PS4/Xbox Oneゲームレビュー「ダイイングライト」

ダイイングライト

多彩なクエストが楽しい、ボリュームたっぷりな作品

多彩なクエストが楽しい、ボリュームたっぷりな作品

サイドクエストもたっぷり用意されている
アンティジンを得るため、ライズの取り立て屋の仕事をやらされることも
ライズが隠している物資を盗むため、工場に潜入する
物語で大きな役割を果たす、医師のゼレ
政治家のエロル。穏やかな物腰にこちらを利用しようという意思が透けて見える

 「ダイイングライト」は濃いストーリーのメインクエストと、多彩なサイドクエストがたっぷり用意されていて、どっぷりとこの世界に浸ることができる。筆者が思わず「マジかよ」と声を出してしまったのは、序盤のストーリークエスト「空中投下」だ。

 ここでクレインはゾンビ化を抑える薬「アンティジン」を確保するのだが、GREは「アンティジンがあると、ライズとの接触の可能性がなくなる。全て破棄しろ」と指令を下す。クレインは迷いながらもそれに従い、ライズとの交渉に立候補することになる。この時の“罪悪感”がきっかけとなり、ライズの残酷な正体や、GREの謎めいた意思などがドンドン明らかになっていくのだ。

 繰り返すが、「ダイイングライト」の大きな魅力はストーリーだ。ググっとのめり込み、彼らの未来が気になりゲームを進めたくなる。本作はストーリーの分岐はないようで、“悪のロールプレイ”という選択肢は存在していない。アンティジンの不足、ライズの活発化と、事態は絶望の度合いを強めていく。タワーのリーダーも弱音を吐く。しかしクレインは諦めない。タワーのみんなを助けるため、この事態を好転させることを目指して、ゾンビに溢れる街へ飛び込んでいく。

 サイドクエストも魅力的だ。鎮痛剤を大量にため込んでいるマザコンの男が出てくる「母の日」は、ホラーの短編映画そのままの“オチ”が待っているし、避難し、閉じ込められて退屈している子供達のために「クレヨン」を取ってくるクエストもある。

 タワーの仲間達から離れた集団がどうなったかを語る「トータルセキュリティー」、強力な燃焼剤を作ることに熱中する男を助ける「放火魔」など、“ゾンビ・アポカリプス”を描く本作ならではの、ダークな味付けのクエストもたっぷりある。また、クエストは「夜」に限定したものもある。恐ろしい夜に飛び込まなくてはいけないというのは……かなりハードで、挑戦心をかき立てられる。

 このほか、フィールドを進んでいると、ランダムで生存者と遭遇することがある。ゾンビに追われている人を救出するとボーナスがもらえるし、トレードを行なうNPCもいる。さらに話をするだけのNPCもいる。キャラクター達のバックボーンが語られストーリーにより深くのめり込んでいける。中にはゾンビに囲まれているときに長い話が始まり、聞いている暇もなく逃げる、ということもある。ランダムエンカウンターならではの楽しさだ。収集要素や、護衛ミッションなど、ゲーム要素は非常に多彩だ。

 さらに「ダイイングライト」の大きなセールスポイントとして、「オンラインマルチプレイ」がある。ゲーム内で最大4人での協力プレイができるのだ。バランス的にきつい場面も協力者がいればかなり楽になりそうである。今回は発売前のため体験できなかったが、楽しみな部分だ。さらに購入者特典として自分がゾンビになりプレーヤーに襲いかかれるDLC、「ゾンビ モード」も用意されている。このオンライン要素にも大きく期待したい。

 筆者は、「デッドアイランド」もプレイした。こちらはオンラインマルチプレイが前提と感じるバランスで、戦闘がきつかった。また、ストーリーに関しては様々なキャラクターが用意されているが、ドラマ性がもう1つだった。「ダイイングライト」これらの反省をキチンと活かしていると感じた。まず、フリーランニングによりフィールドの移動が楽しくなり、力押しのみで進むということがなくなった。ソロでもゲームを進められるようになった。そして何よりもストーリーである。ぐいぐいと引き込まれるメインストーリーの魅力は、筆者を強く惹きつけた。

 「ダイイングライト」は“フィールドで常に緊張を強いられる”という非常にユニークな要素を持った作品だ。未知の場面を探索する楽しさよりも、「できるだけ早く目的を達し、素早く安全地帯に帰る」という行動を求められる。このユニークな体験、強い緊張感は、他のゲームで体験できない。このドキドキ感は、ぜひ体験して欲しい。エキサイティングな作品である。

【展開していく物語】
エキセントリックな人物もたくさん登場する
ランダムイベント。襲われている人を助けたり、話を聞くことで物語の背景を聞ける
ゾンビが入ってこれない場所の電気を復旧させることで、安全地帯を確保できる

【様々な表情を見せるハラン市】
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(勝田哲也)