インタビュー

Wargamingにeスポーツの未来や選手育成、WGLサイトの更新遅延などについて聞いた

Wargaming.net Competitive Gamingチームインタビュー

4月7日収録

 Wargaming.netが主催する「World of Tanks」のAPAC最強チーム決定戦「Wargaming.net League APAC シーズン II ファイナル 2016 - 2017」には、選手やファン、運営スタッフ、メディアに加えて、WGLを企画運営するCompetitive Gamingのスタッフも数多く参加していた。

 今回は、Competitive Gaming全体のトップを務めるHead of Global Competitive GamingのMohamed Fadl氏と、APAC部門の責任者であるHead of Global Competitive Gaming APACのJini Jun氏に、WGLの運営、そしてeスポーツの未来について話を聞く機会に恵まれた。

 おふたりには、APAC FINALの台湾での開催意図から、2016年6月から始まり、5月にロシアで開催を予定している世界一決定戦「World of Tanks Grand Finals」でフィナーレを迎える2016 - 2017シーズンの手応えと、来シーズンの抱負、そしてシーズン2期間中に浮かび上がってきたWGLの課題、eスポーツ大国である韓国の3チームが総崩れになった理由に至るまで、かなり踏み込んで話を伺うことができた。

 Fadl氏からは、来シーズンでは大規模なルール変更を行なうという予告が得られ、Jun氏からは韓国総崩れの要因は韓国固有の出来事ではなく、eスポーツにおける普遍的な課題だと考えていることなどが語られた。eスポーツファンはぜひ最後まで読んでみてもらいたい。

台湾政府の全面協力で行なわれたAPAC FINAL

インタビューの様子。左がHead of Global Competitive GamingのMohamed Fadl氏、右がWargaming.net APAC General ManagerのJungwon Hahn氏
Fadl氏は、いきなりGrand Finalで、ルール変更を行なうことを明かした
APAC FINALの開会式では、協賛してくれた台湾情報局へ台湾艦艇が描かれた絵画の贈呈式が行なわれた

Mohamed Fadl氏: もう皆さんとはすっかり顔なじみだが、コンペティティブゲーミングのモハメドです。台湾まで来てくれてありがとう。この地でお会いできたことを嬉しく思う。皆さんには、今まで最高のイベントをお見せできると思う。

 今回のAPAC FINALについてお伝えしたいことは、再び台湾の地に戻ってきたということと、WGG(Wargaming.net Gathering)とAPAC FINAL同時開催することで、過去最大の規模になっているということだ。

 我々が担当しているeスポーツは、Wargaming.netにとっては長い歴史のあるもので、多くの変更を加えながらこれまでやってきたが、今年のGFで大きな変更を加えることを発表したい。今はまだ説明できないが、GFが終わった後の、来シーズンでは新しいルールが適用されることになる。

 そして今回のAPAC FINALの優勝チームは高い確率でGrand Finalsへ進出することになるので、どのチームが優勝するのか私自身も楽しみにしている。今シーズンの賞金総額は3.3ミリオン(約3億6,000万円)になっている。

――まだ終わっていないが、シーズン2の手応えを聞かせて欲しい。

Fadl氏:グローバルの視点でいうと、やはり強いプロチームは勝ち続けて安定してシーズンファイナルに出場しているが、今年は、プロチームが決勝まで来ず、セミプロ、アマチュアチームがシーズンファイナルまでたどり着いているのが特徴だと思う。また、今年に入って、ロシアやアメリカの通信会社など大手企業からeスポーツのスポンサーシップに関する問い合わせが来ている。eスポーツというジャンルが、一般の企業にも興味関心を持って貰った証しだと思う。

――プロが勝てなくなっているということだが、その理由は何だと考えているか?

Fadl氏:個人的に思うのは、世代交代ではないが、プロチームは研究されるし、新しく入ってきた新しい世代のプレーヤーのほうが独創的なプレイや発想など、柔軟性があるので、凝り固まったプロの考え方を塗り替えていっているのではないかと思う。だから、将来的には、優勝チームが、別の新しいチームに塗り替えられる可能性もあると思う。

――現在、注目しているチーム、選手は?

Fadl氏:特定のチームはないが、ロシア、ヨーロッパは、教科書のような戦い方をするので、実は見ていてもあまりおもしろみを感じないが、北米やAPACは常に新しい戦術にチャレンジしたり、今までなかったような発想してくるので、試合を見るのが好きだ。

――そのFadlさんの言う“クレイジーなストラテジー”とは何を差す?

Fadl氏:2週間前の試合で言うと、WGLの試合は攻撃防衛戦モードを採用しているが、防衛側が防衛を放棄して、防衛地点から立ち去って、攻撃側の背後から奇襲するという、拠点を守るという基本ルールを無視して、相手を全滅させることに特化した興味深い戦いだった。各地域でもトップ5というビデオを公開して、各試合のおもしろいところ、好プレイ、珍プレイを紹介しているが、私は毎週それを見るのを楽しみにしている。

――GF後のルール変更について、内容についてはGFで発表するということだが、その狙いについて聞かせて欲しい。やはりトーナメントへの関心を高めるためか?

Fadl氏:基本的にはそのとおり。トーナメント参加者や視聴時間は昨年比で3倍ほどに増えている。ただ、同じ事を繰り返すだけだと飽きてしまうので、変更を加えることで新たな魅力を創出していきたい。

――APAC FINALの会場を台湾に戻した理由は?

Fadl氏:ご飯が美味しいから(笑)。それは冗談だが、もともとここでWGGを行なう予定があったので、APAC FINALも合わせて行なうことで、これまでにない規模の新しいイベントが提供できると考えたためだ。もうひとつは、以前から継続している台湾政府とのコラボレーションで、今回会場について全面協力が得られたこともある。本イベントも台湾政府に協賛に入って貰っている。

――という意味では、今回台湾チームがAPAC FINALに出場できたのは良かったと言えるのでは?

Jungwon Hahn氏:我々だけでなく、選手もチームもそう思っていると思う。政府も、プレーヤーも、チームも我々にサポートして頂いているので、大きなイベントを台湾に持って来れて、その恩返しをできることが嬉しい。

2015年11月に日本で開催されたPacific Rumble。この大会でも圧倒的な強さでEL Gamingが優勝した
2016年4月に行なわれた「Grand Finals 2016」の様子。このポーランド大会よりさらに規模が拡大するようだ

――次の計画は? 日本はどうか?

Fadl氏:次の開催地はまだ決まっていないが、個人的には日本か中国でできればと思う。なぜなら日本や中国には多くのファンがいるし、食べ物も美味しい(笑)。以前日本で開催したPacific Rumbleも多く方に楽しんでいただくことができて、他の地域からもPacific Rumbleをやりたいという手が挙がっている。まだ日本ではAPAC FINALは開催できていないが、日本は好きだし、将来的にGFを日本でできればと考えている。

――そのGFは今年、モスクワでの開催となるが、その理由は?

Fadl氏:これまで正式なGFはすべてポーランドで開催されていて、モスクワでの開催は初めてとなる。ロシアには最大規模のコミュニティがある。彼らから以前から世界一決定戦はロシアでやってほしいという強い要望があった。今回ようやくロシアで初のGFを提供できることになった。

――初のロシアGFはどのようなイベントになるか?

Fadl氏:Wargaming.netが手がけるイベントとして間違いなく史上最大のイベントになる。少なくとも昨年の倍、延べ3万人入れる会場を用意しているところだ。オンライン配信の視聴時間が非常に長く、視聴者は平均2時間見ている。数字からもロシアは突出して人気が高いので、実際にGFを開催したらどれだけのお客さんが来るのか非常に楽しみにしている。

――今年のGFのワイルドカードの選定理由

Fadl氏:選定においては基本ルールが2つあって、1つは開催地に1つ与える。もう1つは、全地域を対象に、もっともユニーク、あるいは才能溢れたチームに渡すことになっている。今年はChallenger Rumbleのチャンピオンチームにも与えられるため、全部は3つのワイルドカードが存在する。

――新バージョンにおけるTier Xの軽戦車や自走砲の仕様変更がWGLに与えるインパクトはどのようなものになるか?

Fadl氏:影響は大きいと思う。プロは最新の情報は敏感で、既にテストを行なっているチームもある。来シーズンから、大きな戦術の変更が来る。早いチームは新バージョンを想定した訓練もスタートしている。我々としても大きな変更点があれば、事前に連絡して、触れる環境を用意しているので、来シーズンでは最初から大きく違う戦闘が見られると思う。

【Update 9.18 Common Test Review - World of Tanks PC】

――来シーズンでということだが、GFでは新ルールは適用されないのか?

Fadl氏:まだアップデート時期については未発表なので、いつ変わるかはわからないが、GFの前に実装された場合は、Tier Xの軽戦車や自走砲を採用するチームは多いと思う。まだ言えないことが多いが、プロチームはアップデートに向けて訓練を始めている。

――新バージョンが採用された後のWGLのTierポイントは、68のままか? それとも軽戦車のTier X採用に合わせて70になるのか?

Fadl氏:(笑)。まさに今そのことについてディスカッションしているところだ。これから2週間以内に結論を出すつもりだったので、今その質問が出て驚いたよ。個人的には70のほうがいいと思っているが、68がいいという意見もあるため、どちらがバランスが取れるかを考えた上で2週間掛けて話し合っていきたい。

――WGLをコンソールやモバイルにも広げる予定は?

Fadl氏:予定はある。F2Pタイトルは寿命がないので、今後も引き続き成長させていきたいと考えている。トーナメント、オブザーバーモードが揃っているのがWoT Blitzなので、順番で言えばBlitz、WoWS、Tanks Consoleの順番で大会の準備を整えていきたいと考えている。

――コンソール版はユーザーの多い日本がかなり強いのではないかと思うが?

Fadl氏:コンソールでeスポーツを始めるとすればぜひ日本から始めたいと考えている。理由はコンソールプレーヤーは行儀や態度が悪い人がとても多いが、日本は礼儀正しいユーザーが多いので、eスポーツのイメージもあるので大事に育てていきたいと考えている。

――WGLの最終的なゴール、個人の野望は?

Fadl氏:WGL全体として、常にプレーヤーが求めているものを提供していきたい。今のところ競い合いたいというニーズが一番多いため、それに応えていきたい。また、プレーヤーはプレイするだけでなく、観戦するのが好きな人も多いので、個人的には、ハリウッドムービーやスポーツ観戦に続く、新しいエンターテインメントとして確立させたい。多くの人はテレビ、スポーツを見ているが、それを塗り替えて、インターネットでeスポーツを見てるような、そんな世界を作っていきたい。

――そのための中長期的な具体的な施策は?

Fadl氏:ロングスパンで考えていることは色々ある。こういう場合、大きな夢を見るか、まったく夢を見ずに現実だけを見てやるかだと思うが、私としては大きな夢を見たい。たとえば、プレーヤーが参加したり見てるだけで無く、視聴者も参加できるようなコンテンツにしていきたい。視聴している方が実際に投票したり、コンテンツに対して何かアクションを起こせるような、一緒に体験しているようなコンテンツにしていきたい。ちなみに、今は簡単に説明したが、実は68ページの企画書が先週完成したばかりで、時間があれば数日掛けて説明したいところだ(笑)。

Head of Global Competitive Gaming APACのJini Jun氏
お馴染みWargaming.net Leagueのページ
APACのページはとにかく更新が遅い。今回のAPAC FINALも初日の準決勝の結果が2日経っても更新されていない
APACのランキング(例によってAPAC FINALが終わったにも関わらず結果が反映されていないが)。韓国はアジア最多の12チーム中4チームもいたのに、シーズン2のAPAC FINALもGFも出場無しという結果となった

――WGLのサイト運営について聞きたい。WGLは「World of Tanks」の競技者人口を増やすことを目的に、ゴールドリーグを頂点に、ブロンズリーグ、シルバーリーグが存在するが、正直、ゴールドリーグ以外の情報がどこで見られるかがよくわからない。どこが参加していて勝敗がどうなっているのかすらよくわからない状態だが、改善するつもりはないのか?

Jini Jun氏:WGLのページについては、ゴールドシリーズのみを取り上げている。その理由はブロンズ、シルバーは、セミプロ、アマチュアが参加しているので、あえて敷居が高く見せないように別にしていて、「World of Tanks」の公式サイトと統合させようと思っている。シルバー、ブロンズは確認するのが難しいのは理解しているが、今後より参加しやすくなるように調整しているところだ。

――WGLがとても好きで、毎週見てるが、APACページの更新がいつも遅いのが気になっている。試合後1日経っても更新されないような更新の遅延や、対戦カードやスコアの間違いがとても多い。シーズンオフの対戦カードもすべて間違えていたし、WGLの1ファンとしてeスポーツとしての盛り上がりに水を差すような現在の運営状況はとても残念だ。私のような視聴者のみならず、出場している選手も気にしている人が多い。この件についてAPACの代表としてどのように考えているのか?

Jun氏:現時点で言えるのは、APACのパートナーが変わったこともあって、パートナーが管理していた部分もあり、エラーが良く起きてるのは、新しいパートナーが更新に慣れていないという部分も大きいと考えている。ただ、問題は把握しており、可能な限り改善しようとしている。来シーズンでは、そういったエラーは減るのではないかと考えている。原因のひとつとしては、APACは様々な国が関わり、言語が多い。英語、中国語、日本語、韓国語、フィリピン、ベトナムなどもあり、間違いが起きやすい事もあると思う。

Fadl氏:私からも謝罪させて頂きたいが、本来こういったことは可能な限り起きるべきではない、お見せしたくない部分だが、実際に起きてしまっているので大変申し訳ないと思っている。現在、運営チームがパートナーとやりとりを増やし、改善しているので、ご辛抱頂けたらなと思う。

――韓国の「WoT」コミュニティに何が起こっているのかが知りたい。GF出場経験もあるGOLD BASSは序盤から低迷し、MELTDOWNは途中棄権、DarkWolvesも7位に終わった。eスポーツ大国である韓国の「WoT」コミュニティの復活はないのか?

Jun氏:まず、韓国チームは必ず復活する。今なぜこのような状態になっているのかというとWGLも長年やっていて、プロと言えるのはEL Gamingだけで、彼らはそれだけで生活できるし、ゲームに集中できる環境が整えられているが、それ以外のチームは、韓国以外のチームもそうだが、セミプロ、アマチュアのチーム。大学に入って「World of Tanks」にハマり、4年掛けてWGLに参戦するが、その後に就職したりすると、生活の一環として続けられなくなる。その結果、チームが解散したり、メンバーが抜けたりしてしまっている。それが今シーズンの韓国チームに当てはまってしまい、こういう事態になってしまっている。

――社会人になると思うように練習に時間が割けなくなるというeスポーツの普遍的な課題についてWargamingとしてどのように解決しようと思っているのか?

Fadl氏:その問題の解決は、我々にとって究極のゴールのひとつだ。多くの人にとってeスポーツは趣味であり、プロといってもすべてをプロ生活に捧げているわけではなく、プロの中にもアルバイト感覚の選手もいる。これは時間がたてばたつほど、eスポーツが成長して大きくなることで、スポンサーがついたり、世間の認識が変わったりすると思うので、今後の成長次第だと思っている。我々としてもそういった部分を支援するシステムを作ってサポートしたい。実は、そのサポートの構築がGFの発表の一部だ。