【連載第13回】オンラインゲームの楽しさを再認識しよう!


てっちゃんのぐだぐだオンゲーコラム


【特別編:頑張れ日本のオンラインゲーマー】
改めて感じたオンラインゲームと、その仲間達の大切さ


 3月11日、日本を東北地方太平洋沖地震(東北関東大震災)が襲った。徐々に災害の全容が明らかになる中、原発問題などまだまだ予断を許さない状況だ。多くの人が被害に遭われ、日常の生活を取り戻せない人達も多い。計画停電や、流通なども含めて、非常に多くの人に影響が出ている。未曾有の大災害だと言えるだろう。

 こんな時にオンラインゲームの話というのは不謹慎かもしれないが、日本中の人々と距離を超え、出会い、そして絆を深めていくオンラインゲームだからこそ、より直接にプレーヤーの、そして仲間の背中を押せるのではないか、元気づけることができるのではないかと思う。今回はオンラインゲームならではの繋がりにフォーカスしたい。

 オンラインゲームは「繋がり」のゲームだ。偶然の出会いから、同じ時間を過ごすことで絆を深くし、かけがえのない仲間になる。オンラインゲームでは、みんなが仲間達を待っている。今回の災害では、みんながお互いの無事を喜ぶ状況が生まれた。今、大変な状況におられる方も多いとは思うが、ゲームの中の仲間は、1日も早いあなた達との再会を願っていると言うことを今回は伝えたい。


■ お互いの無事を喜んだ地震直後の日。いつもの場所に、いつもの仲間がいる幸せ

ゲームにログインして、“いつもの場所”にいくと、いつものみんなが待っている。今回の東北地方太平洋沖地震(東北関東大震災)は、その場所の大切さを改めて教えてくれたと思う。スクリーンショットは「マビノギ」の風景だ

 オンラインゲーム、特にMMORPGには、仲間達が集まるお気に入りの「場所」がある。その場所では、フレンドや、ギルドメンバー、顔見知りの人達が集まっている。僕を含め、多くのオンラインゲーマーはログインをすると、まずその場所へ行く。そこにはいつもいる人達がいて、彼等と挨拶して、たわいない話をする。それが僕らオンラインゲーマーの「日常」だ。

 人によっては、限られた人しか入れないギルドホールの場合もあるが、ゲーム内での銀行や、倉庫前といった、いくつかのグループが共有している場所を集まる場所にしている人達も多い。近くの建物の周囲や、噴水など特徴的な場所をたまり場にすることもある。そこに行くと、何人もの仲間が待っている。友達から紹介された人と友人となり、その場所はプレーヤーにとってかけがえのない場所になっていく。僕自身は銀行前の広場など、人がもっとも集まる場所が好きだ。僕はこうした場所で、ギルドメンバー以外の知り合いも沢山できた。

 さて、3月11日、僕自身は仕事場でもある東京の自宅で地震に遭遇した。部屋はほとんど被害はなかったが、テレビをつけると津波の映像が流されていて、千葉の海岸沿いに実家のある僕は、半ばパニックになりながら両親に連絡を取った。幸い両親は避難所にいて、携帯電話で連絡が取れた。しかし、テレビでは東北、関東の被害の状況がどんどん明らかになってきており、僕は携帯電話等を通じて親戚の無事などを確認しながら、この恐ろしい状況ができるだけ少ないものであるように祈ることしかできなかった。

 親族に一通り連絡が取れた後も不安ばかりが募り、僕は仕事のことも考えられず、不安を紛らわすために、いつもプレイしているオンラインゲームにログインした。ログインした瞬間、友人から「よかった無事でしたね」とメッセージが来た。いつもの場所には、ギルドの仲間や、声をかけている友人達が、いつもより早い時間にログインし、地震の話をしながら、お互いの無事を確かめ合っていた。僕の姿を見かけて、彼等は次々と僕の無事を喜んでくれた。

 この11日は、狩りに行ったり、何をするわけでもなく、僕らは銀行前で話をしながら、ログインしてくる友人達に声をかけ、無事を確かめるメッセージを交わしていた。余震は間断なく続き、原発問題も発生するなど、テレビを見ているだけで不安はどんどん大きくなっていったが、ゲーム内で話をしていると、不思議と心が落ち着いた。仲間達と繋がっているという実感を、改めて持った。あと、地震の話をするとき、出身地の話が必ず出たが、それによってはじめて出身地を知る友人達も多かった。オンラインゲームでは本当に日本中様々な人がゲームに接続しているんだ、ということを改めて実感した。

 地震による影響は大きかった。都内に住んでいる友人でも、帰宅難民になってログインするのが遅い人がいたりした。停電の地域でもWi-Fiを通じてノートPCからログインしてくる友人もいた。この日は、週末と言うこともあり、災害直後であるにも関わらずログインする人が多かったように思う。みんな考えることは同じなんだと思った。

 中でも福島や宮城の友人は特に心配で、ログインできた友人には喜びのメッセージを送った。一方で地震を境にログインをしなくなってしまった人や、家族と連絡が取れないという友人もいた。ゲーム内で「連絡が取れた」と言う報告を聞いたときは、すぐに喜びのメッセージを送ったりした。


イラスト:阿佐ヶ谷帝国

「よーし、そろったからダンジョン行くぞ!!」、「いーよー」

 今回のイラストは、僕と編集担当者、そしてイラストレーターの阿佐ヶ谷帝国さんで話し合い、あえてこの震災直後の風景ではなく、オンラインゲームの“いつもの日常”をテーマとして、仲間と集まり、一緒に遊ぶ風景を描き出してもらった。皆さんも自分たちの「いつもの日常」を思い出してもらいたい。現在もまだ被害に遭われていたり、計画停電のためにいつもの場所で、いつもの仲間に会えない人達は多い。そういった事態が1日でも早く終わり、「日常」が1日も早く帰ってくれることを願ってのイラストだ。

 今回、改めて「オンラインゲームっていいな」と思った。ゲームにログインし、沢山の人と話をして、無事を確かめ合う。こういう繋がりを持てた幸運が実感できた。直接被害に遭っている方、ログインできる状況にない方も沢山いるだろう。今回の節電対策でサービス停止を決断したメーカーの決断は計画停電で仕方ない部分もあり、現在の状況でオンラインゲームで電気を使うな、という声ももっともだ。しかし、それでも、この「場所」がある、というのは災害に心を痛め、元気をなくしている僕のような日本全国のオンラインゲーマーみんなに力を与えてくれていると感じた。

 オンゲーをやっていない人にはわかりにくいかもしれないが、ゲームにログインすると、「無事だった?」と言ってくれる人達がいる。「あなたがいてくれてうれしい」と言ってくれる友人達がいるというのは、心を温かくしてくれる。停電でもバッテリーを使ってノートPCでゲームにログインしたり、インフラが復旧した瞬間にまずゲームにログインする人達の気持ちは僕にはすごく共感できる。

 僕自身も含め、みんなこの「場所」が大好きなのだ。僕の友人でも、あの地震からログインできていない人がいる。被害に遭われた方、避難所にいられるオンラインゲーマーも沢山いると思う。僕らオンラインゲーマーは、あなた達が帰ってきて、いつものように挨拶してくれることを、いつでも、いつまでも待っている。このように、ネットでメッセージを送っても、今大変な状況にいる人達に届くのは難しいと思うが、それでも、あなた達の一日も早い「楽しい日常」への復帰を願ってやまない。

 現在も数社が節電対策のためサービスを休止した。緊急時、節電対策ということもありその決断は正しいとは思うが、わがままを言わせてもらえれば、こんな時だからこそサービスを継続して欲しかった、というのが正直な気持ちだ。ネットの友達に会えないのは、やはり寂しい。計画停電や節電が継続されている関係上、なかなか難しいことかもしれないが、早期の運営再開を願いたい。

 今回のスクリーンショットは、過去のレビューなどから様々なタイトルで、プレーヤーが集まる風景を抽出してみた。色々なタイトル、色々な繋がりで、仲間達が待っている。現在、僕たちの声は直接被害に遭われている方には届かないかもしれないが、頑張って欲しい。また、楽しい時間を過ごしましょう。


【スクリーンショット】
左から、「ドラゴンネスト」のキャデラック、「真・女神転生IMAGINE」の新宿バベル。どちらも初心者が集まる街だ。右は「タワー オブ アイオン」の魔族の首都パンデモニウムの銀行前
「ルーセントハート」の相性の良いユーザーを検索できるクピト周辺。「エミル・クロニクル・オンライン」の闘技場。「グラナド・エスパダ」のボス討伐ダンジョン前。
「信長の野望 Online」、「ウルティマオンライン」のゲーム内イベント。右は「FINAL FANTASY XIV」でのギルドイベントだ

(2011年 3月 22日)

[Reported by 勝田哲也]