レビュー

PS5/PC用コントローラー「Razer Raiju V3 Pro」レビュー

約6年ぶりに「Raiju」が復活。TMRサムスティックを備えたフラッグシップモデルを検証

【Raiju V3 Pro】
10月24日 発売
価格:32,980円

 Razerは、プレイステーション 5/PC用コントローラー「Raiju V3 Pro」を10月24日に発売する。価格は32,980円。

 「Raiju V3 Pro」は、Razerで初めてプレイステーション公式ライセンスを取得したコントローラー「Raiju」シリーズの最新モデル。合計6個の拡張ボタン、マウスクリックのような高速なレスポンスが可能な「Razer Pro HyperTriggers」、ドリフト現象を抑制しつつピクセル単位の操作が可能な「TMRスティック」を搭載するなど、プロの名にふさわしいハイエンドコントローラーに仕上がっている。

 今回、Razerより発売前に試用する機会を得たので、本稿では「Raiju V3 Pro」のレビューをお届け。外観やカスタマイズ要素、実際の使用感まで、進化した「Raiju」の魅力を紹介していく。

【Razer Raiju V3 Pro | PS5に最適なeスポーツ用プロコントローラー】

約6年ぶりに復活。「Raiju」シリーズを軽くおさらい

 最初に「Raiju」シリーズについて軽く振り返っておこう。初代「Raiju」は、Razer初のPS公式ライセンスを取得したコントローラーとして2016年に登場。そこからカスタマイズ要素を強化した「Raiju Ultimate(2018年)」、左右非対称レイアウトを採用した「Raiju Tournament Edition(2018年)」、スマートフォンに対応した「Raiju Mobile(2019年)」の計4モデルが展開された。

 一方で、RazerはXbox公式ライセンスを取得した「Wolverine」シリーズも同時に展開。初代「Wolverine Ultimate(2018年)」を皮切りに、「Wolverine V2(2020年)」とコンスタントにリリースしていく中、2023年にPS公式ライセンスを取得した「Wolverine V2 Pro」が登場。これにより、Razerのコントローラーは「Wolverine」シリーズに統合されたように見えた。

PS公式ライセンスを取得した「Raiju」シリーズは、2016年から2019年にかけて4モデルを展開
一方でXbox公式ライセンスを取得した「Wolverine」シリーズも同時展開。画像は2018年発売の「Wolverine Ultimate」
2023年に「Wolverine」シリーズからPS公式ライセンスを取得した「Wolverine V2 Pro」が登場。これでRazerのコントローラーは「Wolverine」に統合されたかと思われた

 だが、今回「Raiju」シリーズが約6年ぶりに復活。そして、今後はプレイステーション/PC用コントローラーを「Raiju」、Xbox/PC用コントローラーを「Wolverine」として展開していくことが、改めて発表された。

 「Raiju V3 Pro」は、2024年9月に発売された「Wolverine V3 Pro」と双璧をなすフラッグシップモデルとして登場。これによって、Razer史上最強のコントローラーラインナップとなった。

「Raiju V3 Pro」として「Raiju」シリーズが約6年ぶりに復活
「Wolverine V3 Pro」と双璧をなすフラッグシップモデルとなり、Razer史上最強のラインナップが完成した
外箱には「Raiju V3 Pro」を大きくプリント。Razerらしいデザインでありながら、プレイステーションを彷彿とさせるホワイトとブルーのパッケージになっている
内箱には英語とフランス語で「プロのために」と書かれている。早速、中身を見ていこう

eスポーツでの使用も想定した「Raiju V3 Pro」の外観をチェック

 ここからは「Raiju V3 Pro」の外観やスペックを確認していこう。カラーはブラックとホワイトの2色展開で、今回お借りしたのはブラック。筐体だけでなく、△○×□ボタンのシェイプスロゴまで黒一色で統一されており、唯一PSボタンのみがライトグレーでプリントされている。シンプルなデザインでカッコいい。

 付属品はキャリングケース、交換用スティック×2、背面ボタン用キャップ×4、ドライバー、USBレシーバー、USBケーブルとなっている。主要パーツは全てキャリングケースに収めることができるため、持ち運びもしやすい。

【外観・付属品】
今回お借りしたのはブラック。シンプルなデザインでカッコいい
付属品には交換用スティックやUSBレシーバー、ドライバーのほか……
背面ボタン用キャップ、USBケーブル、説明書&ステッカーが入っている
主要パーツは全てキャリングケースに収められる
【「Raiju V3 Pro」のスペック】
  • 対応プラットフォーム:PS5/PC
  • 接続方法:無線(Razer HyperSpeed)、有線
  • ポーリングレート:2,000Hz(有線時)、250Hz(無線時)
  • サムスティック:TMRセンサー、左右対称配置
  • トリガー:ホール効果 Razer Pro HyperTriggers
  • アクションボタン:メカタクタイルPBTボタン
  • 方向ボタン:8方向フローティング メカタクタイルPBT Dパッド
  • マルチファンクションボタン:6個
  • オーディオジャック:搭載
  • ハプティック:非搭載

 ボタン配置は、基本的にPS5の純正コントローラー「DualSense」や「DualSense Edge」を踏襲したレイアウトで、サムスティックは左右対称配置となっている。方向ボタンのみ、8方向の円形タイプとなっているが、PS5ユーザーであれば違和感なく使用できるだろう。

 なお、△○×□ボタンや方向ボタンには「Razer メカタクタイルPBTボタン」を採用。マウスクリックのような“カチカチ”とした感触と、PBT素材による“サラサラ”とした質感を両立しており、押し心地は非常にいい。

 コントローラーの中央下側に配置されている「ファンクションボタン」は、DualSense Edgeに搭載された同名のボタンと同様の機能を持ち、このボタンを押しながら△○×□ボタンのいずれかを押すと、内蔵されたプロファイルを切り替えられるほか、方向ボタンを上下させるとボリュームをコントロールできる。

【ボタンレイアウト】
左手側を確認。上からクリエイトボタン、8方向タイプの方向ボタン、サムスティックとなっている
次に右手側。上からオプションボタン、△○×□ボタン、サムスティックが並んでいる
最後に中央部分。上からタッチパッド、PSボタン、ファンクション(FN)ボタン、マイクミュートボタンだ

 各ボタンの機能やマクロを割り当てられる「マルチファンクションボタン」は上側面に2つ、背面に4つで合計6個搭載。これらのボタンもマウスクリックのような“カチカチ”とした押し心地が特徴となっている。なお、ボタンの割り当てにはRazerの公式ソフトウェア「Synapse 4」が必要だ。

 上側面のM1/M2ボタンは人差し指、背面のM3/M4ボタンは中指、M5/M6ボタンは薬指で操作する形で、特に背面の4つは握ると自然に指が来る位置に置かれている。だが、背面のボタンはかなり押し心地が軽く、ゲーム中に思わず力が入ってしまうと誤入力する可能性がある。そこで「Raiju V3 Pro」には、使わない背面ボタンを物理的に塞いでしまうキャップが付属しているのだ。

 付属のドライバーを使ってボタンを取り外し、キャップで塞ぐと、まるで最初から背面ボタンがなかったかのように平らになる。マグネット式で背面ボタンを取り外せる製品と比較して、取り外しに手間はかかるが、キャップのおかげで握った際に違和感はない。好きな背面ボタンだけを残せるので、自分好みにカスタマイズしよう。

【マルチファンクションボタン】
上側面にはR1/L1ボタン、R2/L2トリガー、M1/M2ボタン、USB Type-C端子を搭載
M1/M2ボタンは人差し指で押す位置にある。ボタンやトリガーが邪魔にならないちょうどいい位置だ
背面にはPS5/PC切り替えスイッチ、有線/無線切り替えスイッチのほか、M3/M4/M5/M6ボタンを搭載
グリップに沿うような形で配置されている
コントローラーを握った時に、自然と中指と薬指が来る位置だ
実は背面のマルチファンクションボタンは取り外し可能
付属のドライバーでネジを回すと……
簡単に取り外せる
ただ、ボタンを取り外しただけだと、握り心地があまり良くない
そこで付属のキャップを使って塞ぐことが可能。まるで最初からボタンがなかったかのように、シームレスなグリップとなる
好きなボタンだけを残すことも可能。自分好みのカスタマイズが可能だ

 左右のサムスティックには、トンネル磁気抵抗効果(Tunnel Magneto Resistance)を利用した「TMRスティック」を採用。ドリフト現象を抑制しつつ、ホールエフェクトセンサーと比較して、より精度の高いスティック操作が可能だ。耐久性と精密性を両立した新たなサムスティックとして「Wolverine V3 Pro 8K PC」でも採用されている。

 また左右のトリガーには、アナログトリガーとマウスクリックのようなボタン操作を切り替えられる「Razer Pro HyperTriggers」を採用。レースゲームのような繊細な操作が必要なゲームはアナログトリガー、FPSのような素早さが求められるゲームにはボタン操作といった形で、ゲームのジャンルやプレイスタイルによって切り替えられる。

【TMRスティック】
左右のサムスティックには、耐久性と精密性を両立した「TMRスティック」を採用している
標準で装着されているのは、DualSenseと同じような凹型のスティック
少し背の高い凹型のスティック、丸みを帯びた凸型のスティックが付属しており、簡単に変えられる
【Razer Pro HyperTriggers】
左右のトリガーは、アナログトリガーとボタン操作を切り替えられる「Razer Pro HyperTriggers」を採用
トリガーの開放状態
ボタン操作時の深さ。“カチカチ”というマウスクリックのような感触となっている
アナログトリガー時の深さ。レースゲームなど、精密なトリガー操作が必要なゲームにピッタリだ

 筆者所有の「DualSense Edge」と比較してみた。両者は似たようなグリップ形状とボタンレイアウトになっているが、実は「Raiju V3 Pro」の方が全体的に少し大きく、グリップに膨らみがある。そしてDualSense Edgeは334g、Raiju V3 Proは257gと圧倒的に軽い。これは両者のターゲットの違いによるものだ。

 そもそも「DualSense Edge」は、PS5付属のDualSenseからアップグレードするゲーマー層を想定しており、背面ボタンは2個に抑えられている一方で、アダプティブトリガーや内蔵スピーカーといったゲームへの没入感を高める機能を搭載し、“PS5でのゲーム体験”を重視している。サムスティックの取り外し機構も備えているため、重量増は避けられない。

 一方の「Raiju V3 Pro」はeスポーツでの使用を想定し、マルチファンクションボタンは6個と拡張性が高い一方で、アダプティブトリガーや内蔵スピーカー、ハプティックフィードバックといったDualSenseならではの機能は搭載されていない。これによって軽量化を果たし、長時間のゲームプレイでも疲れにくくなっているのだ。

 「DualSense Edge」と「Raiju V3 Pro」のどちらを選ぶか迷う方もいるかもしれないが、RPGやアクションゲームなどをプレイするゲーマーには「DualSense Edge」、本気でFPSをプレイしたり、長時間ゲームをプレイするゲーマーには「Raiju V3 Pro」をオススメしたい。

【「DualSense Edge」と比較】
筆者所有の「DualSense Edge」と比較。ボタンレイアウトに大きな違いはないが……
実は「Raiju V3 Pro」の方が少し大きく、重量は257gと軽いのだ
「DualSense Edge」のサムスティックはポテンショメータで交換可能。「Raiju V3 Pro」はTMRスティックで固定式となっている
「DualSense Edge」は背面ボタンを2つ、「Raiju V3 Pro」はマルチファンクションボタンを6個搭載
「DualSense Edge」はアダプティブトリガー内蔵で、トリガーストップは3段階。「Raiju V3 Pro」はアナログトリガーとボタン操作の切り替え式だ
このように似ているようで、設計思想が全く異なる両者。自分のプレイスタイルに合ったコントローラーを選びたい

「GT7」&「BF6」で「Raiju V3 Pro」の使用感をチェック

 続いては実際に「Raiju V3 Pro」をゲームで使っていこう。最初にPS5 Proに無線で接続したのだが、注意点として無線レシーバーがUSB Type-A端子なので、薄型PS5やPS5 Proユーザーは背面のUSB Type-Aポートを利用する必要がある。設置環境によっては、背面のUSB端子にアクセスしづらいユーザーもいると思うので、別売りではあるが、USB延長ケーブルなどで対策しておくと便利だ。

まずはPS5で使用。今回用いたPS5 Proは、前面がUSB Type-Cポートのみで、付属のUSBレシーバー(Type-A)と合わない
そのため薄型PS5やPS5 Proで使用する際は、背面のUSB Type-Aポートを利用する必要がある。背面にアクセスしづらいユーザーは、延長ケーブルで対策しておこう

 まずは「グランツーリスモ7」をプレイした。レースゲームはサムスティックとアナログトリガーの両方を酷使するため、コントローラーのテストにはピッタリなジャンルだ。

 結果から言うと、TMRセンサーを採用したサムスティック、ホールセンサーを採用したアナログトリガー共に、非常に精密な操作が可能で問題なくゲームを楽しめた。「DualSense Edge」のサムスティックとアナログトリガーと比較して、少し軽い操作感のため、最初のうちは慣れが必要だが、使っていくうちに感覚を掴めるようになる。

 アダプティブトリガーとハプティックフィードバックに対応していないため、レースへの没入感は減少しているが、複雑な機構を搭載せず、耐久性の高いパーツを使用することで、長時間のドライビングでも安心してプレイできる。シムレーサーの良き相棒になってくれるだろう。

サムスティック、アナログトリガー共に精密な操作が可能で「GT7」を快適に楽しめた
アダプティブトリガーなどの複雑な機構を搭載せず、耐久性の高いパーツで信頼性を向上させている。「Raiju V3 Pro」は長い間、良き相棒となってくれるだろう

 続いてはPCに無線で接続し、10月11日に発売されたばかりのFPS「バトルフィールド6」をプレイした。本作は、サブウェポンやガジェットの切り替えで、様々なボタンを駆使することになるが、ここで役に立つのが「Raiju V3 Pro」にある6個のマルチファンクションボタンだ。

 マルチファンクションボタンにダッシュやサブウェポンへの切り替えを割り当てることで、サムスティックから親指を離すことなく各種操作が可能となるため、バトルで大きなアドバンテージを得られる。実際、スムーズに武器を切り替えられるようになり、バトル中の操作性がグンと向上した。

 一方でバトル中に思わず力が入ってしまい、不意に武器が切り替わってしまうことも何度かあった。この点は、割り当ての位置を変えたり、誤操作してしまうボタンをキャップで塞ぐことで、よりプレイスタイルにマッチさせられる。自分だけのコントローラーを育てるような感覚で、カスタマイズを楽しもう。

「Raiju V3 Pro」のマルチファンクションボタンを活用することで、バトル中の操作性がグンと向上した
一方で熱いバトルを繰り広げている最中、コントローラーを強く握ってしまい、背面のボタンを不意に押してしまうこともあった
カスタマイズして自分だけのコントローラーを育てていこう

「Raiju V3 Pro」は「DualSense Edge」と並ぶもう一つの選択肢に

 ここまで「Raiju V3 Pro」のレビューをお届けしてきた。約6年ぶりに生まれ変わった「Raiju」は、TMRサムスティックや切り替え可能な「Razer Pro HyperTriggers」といった目玉機能だけでなく、ボタンの質感や握り心地など全てを刷新し、現代のゲーミングシーンに相応しいハイエンドコントローラーとなった。

 サードパーティ製コントローラーは、サムスティックが左右非対称配置になっている製品が多いが、プレイステーションユーザーはやはり慣れ親しんだ“左右対称配置”を好む方が多いだろう。「Raiju V3 Pro」は、左右対称配置のコントローラーとして「DualSense Edge」と並ぶもう一つの選択肢になっている。PS5ゲーマーはぜひチェックしてみてほしい。