【連載第14回】オンラインゲームの楽しさを再認識しよう!


てっちゃんのぐだぐだオンゲーコラム


8種類のロボットが生み出す「鉄鬼」ならではの戦闘空間
サービスは終了したが、チャレンジ精神は持ち続けて欲しい!


 オンラインゲームが生まれて10年以上、様々なタイトルが生まれて、コンテンツは進化してきた。今回取り上げる「鉄鬼」は、8種類の個性豊かなロボットが戦うTPSだ。残念ながら本作は今年2月にサービスが終了してしまったが、今回の「てっちゃんのぐだぐだオンゲーコラム」では、本作で開発者が見せてくれたチャレンジスピリットを取り上げたい。

 「鉄鬼」は「サドンアタック」で注目された韓国GameHiが開発、特に日本市場を意識し、「ロボット」にフォーカスを当てたオンラインTPSだ。8種類のロボットはそれぞれ接近戦や狙撃型、修理型、索敵型などなど、明確な役割を与えられており、ロボットの組み合わせでチーム全体の戦い方そのものが大きく変わる。8種のロボットは外見も大きく異なっていて、色々な形のロボットが戦場を駆け回る“絵”は他のゲームタイトルとは明確な違いがあった。

 さらに「鉄鬼」は巨大ボスとの戦いや、協力プレイモードなど、他の韓国産オンラインシューティングの追随を許さない様々なアイデア、ギミックが盛りこまれていたゲームだった。今回は本作の独自性を取り上げていきたい。「鉄鬼」は終了してしまったが、オリジナリティーのある、作り手の“やる気”が強く伝わるゲームを、これからも期待したい。


■ 機能=外見のロボットと、巨大ボスや協力プレイなど“新しい物を作ろう”という心意気

修理型のVELOX。他の機体に比べると小さくかわいらしい。カスタマイズによる他のプレーヤーとの差別化も楽しい

 「鉄鬼」はロボットを操り、様々な戦いを繰り広げるオンラインTPSだ。ロボットは8種類用意されている。軽量型の「VANGUARD」、ダッシュで敵に近付き接近攻撃を加える「DUAL」、カニのような足で移動し狙撃を行なう「BLITZ」、そして仲間を回復できる「VELOX」。さらに重装型の「VINCERE」、砲撃モードに変形する「RAMPART」、工兵型の「IMPULS」、索敵・観測型の「FORBIDDEN」。これらを使い、戦場を駆け巡るのだ。

 この作品は、機体によって完全に役割が変わっているのが特に楽しかった。戦場を所狭しと駆け回り弾をばらまくVANGUARDの戦い方が基本とはなるが、接近戦に特化したDUALや、効果力と装甲を活かしたVINCERE、狙撃が楽しいBLITZなど、プレイスタイルに合った機体が用意されていた。

 なによりも機体のデザインと戦い方がリンクしているのが楽しかった。格闘戦のDUALは回転ノコギリや火炎放射器が付いていて、至近距離で相手の機体そのものを削り取るような戦い方をする。BLITZはいかにも一撃にかけるスナイパーが乗っていそうな、“多脚戦車”で、ゆっくりと動きながら、火砲を発射する姿がかっこいい。一方でBLITZは、近寄られたときのすぐに逃げられない無防備さも特化した機体という感じで良かった。

 その中でも修理型のVELOXのプレイは独得だった。この機体は修理が主な役割で、攻撃は砲台を設置するという防御的なものだ。ゲーム中ではVELOXのいるところが“陣地”という感じになる。他のプレーヤーはVELOXのいる位置を把握しつつ最前線へ出て、傷つけば帰ってくる。激しい戦いの場合は、修理待ちの機体が列を作ったりする。VELOXのプレーヤーはまるでF1のピットクルーのように彼等を直していく。

 VELOXの機体は小さく、ちょっとかわいらしい。また、機体を直す回復役は、他の機体でのプレイとはまったく違っていた。修理したプレーヤーから「ありがとう」と言われたときなどは、他の機体では味わえない味方との強い連携意識が持てた気がした。他の機体を使っているときは、修理がとてもありがたい。瀕死だった機体が完全復活すると、この体力を使って突っ込もう、という気にもなる。このVELOXを中核に置いた戦いのリズムは、「鉄鬼」ならではのものだったと思う。


イラスト:阿佐ヶ谷帝国

「修理完了!」、「よーし撃ちまくるぞ!!」

 このロボット達が激しくぶつかる対戦プレイも面白かったが、評価したいのは本作が対戦だけにとどまらず、様々なゲームモードを入れていたところだ。巨大なボスが侵攻してくるのが戦いの鍵になる「ボスモード」や、プレーヤー達が協力して敵に立ち向かう「キャンペーンモード」、さらに新たなストーリーが盛りこまれていった。

 次々と追加されていく新コンテンツは、開発者の“やる気”を強く感じさせられたし、ロボットへのこだわりはメカ好きの僕にとって好感が持てた。このまま突き進めばどうなっていったのかという期待感も持っていた。ゲームヤロウからネクソンへサービスが移管した際にも、アップデートは継続され、サービスは続くと思われたが、結果として正式サービスから1年でサービス終了となってしまった。

 韓国でのサービス中止の大きな理由としてGameHiが上げたのは、韓国国内での人気のなさだった。韓国では、個性豊かなロボットが戦うこのゲーム性は受け入れられなかったようだ。「日本で『鉄鬼』が人気」というニュースも追い風にならなかった。本作は元々日本市場を、というところで作られたということだが、それでも韓国市場の不調はGameHiにとって、このゲームに対して大きなマイナス評価になってしまっていたようである。

 「ドラゴンネスト」など韓国ではもう1つだったタイトルが、日本や他の国で受け、サービスが継続するタイトルも多い。一方、「鉄鬼」は、日本でもコアプレーヤーからは好評を得たが、「敷居の高さ」があったかのように思える。これは、ロボットという題材だからなのか、それともライトユーザーを取り込むためのゲーム性がもっと必要だったのかは、意見のわかれるところだろう。オンラインゲームが終わってしまうには様々な理由がある。日本での「鉄鬼」はスタート時には大きな人気を得て、注目を集めたものの、韓国市場での不調といった開発側が持っていた不安な要素全てを覆せるほどの結果にはならなかった、ということかもしれない。

 それでも、僕は「鉄鬼」を生み出した開発者をこれからも応援したいと思う。個性的なロボがぶつかりあう戦場、ロボットと、SFだからこそできるステージや、ストーリー、そして巨大な敵ロボット。PvPだけでなく、PvEでエキサイティングな戦いを提示したかったという想い……。こういった開発者のチャレンジ精神こそが、新しいオンラインゲーム、より楽しいゲーム空間を生み出すのだと思っている。「鉄鬼」を作った開発者達の挑戦をする心を、これからも応援したい。



■  てっちゃんの割とどうでもいい話 「例え5回やられても、1回火あぶりにしたら俺の勝ち!」。プレーヤー自身も熱くさせたDUAL

火炎放射器を両手に装備したDUAL。相手の機体に凄まじい炎を浴びせかける

 ロボットアニメにおいて、「相手の弾をかいくぐり、接近戦で敵を屠る」というのは、アニメの主人公や、ベテランパイロットの能力の高さを示すシーンだ。ロボットものゲームでは「近接攻撃」には独得の魅力を持たせているものが多い。

 「鉄鬼」ではDUALが近接攻撃に特化した機体であり、至近距離で大ダメージを与える武器が揃っている。DUALのメインウエポンはぐるぐると回転するノコギリや、火炎放射器など、他のロボットに比べても凶悪な感じで楽しい。しかし、DUALは高い攻撃力の一方で、耐久力が低いという弱点がある。何も考えず突っ込むと蜂の巣にされてしまい、あっという間にやられてしまう。いかに攻撃を受けずに敵に近付き、接近攻撃をたたき込むかがテーマとなる。

 僕はせっかちなのと、頭に血が上りやすいところがあって、待ち伏せされたり、同じ場所で敵を待ち受けている人にやられると、瞬間湯沸かし器のようになって、何回も同じような倒され方をすることがある。それでもムキになって突っ込み、そして火炎放射器や回転ノコギリを敵に食らわせ倒したとき「やった!」と思わず叫んでしまう。こんな戦い方だから、5回やられて1回倒す、という感じで結論からいえば惨敗なのだが、気持ちの上では「勝ち」なのである。

 ゲームが“うまく”なるためには、こういったムキになったりする部分は押さえて、冷静に多彩な戦術で戦うべきだというのは頭でわかるが、たとえやられても突っ込み、相手に一撃を食らわせるという、狂犬のような戦い方は、やっていてすごく楽しい。近付くこともできなかったときなどは「他の機体使おうか、戦い方を変えようか」と思うのだが、「いやいや、是が非でもあいつを火あぶりにしてやるんだ!」と自分に言い聞かせ、再挑戦する。DUALはそんな、プレーヤー自身も熱くさせる機体だった。


~今回ぐだってしまったオンラインゲーム~

「鉄鬼」

2010年8月に名古屋で行なわれた全国大会の決勝戦

 「鉄鬼」は韓国GameHiが開発し、日本ではゲームヤロウの運営で、2010年1月よりサービスが開始されたが、NEXONによるGameHiの買収に伴い、2010年10月に日本でもサービスがネクソンに移管されたが、GameHiの意向により残念ながら2011年2月にサービス終了となった。

 対戦型TPSとして登場した本作だが、正式サービス以降は協力要素がピックアップされ、防衛戦や敵拠点の攻撃、敵の防衛拠点をかいくぐるなど多彩な要素を短いスパンで実装していった。2010年7月には初の公式大会を実施、8月に名古屋で「サドンアタック」と同時開催で、決勝戦を行なった。

 8種類のユニークな機体が戦いを繰り広げるという基本要素をベースに、様々な対戦マップ、そしていくつものキャンペーンを速いスパンで実装。個性的な新武器などを実装し、開発者は積極的にゲームに新要素を盛りこんでいた。日本ではコアプレーヤーを中心に人気を得た。台湾でも人気を集めていたという。日本ではユーザー達によるサービス継続の署名運動なども行なわれていたが、サービス終了となってしまった。

【スクリーンショット】
無骨なロボットがガチャガチャと戦場を闊歩し、戦う。ヒーロー的ではない、油の匂いがしそうなロボット兵器がぶつかりあうのが「鉄鬼」の魅力だ
協力プレイや、ユニークな兵器など様々な要素を盛りこんでいった。開発者の“やる気”と、“今まで韓国のオンラインゲームにはなかった物を作ろう”という想いが伝わってきたゲームだけに、彼等の熱意が今後の作品に活かされることを願ってやまない

Copyright c 2010 NEXON Co., Ltd. All Rights Reserved.
Copyright c 2009 GameHi Co., Ltd. All Rights Reserved.

(2011年 4月 5日)

[Reported by 勝田哲也]