山村智美の「ぼくらとゲームの」

連載第18回

コンパイル◯「にょきにょき」きっかけにAC「ぷよ通」対戦の凄さやシントクセガ秋葉原のことを思い出した話

この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。

インディゲームの祭典「BitSummit 4th」が開催されました。

大規模な大手タイトルとはまた異なる、エッジの効いたインディゲームや、レジェンダリーな開発者の皆様のトークセッションなどなど、暑い京都がさらに熱く的な盛り上がりとなったわけですが。

そんななか僕が注目したのはコンパイル◯(まる)より2016年末発売予定のニンテンドー3DS用格闘パズル「にょきにょき たびだち編」です。

コンパイル◯は、かつて「ぷよぷよ」シリーズを開発していたメーカー「コンパイル」の創業者・仁井谷正充氏が新たに設立した会社ですね。

この「にょきにょき たびだち編」展示を知らせる記事のひとつに「にょきにょきは、ぷよぷよ初心者が上級者にボコられて、それから遊べなくなるという問題を解決した作品」というコメントが載っていまして、

それを読んだ僕の脳裏には、
昔に見たアーケードでの「ぷよぷよ通」対戦の光景がフラッシュバックしまくったわけです。

「にょきにょき」は、2016年末には「たびだち編」を800円で配信予定。後にRPG要素やネットワーク対戦・クエスト機能を搭載した「にょきにょき物語」をフルプライスで発売予定ということです

家庭用への移植でなんらかの「ぷよぷよ」シリーズ作をプレイしたことがあるという人はかなり多いというか、ゲーム好きならほぼ全員っていう感じではないかとすら思いますが、

“ガチの「ぷよぷよ」上級者”というのはすさまじいんですよね。

特に思い出深いのは1990年代のアーケード「ぷよぷよ通」の対戦台。
それはもはや、神々の戦いとなっていました。

僕はもともと、1990年代~2000年頃まで秋葉原のゲームセンター「ハイテクランド・セガ・シントク(現:セガ秋葉原1号館)」にほとんど毎日のように通っていた常連だったのですが、

当時そこには50インチのメガロ筐体2台並べての「ぷよぷよ通」対戦台があり、「ぷよ通」常連のみなさんも全国レベルの人ばかり。その常連さんとの対戦目当てに他店や地方から訪れる人も多く、対戦を観戦しようというギャラリーもわんさか。日々、熱気ムンムンでした。

そんな全国レベルの人のプレイはと言えば、階段積みからの折り返し→その上に階段積みからの折り返し→さらにその上に階段積みと3段積み上げ、さらにその上の画面外の左右にまでいくつか積んでいく……というのがほぼ当たり前のようになっていて。

そこから、どちらかが「これで限界」というところまで積み終わって連鎖をスタートさせると、相手も連鎖を開始しての“おじゃまぷよ相殺合戦”が始まるというわけですね。

それがもう見応え満点で。ハイスピードにさくさくぷよが積み上げられていく様、消し始める瞬間の「そろそろ消し始める!」というカタルシス。互いの連鎖が相殺しあい、ほんのわずかどちらかが上回ったときには、ギャラリーから拍手と歓声がわきあがる。トッププレーヤーの最高のパフォーマンスです。

今でもよく覚えているのは、ある日の「ぷよ通」対戦のこと。やはり画面上の外にまで積み上げられたぷよを互いが消していき、「何回ばよえ~んって言えば気が済むんだ(笑)」と周囲から声が出るほどの連鎖の果てに……なんと、両プレーヤーがどちらも“全消し”して完全相殺の仕切り直しになったんですよね。

これにはもう、観戦していたギャラリーも笑うしかなく。

僕自身は「ぷよぷよ」は階段積みの折り返しができたりできなかったりぐらいの全然さっぱりな腕前なんですけど、“ぷよぷよ上級者”というのが、いかに恐ろしい存在なのかは、まざまざと脳裏に焼き付いています。

アーケード「ぷよぷよ通」より。全国レベルの人は階段積みを3つ折り返して積んで、上の画面外の左右にまで積んでいくんですよね。恐ろしい世界ですが、それだけに対戦は見応えたっぷりでした

そんなシントクセガですが、僕は「バーチャファイター」シリーズをはじめとした3D格ゲーの常連だったんですけど、2D格ゲーの常連には、プロ格闘ゲーマーとして世界的に名を馳せる梅原大吾さんもおり、先の「ぷよ通」常連さん、さらにシューティングゲームやレースゲームも全国クラスのスコアラーさんばかり。

あっちを向いてもこっちを向いても全国レベルのプレイが毎日ころがっているという、常軌を逸したゲームセンターでした。

こちらの「プロ格闘ゲーマー・ウメハラを育てた、90年代のゲームセンターと格闘ゲームのリアル(前編)」で、梅原さん自身も当時のシントクセガについて語っておられますね。

シントクセガ常連時代の梅原さんと言えば、思い出深いのは「『ヴァンパイアハンター』で286連勝したまま閉店時間になった」という事件。

僕がその日の夜にシントクセガに着いた頃には、梅原さんはすでに100連勝ぐらいしていて。それを見ようと結構な人だかりもできていました。

ですが、その中心にいる梅原さんは、同じく常連のラーズさんという人から借りた「男塾」を次の対戦者が乱入するまでの合間に読みながらというマイペースぶりでした。

僕はそんな梅原さんの横に座って、梅原さんが読み終わった巻の男塾を読みつつ、「ウメちゃん強いネー」なんてのんきに言ってました。

そのうちに梅原さんの連勝数は200を越え、256連勝目には連勝表示がカウンターストップしたらしく「New Chalenger」表示に戻ってしまい、ギャラリーから驚きと爆笑が巻き起こり。結局、その後も閉店時間になるまで負けなかったんですよね。今思えば、あれを間近で見られたのはいい思い出。

あの頃のアーケードシーンの盛り上がりを再び……というのはちょっと難しいとは思うのですが、また違った形で、ライブ感たっぷりにゲームを楽しめる場所が生まれてくれるといいなぁと思います。

さすがに当時の写真は見当たらなかったので、現在のセガ秋葉原1号館の写真を。昔はシントクという家電量販店のビルだったので当時の人らからはシントクセガと呼ばれてました。僕や梅原さんを含む常連は、閉店後も店の前でいつまでもわいわいゲーム話をしてました

そんなわけでコンパイル◯新作パズル「にょきにょき たびだち編」をきっかけに昔話をしてしまいましたが、「にょきにょき」は、おじゃまを任意のタイミングで降らせることができるということで、より手軽に戦略的なプレイができるようです。もちろん上級者はどんどん上手くなっていくとは思いますが、初心者でもいろいろできる、やりようがある、という上手いバランスになっていてくれるといいなぁと、楽しみにしております。

なお、今週末の15日から17日にかけて、アメリカ・ラスベガスにて世界最大の格闘ゲームの祭典「The Evolution Championship Series 2016」も開催されます。日本人選手の活躍や、トッププレーヤーならではの素晴らしい試合が繰り広げられるのを期待したいです。

ではでは、今回はこのへんで。また来週。