ふと気がつくと、8月もそろそろ下旬。お盆休みが終わり、甲子園の決勝戦が過ぎると、なんだかちょっと寂しい気分になる。子供の頃は、この時期が1年で一番嫌いだった。夏休みも残り1週間しかないというのに、宿題はまだ山積みのまま。「このまま、あと1カ月ぐらい休みが続けばいいのに」なんてせつない思いをしながら、ドリルを開くのが苦痛だった。社会人になってうれしいことがあるとすれば、そのひとつが、夏休みの宿題がなくなったこと。もっとも、その前に「夏休み」そのものが無くなってしまったような気もするけれど……。
さて、今回は「ニッポンらしい夏」をテーマに、妖怪ネタで2作品を選んでみた。こちらGAME Watchでは、水木しげる氏描きおろしの花札で楽しむ「妖怪花あそび」を。窓の杜では、横スクロール型の妖怪アクション「退魔心経」を楽しんでみよう。
【第4回】
水木しげるワールドで楽しむ、怪しくも華麗な花札ゲーム
妖怪花あそび
水木しげる氏描き下ろしの妖怪カードで愉しむ花札ゲーム
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勝負開始。これは「こいこい」。揃えた役の大きさで競う |
「妖怪花あそび」は、花札シミュレータだ。しかし、ただの花札ではない。カードのデザインをしたのは、『ゲゲゲの鬼太郎(墓場の鬼太郎)』や『河童の三平』で知られる、漫画家の水木しげる氏。'99年に水木氏の漫画家活動50周年(!)を記念してやのまんが販売した花札ボックス「妖怪花あそび」を、そっくりそのままPCゲームにしたのがこの作品だ。ちなみにやのまんからは、さらに別のデザインで描きおろされた新作「妖怪花あそび2」も発売されている。
実際にプレイしてみてつくづく実感したのだが、花札の持つ雰囲気は、たしかに、怪談の雰囲気に似ている。「あのよろし」や「みなしの」の短冊、「菊に盃」「桐に鳳凰」あたりは、そのままお化け屋敷の装飾に使えてしまいそうだ。「水木ワールドで花札を」という発想は必然というか、とても正しいことではないか? ……というか、「いまの日本で花札の絵柄を独自に描ける人は、水木氏をおいて他にはいるまい」と激しく思う。
まずは花札の基本から
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好みに合わせて細かくルールを設定することができる。「半ドン」は6回勝負 |
そんなわけで、デザインはオリジナルだが、プレイそのものはトラディッショナルな花札をベースにしている。花札には「こいこい」や「花合わせ」などいくつかのルールがあるが、全部をまとめてごく大雑把に説明すると、札の絵柄を合わせながら手元に“役”をつくり、最後にその合計点の高いほうが勝ちというもの。札にはそれぞれ、桜、梅、菊、牡丹など1~12月に割り当てられた12種類の花(植物)が描かれていて(だから花札と呼ばれるわけだね)、場に出ている札と手持ちの札、もしくは場に出ている札と山からめくった札の絵柄が合えば、自分の得点として晒すことができる。
また各札には特別な組み合わせ、つまり“役”があり、たとえば「桜に幕」と「菊に盃」が揃えば「花見酒」に。「萩に猪」「紅葉(もみじ)に鹿」「牡丹に蝶」の3枚が揃えば「猪鹿蝶(いのしかちょう)」という具合にボーナス点が追加される。つまり、自分は役を作りつつ、相手の役作りをできるだけ妨害するというのが、花札の基本的な戦略というわけだ。場に出ている札の中から、相手が欲しがりそうなものを先に取っていけばいい。
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8人のキャラの中からマイキャラと対戦相手を選ぶ。どのキャラもセリフが個性的 |
完成した役に応じて点数がやり取りされる |
規定の回数をプレイすると勝敗が決まる |
妖怪カードならではの楽しみ方がテンコ盛り!!
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3人対戦の「花あわせ」。札と役の点数で勝敗を決める |
「妖怪花あそび」で楽しめる花札は、「こいこい」「花合わせ」「はちはち」「妖怪花あわせ」「エロイムエッサイム」の5種類。このうち、妖怪花あわせとエロイムエッサイムは、水木版花札オリジナルゲームだ。それぞれのルールと楽しみ方は、こんな具合だ。
・こいこい
2人対戦。札そのものの点数は関係なく、できた役の点数で勝負が決まる。単純なルールだが、これが結構おもしろい。互いに役の潰しあいが始まると「あ、コイツ!!」「ちくしょう、取りやがったな!!」「させるかっ!!」みたいなセリフの応酬が始まる。ゲームデザイナーもそのあたりをよくわかってくれているようで、「妖怪花あそび」ではコンピュータキャラがいろいろなセリフで応えてくれるから、イジワルのしがいがある。
・花合わせ
3人対戦。札と役の点数の合計を競う。覚えなければならない役が多いが、とにかく絵柄の綺麗なもの、ハデなものを集めればオッケーだ。「妖怪花あそび」では出せる札、つまり役につながる札の上に赤い▼が表示されるので、全ての役を覚えていなくてもプレイできてしまうところがうれしい。
・はちはち
3人対戦。札と役の点数の合計を競う。「場」の種類、捨て札の制限、完成した役の無効化(役の吹き消し)などがあって、かなり難しい。最後の最後まで点数が大きく動く可能性があり、浮き沈みが激しいのもこのルールの特徴。「妖怪花あそび」は役の確定と点数計算を自動的に行なってくれるので、複雑なルールであるにもかかわらず、結構楽しめる。実は筆者は「はちはち」のルールを知らなかったのだが、このゲームをプレイしているうちに自然に覚えることができた。
・妖怪花合わせ
花合わせを、妖怪カードに合わせてアレンジしたもの。「ゲゲゲの鬼太郎」に登場したレギュラーキャラ(鬼太郎、妖怪絵師(水木しげる氏自身?)、ネズミ男、猫娘、子泣き爺、一反木綿、砂かけ婆、塗り壁)を8枚集めた「鬼太郎最強軍団」、「ぬらりひょん」「子泣き爺」「小豆洗い」を集めた「三爺」、「砂かけ婆」「舌長婆」「柳婆」を集めた「三婆」など、すごい役が用意されている。今回、筆者が一番楽しめたのがこれだ。
・エロイムエッサイム
こいこいを、妖怪カードに合わせてアレンジしたもの。こちらも「ろくろ首」「猫娘」「提灯お岩」「お歯黒べったり」の女妖怪4枚を集めた「ミス妖怪」や、「松の精霊」「岩魚坊主」「見上げ入道」「大入道」の坊主妖怪4枚を集めた「四坊主」など、水木しげるならではの役合わせが楽しめる。シンプルで覚えやすいし、妖怪カードの魅力も満喫できるので、花札初心者におススメしたい。
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「はちはち」。ルールは複雑だが、コンピュータが出せる札を教えてくれる |
「妖怪花あわせ」。「三婆」や「牛タン」など独自の役がおもしろい |
「エロイムエッサイム」。妖怪カードの魅力を手軽に楽しめる初心者向きのゲームだ |
古典的花札+水木ワールドの魅力
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妖怪カードではなく、通常のカードを使うこともできる |
なんといってもイケてるのが、札の色使いだ。最初はやたら派手に感じたが、札の1枚1枚を眺めているうちに、すっかりその味わい深さに魅入られてしまった。明るい朱色と黄色の使い方は、まさに水木しげる氏ならではの持ち味。水木ワールドの妖怪たちが、そっくりそのまま花札の世界に住み着いてしまった……という感じさえする。数ある札の中でもとくにいい味が出ているのが、牙をむき出した猫娘。「あのよろし」の短冊を手にした“ぬらりひょん”もいい。雨(柳)の1点札が、そのまま塗り壁になっているところも気に入っている。
花札をベースに、独自の役を持ち込んでいるところも楽しい。札を妖怪のデザインに変えることによって、オリジナルのルールが持つおもしろさを損なうことなく、新しい楽しみ方ができるというのは驚きだ。おもしろいゲームのアイデアというのはいろいろいなところにあるものだと、しみじみ思う。
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こんなユニークなカードでプレイ。猫娘やぬらりひょんのデザインが最高!! |
妖怪花札をそっくりそのままプリントアウト
「妖怪花あそび」は、今回紹介したWindows版のほかに、PS版も発売されている。どちらも基本的には同じものだ。しかしWindows版にはプラスアルファとして、いくつかの機能が追加されている。まずひとつは、花札のプリントアウト機能。Aサイズに4枚(各3サイズ)の花札をそのままプリントアウトするもので、カラープリンタを使えばそのまま妖怪花札を作ることができてしまう。PCだけでなく、テーブルゲームとしても楽しめてしまうというわけ。
もうひとつは、ネットワークを経由した対戦機能。アンバランスのホームページで公開されている専用の接続用ソフトを組み込めば、同社のロビーサーバーを無料で使うことができる。対戦機能そのものはDirectPlayを使っているので、IPさえ特定できればLANやインターネット経由で直接プレイすることも可能だ。
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通常のカードと妖怪カードを3種類のサイズでプリントアウトすることができる |
(C)水木プロ/やのまん (C)2001 UNBALANCE Corporation.
「妖怪花あそび」
- 発売元:アンバランス
- 価格:3,980円
- 対応OS:Windows 95/98/Me
- 発売日:8月3日(発売中)
- CPU:MMX Pentium 166MHz
- メモリ:32MB以上
- HDD:80MBバイト以上の空き容量
- CD-ROM:2倍速以上
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□アンバランスのホームページ
http://www.unbalance.co.jp/
□やのまんのホームページ
http://www.yanoman.co.jp/
□「妖怪花あそび」のページ
http://www.unbalance.co.jp/products/for_win/youkai/index.html
□関連情報
【5月8日】アンバランス、水木しげるデザインの花札ゲーム「妖怪花あそび」を8月9日に発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010508/youkai.htm
(2001年8月24日)
[Reported by 駒沢 丈治]
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