3Dゲームファンのためのグラフィックス講座
西川善司の3Dゲームファンのための「GRAVITY DAZE」グラフィックス講座(後編)
(2013/2/13 00:00)
おわりに
「GRAVITY DAZE」は、ゲームとしてもよくできており、プレイしていて楽しい作品だが、ゲームグラフィックス単体で見ても非常に味わい深いビジュアルテイストが実現出来ており、ゲームファンはもちろん、その他方面からも高い評価が得られるのも合点がいく。
個人的には、PS Vitaの最初期作品でありながら、PS Vitaの常識的限界を超えるようなテクニックを駆使して作り込まれている点に感動する。ハードウェアの限界をソフトウェアテクニックで超えるのは昔からゲームプログラミングの醍醐味であるわけだが、その意味では「GRAVITY DAZE」はPS Vita最初期タイトルにして、早くも究極のPS Vitaタイトルの称号を獲得してしまった感がある。
2012年末商戦はやや寂しかったPS Vitaワールドに喝(活)を入れてくれるのはこの開発チームかも知れない。今後のこのチームの動向にも期待したい。最後に各メンバーからのコメントを紹介しておこう。
横川氏:開発期間にして約3年。もう1年前のことですが、なんとかPS Vita本体発売直後にリリースすることが出来てよかったと思っています。本作はPS Vitaの限界に挑戦したプロジェクトとして、エンジニアとしてとてもやり甲斐があったプロジェクトでした。ゲームグラフィックスは今後ますます進化していくはずですが、それと同時に表現が飽和していく可能性があります。本作はそうした流れとは、全く別の潮流でできることを挑戦したわけですが、高く評価されたのはそうした部分だったのかなと自負しています。
松田氏:とてもやり甲斐のあるプロジェクトでしたが、とても長かったので途中は自分が作っているものが「本当に面白いのか」がよく分からなかった時期もあります(笑)。こうしてユーザーの皆さんから高い評価を頂けて報われた気持ちで一杯です。
宮前氏:本作は美しい映像世界の中を自由に動き回るだけでもかなり楽しいと思っています。たとえエンディングを迎えたとしても気が向いたときにまた触って貰えると嬉しいです。自分は、ゲームグラフィックスはゲームに人を引きつける上でとても重要な要素だと思っていますので、今後も、この分野の研究開発に力を入れていきたいと思っています。
土蔵氏:制作中はゴールが見えない地獄だったように思えていますが(笑)、いざ完成してみると、苦労して実装したあらゆる要素がガッチリとハマり合って、満足の行く出来映えになりました。本作はまさに「技術の進化がゲームの面白さを広げる」を具現化したタイトルだと思っています。
山口氏:プロジェクト期間中は、アートディレクターの立場から、開発スタッフには相当な無理難題を押しつけてしまったと思っています。今思えば…ですが(笑)。いずれにせよ、そうした要項を全て満足の行く形で実現してくれたプログラマ、技術スタッフに感謝しています。本作でやり残したことは幾つかあるんですが、それを言ってしまうと次回作のネタバレになってしまうんで(笑)。我々の次回作にどうかご期待下さい。
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