のランク戦が行なわれた試合数も私たちの想定を大幅に上回っています。実際のところ多くの方々がこの新しいモードを試していただいておりますし、非常に楽しんでいただいております。

 もちろんこれはまだβなので、これから、いかにしてよくしていくか、改良していくか、改善していくかということが課題となっておりますので、そういったところで出てきたのがまずボンズをいかにして獲得するか。今現在はランク戦に参加した方しか獲得できないのですが、それはつまりTierXを持っている方しか手に入らないということです。ただそれでは、まだ成長中の方に対しては不公平となってしまいますので、それ以外の方法でもボンズを獲得できるように、今色々と進めているところです。

 ほかにも今プレーヤーの中で懸念されているのが、上位に入るにはTierXというのは最上位の車輌なので、修理代であったり、弾薬代だったりゲーム内通貨が多く必要になる形になっています。そういった意味で皆さんの使用数や使用率が均等になるように、できるだけ出費が多くなりすぎないように、逆に多く入りすぎないようにというバランスをよくするために今色々と社内で検討してもらっています。ほかにも様々な小さい課題があるのですが、そういったものを含めて更に検討してどんどん次のシーズンに向けて改良して行きたいと思っています。

【ランク戦】

――ボンズの他の入手方法はどういったものを検討していますか?

Lyman氏:例えばなのですがSNSのアクティビティであったり、デイリーのゲーム内ミッションであったり、ほかのゲームモードでもこのボンズを獲得できるようにするという案が出ています。まだどうするかは検討中なので、これらはまだ確定ではありませんが、そういった形でゲームをすることでボンズを獲得できるようにする方法は様々な方向で設定していきたいと思っています。また獲得量についてもどのようにディレクティブという消費型アイテムであったり、改良型拡張パーツがこういったものが実際どれくらい購入されて、どれくらい消費されているかをベースに今後の調整をしていきたいと考えています。

――このPC版のランク戦は今後「World of Tanks Blitz」、「World of Tanks Console」にも追加されるのですか?

Lyman氏:私個人はPC版のディレクターですので特に今後コンソールやモバイルがどのようになるかはわかりません。PC版としてもこれは始まったばかりなので、今後どのようになっていくか、そしてコンソールやBlitzの担当者もその結果を見たり実際の経過を確認しながら、ほかのプラットフォームでも導入すべきかどうかが分かってくると思いますし、実際いいと思えば彼らもそれを導入するかと思います。実際に実装されるかどうかというと簡単ではありませんが、今後の結果次第で可能性はあると思います。

――クレイジーな質問なんですが、TierXIの可能性はありますか?

Lyman氏:私は「できない」とか「無理」とは言わない性格なので、「可能性としてはあるかもしれません」とお答えしておきますが、今のところそういった計画はまったくありません。

 いま「WoT」自体は個々のアップデートは入れていますが、引き続き調整や改善を常に行なっていますので、まずはそういった小さいところから進めながら、Tierや技術ツリーなどもすべて調整しております。それによっては今後新しいTierの可能性はありますが、それまではIからXまでに新たな車輌が入ったり、調整が行なわれたりといった形になるかなと思います。もし将来的にTierXIを発表することになったら、このように質問されることはないと思います。私たちの方から先に発表させていただきますので(笑)。

――フロントラインの現時点での手ごたえと、実装に向けて今後の展開について教えてください。

Lyman氏:まず現在の段階では解析のステージにあります。実際何度もテストをしておりますし、そのテストに置いても皆様からのフィードバックは、非常にポジティブなものがきておりますので、モードとしては間違っていないという印象です。ただもうすでにテスト段階の時にたくさんの試合が行なわれましたし、そこから膨大なデータが出ておりますので、今現在はそれを解析して今後どのように調整していって改良するかという段階になります。ですので、まだ次のテストがいつになって、どういう変更を加えるかということをこの場ではお伝えできないのですが、私たちのほうで開発はしっかり進めていますということだけはお伝えしたいと思います。

 基本的に「WoT」は15対15という部分は今後も変わらないと、私たちは考えています。これは「WoT」の核となっている部分でもありますし、食事で例えるならジャガイモとお肉のようなメインディッシュという形です。ただこの30対30というのは、そういったものだけでは食べ飽きてしまう人がいるかもしれないので、スパイス的な形でちょっとした箸休め的に遊べるようなものとして提供したいと思っています。ですので、私たちは常に新しい経験をプレーヤーの方に提供したいので、こういった新しいモードの製作や調整を常に行なっていきたいと思っています。

【フロントライン】

――ちょっと話がズレますが、逆にWGLの公式ルールとして採用されている7対7を通常サーバーでサポートする予定はないのですか?

Lyman氏:まずは常にe-Sports寄りに考えるか、ゲーム寄りに考えるか、またはすべて一緒に考えるかということがあります。現在私たちが考えているのは、「WoT」というゲームは、ゲームとして考えておりますし、e-Sportsのモードはe-Sportsとして考えております。e-Sportsというのは一般のプレーヤーとは違って、プレイされている方もいれば見るだけで楽しいという方もいますので、e-Sportsについては考え方を変える必要があると私たちは考えています。

 一方、「WoT」のゲームそのものは実際にゲームをプレイされている方が体験するものですので、そちらはゲームをいかに楽しんでもらえるかですが、eスポーツのものに関しては実際にプレイされるプロの選手と、それを見ている方々の両方が楽しめるものにしなければいけないので、そういったルールの違いがあります。もちろん将来的には調整が入って、どちらも同じようなルールでできるようになる可能性もありますが、今現在はそういうものをコンセプトとして進めさせていただいています。

【WGLの7対7】

――アップデート9.18で最大の課題としてきたマッチングの問題が解決しました。現在の最大の課題は何で、それを今後どのように解決していくつもりですか?

Lyman氏:9.18でマッチメイキングなどは改善されてきておりますが、それ以外に出ている大きな課題の1つとしてはやはり、アップデートのペースが速すぎることです。私たちは常にアップデートを実施してゲームに変更を加えているので、そこからプレーヤーの方々にそれにいかに対応してもらうかということがありますし、新しいものを導入するとやはり新しい問題も出てきます。そういった新しい問題にいかに早く対処するか。これが大きな課題です。

 大きいものとしては、9.18で自走砲に大きな変更が入りました。その際に出たものとして、今までは自走砲を含めて小隊が組めていたものが、現在は小隊を組めないようになっています。これにもちゃんと理由がありまして、自走砲ばかりで小隊を組みますと3輌の自走砲が1輌の車輌に対して集中攻撃をするなど、それを受けるプレーヤーにとっては喜ばしくないような状況に陥ることがありますので、そういったことを回避するために一律小隊を組めなくしています。

 ただ、やはり今まで小隊を組んで自走砲を楽しんでいたプレーヤーの方もたくさんいて、そういった方々からは不満の声が出ていますし、私たちとしても一時的にそういうシステムにしたという形ですので、今後はそれをいかにして改良するかということがあります。これからは小隊に対して自走砲は1輌のみになるといった、制限を設けたいと思っています。これも近々ゲーム内に導入されるかもしれません。それ以外にも、軽車輌の調整であったり、今回はいったランク戦であったり、いろいろと課題は出てきていますが、大きいものとしてはどういったものになるかなと思います。

――今回WargamingはシュトルムティーガーをARで再現しました。シュトルムティーガーを「WoT」に実装する予定はないのですか?

Lyman氏:全くないとは言いませんが、今現在それに関して皆さんにお伝えできることは全くありません。ただ、私たちとしても常にゲームに関してはプロトタイプを多く制作しておりますので、皆様が実際βテストやαテストで参加していないようなものも社内でテストしております。そういった意味では新しい車輌であったり、新しいゲームモードであったり、それこそ今ある5つのカテゴリ以外の新しいカテゴリも模索していたりしていますので、いずれはそういったものがちゃんとゲームとして成立する可能性はあるのではないのかと考えています。

【シュトルムティーガーAR】
シュトルムティーガーの実物が持ってこられないことが判明してから急遽作成されたシュトルムティーガーのARコンテンツ。つまり、シュトルムティーガーの車輌モデルはすでに存在するということだ……