山村智美の「ぼくらとゲームの」
連載第19回
「EVO 2016」を堪能して「やっぱり格ゲーの熱気、いいネ!」って今年も思った話
2016年7月20日 12:00
この連載は、ゲーム好きのライター山村智美が、ゲームタイトル、話題、イベント、そのほかゲームにまつわるあれやこれやを“ゆるく”伝えるコラムです。毎週、水曜日に掲載予定。ちなみに連載タイトルは、本当は「ぼくらとゲームの間にある期待の気持ち」。新しい体験の、その発売を、いつでも楽しみにしている期待の気持ち。そのままだと連載タイトルとしては長すぎたので……「ぼくらとゲームの」。
ゴールデンウィーク以来の実に2カ月ぶりの連休だったわけですが、
みなさまこの三連休はいかがお過ごしでしたか?
先週もお伝えした通り、この3連休には
世界最大の格闘ゲームの祭典「EVO 2016」がラスベガスにて開催されました。
三連休中は釘付けでこの「EVO」の配信を見ていたという人も多かったのではないでしょうか。
外は暑いしね。
「EVO」ってなんですか?という人のために軽く紹介しますと、
EVOは「The Evolution Championship Series」の略で、対戦格闘ゲームの頂点を決める大会です。毎年アメリカで開催されており、1995年より前身となるゲーム大会から始まって、2002年には名称が「Evolution」に。そこから開催地はラスベガスになり、名称も現在の「EVO」になっていきました。今や世界最大の格闘ゲームの祭典となっています。
毎年その規模は拡大し続けており、今年の最終日はボクシングの世界タイトルマッチなども行なわれる格闘技の聖地的な場所「マンダレイ・ベイ・イベント・センター」で開催されました。
収容人数いっぱいの12,000人の観客が、プレーヤーへの大声援、試合への熱狂と興奮をみせるという、まさに世界最高峰、夢の舞台。
……僕が格闘ゲーマーしてた頃は、テレビの深夜番組「トゥナイト2」がたまーに「今、ゲーセンが熱い!」的にいじってくれるぐらいのものでした。そこからすると信じられない時代になりましたね。いや、ほんとに。
まぁ、余談はさておき。
今年は
「ストリートファイターV」
「ギルティギア イグザード レベレーター」
「鉄拳7 Fated Retribution」
「大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U」
「大乱闘スマッシュブラザーズDX」
「アルティメット マーヴル VS. カプコン 3」
「キラーインスティンクト」
「モータルコンバットX」
「ポッ拳 POKKEN TOURNAMENT」
がメイン種目となりましたが、なかでもやはりメイン中のメインは「ストリートファイターV」。5,000人を越える出場者からベスト8には日本人選手が6人も食い込むという結果になりました。
そして、その頂点に立ったのは、韓国のInfiltration選手!
いやー、前評判も高かったInfiltration選手(インフィル選手)ですが、強かったですね。
印象的だったのは、日本のプレーヤーと海外のプレーヤーとでは、重視しているポイントが異なっているように思えたところ。
日本のプレーヤーは打撃と投げの直接二択になるシチュエーションの多さを理解しての、投げによる読み合い作りをしているプレーヤーさんが多かった印象があります。(特にふ~ど選手が投げキャラのミカ使いなのが大きいですが)
一方でインフィル選手を代表に海外のトッププレーヤーは、徹底したリスクヘッジ、技のリーチと判定を活かしてのペース作りを重視していた印象です。(これももちろんインフィル選手の印象があまりに大きいです)
「ストV」はゲームスピードが速く攻めが強い、とリリース前から評されてきましたが、そうなると逆に“攻めが強いゲームバランスだからこそ、ガード力と差しこみの上手さが差をつける”ということでもあるんですよね。そこから、投げと打撃の直接二択を最大限勝っていくという流れに。
順を追うと、
「このゲーム、スピード速くて攻めが強い!」
↓
「じゃあ攻めをきっちりガードするのがむしろ大事じゃね?1コンボでかいし!」
↓
「そういうガード重視な相手を崩すなら投げでしょ、たまに中段も!」
↓
「じゃあ打撃と投げの直接二択の読み合いで自分が試合のペースを取れるようにしよう!」
という流れは自然かな、と思います。
だけど、意外というか、よくよく考えると順当というか。インフィル選手を筆頭に海外のトッププレーヤーさんはその流れには乗っていない人がチラホラ見られ、ガード重視&リスクヘッジ選択から打撃振りの精度で勝つというスタイルだったんですよね。むしろ相手に攻めさせて、前に入るタイミングの差し合いで勝ったり、連携を読んで逆に1コンボ差し込むというような。
もちろん海外のプレーヤーさんにも攻め攻め暴れん坊な人はいるんですけど……印象的だったのは、中国一とされるシャオハイ選手 VS アメリカの顔ジャスティン・ウォン選手の対戦(2日目にありました)。そこでジャスティン選手は“前ステップからガード”という動きを見せまして。僕はそれを見て「なんだ今の!」って思わず声に出しつつ笑ってしまったんですけど。そこからもガード意識の高さとリスクのある行為への意識の高さを感じた次第。
グランドファイナル付近のインフィル選手、ふ~ど選手、Yukadon選手の試合は、まさにそのポイントのぶつかり合いに自分には思えました。
ふ~ど選手がインフィル選手相手に“相手の起き上がりにジリ下がりコマンド投げ”という流れを変える一発を放って勝利し、続いてのYukadon選手もインフィル選手相手に、特に起き攻めでの投げで読み合いの主導権を取りに行っていると思えたのですが。次第にインフィル選手は対応していき、終盤には差し合いの強さを警戒しているYukadon選手を逆に投げに行くというプレイにもなっていきました。
そして迎えたふ~ど選手との再戦、グランドファイナルでインフィル選手が見せたのは、起き攻めの直接二択を、画面端なら垂直ジャンプ、端じゃなければジリ下がり、という徹底したリスク回避の選択。直前の対戦で喰らった起き攻めのジリ下がりコマ投げを封印できる手でもあるでしょうか。付き合ってもらえないとミカは苦しいですよね。
非常にクレバーなインフィル選手に対して劣勢になったふ~ど選手でしたが、そこからの粘りと集中力が素晴らしくて。インフィル選手がエアポケットっぽい瞬間にスッと入れてきた前ステ投げに、見てからっぽい打撃で反応したあたりはたまらないものがありました。
それにしても、安定行動がない……試合のペースや流れがもろに出る……そう言われる「ストV」に、徹底したリスクヘッジと通常振りの精度で勝つという選択は、いかにもプロらしい選択とも思えます。
安定して勝利するのが難しいゲームだ、と感じたからこその選択かもしれません。
とまぁ、あれこれ好きに書いてしまいましたが、こんな感じに「このときこういう意識だったんじゃないかな」とか、「このプレイってこうなのかな」と、読み取ってみたり、そこからまた試合を見なおしてみたりと、見る側の楽しみ方、面白さもたっぷり。
結果しか知らないという人はぜひ、下のアーカイブなどで熱戦の数々を見てみてください。(特に2日目は必見ですよ)
また、こちらにもありますように、「EVO Japan」の開催も決まり、9月下旬頃にその詳細が発表されるということなので、そちらも楽しみです。
ではでは、今回はこのへんで。また来週。