レビュー

「グラディウス オリジン コレクション」最新作「沙羅曼蛇III」レビュー

俺たちの「沙羅曼蛇」が帰ってきた! より遊びやすくなって、アーケード版「沙羅曼蛇2」から29年ぶりにシリーズ完全新作が登場

【グラディウス オリジン コレクション】
8月7日 発売
価格:
通常版 6,380円(税込)
プレミアムボックス 12,980円(税込)

 2025年5月で40周年を迎えた、アーケード用シューティングゲーム往年の名作「グラディウス」。その記念すべき年に、KONAMIからPS5/Xbox Series X|S/Nintendo Switch/PC(Steam)用として発売される「グラディウス オリジン コレクション」には、1985年に登場した元祖「グラディウス」をはじめ、80~90年代に発売された歴代のシリーズ作品「沙羅曼蛇」「ライフフォース」「グラディウスII」「グラディウスIII」「沙羅曼蛇2」に加え、エムツー開発による完全新作「沙羅曼蛇III」の計7タイトルが収録されている。

【グラディウス オリジン コレクション】

 以下、本稿では「1998年に『沙羅曼蛇2』の続編が出ていたら」とのコンセプトで開発され、アーケード版「沙羅曼蛇」シリーズだけで数えれば実に29年ぶりの新作となる「沙羅曼蛇III」を、筆者がプレイしたうえで面白かった、または気になったところを思うがままにまとめてみた。

 筆者はかつて、ゲームセンターで「沙羅曼蛇」「ライフフォース」「沙羅曼蛇2」をすべてプレイした経験もあるので、わかる範囲で過去作との比較もしている。少しでも読者の皆さんが遊ぶ際の参考になれば幸いだ。

 なお、本稿はSteam版をプレイしたうえで執筆しているので、あらかじめご承知おきを。

【沙羅曼蛇III (JA) | KONAMI】
【「沙羅曼蛇III」ゲーム画面】
※PC(Steam)版で撮影(以下同)

まさに「沙羅曼蛇」の正当進化。パワーアップシステムにもさまざまな工夫が

 筆者が本作を初めてプレイしたときの率直な第一印象は「ついに『沙羅曼蛇』が帰ってきた!」であった。細胞壁や触手、モアイなどが次々と現われる、不気味さとカッコよさを兼備したビジュアルも、奇数ステージは横スクロール、偶数ステージは縦スクロールになるシステムも、今から39年前に世に出た元祖「沙羅曼蛇」のそれであり、ゲームセンターで衝撃を受けた当時を思い出さずにはいられなかった。

 自機の操作は、方向キーまたはアナログスティックで移動、Aボタンを押すとショット、Bボタンでミサイル、Rボタンを押すとショットとミサイルを同時に発射し、Xボタンを押すと特殊攻撃「バースト」が発動する(※操作は、いずれもXbox Series X|S用コントローラーを使用した場合)。機体は「ロード・ブリティッシュmk.III」と「ビックバイパー・タイプL」の2種類があり、ゲーム開始時に任意の機体を選択できる。性能はどちらも同じなので、自分の好みで選べばいい。

 特定の敵を倒すか、敵編隊を全滅させると出現するアイテムを取ることで自機がパワーアップするシステムも、元祖「沙羅曼蛇」や「沙羅曼蛇2」と同じだ。ミサイル、レーザー、リップルレーザーの各装備は、同じアイテムを2個取ることでそれぞれ「レベル2」となり、さらに性能が強化される。「沙羅曼蛇2」では、レーザーとリップルレーザーは一定時間が経過するとレベル1に戻る仕組みだったが、本作の各装備は自動で退化しないので、時間を気にせず思う存分に撃ちまくれる。

【自機のパワーアップ】
元祖「沙羅曼蛇」と同様、ステージ1の序盤は敵編隊を全滅させるとパワーアップアイテムが出現。写真のアイテムは自機の移動速度が上がるスピードアップ
ミサイルを装備したところ。上下(※偶数ステージでは左右)に2発ずつ撃てる特徴も元祖「沙羅曼蛇」と同じだ
ザコ敵を貫通する強力なレーザー
自機と同じ攻撃性能を持つマルチプル。過去作と同じく最大4個まで装着が可能で、敵や障害物に触れても消えない
こちらは広範囲に広がるリップルレーザー
敵の攻撃から身を守るフォースフィールドも、最大4個まで装着できる
こちらはデモ画面。元祖「沙羅曼蛇」シリーズと同様に、パワーアップの仕組みを順番に教えてくれる

 たまに出現するマルチプルチェンジのアイテムを取ると、マルチプルが自機を常時トレースする動きから、自機を静止させると直前まで移動していた方向に、一定の距離まで伸びてから静止する(※「グラディウスIII」のスネークオプションと同様の性能)動きに変わる。スネークオプション型のマルチプルに換装すると、特に自機が触れるとミスになる壁の向こう側にいる敵を倒すときにはとても役立つ。

 スネークオプションの状態から再度アイテムを取ると、常時トレース型のマルチプルに戻るので、場面に応じてどちらの動き方を選択すべきかを考えながらプレイすることで、本作がより楽しくなるハズだ。

【マルチプルチェンジ】
マルチプルチェンジを取ると「グラディウスIII」のスネークオプション型に変更できる
左上方向に少し動いてから静止したところ。壁の向こう側にいる敵でも、マルチプルを伸ばして攻撃することが可能に

 本作で新たに実装された「バースト」を使用すると、自機のショットが一定の時間だけ強化される。レーザー、リップルレーザー装備時はそれぞれの威力が増し、ノーマルショットの場合は、なんと8方向にショットを高速で連射する(※マルチプルのショット連射は正面のみ)。特に8方向ショットは、ミスをして一時的にパワーアップを失った際の復活時にも大いに活用できる印象だ。

 「沙羅曼蛇2」では、装着したマルチプルを敵に飛ばして大ダメージを与える「オプションシュート」が使用できたが、使用後は敵の攻撃を避けつつ、マルチプルを再回収する手間が生じるなどのデメリットがあった。だが本作の「バースト」は、効果が消滅した後にショットが少しの間だけ弱体化する(※レーザー、リップルレーザー装備時はノーマルショットしか撃てなくなる)ものの、回復後は何度でも繰り返し「バースト」が使えるのでとても便利。よって、こちらも「利用しない手はない」システムであると断言したい。

【新システム「バースト」】
ノーマルショット、レーザー、リップルレーザーの状態で、それぞれバーストを発動したところ。いずれも絶大な威力を発揮する

親切設計で遊びやすさアップ! ミスからの復帰も容易に

 本作において、とりわけ筆者が「ありがたい!」と思ったのは、ミスをした後でも態勢を⽴て直しやすいことだ。

 初代「沙羅曼蛇」では、ミスをするとすべてのパワーアップ効果が消滅してしまう。マルチプルだけは自機から切り離されて画面内に残り、回収すれば再度装着できるが、もし画面後方でミスをした場合は、マルチプルがすぐに画面外に消えてしまうこともあり、復活するのがとても難しかった印象がある。

 本作ではミスをすると、リスタート時に自機が一定時間だけ無敵になり、加えてフォースフィールド以外の全パワーアップアイテムが必ず1個ずつ(※マルチプルは装着した数だけ)、画面上部にまとめて放出される。しかも、すべてのアイテムがゆっくりと流れてくる(※敵を倒して出現させたアイテムよりも、流れるスピードが遅い)ので、とても回収しやすい。欲を言えば、リスタート後の自機の無敵時間をあと0.5秒ほど長くしてほしかったが、過去のシリーズ作品に比べて格段に復活しやすく、プレイしていて実にありがたかった。

 また本作には、一定の得点に達すると自機のストックが増える、いわゆるエクステンドが導入されている。最初は2万点で、以後9万、16万、23万、30万点……と7万点稼ぐごとに1機ずつストックが増える。「沙羅曼蛇」にはエクステンドが一切なく、「沙羅曼蛇2」のエクステンドは20万、50万点の2回だけだったこともあり、自機のストックを増やしやすいという意味でも、本作はより遊びやすくなったと言えるだろう。

ミスをするとマルチプルだけでなく、ほかのアイテムも画面上部に放出され、リスタート時に復活しやすくなっているのが嬉しい

往年の「グラディウス」「沙羅曼蛇」ファン感涙の演出が盛りだくさん

 前述したように、シリーズ名物の触手やモアイ、パワーアップシステムをレクチャーするデモ画面はもちろん、2足歩行砲台のダッカー、大量のザコ敵を射出するハッチ、次々と飛来する隕石、そしてレーザーを撃ちまくるボスキャラクターなど、いかにも「グラディウス」あるいは「沙羅曼蛇」シリーズらしいワクワクする演出が、本作にも随所に用意されている。

 ステージ1の最初に出現するザコ編隊のほかにも、「沙羅曼蛇」や「沙羅曼蛇2」に登場した敵の一部は、以前と同じステージで出現することもある。「グラディウス」も含めた歴代のシリーズ作品を知っている人であれば、気づくたびに思わずニヤリとしてしまうことだろう。

シリーズ名物の敵キャラクターや、過去作をオマージュした演出が随所に登場するのも本作の大きな見どころだ

 懐かしさと新しさが見事に融合した、本作のサウンドも本当に素晴らしい。

 例えば対ボス戦のBGMは、多くのシリーズ作品に使用されている初代「沙羅曼蛇」のボス戦の曲「Poison of Snake」が原曲で、まさに「王道」とも言うべき演出である。ステージ2のBGMは、「ライフフォース」のステージ2のBGM「Thunderbolt」のアレンジで、モアイが多数登場するステージ4のBGMのイントロは、初代「グラディウス」のステージ3、つまりモアイステージのBGM「Black Mask」をモチーフにしている。

 筆者が特に驚いたのは、ステージ5のBGMの原曲が「沙羅曼蛇2」の「Fire Tripper」だったこと。なぜなら本曲は、プレイ中には流れない、いわゆる「ボツ曲」ゆえ、ゲームミュージックCDやサブスク配信でしか聴けないからだ。「もしボツ曲を聴きながら、実際にプレイできたら嬉しいんだけどなあ……」というコアなファンの夢を叶えた、開発スタッフの選曲センスには舌を巻くばかりだ。

 さらに2周目に突入すると、ステージ1で初代「沙羅曼蛇」のステージ1のBGM「Power of Anger」のアレンジ曲が流れるなど、「沙羅曼蛇2」と同様に2周目の一部の曲が変わるアイデアを取り入れたのも実に心憎い。BGM以外の効果音(※敵の爆発やレーザー発射音など)も、旧シリーズ作品と同じものが多々使用されており、耳でも懐かしさをたっぷりと堪能できる。

 初代「沙羅曼蛇」は、随所で英語のボイスが流れることでも、当時のプレイヤーたちに衝撃を与えた。以後、シリーズ名物となったボイスは、本作にも豊富に収録されている。

 「Speed Up」「Missile」など、各種パワーアップ装着時のボイスはもちろん、ゲームスタート時には「Destroy them all!(すべての敵を殲滅せよ)」、奇数ステージをクリアした直後、スクロール方向が縦に変わる際に流れる「Go up!」等々、シリーズおなじみのボイスをバッチリ聴くことができる。ほかにも、例えばステージ5の後半、ザコ敵が一斉にテレポートして出現する直前に「Caution! Caution!」と叫んで危険を知らせるなど、特定の場面に来ると流れるボイスも用意されており、たとえ英語が話せないプレイヤーであっても(筆者もそのひとりだ)、数々のボイスがテンションを大いに高めてくれることだろう。

【BGMにも要注目!】
対ボス戦のBGMは、シリーズ伝統の「Poison of Snake」をベースにした曲だ
ステージ5のBGMは、何と未使用曲の「Fire Tripper」がモチーフ。本曲をチョイスした開発スタッフのアイデアには脱帽だ
2周目に突入すると、ステージ1のBGMが「Power of Anger」に変わるお楽しみも用意されている

 過去のシリーズ作品を知るプレイヤーであれば、1回プレイしただけで「俺たちの『グラディウス』『沙羅曼蛇』が帰ってきた!」と、誰もが声高に叫びたくなるであろう作品、それが「沙羅曼蛇III」だ。あくまで筆者の体感だが、パワーアップシステムの使いやすさ、復活のしやすさ、敵の強さなど、本作は全般的に元祖「沙羅曼蛇」と「沙羅曼蛇2」よりも難易度は低いと思われる。

 加えて、途中でゲームオーバーになっても10秒以内にスタートすればコンティニューが可能で、ミサイルと各種ショットはボタンを押しっ放しでオート連射となることもあり、たとえシリーズ作品を知らないプレイヤーでも、きっと本作を楽しめることだろう。

 なお本編では触れなかったが、本作は2周目に突入するとシリーズ伝統の「撃ち返し弾」(※敵を倒した直後、その地点から弾が飛んでくる)が飛び交い、1周目よりもかなり難しくなる。また2周目以降は、「沙羅曼蛇2」と同様にコンティニューが不可能となるので、腕に自信がある人は、ぜひ2周目クリア、およびオンラインランキングでどこまで順位を伸ばせるかにもチャレンジしつつ、本作を存分に楽しみたいところだ。

 そして見事、本作で1周クリアに成功したプレイヤーには、とあるご褒美が用意されている。はたして、その内容はどんなものなのか? それは「遊んでみてのお楽しみ」ということで、ぜひ自身の目で確かめていただきたい。

 また、「グラディウス オリジン コレクション」には「沙羅曼蛇III」のほか、「グラディウス」「沙羅曼蛇」「ライフフォース」「グラディウスII GOFERの野望」「グラディウスIII 伝説から神話へ」「沙羅曼蛇2」も収録されている。クイックセーブ・ロードや巻き戻しはもちろん、トレーニングモードやオンラインランキング、サウンド/ビジュアルギャラリーなど便利機能も追加されているので、あわせてぜひ遊んでみてほしい。

「グラディウス」
「沙羅曼蛇」
「ライフフォース」
「グラディウスII GOFERの野望」
「グラディウスIII 伝説から神話へ」
「沙羅曼蛇2」