レビュー

死に塗れる新たなカンフー系アクション「Phantom Blade Zero」レビュー

ボスを倒すと武器を受け継ぐ。ジャスガで凌ぐ中国武術大作

【Phantom Blade Zero】
10月29日 発売
価格:
スタンダードエディション:8,580円
デジタルデラックスエディション:9,980円
対応プラットフォーム:PlayStation 5、PC(Steam / Epic Games Store)

 中国のS-GAMEが手掛ける待望のアクションRPG「Phantom Blade Zero」がいよいよ10月29日に発売される。中国武術のカンフーアクションをベースに、ダークで独自なテイストの「カンフーパンク(Kungfupunk)」の世界観を融合させた大型シングルプレイタイトルとなっている。

 舞台となるのは、血と信念によって紡がれる伝説の裏社会「武林(Wulin)」。主人公の「魂(ソウル)」は、組織の最恐の剣士でありながら裏切り者として追われる身となり、かつての義兄弟である「Zuo Shang」との決闘で致命傷を負ってしまう。謎の治療者「鬼手」によって一命を取り留めたものの、残された寿命はわずか66日。命の刻限が迫る中、ソウルは自身を陥れた陰謀の真相と生き残る術を求めて、苛烈な戦いへと身を投じていく……

 今回、発売に先駆けてレビュー用ビルドをプレイする機会が得られたので、本場仕込みのカンフーアクションの触感や、奥深い探索・装備システム、ダークな世界観の魅力をお届けしたい。今回はプレイステーション 5版をプレイした。

 率直なファーストプレイの感触を簡潔にまとめるなら、本作は激ムズながら様々な武器を駆使してバトルする「爽快アクション」の一言に尽きる。登場するボス敵たちはいずれも残虐で手強く、多彩な攻撃手段を持つのでゴリ押しは通用しない。しかし、敵の行動を冷静に判断し、攻撃をきっちりと「ジャストガード」や「ジャスト回避」して対応できた時には得も言われぬ爽快感が待っている。

本作の主人公となる「魂(ソウル)」はなかなかのイケメン
ソウルを狙う刺客たちはいずれも劣らぬ強豪ばかり
壮大な中国の山の中など、高品質なビジュアルが楽しめる

66日の命を繋ぎ、陰謀渦巻く「武林(Wulin)」の暗部へ。裏切りと復讐のカンフーパンク劇

 物語は、組織のリーダー殺害の濡れ衣を着せられ、胸を貫かれたソウルが死の淵から蘇るところから始まる。延命の条件はわずか66日。武林の闇に潜む陰謀を暴き、治癒の術を見つけ出さなければソウルに未来はない。

 本作の舞台である「武林」は、義理や裏切り、破られた掟に縛られた猛者たちが蠢くダークな世界だ。大自然の中に建てられた木造の建造物やキャラクターたちの服装、アイテムなどからやや古い時代の中国が舞台のベースとなっているのが感じられるが、伝統的な中国武俠(Wuxia)の美学に、どこか歪でスチームパンク的な要素を加えた「カンフーパンク」のデザインが見事に結実しており、退廃的でありながら圧倒的で美しい映像美で描かれる。

 旅の途中で出会う人物たちもユニークな者たちばかりだ。怪しげな取引を持ちかけてくる商人や、父親を救うために危険な森の中を1人で旅する少女など複雑な人間関係と重厚なドラマがプレーヤーを惹きつける。さらに、アクション制作には映画「イップ・マン」シリーズで知られるドニー・イェン氏がクリエイティブコンサルタントとして参加しており、ソウルの父親「モー・イェン」役として劇中にも登場するなど、カンフー映画ファンには堪らない配役も光る。

 また、道中に挟まるカットシーンについても詳しい話は秘密にしておくが、過去の回想の演出などがかなりユニークな仕上がりになっており一見の価値ありなので、是非プレイして見てみてほしい。

道中、声のみが聴こえてくる「虚空様」はこちらの味方のようだ
虚空様の配下の職人三姉妹たちは、ソウルの武器や装備などの強化をしてくれるありがたい職人たち
サブクエストなども豊富に用意されており、ソウルの抱える問題以外のトラブルに巻き込まれることも……

敵の復活なし!広大なフィールド探索と洗練された案内システム

 ゲームの基本サイクルは、広大なフィールドの探索と道中に立ちはだかる強敵の討伐だ。チェックポイントともいうべき「鈴(Crane Bell)」がフィールド内に点在しており、この「鈴」に触れることで周辺の未開拓エリアのマップ情報が解放されるほか、主人公の体力が全快になる宿屋代わりにもなっている。

 さらにはセーブポイントでもあり、1度触れた「鈴」の場所なら瞬時にファストトラベルで移動できる拠点にもなっている。加えてスキルの獲得や武器の強化、ボス戦などバトル中の体力回復の手段となる「薬瓶」についてもここで回復できる。

 特筆すべきは「鈴」からの再開時は一度倒した敵が復活しないというレベルデザインだ。同じような敵を何度も倒してレベリングする必要がなく、純粋に新しいエリアを開拓する冒険の楽しさに集中できるよう設計されている点は非常にありがたい。しかもこの「鈴」の間隔が過度に離れておらず、近づくとソウルから謎の赤い「導きの糸」が表示されるため、道に迷うストレスなく探索を楽しめる工夫が行き届いている。

 難易度設定については、最も簡単な「初陣者」、ノーマル設定の「破陣者」、高難度の「逆天者」に加えて、いずれかのモードで1度クリアすると選択できるようになる「六十六日」があり、こちらは死亡回数上限66回でゲームオーバーになるというやり込みモードも用意されている。

 難易度設定のチョイスについての筆者の個人的な感触としては、アクションゲームが得意でない人は早いうちに「初陣者」を選択するのがおススメだ。本作のアクションはどちらかというと「死にゲー」の要素が強いので、最も簡単な「初陣者」であっても、ボス戦ではプレーヤー自身の死体の山を積み上げることになる。

本作において拠点となる「鈴」はかなり重要なチェックポイントだ
「鈴」の近くまでくると赤い紐が表示されるようになるので、迷わずに向かうことができる
鶴の形の「鈴」は拠点として用途以外にもソウルの過去の記憶を呼び覚ます役割を持つ
橋がないような場所も岩壁を走って突破するなど、アクション要素も魅力満点だ
難易度は最も簡単な「初陣者」から高難度の「逆天者」までの3種類に加えて、いずれかのモードで1度クリアすると選択できるようになる「六十六日」がある。最高難度の「六十六日」は66回死ぬとゲームオーバーになる有限コンティニューの仕組みとなっている

カンフー映画がそのまま遊べる!「Sha-Chi(殺気)」の削り合いと緻密な攻防

 「Phantom Blade Zero」の最大の魅力は、自らの手でカンフー映画さながらの華麗な殺陣を繰り出せるアクション体験にある。通常の移動やジャンプに加えて、特定の場所では壁を走るなど、フィールド移動時は、簡単な操作で華麗なアクションが楽しめる作りとなっている。

 敵とのバトルにおいては、基本攻撃は弱攻撃と強攻撃(殺意攻撃)の組み合わせで直感的に連続技が出せるほか、片手で鮮やかに刀を振り回し、相手の攻撃をいなして叩き込むテンポ感が極めて心地よい。

 敵とのバトルにより「精純殺気」がストックされ、タイミングよくL2トリガーを使うことで、発動できるのが絶技だ。いわゆる必殺技だが、かなり強力な攻撃技となるので、ボス戦ではメインのダメージソースとなる。敵の体力を一定量削ると発生するとどめの一撃(フィニッシュブロー)も利用可能で、テンポよくバトルが進められる。

 ボス以外の敵が相手の場合、一撃で敵を仕留められる「暗殺」も気持ちいい。敵がこちらに気が付いていない状態で発動できる。これらの技を活用することでリズムよくフィールドでのバトルが完結するので、ぜひ活用していきたい。

 戦闘の核心を握るのがL1ボタンによる「ガード」とR1ボタンによる「回避」だ。特に敵の攻撃が当たる直前にタイミングよくこれらを発動する「ジャストガード」と「ジャスト回避」は、本作における必須クラスの防御技術となっており、ボス戦においてはこれらをどれだけ成功させたかが、勝利のカギとなる。

 ボス戦で重要になるのがお互いの「Sha-Chi(殺気)」ゲージの管理だ。ガードを受けたり強い攻撃を食らうことで「殺気」が減少し、ゼロになると一定時間無防備状態に陥る。敵の動きが止まるので、大チャンスでもあるのだが、普通の攻防のみで殺気を削り切るのはかなり困難だ。

 そのため、単に攻撃を押し込むだけでなく、タイミングを合わせた「ジャストガード」や「ジャスト回避」を決めることで相手の「殺気」を大幅に削り取っていく緊張感あふれる攻防が展開される。

 特に注意したいのは、「青い光」と「赤い光」の予兆から繰り出される強力な攻撃で、特に赤い光の攻撃については、通常ガードや回避が通用せず、正確なジャスト回避でしか防げない。そのため、見極めと見切りが非常に難しい一方で、うまく決まった時の爽快感は格別だ。

 さらに、メイン武器を途中で切り替えることで「殺気」ゲージが瞬時に回復する仕様があり、コンボの途中で武器を持ち替えて攻めを継続する感覚は、まさに武術の達人になったかのような疾走感を与えてくれる。

冒頭のチュートリアルでは、戦闘の基本動作が学べる。特に「ジャストガード」と「ジャスト回避」はボス戦においてかなり必須級のアクションになるので、成功率を上げておきたい
敵の攻撃時に「赤い光」の予兆が発生したら「危険」のシグナル!「ジャスト回避」を決めろ!
「ジャスト回避」に成功すると、敵の「殺気」を大幅に削れるほか、瞬時に敵の背後に回るため、攻撃のチャンス!ゲージ消費の殺気攻撃や「精純殺気」消費の絶技など、大ダメージを与える技で体力を削りまくれ!
「青い光」の予兆なら「ジャストガード」でもOK!「ジャスト回避」と使い分けてボスを撃破だ!
「ジャストガード」が決まると、敵の「殺気」が削れ、ド派手な演出で敵が怯むのでチャンス到来

50体以上のボスと30種以上の武器!武器やスキルの強化など

 本作には実に50体以上ものボスが存在し、それぞれが固有の戦闘スタイルと強烈な個性を放っている。ソウルの武器構成は、メイン武器2種に加え、サブ武器とも言える「影の武装」も装備できる。メイン武器は30種類以上、影の武装は25種類以上用意されており、ボスを撃破して奪ったり、ストーリーの進行の流れでもらえたり拾ったりして手に入れることができる。

 ボス戦では単なる力押しだけでは勝つことができない。敵の攻撃パターンやギミックを把握し、そこにうまく「ジャストガード」や「ジャスト回避」を合わせて、敵の殺気を削り、弱ったところに連続技や絶技を発動させて体力を削る、というクレバーな戦略と、死んで覚える「死にゲー」の根性も人によっては必要となる。ボス戦の途中で体力を回復する手段は「薬瓶」のみとなっているため、回復のタイミングも重要だ。

 今回のプレイにおいては、とにかくこのボス撃破がなかなか敵わず、かなり苦労することになった。とにかく敵の追撃はとても厳しく、R2ボタンの回避行動のみだと、「ジャスト回避」に失敗した際には回避しきれずに大ダメージを喰らってしまう。早すぎる回避行動に対しては、きっちりとこちらの動きを追尾して攻撃してくるのも厄介だ。

 武器については、次々と手に入る武器をどう組み合わせてボスとのバトルに挑むか、というプレーヤーの好みに合わせたカスタムの要素があるのも面白いところ。本作においては主人公のレベルはなく、道中で拾った強化アイテムや、「魂塵」などのポイント消費によるスキル獲得と武器の強化で主人公をより強靭に鍛え上げていく。どの武器を強化してどのスキルを伸ばすか、など、プレイスタイルにあった強化ができれば、より戦況を優位に進められるシナジーが存在する。

 また、ソウルの2倍以上の巨体を誇るボスを撃破することで影の武装の「巨凶の斧」が入手できるなど、倒したボスの性質を受け継いだ武器が手に入り、それを使ってさらに強大なボスへ挑むというサイクルは、ハック&スラッシュ的な中毒性を生んでいるとも言える。

 影の武装については、フィールド上で必要になるものも多く、最初に入手した「巨凶の斧」なら、道を塞ぐ鎖を破壊できるし、鎖鎌ならより離れた場所への移動なども行なえるなど、手に入れるほど、行動範囲が広がる仕組みになっているのも本作の魅力の1つとなっている。

ボスクラスの出現時にはちょっとしたカットシーンが表示される
ボスの体力を一定量まで減らすことで、フィニッシュブローが決められるアイコンが画面に表示される!
通常アクションとは異なる演出で敵のボスにとどめを刺すことができる
ボス撃破後は、強力な武器やサブ武器「影の武装」が手に入る
フィールドを進むうえで必須なサブ武器「影の武装」は戦闘で使うことも可能
行く手を遮る鎖。「巨凶の斧」入手前は素通りしかできなかったが手にすると、破壊して通過が可能に!
見事に破壊に成功!操作はR2トリガーで行なう

本場の武術指導と香港スタイルが昇華した、新時代カンフーアクションRPGの傑作

 「Phantom Blade Zero」をプレイして強く感じるのは、開発陣の中国武術とカンフー映画に対する並々ならぬ敬意と情熱だ。実際のモーション制作において、ワイヤーアクションスタジオでスタント俳優が即興で演じた殺陣のパターンからゲームに最適な動きを抽出・精査するという「香港映画の撮影手法」が採り入れられている結果、単なるアニメーションの継ぎ接ぎではない、スムーズで滑らか、かつ泥臭くも美麗な本格アクションが完成しているのが、実際のゲームプレイからも感じられる。

 一方でプレイしていて気になったのは、やはりボス戦の難易度の高さだろうか。ボスの攻撃に対して通常のガードや回避だけでは体力を維持できず、「ジャストガード」や「ジャスト回避」をかなり高確率で決めないと、ボスに勝つのが困難な仕組みになっている。ところが、このタイミングがなかなかシビアなので、難易度によってもう少しこれらが決まりやすくなるような工夫があってもよかったように感じた。

 重厚でダークな武林のストーリー、「殺気」を削り合うヒリヒリとした剣戟、そして50体を超えるボスとの壮絶な死闘。ダークヒーローとして孤高の刃を振るうソウルの生き様を、ぜひその手で体験してほしい。

服装のカスタマイズも行なえる。デフォルトは笠をかぶった状態だが、笠を外すことも可能
メイン武器とサブ武器「影の武装」は2種類まで同時に装備し、戦闘中などにショートカットで切り替えて利用できる。メニューを開くことでの入れ替えも可能だが、ボス戦の途中などでの変更は行なえない
能力(スキル)強化も本作における重要な要素の1つ。強化にはフィールドで拾える素材や「魂塵」と呼ばれるポイントが必要になる
ボス撃破時の「斬」の演出がカッコいい
やられてしまうと赤字の「DEAD」が……