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Logitechダニエル・ボレロ・イノベーションセンターレポート(その2)

最高の無線性能、有線を上回る応答速度、“SCIENCE WIN”の神髄、ここに見たり!

【G900 Chaos Spectrum】

4月14日発売予定

価格:21,130円(税別)

 Logitech社内ツアー2日目は、初日と同じBICの地下にある研究室で、マウス開発段階で実際に行なっていた実証実験の一部を自分の目で確かめることができた。

RFルームにある無響室
無響室いワイヤレスマウスを置き、妨害電波を出してその影響を見る
ライバルマウスは専用ドライバをインストール

 今回公開された実証実験は、いずれもRazerやSteelSeriesといった具体的なコンペティターを立て、同一条件でどのマウスがどれだけ優位かを実証するというスタイルで行なわれた。まさにゲーミングデバイスメーカーとしてのプライドを賭けたガチンコのテストだ。

 3種類いずれの実証実験もユニークでおもしろかったが、個人的にとりわけ目を引いたのはRF(無線)テストだ。初日と同じ、すべての外的影響をシャットアウトする無響室のあるRFルームで実験が行なわれた。

 無線テストということで、対象となるのはすべてワイヤレスマウスだ。実験の内容は、400DPIに設定したマウスを、同じ軌跡を描く回転運動を行なう専用の機械に固定して、その動きを130cm離したワイヤレスレシーバーで受信、その上でWiFi(802.11 g/n)、Bluetooth(CLASS 2)、無線(2.4GHz)の妨害電波を飛ばし、ワイヤレスマウスがそれら電波の影響をどの程度受けたかをマウスの軌跡で確認するというテストだ。

 影響を受けなければスプリングのような軌跡ができあがり、影響を受けるとそれによって軌跡が乱れるという仕組みだ。ちなみになぜマウスのDPI設定が400なのかというとプロゲーマーの多くがこの数値でプレイしているからだという。

 さて、テストは他の電波の影響を完全にシャットアウトした理想的な環境から始まり、3種類の電波を少しずつ飛ばした一般的な家庭の環境、そしてLANパーティーやe-Sports会場を想定した電波MAXの3段階で検証が行なわれた。

【妨害電波装置】

 最初にテストが行なわれたのは今回の主役である「G900」だ。いずれの電波強度でもマウスが描く軌跡にはまったく影響がなく、まさに無敵の防電波性能を見せつけてくれた。ただ、これだけ見せられてもその凄さが今ひとつわからないし、本当にジャミング電波が機能しているのかどうかもわからない。

【G900の実験結果】

 しかし、その後、「Razer Manba 2015」、「Razer Ouroboros」、「SteelSeries Sensei」という3種類のコンペティターのマウスでテストを行なうと、「G900」の防電波性能の凄さを実感することができた。それらのマウスでは、妨害電波の強度を上げるとあたかも悪霊でも乗り移ったかのように、機械的に美しい弧を描き続ける軌跡が突然乱れ、不自然な引っかかりが断続的に発生し、軌跡そのものがブレはじめた。さらに電波をMAXにすると、ポインタが飛びまくりあちこちに円を作った。実験の参加者は、ポルターガイスト現象のような結果にどよめきの声をあげた。これではまともにマウスを操作することすら難しいだろう。

【Razer Manba 2015の実験結果】
今回G900以外のマウスではもっとも良好な結果が出た「Manba 2015」。さすがはRazerのハイエンドマウスといったところだが、G900の微動だにしない結果には適わない

【SteelSeries Senseiの実験結果】
あまりにホラー過ぎて子供には見せられない結果が出てしまったのがSteelSeries Sensei。家庭レベルの電波でもほとんど常時誤動作が発生している

【Razer Ouroborosの実験結果】
Razerの旧ワイヤレスゲーミングマウスとなるRazer Ouroborosは、Razer Mambaに次いで良好な結果となった。ただ、家庭レベルの電波ではほぼ乱れなかった軌跡が、MAX状態にすると恐ろしい結果になってしまった

 これらの結果はまさに衝撃的だ。なぜなら「G900」以外のワイヤレスゲーミングマウスは、いずれも電波の影響を受けて明らかにマウスの基本性能が低下していることが明らかになったからだ。プロゲーマーのほとんどが自身のギアにワイヤレスゲーミングマウスを採用しないのは、個人の好みでも、心理的な抵抗感からでもなく、e-Sports大会のような無数の電波が飛び交うシーンではギアとして本当に使い物にならないからだという事がこの実験を通じてよく理解できた。

【Logitechによる公式な検証結果】
RFルーム内に掲示されていたLogitechが計測した結果。こちらは今回の実験とは少し異なり、有線の状態、無線の状態、妨害電波MAXの状態の3種類の結果を掲示している。G900はいずれの場合でも良好な結果が出ているが、SteelSeries Senseiは無線の状態はおろか、有線の状態でも軸がぶれていることがわかる

 こうなると「G900」の凄さが際立つ。どのようなひどい電波環境でも影響を受けずに本来のマウス性能を発揮する事ができる。これこそがプログレードと呼ぶに相応しい。

 ただ、ここまでハッキリとした結果が出たことでひとつの疑問が頭をよぎった。すなわち、このテストは、本当に客観性を備えた公平なテストなのだろうか。Logitechの無線システムだけ有利な仕様になっていたりしないのだろうか、ということだ。そこで筆者は、かつてここで製作されたワイヤレスゲーミングマウスの「G700s」でも実験してくれないかと頼んでみた。

 実験を拒否されればちょっと怪しいし、実験結果が「G900」同様にコンペティターを上回る結果が出れば、この実験はやはりLogitechマウスに有利な仕様であり、実験はあまりあてにならないと言える。なぜなら「G700s」は2009年に設計されたワイヤレスマウスであり、コンペティターよりさらに古い無線システムを採用しているため、最低の結果が出なければおかしいからだ。

 しかし担当者は、極東からはるばるやってきた日本の記者がこの無線テストに異様な関心を向けてくれたことを歓迎し、「もちろん良いよ」と快諾してくれた。ただ、機材がいま手元にないのと、次のメディアが待っているため、取材が一通り終わった後で改めて来てくれという。

 そして2日目の取材の全行程が終わった後で、わくわくしながら再び訪れたところ、担当者は「G700s」の設置を終え、準備万端の状況で待っていてくれた。早速実験を開始してもらうと結果は予想外の内容だった。

 「G700s」の実験では、上位機種の「G900」はおろかコンペティターよりも悪い結果が出たのだ。これは、この実験が公平なものなら当然の結果ではあるのだが、本当にひどい結果が出たのだ。電波強度を上げていくと、マウスが描く弧は歪み、ときおり跳ねて明後日の方向に飛び、ゲーミンググレードのマウスとしてはまるで使い物にならないという結果が出てしまったのだ。つまりLogitechは、過去にこの無残な結果を真摯に受け止めた上で、電波の影響を受けない電波耐性の高いマウスの開発に注力し、「G900」でそれをついに成し遂げたことになる。

【G700sの実験結果】
「G700s」は2009年にリリースされた「G700」と同じ無線システムを使っている。SteelSeries Senseiと同程度の酷い結果となった

 最後に無理をお願いし、再び「G900」で実験を見せてもらった。機械的な旋回運動を続けるマウスの軌跡は、極めて美しい弧を描いていた。この“追試”を共に視察していたLogitech G ポートフォリオマネージャーのChris Pate氏もこの結果に満足そうに眺めていたのが印象的だった。

【G900の再実験結果】
どこまでも続く美しい円の軌跡。これがプログレードのワイヤレスゲーミングマウスだ

 2日間の本社ツアーを通して、SCIENCE WINの神髄をたっぷり見せつけられ、「G900」は掛け値無しに、史上最高のワイヤレスゲーミングマウスである事がわかった。唯一のツッコミどころは価格だが、今回の2日間に渡る缶詰取材でLogitechの「G900」にかけるこだわり、妥協のない性能への追求、考え抜かれた内部構造を見せられた後は、「むしろ安い」と表現せざるを得ない。ゲーミングマウスで最高峰ということは、すべてのマウスの中で最高峰ということになる。ゲーマーのみならず、日々、マウスを使うすべての人にお勧めできる傑作ワイヤレスゲーミングマウスだ。

【クリックレーテンシーを比較する実験】
これはマウスをクリックしてから入力として伝わるまでのレーテンシーを計測する実験。G900は無線に対して、比較対象のゲーミングマウスは「Razer Deathadder Chroma」や「SteelSeries Rival 300」など有線の定番モデルばかり。実験ごとに記者が代わる代わる挑戦したが、いずれもG900のほうが速いという結果になった

【モーションレーテンシーを比較する実験】
こちらはターンテーブルを3秒おきに動かしたり止めたりして、マウスの動きに対する応答速度を測る実験。こちらもライバルを押しのけ、G900の圧勝となった。回転している際の検知能力はどのマウスも大差はないが、動作開始直後、停止直後の応答速度が凄まじく速い。これによりゲーマーの意思をより正確に、より早くゲームに反映させることが可能となる

(中村聖司)