レビュー
「紅の錬金術士と白の守護者 レスレリアーナのアトリエ」レビュー
スマホ版とは別の物語が展開。過去作のキャラも出演する「アトリエ」シリーズ最新作
2025年9月20日 12:00
- 【紅の錬金術士と白の守護者 ~レスレリアーナのアトリエ~】
- 9月26日 発売予定
- 価格:
- 8,580円(通常版)
- 12,400円(プレミアムボックス)
- 22,600円(スペシャルコレクションボックス)
スマートフォン向けゲームとして2023年9月に配信を開始した「レスレリアーナのアトリエ ~忘れられた錬金術と極夜の解放者~」。サービス開始から2年を迎えるタイトルだが、こちらをサブタイトルにしたプレイステーション 5/プレイステーション 4/Nintendo Switch/PC用錬金術RPG「紅の錬金術士と白の守護者 ~レスレリアーナのアトリエ~」(以下、紅白レスレリ)が9月26日に発売される。
スマホ版と同じ世界が舞台となるが、新たな主人公を起用し、それに合わせてストーリーも異なる物語が展開されるなど、既存の「レスレリアーナのアトリエ」をベースとしつつも、様々な点がパワーアップしている。今回、一足先にプレイする機会を得られたので、そのレビューをお届けしよう。なお、今回はPC版(Steam版)でプレイした。
スマホ版と同じタイトルではあるものの、その内容は「レスレリアーナのアトリエ1.5」と呼べるほどパワーアップ
1997年に発売された1作目「マリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士~」からスタートした「アトリエ」シリーズは、ナンバリングタイトルだけでも現在までに25作品以上がリリースされている。外伝作品や機種別などまで含めると、その総数は既に70をオーバーしているほどだ。
その中で2023年にリリースされたのが、初のスマートフォン向けナンバリングタイトルとなった「アトリエ」シリーズ25作品目となる「レスレリアーナのアトリエ ~忘れられた錬金術と極夜の解放者~」。一方で、今回発売される新作の「紅の錬金術士と白の守護者 ~レスレリアーナのアトリエ~」は、タイトルの命名順からもわかるように、スマホ版の派生作品のような位置づけになっている。
スマホ版とは舞台設定が同一であるものの、異なる時間軸で独立した物語を描いている点や、調合や戦闘のシステムも奥深く作り込まれているほか、より楽しめるようにショップ経営や町の復興といったシステムが追加されているのが大きな違いだ。そういう意味では、舞台や登場人物、システムが似通っているものの、多彩な変更が加えられ総合的にパワーアップした作品といえるかもしれない。
派生作品であれば「本編となるスマホ版をプレイしていなくても大丈夫なのだろうか?」と思う人もいるかもしれないが、ハッキリ言ってその心配は皆無だ。主人公は本作用に新キャラクターが用意されており、彼らもまたプレーヤーと同じくゲーム中の登場人物たちとは初めて出会うので、スマホ版を知らなくてもまったく問題は無い。もちろん、そちらを知っていれば楽しさが増すことに繋がる。
またスマホ版と同じく、過去のシリーズ作品に登場したキャラクターたちと出会うこともある(本作では、そのような彼ら彼女たちを異邦人と呼ぶ)ので、歴代の「アトリエ」シリーズをプレイしてきた人なら、大いに懐かしさを感じられることだろう。
災害の復興と父の遺言を探る「紅白レスレリ」の物語
まずは、そんな本作のストーリーと、主な登場人物の紹介をしておこう。
かつて3つの州の境に存在し、鉱山と交易によって栄えた町・ハルフェン。そんな平和な町で12年前、住民のほとんどが消えるという謎の災害が発生する。町は禁足地となり、王都から派遣される調査員を除いて立ち入りは禁止されてしまう。
月日は流れて禁足は解かれ、町は復興に向けて動き出す。それをきっかけに、かつて故郷を追われた少年と少女も成長し、それぞれの想いを胸に帰郷する。1人は行方不明になった祖父が残した店を取り戻すため、1人は父の残した遺品について調べるため。共通するのは、町の人々が消えた原因を調べるため。
2人は故郷の地で出会い、共に真実を探すために歩んでいく。その先に、想像もしなかった出会いと真実が待ち受けているとも知らずに……。
フィールドアクションは大人しめに、採取はより簡単に
ゲームが始まると、プレーヤーは最初に主人公をリアスとスレイの男女から選ぶこととなる。どちらもプレイしてみたのだが、最初のチュートリアル部分が異なるのみで、合流して以降序盤の展開は同じだったので、プレーヤーの好みで選ぶのがいいだろう。2人の主人公といえば「イリスのアトリエ2」や「マナケミア2」、「エスカ&ロジーのアトリエ」などがあったが、プレイした限りではそこまでキッチリと分かれているわけではないと思われる。どちらを選んでも、その時々の目標として出された調合やフィールドでの冒険、ショップ経営などを行うことでストーリーが進行していくという、これまで通りのシステムだ。
プレーヤーが主人公を選ぶと、早速チュートリアルを兼ねた冒険が始まる。フィールドの移動方法とバトル、そして調合を体験することになるが、戦闘と調合システムはいろいろと様変わりしているので、まずはフィールドでの移動と採取方法を見ていこう。
フィールドは、前作までは広大なオープンワールドとなっており、随所に段差やジップラインといったアクション要素が配置されていた。それと比べると、今作はある程度に区切られたマップ構成となっており、段差なども少なめで移動も楽になっている。仕掛けもほとんどなく、前作のジップラインと似たようなシステムのワイヤーアクションがある程度。利用する際には近づいてボタンを押せば、青い光の部分をワイヤーアクションで移動することができる。
マップ上には目印となるランドマークがあり、今作ではその場所に到着すると自動的にマーキングが行なわれ、それ以降はマップ画面からファストトラベルすることが可能だ。
ちなみに初期の「アトリエ」シリーズは、ゲームを進行するのに何をしたら良いのかがわからないという話があったのだが、それも遙か昔。最近の作品は、プレイしたユーザーの誰一人として脱落者を出さずにエンディングまで導くという制作者側の強い意志が感じとれるほど、ストーリー進行のナビゲーションが懇切丁寧。こういう部分があるからこそ、まとまったプレイ時間が取れないというユーザーにも安心してオススメできるというもの。
基本的には、画面右側に表示されている目的に向かって行動すれば物語が進んでいく仕組みだ。目的地はマップ上に金色のダイヤアイコンで表示され、そこへ移動するために複数のマップをまたぐ場合でも、どの出口から出れば良いのかを同色で示してくれるため、絶対に迷うことがない。金色ダイヤのアイコンに従って行動すれば、ストーリーを楽しみながらゲームを進めることができるようになっているので、日をまたいでプレイする場合でも即座に目的を思い出せたのが便利だった。もちろん、物語の要所にはボスなどの強敵が配置されているので、それを倒せるくらいにはキャラクターたちを成長させる必要はある。
「アトリエ」シリーズといえば、採取・調合・戦闘が3大要素。その一つである採取だが、今作では「ユミアのアトリエ」と同じように走り続けながらの採取はできなくなったものの、代わりにダッシュ移動からの採取では、一度に広範囲の採取ポイントから回収することができるようになり便利さが増した。これが思いの外楽しく、むやみやたらと走り回っては杖を振って採取しまくってしまったほど。ちなみに、採取ポイントでは採取に使用する道具と採れる素材が表示されるが、カギのかかっている部分は後ほど説明するスキルツリーで採取レベルを上げれば採ることができるようになる。
なお、今作でも素材のバリエーションが大量に存在し、しかもゲーム内での時間経過で昼と夜が替わると、同一採取地からでも採れる素材が変化するため、調合に必要な特定材料を探すのが大変なこともあった。
しかし、そんなときに便利だったのがYボタンでできる追跡。素材だけでなくクエストなどにも適用できるのだが、採りたい、あるいは追いかけたいクエストに対して追跡を設定することで、マップ上で常に目印が表示されるようになる。そのため、そこを目指して行動すれば素材はゲットできるしクエストも進むという優れた機能だ。これがあったおかげで、かなり楽にコトを運ぶことができた。
なお、アトリエから移動できる亜空の道は、入るたびにダンジョンの構成や出現する敵が変化する。また、難易度も複数用意されており、高レベルダンジョンに潜るほど貴重な素材が手に入る可能性が上昇していく。ただし、未クリアの亜空の道は、難易度ごとの最下層にある亜空の門からしか脱出することができない。そこへ至る途中で勝てない強敵に出会ってしまうと一巻の終わりなので、万全の体制で飛び込みたいところ。オートセーブは機能しているが、入る前にセーブするのを忘れないようにしたい。
戦闘はターン方式のコマンドバトルだが、前衛と後衛がタッグを組んで戦えるため戦略の幅が広がる
戦闘はフィールドに見えているモンスターに接触するか、または杖などで触れることで、バトルシーンに突入するシンボルエンカウント方式を採用している。前作「ユミアのアトリエ」とは違い、ターン形式のコマンド選択式バトルとなっているが、これまでと同じくプレーヤー側の手札が非常に多く、バリエーション豊かな戦闘が楽しめるようになっていた。
基本的には通常攻撃のほか、スキルやアイテムを使用して戦う。スキルを使うと一定量のAPを消費するが、攻撃を行ったり敵のアタックをガードすることなどで溜めることが可能だ。敵が攻撃してきたときにはボタンを押し続けるとガードできるが、タイミングを合わせてボタンを押すことに成功すればジャストガードとなり、ダメージが減るだけでなく状態異常にもならないほか、全HPが減る攻撃を受けてもHP1で耐えてくれるなど、ハイリスクハイリターンな仕様になっている。ガードはアクションゲーム感覚で攻撃を捌けるので、個人的には非常に面白かった。
今作での新要素の一つは、前衛と後衛がタッグを組んで戦うマルチアクション。これは、キャラクターのさまざまな行動で溜まっていくTPを消費して、前衛と後衛が一度に最大3人まで入れ替わり立ち替わり連続で敵を攻撃できるというもの。同一ターンに複数回アタックできるため、ボス戦で大ダメージを与えるのはもちろん、通常の敵との戦闘を即座に終わらせる際にも使えるなど、なかなかに重宝した。
戦闘におけるもう一つの新要素が、ユナイトと呼ばれるシステム。画面左下にはユナイトゲージが表示されており、ユナイトを2以上溜めることで異なる前衛が連続して行動すると、さらに自動で追撃が行なわれるというもの。他にも、特定のアイテムを連続で使用すると特殊な効果が発動されるアイテムミックスや、TPを消費して後衛がタイムラインに割り込んで行動できるインタラプト、ボスなど特定キャラに設定されたブレイクゲージを削ることで敵をブレイク状態にできるなど、かなりの新要素が盛り込まれていた。
当然ながら、これらのシステムに関しては丁寧なチュートリアルが用意されており、少しずつ順番に公開されていくため、プレーヤーが混乱することは無いはず。実際に、筆者もプレイを重ねていくうちに自然と身についていった。
調合システムは誰もが理解できるシンプルさを保ちつつ、各プレーヤーの好みを反映させた創り方も可能
毎回、さまざまな趣向を凝らしてくる調合システムだが、今回採用されているのはスマホ版と同じギフトカラー調合と呼ばれるもの。とにかくシンプルで、レシピ通りに素材を選ぶのみでOKなのだが、必要となる素材もその時点でピックアップされているので、ただ調合するだけであればボタンを連打しているだけで作れてしまうほど簡単。もちろん、失敗することもない。
しかし、調合を突き詰めようとすると、途端に沼ってしまうのだから恐ろしいというもの。今作では、すべての素材には左右に赤や青、緑、黄色などのギフトカラーと呼ばれる色が付いており、材料を選ぶ際に左右のカラーリングが同じになるようにすると、調合中のアイテムに“火傷を治療”といった特性を付けることができる。特性は一つのアイテムに3つまで追加できるので、これを上手に利用すれば超強力な爆弾を創るといったことも可能だ。さらに、調合に必要な素材を選択した後に、最大3つまで表示されるアレンジ枠に追加で材料を投入することで、完成品の性能をより高めたり、追加の特性を盛り込むこともできるようになっている。
さらに、レシピによってはアレンジ枠に特定の素材を投入することで、レシピ変化と呼ばれる現象が発生し、目的のアイテムから派生した別の新アイテムを調合することも。手作業で膨大な素材から見つけ出すのは大変なためか、レシピ変化が発生する素材はあらかじめ選択肢の上部に優先的に表示され光って知らせてくれる。そのおかげで、試行錯誤の時間が大幅に短縮されたのもありがたいところだった。
今作に限らず最近の「アトリエ」シリーズにおける調合システムは、軽く流したい人にとってはサラリと創りやすく、極めたアイテムを産み出したいというプレーヤー向けには、いくらでも追求できるようになっている。シナリオ進行を止めて調合に注力するのも自由なので、一度その魅力に取り憑かれると本当にヤバイと言っておきたい。これのおかげで、今回も何時間潰されたことか……。
ショップ経営に町の復興、そして依頼やクエストと、本編以外の要素も遊び尽くせないほどてんこ盛りに
今作では、ゲームスタート時の12年前に発生した厄災により一度はすべてを失った町・ハルフェンを復興させるのも目的の一つとなっている。そのためには町に人を呼び込む必要があり、それに役立つのがリアスの祖父が営んでいたお店・ヤドリギ堂のショップ経営だ。
といってもシミュレーションゲームのような面倒なことはまったくなく、商品棚にアイテムを並べるだけと極めてシンプル。それすらも、どんな地区の人に売りたいかを数通りの中から選ぶだけで、自動的に出品してくれる。あとは営業を開始するだけで、最終的な結果が表示されて終了になるなどお手軽なショップ経営が楽しめる。
これまでは、素材を大量に採取しても調合で使われないものは在庫数が増える一方で、存在価値を疑問視することがあったが、そういった材料も商品棚に品出しすることで捌けるため、役立つようになっている。もちろん、プレーヤーの好みに応じて手動で商品を選び棚に並べていくこともできるので、そういった楽しみに方にも対応している。お店を経営して売り上げが伸びれば、町も少しずつ復興する。その模様を一区切りごとに映像で見せてくれるため、自分が町を復興させているという実感が湧いて、よりやる気が出るというもの。
他にも、物語を進めていくのに地味に欠かせないのが、各キャラクターごとに用意されているスキルツリーと呼ばれるシステム。冒険中に得たSPを消費することで、ステータスの底上げや各キャラクターごとの得意分野を伸ばすことができる仕組みだ。特にリアスは、スキルツリーで採取レベルを上げることで同じ場所でも異なる素材が手に入るようになるため、採取の楽しみがより増すことにもなる。
シリーズを通してお馴染みとなっている、住人からの依頼を受けるクエストも健在だ。こまめに引き受けることで資金が稼げるので、ストーリーを進めるのに疲れたときにこなすなど、アクセントとして引き受けるのがいいかもしれない。最初のうちは、ぷにを10匹倒せといった簡単で割の良いものも多いので、つい夢中になってしまった。
昔懐かしいキャラクターたちが大勢登場するのも、シリーズを通して遊んでいるプレーヤーに取っては魅力の一つ。1作目からほぼすべてのナンバリングタイトルをプレイ済みの筆者としても、行く先々で昔馴染みの顔に出会うと、同窓会でもしているかのような気分になれたというもの。そんな異邦人たちからの依頼を達成すれば、今度は逆に主人公側が依頼を行うこともできるようになっていく絆クエストと呼ばれるシステムも導入されているので、ただ懐かしいだけではないのにも感心しきり。初代プレイステーション時代に「アトリエ」シリーズをプレイしていたものの、今は離れてしまった……という人も、彼女たちに会いに再びアトリエの世界に飛び込んでみてはいかがだろうか。
シリーズ初めての人でも取っつきやすく、ベテランにはやりこみ十分のコンテンツが用意されているので、万人にオススメ
これでもかと要素を詰め込んだ作品に仕上がっており、しかもそのすべてでやり込むことができるため、遊んでも遊んでも終わりが見えないのは凄いの一言。ある程度までストーリーを進めてしまえば、そこから先に進むことなく調合しまくっても、クエストをこなすために戦闘を繰り返してキャラクターを成長させても良く、各プレーヤーの思うがままに進められるのが楽しいところだ。実際、筆者もストーリーを放置して採取&調合しまくり、クエストにのめり込む日々を送ってしまったほど自由度は高い。
戦闘は、リアルタイムバトルからターン制のコマンド選択式バトルに変わったことで、プレーヤーを選ばなくなったのは個人的には良い点ではないかと感じた。これならアクションゲームが苦手な人でも、問題なく楽しむことができるだろう。戦い方のバリエーションも豊富なので、途中でダレることも無さそうだ。
調合は、スマホ版のシステムを引き継いでいるとはいえ非常にシンプルで、特性を付けたいときも素材の色合わせを行えば良いだけなのでわかりやすい。これなら、今まで挫折してきたという人でも、調合にのめり込むことができるのではないだろうか。
毎回リリースされるたびに完成度の高いシステムでプレーヤーを沼に落としてきているが、今作も遊びごたえ満載の作品に仕上がっていると感じられた。調合システムが非常にシンプルなので、シリーズ初心者や初めてという人でも、本作からなら入りやすいだろう。スマホ版をプレイしていた人が、逆に本格的なシリーズ作品をプレイするきっかけにするのも良いかもしれない。秋の夜長を過ごすお供としては、老若男女問わずピッタリの1本となるだろう。
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