トピック

クルマのプロがレースゲームを斬る! ――その5「GRAVEL」

カメラマン高橋 学氏「普通なら撮れない角度で写真を撮れるのがいいですね」

4月19日 発売予定

価格:
パッケージ版 7,980円(税別)
ダウンロード版 7,980円(税込)
プレイ人数:1人(オフライン)、2~8人(オンライン)

CEROレーティング:A(全年齢)

 クルマのプロにレースゲームをプレイしてもらい、そのインプレッションをお届けする企画の第5回は、オーイズミ・アミュージオから4月19日に発売されるプレイステーション 4用レースゲーム「GRAVEL(グラベル)」だ。

 「GRAVEL」はオフロードを駆け抜けるレーシングゲーム。先日紹介した「WRC7」と同じようにラリーを題材としたゲームだが、「WRC7」と異なるのは、プレーヤーは「GRAVELチャンネル」という架空のテレビ番組に出演して、番組が紹介する名レーサーたちと勝負すること。コースも世界各地に実在する地域を模したものとなっており、本格的なオフロード体験が可能だ。

 またもう1つの特徴としては、プレイ後に流れるリプレイ映像から任意の場所を切り取って、構図などを変えてスクリーンショットが撮影できる。もちろん車種も日本やヨーロッパのものが多数収録されているので、ラリーファンであればプレイしてみたくなるソフトだ。

 今回のテストプレイでは、数々のラリーに赴き、爆走するマシンを撮影してきたカメラマンである高橋学さんに体験していただいた。最近ゲームをしていないという高橋さんだが、走行後のリプレイで構図や露出などを調整しながらお気に入りの写真が撮影できるモードには、かなりのこだわりを持って挑んでいただいた。その様子をお伝えしていこう。

カメラマンの高橋学さん

【プロフィール】

高橋 学

 1966年 北海道生まれ。下積み時代は毎日毎日スタジオにこもり商品撮影のカメラアシスタントとして過ごすも、独立後はなぜか太陽の下で軽自動車からレーシングカーまでさまざまな自動車の撮影三昧。下町の裏路地からサーキット、はたまたジャングルまでいろいろなシーンで活躍する自動車の魅力的な姿を紹介している。

【高橋 学 氏の作品】
レースでの躍動感がビシバシと伝わってくる
【【PS4】GRAVEL(グラベル)トレーラー】

まずはゲームに慣れるためいろいろなコースを試走

 とりあえず、ゲームに慣れてもらうためにプレイをしてもらった。「実際のラリーだと路面が砂や土で車の動きがかなり違うのですが、このゲームだと見た目のデザインの違いほど、挙動が大きく変わらない印象です」。ステアリングコントローラーではなく普通のPS4用コントローラー「DUALSHOCK 4」でのプレイのため、若干やりづらそうだ。

 そのため時にはコースアウトしてしまう場面も。国内ラリーやWRCなどでは、事前の下見(レッキ)を行い安全を十分に確認しながら撮影を進めるが、特に海外のクロスカントリーラリー(ラリーレイドと呼ばれているもの)では時に予想しない車の動きに遭遇する事もあるらしく、危険と隣り合わせな現場での逸話も披露して頂いた。

 クルマについては、収録されている「セリカターボ4WD(185)」には思い入れがあるそう。「インプレッサなども、僕たち日本人にはなじみ深いですよね。あと、ランチアストラトスとかマニアックな、1970年代のクルマも出てくるのがいいですね」。

 今度はトヨタのT100(ピックアップトラック)で走ってみることに。「エンジンの音が全然違いますね」と、各クルマでエンジン音がきちんと再現されていることに感心する高橋さん。路面状態の悪さに苦戦しながらもドリフトを決めて、ポイントをしっかりと稼いでいく。

 次はポルシェの「911RSR RALLYE」でオーストラリアの採石場に挑戦する。右前にランチアストラトスを発見すると「時代設定は合ってますね」と一言。スタート直後にほかのクルマと接触するが「わー、貴重なクルマなので壊したくない!」と思わず叫ぶ。駆動方式がRRのマシンなので制御が難しそうだ。リプレイを確認するしてみると、コーナーで膨らんでしまうなど厳しいレース展開になっていたことがよくわかる。

 「今度は四駆に乗りましょう(笑)」。MINIの「COUNTRYMAN RX」を選択する。今回は天候を雪に……。「四駆なので大丈夫でしょう!」と自信満々な様子。コースはフローズンピーク・モンブランだ。「スパイク履いてるんですかね?」。

 スタート直後「これ、すごくスベりますね(笑)」と、マシンの挙動を制御するのに難儀。マシンが横転してしまうこともあるほどコントロールに苦戦していた。「雪のコースで、ある意味リアルです。RRより難しかったですね」と感想を漏らす。

 「GRAVEL」では、リプレイ中に〇ボタンを押すと動画が止まり、いろいろと角度を変更して写真を撮影することができる。絞りや露出なども変えて画像を加工できることを知りテンションが上がる高橋さん。今度は写真映えを意識してクルマをチョイス。「セリカにしましょう」と高橋さん。

 走行後にリプレイ映像を確認。ドリフトしたところが撮影ポイント? と、アングルを探りつつ「実際には立ち入れない場所で撮影できるのが嬉しいですね。ジャンプしているところを下から撮影するのは現実にはできないですから」と、ゲームだからこそできる構図での撮影を楽しんでいた。

 ドリフトシーンで止め、アングルとエフェクトを調整して完成。「アンバー系のほうがきれいですね。絞りで後ろの背景が変わるのですね。露出は真ん中くらいでいいです。レンズが汚れるのですね」。このように、泥が上からかぶっているようにみせるエフェクトが付けられる。

 写真ではマシンが動いている感じが出ている。「なんでそう見えるかわかります?」と高橋さん。「フロントのホイールが見えていないからです。ホイールが見えていたら、回転していないことがわかってしまいます。でもタイヤのトレッド部などを前面に出せば、回転していないことがバレないのです」。さすがカメラマンだ。「でもこれ、現実世界のだったら撮影した直後に轢かれちゃいますね(笑)」。

 次は三菱のパジェロで、パリダカのような森林コースを選んでみる。シーンは昼の雨だ。「ヘッドライトの当たりかたがきれいですよね」。しかし雨の状況がひどく前が見えないので、ダッシュボードからの視点に変える。「ワイパーがあるほうが走りやすいですね」。途中のトンネルのシーンでは「ここは(撮影すると)きれいそうだなあ」と高橋さん。

 ゴール後、リプレイを見ながら写真撮影ポイントを探していく。洞窟のシーンでいったん止めてみるが、「雨がないとダメですね。トンネルを出たところで止めてみましょうか?」。しかしフロントから見ても、草木が生い茂っていて様子がわからない。「とりあえず前に進みましょう」。

 洞窟を出たところで止める。「さっきと同じ感じで、草をよけるように。ちょっとアップにしましょうか」。同じようにアンバー系のエフェクトをかける。「アイボリーが好き。葉っぱがうるさいですね。ちょっと寄りましょう。さっきのセリカのほうが走っている感じがしたなあ。でも奥の洞窟の感じはいいですね」。

実際にラリーカーを撮影する際のアングル研究に役立ちそう

 レースゲームをプレイするのは久しぶりという高橋さんは「GRAVEL」について、「1970年代から現代まで懐かしいマシンの写真が撮れるのが嬉しいです」と述べ、続けて「ヨーロッパや日本の有名なマシンに乗れるのもいいですね。WRCのマシンがいっぱい登場するし、レースでポイントをためるとインプレッサやストラトスが手に入るのですね。ストラトスとか欲しいですもん」と、カメラマンとプレーヤーの2つの視点から感想を述べた。

 リプレイ映像を撮影できることは「ロケハンというか、こういうアングルで撮影したいというシミュレーションが楽しめますね。この辺りからこの角度で撮るとこんな感じの写真が撮れるかなと、構図を考えながらコースを下見するのが楽しそうです。アングルの研究にもなりそう。もっとローアングルで撮ってみようとか、ドローンのように上から撮ってみるとどうなるのかな」と、想像を膨らませていた。

 最後に改めて車種を確認した高橋さんは「トヨタの222Dもあるのですね! このマシンは、研究開発していたそのカテゴリ自体がなくなってしまい実戦には投入されなかった幻のモデルだったそうです」と、裏話を語ってくれた。

 プロドライバーにマシンをセッティングしながらコースを走行してもらっていたこれまでとは異なり、カメラマンならではの視点でゲームの印象を語ってくれた高橋さん。自分も気に入ったアングルで撮影してみたいと思える体験会となった。