インタビュー
「マフィア III」、エグゼクティブ・プロデューサーインタビュー
時代を描く冷徹な視点、選択によってゲーム性も大きく変化
2016年9月13日 00:54
2Kでの2016年の最大の注目作がこの「マフィア III」だ。10月27日の発売に先がけ、東京ゲームショウでは2Kブースにて本作が出展される。「マフィア III」は時代を鋭く描く「マフィア」シリーズの最新作であり、自身の“ファミリー”を奪われた、リンカーンの復讐を描く。
今回は本作の体験会と、2Kで本作のエグゼクティブ・プロデューサーを務めるデンビー・グレイス氏にインタビューを行なった。ゲームのファーストインプレッションは後日掲載予定で、まず、グレイス氏へのインタビューを掲載したい。
「マフィア III」はシリーズを受け継ぐ「時代への鋭い視点」があり、そしてマフィアという犯罪組織の狂気を描き出す、決して「マフィアへの賛美」になっていないところに面白さがある。どうしてこのようなシリーズが生まれたのか、そして「マフィア III」では、どのようなストーリー、システムが盛り込まれるのか、気になる部分を質問してみた。
当時の風景、流行歌、価値観、そして“差別”まで、全てを再現
――まず最初にどうしても開発の方に「『マフィア III』を作って下さってありがとう」ということを言わせてください。私はこれまでのシリーズが大好きで、特に「時代をきちんと描く」というところに感銘を受けています。この時代をテーマにするようなゲームを作り続けているのは、どうしてなんでしょうか。
グレイス氏: そんなに喜んでくれるのはありがたいね(笑)。時間、時代のポイントを描写する、そのことは「マフィア」シリーズの大きな特徴です。その時代の風俗、考え方、人々の生き方を描くのはシリーズの大きな柱となっています。「その時代にプレーヤーを連れて行く」というのがゲーム作りの情熱に繋がっているのです。
そして時代だけでなく、「マフィア」という犯罪組織をテーマを選んだのは、映画や小説など、様々なメディアで描かれる、ディープなモチーフであり、興味深い題材だからです。我々はまず15年前に「マフィア」を作り、そして受け入れられたことで、2k内でも「マフィア」というゲームのファンが生まれた。そして「II」、「III」と、時代と、テーマへの掘り下げはさらに深くなったと思っています。
――特に今作は“人種差別”というテーマに踏み込んでいますね。警官仲間の白人から侮蔑的な言葉を投げられたり、ホテルで露骨に露骨に避けられたり、主人公はハーフではありますが、アフリカ系アメリカ人があの時代直面していた差別を描いている。この描写はかなり挑戦的だと感じました。
グレイス氏: そこもやはり「時代の描写」の部分です。あの時代に合った差別、人々が持っていた価値観、そして皮膚感を表現することでよりリアリティのある時代の描写に挑戦しています。
我々は「シネマティックリアリズム」と呼んでいますが、当時の人々が使っていた言葉、直面していた暴力、事件や時代、その当時のことを再現しているのです。1960年代の南部アメリカはどんな場所だったかということを、本当に多角的、多面的に再現しようとすることで、これらの描写が「これは本当にあったことなんだ」とプレーヤー達に感じてもらいたいのです。
もちろん、社会問題だけでなく、当時の人が普通に効いていた音楽、着ていた服、乗っていた車……そういったディテール表現を積み重ねていくことで、当時の世界を再現しているんです。
――グレイスさんはこの時代を調べていく中で、個人的にどんな時代だという感想を持たれましたか?
グレイス氏: 1960年代というのは、様々な象徴が生まれた時代であり、特に1968年というのは特別な年です。社会運動、人権運動の勢いがすごく、キング牧師の暗殺事件、ケネディ大統領の暗殺事件も起きている。ベトナム戦争の兵士の帰還に伴い、戦争の悲惨さが明らかになり、社会に強い衝撃をもたらしたのもこの頃だ。
もちろん明るい話題もある。ビートルズ、ローリングストーンズ、ジミー・ヘンドリックスなど伝説的なアーティストが活躍した時代であり、その後の音楽に強い影響を与えました。1960年代、そして1968年という年は、アメリカのみならず世界でも大きな意味の持つ年です。そして1969年には、アームストロング船長が月に降り立つ。私自身、この時代と、1968年という年には特別なものを感じてます。
3人の幹部との関係が鍵。ストーリーだけでなく、能力やゲーム性も変化
――ずっとこの時代の話をしていたいんですが、話題を変え、ゲームシステムの話をします。これまでのシリーズはかなりストーリードリブンの傾向が強かったですが、今回は広大なマップ、様々なミッションを自分で選択していくという、“自由度”を持たせたゲームという印象を受けました。
グレイス氏: 自由度は今回プレーヤーに特にチェックして欲しい要素です。私達は「マフィア」シリーズでは特にストーリーに注力してきました。しかし今作では、ストーリーと同じくらいエネルギーをかけて、自由度のあるゲーム性を実現しています。
今回は、ある程度まで進めると、プレーヤーは広大な地域を攻略できます。どう進んでも、どこを攻めるのもOKで、どの幹部にどこを任せるかもプレーヤーが選べます。逆らう幹部を粛正することすらできる。それはプレーヤー自身にリンカーンの物語を組み立てて欲しいからです。プレーヤーの性格が、ゲームの展開、そしてストーリーに表現できるようになっています。
「オープンワールドで自分を表現する」というのが、「マフィア III」のテーマの1つでもあります。これまで同様ストーリーは重視しています、それは変わらないのですが、ユーザーによって異なるリンカーンの生き様というものにチャレンジしたかったんです。
――リンカーンは敵の勢力を切り取ることで大きな資金を得ることができます。プレーヤーの選択でリンカーンは豪華な生活を楽しみ、復讐を忘れてしまう、というようなことがあるのでしょうか。
グレイス氏: 「マフィア III」では、リンカーンの目的そのものが復讐に固定されています。彼が得られた資金は、より強力な武器や、装備、能力など、復讐のために使われます。報酬は得るものではなく、イタリアンマフィアから奪うものであり、お金は各地域への“投資”に使われ、復讐の戦力となっていくのです。
プレーヤー自身の楽しみ方としては車のアップグレードがあります。より強力でカッコイイ車を作り、レースに参加したりもできます。また、リンカーンの服装などをカスタマイズすることも可能です。リンカーンの能力そのものもアップグレード可能です。
今回はオープンワールドの要素が強調され、リンカーンができることが多くなっていますが、「リンカーンの復讐」こそがメインのストーリーです。様々な楽しさ、やり込み要素、3幹部との関係と地域の支配、カスタマイズ要素、サブミッションなど多彩な要素を盛り込んでいますが、それらはストーリーへと帰結していくのです。プレーヤーのゲームの進め方で、彼が自分の富のみを追い求めるようなことはありません。
ミッションによっては大きなトラックを運転したり、ド派手な破壊など、通常のプレイとは異なるユニークなシチュエーションや、爽快感のある場面もありますが、基本的にはダークな物語が展開していきます。
――今作もやはり「マフィアであることの不幸」は描かれるのですね。「マフィア」シリーズは犯罪組織の賛美になることがなく、彼らの異常さ、狂気をきちんと描いているのが素晴らしいと思います。プレーヤーがマフィアとして活躍するゲームなのに、「マフィアなんてなるものじゃない」と思い知らされるストーリー展開は、ホントにグッと来ます。
グレイス氏: 「ゴッドファーザー」や「グッドフェローズ」は、「マフィアも素晴らしい」とロマンチックに描いている部分があるが、「マフィア」シリーズは違います。とはいえ、「マフィア II」は多少そういう部分はあったのだが、「マフィア III」は犯罪組織の狂気を描き出している。ハードボイルドな手法で、マフィアの実像に迫っていると思う。
そして「マフィア III」は1960年代の“組織犯罪の変化”も描いています。従来のイタリアンマフィアだけでなく、アフリカ系アメリカ人、キューバ系、コロンビア人のグループなど様々な犯罪組織が台頭してきます。これらもストーリーに盛り込まれているので、注目して貰いたいですね。
――「マフィア III」では3人の幹部が登場し、彼らに奪ったシマを任せていきます。しかしすでに幹部を殺してしまう、という要素も提示されています。彼らを途中で殺してしまうと、ストーリーは大きく変わるのでしょうか。そうなると、実は「マフィア III」は幹部達との関係で、ゲームのストーリーが大きく変わる、何度も楽しめるゲームということでしょうか。
グレイス氏: その通りです、ストーリー展開、ゲーム性も大きく変わってきます。幹部達は仲間ではあるけれども、それぞれ独立した自分たちの目標を持っています。そしてリンカーンからの報酬に対し、時には怒り、離反を決意することもあります。
幹部により大きなシマを任せることで、リンカーンの装弾数が増えたり、強力な武器を使える様になったり、リンカーンの戦闘能力も変わる。そして1人に注力しすぎると他の2人が不満を感じてしまう。彼らをどう扱うかはゲームの大きな要素です。彼らから与えられる恩恵、彼らへ与える報酬は、常に考えていくところです。
――それでは最後に、ファンへのメッセージをお願いします。
グレイス氏: とにかく皆さんにプレイしていただきたいです。作っていて本当に楽しいゲームでしたし、皆さんにリリースできるかと、とてもワクワクしています。そして忌憚のない意見をお寄せください。まずやはり触って欲しいですね、よろしくお願いします。
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