レビュー

【メタルギアΔ】「METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER」レビュー

名作の“忠実な原作再現”を目指した本作の意義を確かに感じるリメイク作品

【METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER】
8月28日 発売予定
価格:
8,580円(Standard Edition)
9,790円(Digital Deluxe Edition)
29,920円(Premium Pack、ゲームソフトなし)
「METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER」

 コナミデジタルエンタテインメントのプレイステーション 5/Xbox Series X|S/PC用タクティカル・エスピオナージ・アクション「METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER(メタルギア ソリッド デルタ: スネークイーター)」の発売日である8月28日が目前に迫っている。

 本作は、2004年にプレイステーション2で発売された「METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER」をリメイクした作品だ。シリーズの中でも最高傑作と評される本作の核となる部分はそのまま受け継ぎつつ、グラフィックスや操作性を現代向けに進化させている。

 今回は本作の先行プレイする機会を得ることができた。既に本誌では、体験会のレポート等で進化点などはお伝えしてきたが、フルレビューとしてより深掘りした内容や、本作が掲げる「忠実な原作再現」が筆者の目にどう映ったといった内容をお届けしたい。

 なお、本誌では7月に実施されたメディア向け体験会の模様も掲載されている。開発陣によるQ&Aやインタビューの内容もまとめているので、あわせて参考にしてほしい。

【METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER - Gameplay Trailer (CERO) | KONAMI】

「メタルギア」サーガの起源となる物語が展開

 すでに20年以上前の作品ということもあり、原作「MGS3」を知らない人も少なくないだろう。そこでまずは、本作のストーリーや概要を簡単に紹介しておきたい。なお、「MGSΔ」は原作からストーリーや各種設定等の変更は一切ない。そのため、シリーズ未プレイの人でも、起点となる物語を安心して楽しむことができるはずだ。

 物語の舞台は冷戦下のソ連。アメリカCIAの特殊部隊「FOX」に所属する工作員「ネイキッド・スネーク(スネーク)」の活躍が描かれる。

 ナンバリングの通り、本作は初代「MGS」と「MGS2」に継ぐシリーズ3作品目となるタイトルだが時系列順では最も古く、シリーズの原点にあたる「始まりの物語」が展開される。実際、ネイキッド・スネークは他の作品で「ビッグボス」と呼ばれる重要人物であり、オセロットなどのキャラクターも度々登場する。

後に「ビッグボス」と呼ばれる「ネイキッド・スネーク」
シリーズを通して重要な人物となる「オセロット」

 ストーリーは、「バーチャスミッション」と「スネークイーター作戦」という2つの章に分かれており、前者がチュートリアルも含むプロローグ的な内容で、後者にて本作の主要な物語が展開される。

 「バーチャスミッション」では、スネークが兵器開発者であるソコロフの亡命を助けるためにソ連へと向かうが、師である「ザ・ボス」の裏切りにより失敗し、スネークも重傷を負う。「スネークイーター作戦」では、ソコロフの奪還に加え、核搭載戦車シャゴホッドの破壊、そしてソ連の情報機関GRUの「ヴォルギン大佐」と、ザ・ボスの抹殺を命じられたスネークが再びソ連に潜入する。

スネークの師匠「ザ・ボス」

 ストーリーでは、価値観や正義が絶えず変動する「時代」をテーマに、スネークの活躍や、極限のサバイバル環境におかれた彼の心理状況と、他キャラクターとの関わりといった描写。冷戦当時を背景とした複雑な政治状況、「シャゴホッド」に代表されるようなSF的な表現、そして随所で挟まれるユーモアが描かれ、現代でも一切色褪せることがない、多層的な物語の魅力を生み出している。

冷戦という史実を舞台に「シャゴホッド」のようなSF兵器が登場。こうしたリアルとフィクションが混ざりあう世界観もシリーズの魅力だ

ジャングルを舞台にしたステルスアクション

 次に本作がどのようなゲームなのかも説明しておこう。「メタルギア」シリーズは戦闘を避けながら敵地に潜入しつつ、目的を達成するステルスアクションゲーム。「MGS3」ではジャングルや湿地帯、ソ連の軍事基地といった様々なロケーションを舞台に、過酷なミッションへと挑むこととなる。

 ステルスの手段は、茂みの中をほふくで移動したり、木々の隙間やコンテナの裏等のオブジェクトの影に隠れたりしつつ、敵兵の視線を掻い潜るなど様々。また、周囲の環境に併せて迷彩服やフェイスペイントを変更し「カムフラージュ率」を高くすることで敵兵からの発見を防ぐこともできる。

茂みや地面でほふくし、敵をやり過ごす
環境に合わせたユニフォームとフェイスペイントに着替え、カムフラージュ率を高めれば敵から見つかり辛くなる

 もちろん、全ての敵兵をこうしたステルスの動きだけでやり過ごせる訳ではない。軍事基地など隠れる場所が少なく、迷彩服も機能しない場所では、麻酔銃で進行ルートにいる敵兵を排除したり、アイテムを投げたりやノックをすることで物音をたて、相手の気を逸らしたりといったことも可能だ。

敵の視界に入らないよう、道なき道をいくことも
サプレッサーがあれば発砲音を隠しながら敵を排除することも可能
変装が有効なエリアも存在

 敵に発見されると戦闘に突入し、1対多数の不利な銃撃戦を強いられる。逃走に成功しても警戒態勢が解かれるまで潜入は難しく、状況は一気に不利になってしまう。銃火器は手に入るものの、増援が駆けつけてくるのもあって全滅させることは難しい。戦闘はあくまで“最後の手段”であり、基本的にはステルスが求められる。

敵に発見されるとアラート状態となる。1対多の戦闘は分が悪く、援軍も送られてくるため、一旦逃げ、隠れてやり過ごすといい

 ステルス中に敵を排除したいなら、近接戦闘術「CQC」が非常に有効。音を立てずに相手を投げ飛ばしたり、羽交い絞めにして情報を聞きだしたりといったことができる。

近接戦闘術「CQC」は本作を代表するアクションの1つ。音を立てずに敵兵を排除できるので非常に有用
敵兵を拘束し情報を聞き出すことも可能。役立つヒントや、ちょっとした小ネタを聞くこができる
背後まで近づいて銃を構えればホールドアップさせることも可能
シリーズを代表とするアイテム「ダンボール箱」。ジャングルでは意味がないが、基地内などでは敵の目を欺くのに重宝する

食糧は現地調達のサバイバル

 また、ジャングルでの潜入任務では、食糧を確保したり、傷を自分で治療したりといったサバイバルも重要な要素となる。

 本作では時間とともにスタミナが減っていき、ライフの回復量や武器の手振れなどに影響する。このスタミナを回復するためには、ジャングルに生息する蛇やネズミ、キノコや木の実といった動植物をキャプチャーし、食糧とする必要がある。野生のものを摂取する際は、毒のあるものや腐敗に注意する必要があるが、敵の食糧庫などからレーションや即席麺、コラボで登場するカロリーメイトなどの安全な保存食を手に入れることも可能だ。

野生動物は食糧にでき、味によって回復量が異なる
原作でもコラボ食糧として登場した「カロリーメイト」はリメイクでも存在。味は最高だ

 また、受けた負傷を放っておくと、LIFEゲージの最大値が減少したり、スタミナが徐々に減少するなどのデバフがかかっててしまう。自分で適切な治療を行なう必要があるが、その際に必要なアイテムの一部は初期から持ち込んだものが尽きた場合、現地で調達しなければならない。こうした食糧・治療アイテムのやりくりも、潜入任務の緊張感を引き上げている。

負傷した際は最大ライフ等が減ってしまうので適切な応急処置が必要となる

「MGSΔ」では、ストーリーと同様、こうした本作の核となるゲームシステムも一切の変更がない。敵兵をどう欺くかを、周囲を観察しながら見つけ出すことの楽しさや上手くいったときの達成感、サバイバル要素による没入感はしっかりと感じられる。

 また、攻略法の幅が広いのも変わらずで、場面によっては“まさかのアイテム”が有効だったり、敵を弱体化させる方法があったりといった、多彩な方法で突破できるのもポイントだ。なお、本作では敵に関する情報や、攻略のヒント、キャプチャーした生物の詳細などの情報を味方との無線で知ることもできる。面白い掛け合いも多く収録されているので、色々なシチュエーションで聞いてみるといいだろう。

様々なアクションを駆使し、敵兵を掻い潜りながら進んでいくことが重要となる。プレイ中は潜伏しながら潜入ルートや敵兵をどう排除するかを考えることとなる
時には意外なアイテムが役立つことも……
無線からは様々なヒントが得られ、セーブも無線で行なう。セーブ時にはパラメディックによるB級映画トークも聞ける

 また、道中で待ち構えているボスとの戦闘も本作の魅力。スネークの前に立ちはだかる「コブラ部隊」の面々はキャラクター性や戦闘方法も特徴的で、撃破するためには特殊な戦略が必要とされる。ステルスアクションとはまた異なる、ギミックを解くような面白さを味わえる。

蜂を操るザ・ペイン戦。グレネードなどの爆発物を投げ、蜂ごと吹き飛ばしてやろう
老スナイパー、ジ・エンド。様々な小ネタがあるが、ある方法を使えば簡単に勝つことができる

グラフィックスの進化で没入感が向上

 繰り返すようだが、「MGSΔ」は、原作からストーリーや基本的なゲームシステムの変化はほとんどない。しかし、冒頭でも述べた通りグラフィックスや、新たな操作法の導入といった追加要素によって、本作は原作の魅力を忠実に伝えながらも、今の時代に通用するゲームとなっている。

 特に、プレイ開始時から感じられるグラフィックスの美麗さは、本作の様々な長所を向上させていると感じた。例えば、「バーチャスミッション」冒頭のムービーから、キャラクターの顔グラフィックス、特に肌の質感のリアルさには驚かされ、より物語を楽しめる。また、ジャングルに降り立ってからも、実写さながらに鬱蒼と茂る草木に息をのむ。また、匍匐で進むスネークの動きに合わせて茂みが揺れる様子はリアルで、潜入任務の没入感をぐっと上昇させている。

リアルな肌感で表現される、様々な表情はストーリーをより魅力的に表現してくれる
木々やジャングル、水源などの表現も美麗。リアルに描かれた自然は、よりプレーヤーの前に立ち塞がってくる様だ

 本作では、沼地を歩けば服に泥が跳ねて付着し、枯葉の上で匍匐してから立ち上がれば、服についた葉がはらはらと落ちていく。さらに、銃撃を浴びたら血が滲み、スネークが負った切り傷や火傷の跡は治療後も残り続ける。

 こうしたプレーヤーの行動が服の汚れや、傷といった形でリアルタイムに反映される表現は、スネークと自分がリンクしているような感覚にさせてくれる。時にはスネークに残された傷を観察し、過去のプレイに想いをはせるのも一興だ。

沼地を歩けば泥が跳ね、スネークも汚れる。汚れや傷はムービーにも反映される
スネークの傷は残り続ける。筆者のプレイでは、頻繁に火傷を負っているようだ

「NEW STYLE」操作は現代的で快適

 新たに追加された操作方法「NEW STYLE(ニュースタイル)」も、本作の体験をよりよいものにしている要素だ。この操作方法は、3人称視点かつ、従来のTPSと同じ感覚でプレイすることができるというもので、原作未プレイの人でも違和感なくプレイすることを可能にしている。

 なお、本作には原作と類似の操作方法・俯瞰視点である「LEGACY STYLE(レガシースタイル)」も実装されており、筆者はどちらも試してみたが、原作を何週もプレイしているのにも関わらず、「NEW STYLE」の方がしっくりきた。やはり、現代的な操作方法・視点である点が大きいのだろう。また、「NEW STYLE」でプレイすれば、より本作の進化したグラフィックスを間近に感じることができ、密林が行く手を阻む感覚もダイレクトに伝わってくるように思える。

 とはいえ、「LEGACY STYLE」にも、視界が比較的広く、敵兵の位置を把握しやすかったりといったメリットがある。操作方法の変更はいつでも可能(変更時にチェックポイントに戻るが)なので、場面に応じてプレイ中に切り替えるのもアリかもしれない。

LEGACY STYLEは俯瞰視点
NEW STYLEは3人称視点となる
射撃は「NEW STYLE」(画像下)の方が圧倒的にやりやすい
どちらの操作方法でも主観に切り替えれば同じようにエイムが可能

 なお、本作は原作から木々の生え方やオブジェクトの位置、敵兵の巡回ルートにいたるまで、変更は一切なかったと思われる。にもかかわらず、懐かしさと新鮮さを同時に味わえたのは、グラフィックの進化と、それをより感じさせてくれる「NEW STYLE」の賜物ではないだろうか。

NEW STYLEでは、潜入時の臨場感が確実に向上。息をのむステルスプレイが味わえる
同じマップでのLEGACY STYLE。敵兵の位置はこちらの方が把握しやすい

その他遊びやすくなったポイントと「TIPS」の存在

 そのほかの追加要素もいくつか紹介しておこう。まず、忍び歩きに相当する「ストーキング移動」が、原作の十字キー操作からワンボタンで切り替えるものに変更された。また、近接アクション「CQC」の有効範囲内に入ると文字で知らせてくれるようにもなっている。

 これらは通常移動のスティック操作から、十字キーまで指を動かす煩わしさや、「CQCで敵兵を掴もうとしたら有効範囲外で、パンチが出たために気付かれた」というよくある凡ミスを防いでくれるので、非常に有難い追加要素だ。

特に嬉しいしゃがみ移動。敵兵に近づく際に頻繁に使用する

 また、十字キーには新たに無線機能とカムフラージュへのショートカット、アイテム・武器の変更が割り当てられている。無線機能は原作と比べて操作量が減り、すぐにセーブをしたり、仲間との会話へと移行することができるようになった。本作は無線で聞くことができる会話の量が多いので、非常に有難いアップデートとなっている。

無線機能は非常に使いやすくなった。なお、本作で新たに追加された操作方法についての解説など、無線ボイスが新録されているので、是非探してみて欲しい

 また、カムフラージュも、地面と茂みを頻繁に行き来する場面などでは何度も着替える必要があり、わざわざメニューを開いているとゲームのテンポが悪くなる。ショートカットメニューの追加によって、こうしたストレスを感じやすい部分がなくなったのも嬉しいポイントだ。

カムフラージュのショートカットも嬉しいポイント
新アイテム、コンパスは画面左下に目的地の方向を示してくれる便利なアイテムだ

 リメイクにあたって、新たに「TIPS」機能が追加された点も見逃せない。こちらは基本的な操作法やシステムのチュートリアルや、ボス・難所の攻略方法、ちょっとした小ネタなどを教えてくれる機能で、特定のタイミングで通知がでる他、メニューから選択すればいつでも確認できる。

 TIPSでは、歩きから射撃まで全ての操作方法を網羅しており、木にぶら下がりながら射撃ができることなど、気付きにくい動作を知る機会にもなっている。また、暗闇では徐々に目が慣れていき時間の経過に比例して画面が明るくなっていくなど、細かい小ネタも教えてくれる。

 原作ではこうしたヒントは少なかったので、新規プレーヤーには心強いシステムになっているはずだ。もちろん、TIPSで全ての攻略方法や小ネタを知れるという訳ではないので、プレーヤーの「探す楽しみ」を奪うことはない。また、4段階の表示設定が可能なので、原作既プレイの人や、周回プレイの際に通知が邪魔にならないのも好印象だ。

基本的な操作はTipsで確認できる
スネークの味覚が変化することを筆者は忘れており、TIPSのお陰で思い出すことができた
食糧庫を爆破した結果、敵兵が空腹を訴えるようになり弱体化。こうした攻略に役立つ小ネタもTIPSで確認できる
原作から存在した本編ムービーのパロディ映像集「シークレットシアター」は8mmフィルムを収集することで解禁されるようになった。このフィルムを持った敵兵の場所もTIPSで確認できるので、周回プレイの収集要素として集めてみるといいだろう

オンラインモードへの期待

 本作には本編以外のスペシャルゲームとして「サルゲッチュ」とコラボした「猿蛇合戦」(PS5、PC版専用)と、「ボンバーマン」とコラボした「ボム蛇合戦」(Xbox Series X|S専用)が追加されている。これ加えて2025年秋には新たなオンライン対戦モード「FOX HUNT」が配信される。

 スペシャルゲームは本編の合間に息抜きとして遊べるものに仕上がっており、コミカルに逃げ回る「ピポサル」や「ボンバーマン」の姿や、大真面目に彼らと対峙するスネークのギャップはどこかシュールで癒される。

 また、原作をプレイしたことのある人ならわかる“あるミニゲーム”も実装されており、解禁すればトップメニューから遊べるようになる。こちらもグラフィックスの進化により原作とは全く異なる雰囲気のゲームとなっているので、是非探して見つけて欲しい(原作未プレイの人向けにヒントをだしておくと、ある場面でセーブするとパラメディックが意味深な発言をするので、セーブ後にゲームを再起動してみるといい)。

今回はPS5でのプレイだったため、「猿蛇合戦」をプレイ。「ボム蛇」合戦については、冒頭の体験会レビューで触れているので参考にしてほしい
ピポサルを射撃で気絶させ
「ゲッチュ」していくスペシャルゲームだ
「アストロ」がピポサルに絡まれていることも……

 個人的に最も気になっているのが、今回のレビューでは体験できなかった新モード「FOX HUNT」だ。このゲームモードは2025年秋にリリース予定のオンライン対戦モード。ゲームプレイの詳細についてもあまり明かされていない状態ではあるが、カムフラージュやサバイバルといった本作ならではの要素を軸としたチーム戦が楽しめるという。

 「MGS4」、「MGSV」などの過去作でもオンライン対戦モード(通称「MGO」)は実装されており、ステルスなどの独自要素によって一部で根強い人気を得ていた。本作でも、“かくれんぼ”を拡張した「メタルギア」らしい対戦ゲームが楽しめるという。「MGO」がそれ単体で独立した価値を築いていただけに、「FOX HUNT」のクオリティには注目だ。

基本的には原作に忠実である、それによる良し悪し

 正直に言えば、筆者は「MGS3」のリメイクには、オープンワールド化を期待していた。しかし、実際に「MGSΔ」をクリアしてみると、いかに原作が現代でも色褪せない魅力をもったゲームかが再確認でき、同時に本作が掲げた「忠実な再現」という方向性の意義が伝わってきた。

 ジャングルで敵兵の視界を欺くために茂みの中に潜み続ける緊張感や、待てば待つほどスタミナは減っていくジレンマ。敵兵から逃れるために潜り込んだダクトの中にいるネズミを見つけ、食糧にできたときの安心感など、原作のプレイフィールが当時のまま蘇ってくる。

 さらに、ストーリーは20年が経過した今読み返しても「戦争SF」ものとしての出来はかなり高く、ムービーシーンを現代のグラフィックスで描き直しているだけでも価値を感じられる。

 また、随所に散りばめられたユーモアがいいアクセントになっている。少佐の熱がこもった映画「007」トークや、ワニキャップを被って敵兵を欺けることなど、忘れていた小ネタを再発見した際にはちょっとした嬉しさがあった。

ワニキャップを被って水面から顔を出すと敵を欺ける。ジョークのような攻略法だが、潜入捜査の緊張感をいい具合に緩和してくれる
お馴染みの収集要素「ケロタン」も
今回からの新たな収集要素「ガーコ」

 「MGSΔ」は、こうした原作の魅力を、グラフィックスの進化による没入感の向上や、「NEW STYLE」操作等でプレイをしやすくしたことにより底上げし、現代のゲーマーに伝える役割を果たせるタイトルであることは間違いないだろう。

 既に原作をプレイしたことのある人は、「MGSΔ」を通して原作となる「MGS3」の持つ面白さを再確認できるだろう。一方、原作未プレイの人は、色々な事を試しながら、自分なりの突破方法を見つける。そんな本作の醍醐味を是非味わって欲しいと思う。

 もちろん、オープンワールドで「MGS3」をプレイしてみたいという未練は残る。本作においてもマップを移動する度にロードを挟んでしまうことで生じるテンポの悪さや、アイテムを拾う際に特にモーションがないのも原作のままであることなど、忠実に再現するために、いくつかの現代的では当たり前の要素を損なっているなど、気になる点がない訳ではない。

 それでも、原作をプレイしていない人には是非プレイして欲しいタイトルであることは間違いなく、既にプレイしている人にとっても、物語やキャラクターの魅力を改めて味わい直せる作品に仕上がっている。

 長くなってしまったが、本作の目指した「忠実な原作再現」は見事なもので、多くの人にプレイして欲しいクオリティに仕上がっている。特に「MGSア3」未プレイの人には、是非現代に蘇った「ネイキッド・スネーク」の活躍を手に取って感じて欲しい。

【METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER - OPENING MOVIE Δ Version (ノンクレジット版:4K) | KONAMI】