【連載第2回】オンラインゲームの楽しさを再認識しよう!


てっちゃんのぐだぐだオンゲーコラム


仮想世界で、自覚し、探求し、求められるからこそ生まれる「職業意識」
「エバークエスト」で得た戦士の誇りと、魔法への驚嘆


 オンラインゲームの様々な面を取り上げ、面白さを再確認する「てっちゃんのぐだぐだオンゲーコラム」。今回のテーマは「仮想世界で生まれる職業意識と、他の職業への敬意」だ。MMORPGではプレーヤーは様々な職業に就く。面白いのは、プレイを重ねることで職業的意識が高まり、“誇り”までもが自分の中で生まれてくる。仮想世界の中で、その住人ならではの自意識、そして体験ができ、さらに周りの人からも役割を求められるようになる。この感覚は、とても面白い。


■ 仲間の盾となるウォーリアーとして活躍。だからこそ華麗な魔法がまぶしい!

ずんぐりむっくりな人間の周りにいるのが筆者達。戦っているのは巨人なのだ。巨人が本当に大きい!「エバークエスト」の3D世界は、何もかもが衝撃的だった

 今回取り上げるタイトルは「エバークエスト」。前回紹介した「ウルティマオンライン」と共に、MMORPGというゲームジャンルを確立した作品だ。「ウルティマオンライン」が“スキル制”であったのに対して、「エバークエスト」は“クラス制”となっている。前者は自分の上げるスキルを選択することで自由にプレイスタイルを変えられるが、「エバークエスト」はウォーリアー、ローグ、マジシャンなどキャラクター作成時に職業を選択したら基本的にプレイスタイルを変えることはできない。

 「エバークエスト」は6人パーティーで異なる職業のプレーヤーキャラクターが力を合わせる、というオンラインゲームの基礎となった作品であり、そのバランスが絶妙だった。プレーヤー達は自分の役割を果たすために情報交換をし、プレーヤースキルを磨いていった。各プレーヤーが職業を体得していくという意味で、本作はまさに「ロールプレイング(役を演じる)ゲーム」だったと思う。

 僕がこの作品でプレイしたのはウォーリアー。パーティーの盾となるクラスで、自分に攻撃を引き寄せ、自分が殴られている限りパーティーは安全、というクラスだ。敵を攻撃して仲間の場所までおびき寄せたり、他の仲間に向かった敵をこちらに引き戻したり、殴られている仲間をシールドスキルで守ったり、「頼れる盾役」を目指していった。

 面白いのは、プレイを重ねていくことで僕自身が「ウォーリアーとしての役割」に目覚めていくことだ。周りの仲間も盾役として僕のキャラクターを頼りにしてくれることがわかる。クラス制のMMORPGはゲームの中で求められる役割を、プレーヤー自身が自覚し、そして仲間に貢献するために突き詰めていくのが楽しい。ネットや仲間からよりうまい戦い方、強いアイテム、そしてゲーム内でのプレイのコツを学んでいった。

 「エバークエスト」では14のクラスがある。だけどウォーリアーとしての道を求める僕にとって、第1の興味はウォーリアーであって、パーティーで他のプレーヤーの役割やスキルを学ぶ機会はあっても、それに対してウォーリアーとしてどう対応するかという視点でしか見なくなっていった。ウォーリアーは魔法に全く無縁のクラスで、特に魔法使い系の職業は、どのクラスがどういった魔法を使えるか、細かいところはよくわからなかった。「エバークエスト」で僕は“魔法というものへの驚嘆”をいくつも味わった。


イラスト:ミズノ マサト

「うおー、とんでるぅー」

 今でも強く印象に残っているのが、ウィザードの「レビテーション」の魔法だ。巨大な湖のマップで、いつもは小舟に乗って長い距離を移動しなくてはならないのだが、ウィザードにかけてもらった魔法で空中に浮き上がり、さらに空の上を「走る」事ができ、地上を走るのと変わらない速度、そして最短距離で、湖を横断できたのだ。まさに空中浮遊。こんな魔法があることすら知らなかった僕は、本当に「奇跡を目にした人」そのものだった。目の前の魔法に本当に驚かされた瞬間だ。

 もう1つ、魔法の不思議さに驚かされた経験はエンチャンターの友人の「変身魔法」だ。友人はスマートなダークエルフの男性で、赤いローブがダークな雰囲気にぴったりだった。エンチャンターは敵を眠らせたり、弱体化魔法のエキスパートで、パーティーの人気職。彼と組んでいると、すぐに狩りのパーティーが作れる大事な“相棒”だった。

 ノームの村に一緒に向かった時、友人は「ちょっと待って」といって目の前でノームに変身した。「エバークエスト」では種族が対立している場合があり、敵対種族は攻撃されてしまう。エンチャンターは様々な種族に姿を変えられる魔法を持っているのを知ったのは、この時だ。

 そういえば、と思い直すと、友人はことあるごとに自分に魔法をかけ直している。僕は思いきって尋ねてみた。「君はいつもダークエルフだったけど、本当は違うの?」。友人は、「普段ダークエルフになっているのは夜目が利くので便利だから」だと答えた。慣れ親しんだ彼のダークエルフの姿は、実は変身だったのだ! その驚きがあまりに大きく、結局彼が本当は何の種族だったのか、僕は覚えていない。これも強烈な“魔法体験”だった。

 クラス制のMMORPGでは、プレイを重ねることで職業的こだわりやエキスパートとしての自覚ができてくるのが楽しい。道を求め、パーティーの一員として、キャラクターのポテンシャルを活かせるその瞬間、自分自身が間違いなく屈強な戦士に、優れた魔法使いに、頼れる僧侶になれる。“繋がっている”からこそ体験できる充実感だ。

 優れたキャラクターの能力は、他の職業の人に驚きをもたらす。仮想世界でありながら、本物の戦士に、魔法使いになれたような気持ちが味わえ、さらに友人の能力に改めて驚かされるという、独得の体験ができる。僕も魔法の数々に驚かされたように、戦士として仲間を守って感謝され、その能力で驚かさせた体験もある。仲間から求められ、応え、そしてそれを超える爽快感。この繰り返しはオンラインゲームの醍醐味だと思う。


■  てっちゃんの割とどうでもいい話 「ファイアビートルの目玉のパイはどうだい?」

「エバークエスト」のノームは高度な機械文明を発達させているのだが、船首にハンマーがついた「砕氷船」などを作っている。こういった世界観に彩りを加えるオブジェクトも沢山登場する

 「エバークエスト」には生産スキルがサブスキルとして用意されており、様々なものを生産できる。所属ギルドのマスターを務めていた友人は「料理」のスキルを習得していた。料理はNPCからレシピの本を買って、モンスターからドロップされる材料を集めて作る。食べ物は補助効果をもたらしてくれる。しかし、その食べ物のメニューが凄まじい。「アナコンダのステーキ」、「ネズミ肉のサンドイッチ」、「ファイアビートルの目玉のパイ」……。ガマガエルを煮込んだり、トカゲの尻尾を焼いたりするおとぎ話の魔女が作りそうな、現実では食べにくいメニューが目白押しなのだ。

 もちろん、「ベリーパイ」など現実でも美味しそうなメニューもたくさんあるが、ゲテモノメニューは強烈だった。料理を作ってもらうために友人と一緒に材料を集めるのだが、“ファイアビートルの目玉”のアイコンは神経が繋がったままの目玉の絵でかなりエグかった。「これを食うのか……」と思いながらも、いかにもファンタジー世界の料理っぽくて、感心した記憶がある。



~今回ぐだってしまったオンラインゲーム~

「エバークエスト」

開発:Sony Online Entertainment(SOE)、日本での運営は2003年にSo-netからスタートし、その後ガマニアに移り、2006年に終了。米国ではSOEが現在も運営中だ。2010年10月12日に17番目の拡張パック「House of Thule」も発売された

 1999年よりスタート、日本では2003年に日本サーバーが立ち上がり、筆者はこのときにプレイを始めた。最初はSo-netが運営していたが、2004年からガマニアデジタルエンターテインメントが運営を引き継いだ。日本サーバーは残念ながら2006年に終了してしまっている。米国ではSOEが現在も運営中だ。2010年10月12日に17番目の拡張パック「House of Thule」も発売された。500年後の世界を描いた「エバークエスト2」もサービスされており、こちらは日本でもSOEが運営している。

 「エバークエスト」はエルフやドワーフ、ゴブリンなどが住むファンタジー世界を3Dグラフィックスで、広大なスケールで作り上げたMMORPGだ。切り立った崖や広大な海と、それを渡るための船、見上げるほどに大きな巨人がのしのしと歩いていたり、3Dグラフィックスならではの「存在感」がプレーヤーに強い衝撃を与えた。神話、宗教、種族や地形、歴史などに詳細な設定があり、独得の世界観を作り出している。

 ウォーリアー、クレリック、シャーマン、レンジャーなど14の職業があり、各職業がそれぞれの特色を活かし、パーティーで戦わなくては敵を倒せないバランスになっており、強い結束と息のあった連携が求められる。パーティーは最大6人で、集まったプレーヤーで戦い方は微妙に異なってくる。その中で他のプレーヤーの力を引き出し、自分の持ち味を最大限に活かすかがプレイの醍醐味となる。また、複数のパーティーで強大な敵に立ち向かう「レイド」システムは本作が元祖だと言われている。

 冒険フィールドには広大で、別の大陸からは船で現実時間の20分かかるなど実際に旅をしているかのような「冒険」が味わえた。プレーヤー達は生まれ故郷はばらばらで、徐々に大きな街へと集まっていく。レベルが上がれば故郷への行き来が楽になり、自分の「行動範囲」からも成長が実感できた。グラフィックスはシンプルだが味があり、各地域によって様々な怪物が闊歩しており、新しい地域へと向かう度、驚きが待っていた。

【スクリーンショット】
左の画像が筆者がプレイしていたウォーリアーのキャラクター。大陸を移動する際には、20分に1度やってくる船に乗る必要があったり山脈や平原を越え、大陸を横断したり、移動そのものが「冒険」だった作品だった。右はドワーフの街。山を削って巨大な石像を作るなど、見た瞬間世界観が伝わってくるオブジェクトがたくさんある
大蜘蛛やマンモスなど、強大な敵を倒していく爽快感は3Dならでは。中央はダンジョンの入口。禍々しい雰囲気が良く再現されている
左は湖を渡る小舟。この湖を「空を走って」駆け抜けたときの爽快感! 右は当時の筆者の仲間達だ。種族も職業も違う仲間達が力を合わせて戦う、「エバークエスト」の楽しさはここにある

(C)Sony Corporation,(C)2003 Sony Communication Network Corporation,(C)2003 Sony Computer Entertainment America Inc. EverQuest is a resistered trademark of Sony Computer Entertainment America Inc. in theU.S. and/or other countries. SOE and the SOE logo are registered trademarks of Sony Online Entertainment Inc. in the U.S. and/or other countries. All other trademarks are property of their respective owners. All rights reserved.

(2010年 10月 19日)

[Reported by 勝田哲也]