インタビュー

これはもうひとつの「Halo」だ! 「Halo Wars 2」デザインディレクターClay Jensen氏インタビュー

【Halo Wars 2】

2月23日発売予定

6,900円(税別、通常版)

 かつてはスペックの差、価格の差から、様々な点で大きな隔たりがあったコンソールゲームとPCゲーム。ご存じのように現在ではゲームコンソールの性能の向上により、ほぼ同じ環境で楽しめるようになり、多くのタイトルがコンソールとPCのマルチプラットフォーム展開を実現している。そうした中で、PCゲームだけで遊べるゲームジャンルの“最後の牙城”となっているのがリアルタイムストラテジー(RTS)だ。

 クォータービューの視点から、多数のユニットを操作し、大軍勢を持って相手を撃ち負かす。「シヴィライゼーション」や「大戦略」に代表される伝統的なターンベースのストラテジーに対して、リアルタイムでユニットを操作することからリアルタイムストラテジーと呼ばれる。1995年から2000年頃までに掛けてBlizzardの出世作となった「Warcraft」を皮切りに、「Age of Empires」(Ensemble Studios)、「Command & Conquer」(Westwood Studios)、「Starcraft」(Blizzard Entertainment)など数々の傑作が誕生し、一大ブームを巻き起こしたことはPCゲームファンにとってはもはや懐かしい想い出になっている。このRTS市場は、「League of Legends」や「DotA」に代表されるMOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)に完全に取って代わられている。

 そうした中で、現存する数少ないRTSシリーズのひとつが「Halo Wars」だ。初回作「Halo Wars」は、“ゲームコンソール向け”のRTSとしてXbox 360専用タイトルとして2009年にリリースされ、実に7年振りの新作となる。今回はXbox Play AnywhereタイトルとしてXbox OneおよびWindows 10両展開となり、開発元は「Halo」シリーズの開発総指揮をとる343 Industriesと、RTS専業のデベロッパーCreative AssemblyというRTSファンにとってはベストな組み合わせとなる。

 今回は、プレビューイベントに合わせて香港を訪れた343 Industries「Halo Wars 2」デザインディレクターのClay Jensen氏にインタビューする機会に恵まれた。時間が限られていたため、すべてを聞くことはできなかったが、「Halo」シリーズの新たな担い手である343 Industriesが、RTSシリーズ「Halo Wars」についてどのように考えているのかわかるインタビューになっているので、ぜひ「Halo」ファン、RTSファンは最後まで呼んでみて欲しい。

「Halo」フランチャイズにおける「Halo Wars 2」の立ち位置とは?

「Halo Wars 2」プレビューイベントで説明を行なう「Halo Wars 2」デザインディレクターのClay Jensen氏
会場に置かれたマスターチーフ。「Halo Wars 2」には登場しないが「Halo」シリーズのシンボルとして置かれていた

――「Halo Wars 2」のメインテーマは何か?

Clay Jensen氏: テーマ! 素晴らしい質問だね。私が考えるこのゲームのメインテーマは、「Halo」であることだ。物語は「Halo Wars」に登場したUNSC艦「スピリットオブファイア」が奇妙な状況下で、古代種族フォアランナーによって建造された「アーク」を発見するところから始まり、中に侵入してみると未知の新種族が支配していた……というのが基本的なバックグラウンドストーリーになっている。「スピリットオブファイア」の乗組員たちは、このアークに対して厳しい状況化でベストを尽くし、難局を乗り越えようとしていく。

 「Halo」シリーズのストーリーは、マスターチーフによって築かれてきたもので、長い間の彼の勇気や決断力、仲間とのパートナーシップなどが描かれている。 それと同じように「Halo Wars 2」も、アークを発見した「スピリットオブファイア」 がたった一艦で、限られた人員で、脅威に立ち向かい、守って行かなければならない。そういった「Halo」ならではのストーリーに注目して欲しい。

――「Halo Wars 2」のメインストーリーの魅力についてもう少し教えて欲しい。

Jensen氏: 「スピリットオブファイア」は「Halo Wars」の戦いを終えた後、機能を停止し、コールドスリープ状態となり、「Halo Wars」の物語から28年後に目覚める。発見したアークは、ATRIOXという未知の種族が支配しており、プレーヤーはこのアークに潜入し、様々なミッションをこなしていくことになる。

――時代設定的には、「Halo 5」の後ということだが、「Halo Wars 2」のストーリーは、「Halo 6」に繋がるものと考えて良いのか?

Jensen氏: 確かに「Halo 5」の後のストーリーだが、「Halo 5」とは直接はリンクせず、パラレルストーリーになっている。現時点で言えるのはこれぐらいだが、クリエイターとして嬉しく感じるのは、「Halo Wars 2」が「Halo」ストーリーの中核的な存在になれたことだ。「Halo Wars」の時は、「Halo」シリーズ以前の物語でまったく絡みがなかったが、今回は「Halo 5」に続くもっとも新たな物語として描かれる。未来のタイトル(編注:「Halo 6」のこと)については何も言えないが、「Halo Wars 2」が今後の開発に様々な影響を与える可能性はあるし、「Halo」シリーズと共に成長していくような関係性になれるように、細心の注意を払いながら開発を進めているんだ。

――その濃厚なストーリーが楽しめるキャンペーンモードのボリュームは?

Jensen氏: 全部で12ミッションで構成されていて、キャンペーンだけでひととおりプレイするのに10時間以上は掛かるだろう。「Halo Wars」をはじめてプレイする人、RTSになれていない人はもう少し掛かるかもしれない。それぞれのミッションは、深みがあり、魅力的なストーリーラインになっている。プレーヤーは先に先に進めていきたいと思うはずだ。これ以上は話せないが、本当はエピックストーリーについて語りたいことが一杯ある(笑)。

【カットシーン】

Xbox One版
Windows 10版

――「Halo Wars 2」の1番大きな魅力は何だと考えているか?

Jensen氏: 簡単だ。それは真の意味でのRTS、それもすべてのゲームファンに向けたRTSになっているということだ。我々はずっとRTSを開発してきているのでRTSファンを満足させるゲームを作るのは比較的得意だが、すべてのゲームファンに向けたRTSを開発するのは簡単ではない。今回、すべてのゲームファンにアピールできるRTSが作れたことをとても嬉しく思っている。コントローラーで誰でも簡単に部隊が操作できる。未体験の子供でも5分も遊べば操作方法を習得できるはずだ。既存のRTSファンにも、新規で遊ぶゲーマーにも高い満足度を与えられる未だかつてないRTSタイトルが生み出せたのではないかと誇りに思っている。

――「Halo Wars 2」は、Xbox One版に加えて、PC版も用意されているが、なぜPCにも展開することになったのか?

Jensen氏: そのほうがより多くのゲームファンに届けられると思ったからだ。だから、手始めに「Halo Wars 2」の特典として用意した「Halo Wars Definitive Edition」をXbox Oneのみならず、PCにも対応させている。Windows 10は、RTSをプレイするのには完璧な環境だと思っているし、もともとRTSはPCゲームとして生まれたものだ。当然PCにはRTSの上級者もいるし、そういったファン達にもキーボードとマウスで操作できる伝統的なRTSとして「Halo Wars 2」を届けたいと思ったんだ。

 もちろん、「Halo Wars」の続編として“コンソールで遊べるRTS”という側面も大事だ。いかにコンソールでコントローラーだけで快適にRTSを遊んで貰うかというチャレンジにも取り組んでいる。それについてはとてもいい仕事ができたと思っているよ。ちなみにPCでもコントローラーで遊ぶこともできるので、好きな操作方法を選んでゲームを楽しむことができる。

――Xbox OneとPCでクロスプラットフォームプレイは可能なのか?

Jensen氏: それはできない。そのことについては我々もゲームバランスに注意を払っていて対応しないことに決めた。将来的には次のタイトルでは可能になるかもしれない。

――Xbox One版とPC版の仕様の違いを教えて欲しい。

Jensen氏: まず、ゲーム体験に関してはほぼ同じだ。Xbox Play Anywhereに対応しており、セーブデータも共有できる。その上でPC版についてはいくつか特殊な仕様になっていて、操作についてはマウスとキーボードでのプレイが可能になっている。

――Xbox One版ではマウスとキーボードで遊べないのか?

Jensen氏: リリース時点ではできないが、将来的にはアップデートで対応するつもりだ。

――グラフィックスについては、4K解像度やHDRグラフィックスに対応するのか?

Jensen氏: HDRには対応していないが、PC版については4Kに対応しており、リッチなグラフィックスでゲームを楽しめるよ。 数日前に4Kモニターでテストプレイしてみたが、とても良かった。

――「Halo Wars 2」には、デスマッチやBlitzなど複数のマルチプレイモードを搭載しているが、e-Sportsや世界大会についてはどのように考えているか?

Jensen氏: 「Halo」フランチャイズは伝統的にe-Sports活動を重視しており、「Halo Wars 2」もその例外ではない。ただ、「Halo Wars 2」のe-Sports展開は、「Halo Wars」シリーズとして初めての試みとなるので、まずはコミュニティの意見を十分に聞いてどういった形がベストなのかを十分検討してからにしたい。個人的な意見としてはBlitzはe-Sportsに最適なモードで、とても短時間で完結して、なおかつ観戦していて非常に楽しいモードだと思う。その一方で、伝統的な対戦モードであるデスマッチモードも、根強い人気を持っている。

デッキを組んで戦う「Blitz」
これがカード化されたユニットやインスタント
デッキ編成画面
カードの説明画面

――今回、そのBlitzを初めてプレイする機会に恵まれたがとても楽しめた。Blitzのコンセプトを改めて教えて欲しい。

Jensen氏: シンプルだ。伝統的な対戦モードであるデスマッチモードから、アクションにフォーカスし、カードの要素を取り入れて、よりエキサイティングな対戦を楽しめるようにしたものだ。これまで45分ぐらい掛かっていたデスマッチの対戦を、戦術性、戦略性はそのままに、わずか5分にギュギュッと凝縮して誰でもRTSの対戦が楽しめるようにしている。初心者でも、リソースのマネジメントや、建物の建設などを考慮せずに、純粋にユニットの操作だけに集中することができる。使用するユニットはあらかじめカードをデッキに組み込んでおいて、自動的に貯まっていくリソースを消費して呼び出していく。とてもシンプルでエキサイティングなモードだ。

――ユニットをカード化してデッキを編成するというところもユニークだが、カードはどうやって集めるのか?

Jensen氏: カードパックという形で提供される。これはBlitzをプレイしたり、デイリーやウィークリーのミッションをクリアすることで手に入る。シングルプレイキャンペーンをプレイする事でも手に入る。もし、もっと素早く大量にカードを手に入れたいという場合は、ストアでカードパックを購入することもできる。カードには、コモン、レア、レジェンダリーという風にレアリティが設定されており、運が良ければレアリティの高いカードを手に入れ、デッキに組み入れることで戦いを有利に進められるだろう。カードパック自体はゲームをプレイしていれば手に入るので、Blitzは無料で楽しむことができる。

――ストアで購入するカードパックは1パックいくらなのか?

Jensen氏: それはわからない。日本マイクロソフトから追って発表があると思う。

――ゲームクリエイターのひとりとしてProject Scorpioについてどのような期待を持っているか?

Jensen氏: 今のところ私にはまったく接点がないんだが(笑)、個人的な意見としては、まずは直接見てみたい(笑)。それはともかく我々ゲームクリエイターは、ユーザーに更なるリッチなゲーム体験を提供するために、常にマシンパワーとビジュアルクオリティを求めている。クリエイターの1人として非常に楽しみにしていることは間違いないよ。

――「Halo Wars 2」は、Project Scorpioでは4Kでプレイできると考えて良いのか?

Jensen氏: それはわからない。現時点では何もコメントできないよ。

――日本のゲームファンにメッセージを。

Jensen氏: まず、日本のゲームファンに「Halo Wars 2」をお届けできることをとても光栄に思っている。この新たな「Halo」体験は、日本のXboxファンのみならず、プレイステーションファンにもぜひプレイして貰いたいと思っている。特にストーリーは魅力のひとつで、「Halo」ファンはもちろんのこと、これまで「Halo」を知らなかった人も、このゲームをきっかけに「Halo」の世界にジャンプインしてみて欲しい。「Halo」の世界観はゲームだけに留まらず、映画、コミック、小説とあらゆる分野に広がっているので、それらも合わせてぜひこの壮大で素晴らしいアドベンチャーを楽しんで欲しい。

――ありがとうございました。