【連載第58回】韓国最新オンラインゲームレポート
KeSPA/kocca、「eスポーツシンポジウム2009」を開催
加盟各国による様々なeスポーツ討論。IeSFは2013年まで45カ国の加入を目指す!
韓国eスポーツ協会(KeSPA)と韓国コンテンツ振興院(kocca)は8月8日、韓国釜山市の展示会場BEXCOにおいて、「eスポーツシンポジウム2009」を開催した。
「eスポーツ シンポジウム」は世界各国のeスポーツ協会関係者たちが一堂に会し、各国のeスポーツ事情を討論する場である。2006年から毎年開催されて、今年で4度目を迎える。去年は各国のeスポーツ協会が共同して国際eスポーツ連盟(IeSF)の設立という大きな節目を迎えた。国際eスポーツ連盟はeスポーツの標準を作り、国際的にeスポーツを発展させるための団体である。「eスポーツ シンポジウム 2009」は韓国、日本、イギリス、オーストリア、ドイツ、台湾、シンガポール、ベルギー、オランダ、デンマーク、スペイン、スイスの12カ国が参加した。
eスポーツとはEletronic Sportsの略で、言葉通りの意味では電子環境において、精神的、身体的な能力を活用して勝負をする活動のことだが、主にはコンシューマーゲーム、コンピューターゲームを通じて行なわれるスポーツ活動のことを意味する。その活動は2000年から急激に広まり、「World Cyber Games」といった国際大会も開催されている。日本では日本eスポーツ協会設立準備委員会が2007年に設立され、今後の活動に注目されているところだ。本稿では本イベントのなかで最も注目されたオーストリアeスポーツ協会とイギリスeスポーツ協会、IeSFの発表についてお届けする。
【eスポーツシンポジウム2009】 | |
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会場には韓国eスポーツに関する写真が並んでいた。韓国では空軍のプロチームも存在するぐらい。正規軍でありながら、eスポーツの活動ができるというのは極めてユニークな事例だろう。また、各セッションの終わりにはQ&Aが設けられて様々な意見が交わされた |
■ オーストラリアでは、プロ選手たちを徹底管理。国際ランキング制定の動きへ
オーストリアeスポーツ協会の事務総長Thomas Von Treichel氏 |
唯一、日本から参加した日本eスポーツ協会準備委員会の竹田恒昭氏。彼ら関係者はシンポジウム終了後にグァンアンリ海水浴場に移動し、最前列のVIPシートで「新韓銀行 プロリーグ 08-09シーズン 決勝戦」を観戦した |
「eスポーツシンポジウム2009」では、以下の6つの話題に関する発表が行なわれた。
オーストリアeスポーツ協会の事務総長Christoph Zenk氏
「国際ランキングシステムと選手登録システム」
ドイツeスポーツ協会の理事Thomas Von Treichel氏
「eスポーツ団体が政府から承認を貰うための戦略」
イギリスeスポーツ協会会長Ray Mia氏
「eスポーツとメディアの関係」
韓国eスポーツ協会の会長チェ・ウォンジェ氏
「韓国eスポーツ協会の政府協力及び成果」
国際eスポーツ連盟事務総長オ・ウォンソック氏
「国際eスポーツ連盟の発展と運営方案」
ヨンセ大学イ・ジェソン教授
「eスポーツ専用競技場の設立モデル」
最初に登壇したのはオーストリアeスポーツ協会の事務総長Christoph Zenk氏だ。Zenk氏は国際ランキングシステムと選手登録システムについて発表した。
現在、eスポーツの分野では世界大会、国家単位の大会、地域単位の大会など、世界中で様々な大会が開催されている。これらの大会での成績を総合し、選手たちの整った体制を作るために国際ランキングシステムが必要だという。誰が1位なのか明確にする統一ルールを作ることは、様々な大会でシード権の活用や、eスポーツコミュニティーのガイドラインの提示、国際eスポーツ連盟IeSFの地位の確立のためになるという考え方である。
次にZenk氏は国際ランキングシステムを作るためのガイドラインを提示した。このシステムを作るためには、ポイント計算システムを作り、過去そしてこれからの全ての大会の成績を入力しなければならない。また、大会もある程度の規模以上のものでなければならないという。目安としては最低4人以上が参加し、賞金が受賞者1人あたりに200ドル以上の大会とした。
国際ランキングの基礎となるポイント計算は、大会の順位×賞金×大会の規模×国際大会か否かで計算される。また、全体ランキングのほか、シーズン別ランキング、賞金ランキング、チーム&プレーヤーランキング、ナショナルランキングといった各カテゴリによる順位もわかるようする。これらのシステムはIeSFの管理の下で作ることによって、IeSFの地位も確立しつつ、より健全的なeスポーツ環境を作れるということだ。
このランキングシステムのためには、選手を登録し管理するシステムも必要になる。選手を登録管理することにより、ランキングが可能になるだけでなく、登録された選手側も大会の申し込みや主催側からの招待などがスムーズに進む利点もある。オーストリアでは、信頼できる選手たちに対して、eスポーツカードを発行することで管理を行なっている。現在、1,750人がこのeスポーツカードを持っているという。eスポーツカードを持っておけば、オーストリアで行なわれるLANパーティや大会の申し込みがスムーズで、試合成績などの色んな結果が公的な記録として残される。これらを応用し、各国でも、そして国際eスポーツ連盟でも活用するのはどうかと意見をあげた。
【国際ランキングシステムと選手登録システム】 | |
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オーストリアに発行されている“eスポーツカード”とそのシステム。これを持っていると信頼できるプレーヤーである |
■ 視聴者のニーズに合わせたメディアが必要な時代。時代はオンラインストリーミング
イギリスeスポーツ協会の会長Ray Mia氏は、15年間イギリスの放送機関のプロデューサーを勤めたという |
イギリスeスポーツ協会の会長Ray Mia氏はeスポーツとメディアについて発表した。Ray Mia氏は冒頭でイギリスに限らず、グローバルな視点で話したいと述べ、プラットフォームについてもeスポーツの分野ではスタンダードとなっているPCのみならず、コンシューマーゲームも視野に入れた説明が行なわれた。
Mia氏はまず、「利益を得なければメディア産業は続けられない」と断言し、「メディアとはコンテンツであり、コンテンツとは注目を集めること。注目を集めることとは観衆を集めることであり、観衆とは利益である」と述べた。eスポーツをメディアのコンテンツとして活用するのなら、きちんと利益を得られるようなシステムを作らないとダメだという意味だ。
続いてMia氏はゲーム産業の成長ぶりに着目。2008年度の北米ではゲームハードの販売は去年より27%アップし、ソフトウェアは2009年3月だけで10億ドルの売り上げを記録。「Halo 3」は発売から一週間の全世界での売り上げが3億ドル、「Grand Theft Auto IV」は4億ドルを記録したという。「これは映画産業を超えられる産業になりつつある」と説明。メディア側からはコンシューマーゲーム産業は利益を生み出せるコンテンツとして見られているという。
しかし、欧米ではこれまで幾つかのコンシューマーゲームをeスポーツコンテンツとしてTV番組が作られたことがあるが、ことごとく失敗を続けているという。結局、視聴者を集めるために、ゲームコンテンツだけでなく、他のジャンルも組み入れなければならないという。
特に北米ではeスポーツを活用したTV番組が多くチャレンジされた。CGSやWSVGなど失敗した例もあるが、G4やMLGといった成功した例もある。成功する条件としては「1つ以上のスポンサーを集めること」、「プラットフォームの統合」、「市場の限界を理解すること」、「視聴者のニーズを理解すること」、「TVの理事会に関わらないこと」、「eスポーツコミュニティーを分割しないこと」、「投資モデルを作ること」をあげた。
ここで韓国以外の国ではではeスポーツで1つ以上のスポンサーを集めることは極めて難しく、またゲームに関連する企業でなければ利益を得ることが難しいという。また、番組もTV放送だけでなく、eスポーツの視聴者が多く集まるインターネット放送の環境も整備する必要があるだろうということだ。
北米においては、18歳から24歳のゲームプレーヤーが91%で、オンラインでストリーミングビデオを見るユーザーは71%にも及ぶという。さらに、施設費用もオンラインストリーミングの方が割と安くできるので、より効果的に視聴者を得ることができる。Mia氏は「ゲーマーはオンラインでeスポーツの番組を見ることを好む。メディアとして成立するためのオンラインストリーミングが重要だ」とオンラインストリーミングの重要性について強調した。
韓国では「Ongamenet」や「MBC Game」など、eスポーツ専用のチャンネルがある。eスポーツだけのメディアで利益を得ることができるシステムになっている。しかし、他の国々では同じ方法ではなかなか成功できず、ESPNといったスポーツ専門チャンネルの一部の番組としてしか流れない現状だ。Ray Mia氏はeスポーツの視聴者はオンラインに集まっており、 視聴者がいるオンラインでVOD、WebTVといったオンラインストリーミングを行なうべきだと話をまとめた。
【eスポーツとメディアの関係】 | |
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オンラインストリーミングこそeスポーツメディアの進む道。視聴者がそこにいるからだ | |
MLGはESPN.comを通じても放送されている。オンラインで見たいという視聴者のニーズに答えた番組だ |
■ 国際eスポーツ連盟の中間計画発表。2013年までに45カ国の加盟国を
国際eスポーツ連盟の事務総長オ・ウォンソック氏。以前はWCGの副社長を務めた人物だ |
国際eスポーツ連盟(IeSF)の発表として登壇したのは事務総長のオ・ウォンソック氏。IeSFはeスポーツにおける国際的な標準を作ることが目的である。具体的には選手や審判たちの管理方法、大会の運営管理、記録の管理などだ。そして、加盟国の拡張も目標の1つである。
今後の計画としては、今年2009年は、ヨーロッパとアジアを中心に国際eスポーツ標準の創案について活動が行なわれ、2010年まではアジア、オセアニアを対象に加盟国を増やし、国際eスポーツ標準を完成させるという。そして、2011年は北米、南米地域に集中して加入国を増やし、国際eスポーツ標準を活用していく。この時点で目指す加盟国は25~35カ国である。2012年には加盟国35~45カ国を目指し、2013年までは45カ国以上を目指している。そして、2013年頃をめどに、最終的にIOCやFIFAなどといった機関と、公式なスポーツの1つとしてMOU採決に望みたいという壮大な計画だ。
なお、加盟国を増やすための具体的な取り組みとしては、eスポーツ協会が設立されていない国家に対して、資料の提供や政府へのアプローチといった支援を行なっていく方針が紹介された。現在、eスポーツでは様々な国際大会が開催されているが、それらを総合的にまとめる体制はない。そのため、大会別に盛り上がってはいるが、全体的に盛り上がることなく、大会のスケジュールが被ってしまうケースも少なくなかった。そういった問題を解決するためにも国際的な体制は必要なところだ。今後、eスポーツの成長を期待する1人としてIeSFの活動に注目したいところだ。
【国際eスポーツ連盟の発展と運営方案】 | |
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IeSFの計画。行く行くはeスポーツがIOCに認定された種目になることを期待したい |
□韓国eスポーツ協会KeSPAのホームページ(韓国語)
http://www.e-sports.or.kr/
□「eスポーツシンポジウム2009」のホームページ(韓国語)
http://www.iesym.org/
(2009年 8月 11日)