インタビュー

「ダンガンロンパV3」クリエイター&声優インタビュー

小高氏が「嘘」システムの導入経緯や、エンディングへの想いについて改めて語る

【Taipei Game Show 2017】

1月19日~1月24日開催

会場:台北世貿一館

 日本のみならず台湾をはじめとしたアジア圏で人気を集めている「ダンガンロンパ」シリーズ。アジア圏でも「ダンガンロンパ Another Episode」より待望のローカライズ展開がスタートし、Taipei Game Show 2017では、シリーズ最新作となる「ダンガンロンパV3」のみならず、リバイバルとなる「ダンガンロンパ1・2 Reload」の中文化も発表され、場内は大いに沸いていた。本稿ではステージイベント(参考記事)の後に行なわれたメディアインタビューの模様をお届けしたい。メディアインタビューに参加していて感じたのは、台湾メディアの関心の高さで、ゲームのみならずアニメも含めて「ダンガンロンパ」のことを知り尽くしており、その上で鋭い質問を次々にぶつけていたのが印象的だった。

小高氏「僕らの仕事は、現実に存在しないことを作ること」

大盛り上がりだったステージイベント
モノクマはこのイベント用にTARAKOさんのボイスが収録されていた
クイズ大会の賞品は「おしおきT」。このセンスも、これを欲しがるファンの濃さも凄い
メディアインタビューに応じるシリーズプロデューサーの寺澤善徳氏(中央)、企画・シナリオ担当の小高和剛氏(左)、声優の井上喜久子さん(右)
喋るたびに会場を沸かせた井上さん。17歳ネタは世界共通で大ウケである

――アニメ版はまだ物語がまだ終わっていないという印象を受けていますが、それなのに「ダンガンロンパV3」は新しい舞台にしたのは何か理由がありますか?

小高氏: 僕としてはアニメは終わらせたつもりです(笑)。物語をデザインしているときに気をつけているのは、物語の終わりがすべての終わりではなくて、そこからユーザーさんが考えたり、そこから世界を広げていくようなところも含めてデザインしている。あとはユーザーさんたちがみんなで考えて物語を作っていっていただければと。

――「ダンガンロンパ」シリーズは、これまで日本語版以外に中国語版と英語版を出しているが、ダジャレの翻訳についてはどのようにしているのですか?

小高氏:  それはですね、僕は英語も中国語もできないので完全におまかせしています。結果的にユーザーさんは喜んでいただいているので、原作以上におもしろいギャグになっているのだと思います。ギャグは書いている時は楽しいが、後で見返すとちょっと恥ずかしいこともありますね(笑)。

――「ダンガンロンパV3」の学級裁判で、新しいシステムが入っているが、それらについてどう考えているか?

小高氏: まず、学級裁判のノンストップ議論がこのゲームの一番の醍醐味だと思っています。「ダンガンロンパ」の1と2を作っていたときに、ハードがPSPだったのでやれることが限られていました。今回PS VitaとPS4で開発することになったときに一番最初にパワーアップさせようと思ったのが一番の醍醐味であるノンストップ議論でした。色んな議論がありますが、基本やっていることはすべて同じです。その演出として見え方やちょっとした体験の仕方の部分で、色んなバリエーションを用意している。それらはすべて醍醐味のノンストップ議論を飽きさせないための工夫です。今回は声優さんの力も借りて、ノンストップ議論は早口で言ってもらったりしましたよね?

井上さん: そうでしたね(笑)。私たち声優も、セリフを収録するときに凄いスピード感と緊張感で自分自身震えました。のんびりしていると負けちゃうって思うんですね。何人もの中で勝つために凄い勢いで、もの凄い気合いでやらせていただきました。ほかのキャラクターの人たちも、みんな真剣勝負でセリフを言い合っていたと思います。

小高氏: 収録でも凄いこだわって、特に普段言い慣れないようなセリフがあるんですね。ジェラルミンケースとか、電子生徒手帳とか。こういう言い慣れないセリフを早口で言うのでだから大変だったかもしれません。でも、そのおかげで一番おもしろい学級裁判になりました。

――ゲーム内に「絶対絶望少女2」のポスターがありますが、これは続編の制作が決まったと言うことですか?

小高氏:  ああ、違いますね(笑)。いえ、ご想像にお任せします、ですね。いつかクラウドファンディングをやるかもしれないので(笑)。

――今回は“嘘”というシステムがあります。学級裁判で嘘をついてもエンディングには影響はないということですが、裏ルートに入ることもあるということです。裏ルートはどうやって入るのですか?

小高氏: まず、嘘を使うというのを決めた理由は、裁判官や警察などの確かなものがない世界での推理合戦を再現したかったためです。あの場では正しいことを言わなくても、相手を納得させられれば話が進むんですね。そういう嘘の駆け引きみないなものをシステムに盛り込みたいと考えて、嘘システムを入れました。

 その嘘をつくことでちょっとプレーヤーとしても背徳的な気持ちになってほしいなという想いもあります。エンディングとかには影響はないですが、嘘をつくと専用に収録したイベントになります。そこは正しく論破したときよりも、どっちかというと背徳的な気持ちにプレーヤーや主人公は感じると思います。どのノンストップ議論で嘘をつけるかというのは裏技というか法則があるんですね。ただ、それはプレイして気づいて貰いたいなと思います。

――「ダンガンロンパV3」のエンディングの内容について日本でも色々話題になっていますが、これから繁体中文版にあたって何かコメントはありますか?

小高氏: 僕らの仕事というのは、現実に存在しないものを作ることです。いわばそれは嘘をつく仕事です。そのウソが真実を変えることもあるというのが作品のテーマです。今、日本で起きている「ダンガンロンパV3」の論争も、そういうところなのかもしれません。そういういったいこの作品が何を生むのかというのを台湾の皆さんも楽しみに待ってていて欲しいなと思います。“楽しい”というのは気持ちいいだけではないと思うんですね。それも含めて人の心を揺さぶるゲームをお届けすることを常に目指していて、それは「ダンガンロンパ」が大きくなった今でも変わりません。

小高氏: (井上さんに)シナリオを読んだ印象はどうでした?

井上さん: とにかくおもしろくて、収録は何時間か掛けて喋るんですけど、ホントにクラクラきました。凄い凄いと思いながら収録しました。小高さんが作品のテーマとして「嘘が真実を変える」というのは良い言葉だと。私はよく17歳といってるんですけど(笑)、言い続けていると、なんでそんなに若いんですかって言われるんです(笑)。だから17歳と言い続けるアンチエイジング、“暗示エイジング”って、これ伝わらないかな(笑)。言い続けてると、こんなになっちゃったと、うまくまとまりませんが(笑)。

小高氏: 言霊って奴ですね。

井上さん: そう、そうですね。嘘が真実を変えるという表現はとっても深いなと思いました(笑)。

小高氏: まとまりましたね(笑)。