PS3/Xbox 360ゲームレビュー

リアルさに磨きをかけたファン必見のシリーズ最新作
「UFC Undisputed 2010」

  • ジャンル:対戦格闘
  • 発売元:株式会社ユークス
  • 開発元:株式会社ユークス
  • 価格:7,329円
  • プラットフォーム:プレイステーション 3/Xbox 360
  • 発売日:発売中(9月9日発売)
  • プレイ人数:1人~2人
  • CEROレーティング:B(12歳以上対象)


 前作「UFC(R) Undisputed 2009TM」が全世界累計400万本を売り上げた、ファン待望のシリーズ最新作「UFC(R) UndisputedTM2010(以下:UFC 2010)」。北米の総合格闘技団体「Ultimate Fighting Championship(以下:UFC)」をモチーフにした本シリーズは、競技の醍醐味や特徴を徹頭徹尾リアルに再現することに重点が置かれている。遠めに見たら本物と勘違いしかねないリアルなグラフィックスはもちろん、ガチになるほど熱い攻防に引き込まれていく対戦など、圧倒的なクオリティの高さで世界中のユーザーを魅了した。筆者も、ファイターをエディットしまくるなど心ゆくまで楽しませていただいたクチだ。

 シリーズ最新作はパッと見「UFC 2009」と大差ないが、完成されたグラフィックスとは別に“全体的なブラッシュアップ”が随所に施されている。前作をやりこんだ人は、すでにプレイしているか、もしくは「ブラッシュアップのポイントだけ知りたい」と思われるかもしれないが、シリーズの知識がまったくない人もおられるわけで、ここでは基本操作から順次説明していきたい。なお、レビューにはPS3版を使用した。一部特典が異なるほかはXbox 360版とゲーム内容は変わらないので、ユーザー諸氏はお好きなほうを選んでプレイしていただきたい。



■ 操作系 ~使用ボタンは多いが、系統だてた配置で直感的に動かせるのがポイント~

 操作系は、前作をほぼ踏襲している。シリーズ初体験の人は「えっ、こんなにボタン使うの!? 覚えられないよ!」と思われるかもしれないが、移動、つかみ、攻撃、防御、シフト(特殊)と系統だてられているので、少しプレイすれば誰でも直感的にファイターを動かせるようになるはず。スタンディング、クリンチ、ケージ、グラウンドといった各ポジションごとに一部操作は変化するが、それも特別に難しいものではない。

 スタンディングは、左スティックでファイターの移動。押し込めば(L3)入力した方向にダッシュ。軽く弾くように入力すればステップ。ストライクブロック上(PS3はR1、Xbox 360はRB)を押しながらステップ入力でスウェー。相手の攻撃を読んで回避からカウンターなど、ステップとスウェーは慣れるにしたがい重要度が増すテクニックのひとつだ。打撃は、右パンチ(PS3は△、Xbox 360はY)、左パンチ(PS3は□、Xbox 360は×)、右キック(PS3は○、Xbox 360はB)、左キック(PS3は×、Xbox 360はA)。人間の手足と同じ配置なので、誰でもすぐなじめるだろう。テクニックシフト(PS3はL1、Xbox 360はLB)を押しながら打撃ボタンを押すと通常よりも強力な打撃、高さシフト(PS3はL2、Xbox 360はLT)を押しながらだとボディまたは足を狙った攻撃に変化する。

 打撃に対するディフェンスは、ストライクブロック上(PS3はR1、Xbox 360はRB)で上段、ストライクブロック下(PS3はR2、Xbox 360はRT)で中段と下段をそれぞれブロック。ただし、ブロックに成功しても、その上から微量ながらダメージを被ってしまう。肉体が矛、そして盾となる総合格闘技だけに、一般的な対戦格闘ゲームのようにディフェンス成功=無傷ではいられない。見た目ガードをすり抜けて打撃がヒットしていたら、そのぶんもきちんと物理計算が行なわれている。

 右スティックは、相手側に入力するとクリンチ。L1またはLBを押しながら入力するとテクニッククリンチ。L2またはLTを押しながら入力するとタックル。タックルで組み付いた相手を倒すときは、右スティックをグルグル回転させる。防御側は、相手のアクションにタイミングをあわせてスティックを自分側に入れるとグラップルブロック、上または下に入れるとカウンターグラップル。クリンチ/グラウンド時の操作は、打撃、シフト、ブロックはスタンディングと共通。ダウン中の相手にのしかかりたいときは、接近して右スティックを相手方向に入力。ダウン状態から立ち上がるときは、左スティックを押し込む。有利なポジションへ移行する時、右スティックを上下左右、それぞれ回りこむように1/4または3/8回転。防ぐときは右スティック左右どちらかに入れっぱなしでグラップルブロック、タイミングをあわせて軽く弾くとトランジションリバーサル(カウンター)になる。

 サブミッションを仕掛けるときは、右スティックを押し込む。このとき、仕掛けてすぐ右スティックをグルグル回転させる通常のサブミッションか、押し込んだままで減っていくスタミナゲージを見てタイミングよく離す“サブミッションチャージ”の2通りが選べる。右スティックを回転させるサブミッションは、前作でおなじみの残りスタミナなどを踏まえた“根性勝負”。チャージは、ひらたくいえば“だまし”勝負。チャージからボタンを離すタイミング次第だが、受ける側も右スティック回転でスイートスポットを動的にずらせる。

 新要素「ケージポジション」は、これまでスタンド(クリンチ)とグラウンドを往復していた戦いの流れを、よりリアルに再現するもの。やり方は、クリンチ状態から相手をケージに押し付けるだけでいい。基本操作はクリンチと一緒だが“ケージに相手をおしつけている側が有利”という明確な違いがある。現実のUFCよろしく動きを制約できるため、パワーで優位にあるファイターは積極的に利用したい。余談ながら、ゲージのたわみ具合はファイターのモーション同様に物理演算が用いられている。ケージを利用した戦い方はUFCならではの要素だけに、ファンにとっては嬉しい新システムだ。


【UFCの攻防をリアルに再現】
スタンドからグラウンドまで、オクタゴンで繰り広げられる展開を違和感なく再現。リング内だけではなく、こう着状態のブーイングでさえ、よく見ると観客が親指を下に向けていたりする。あちこちに開発チームの“こだわり”が詰まった作品だ

【ケージポジション】
新要素における目玉のひとつがコレ。前作ではスタンドとグラウンドを行き来するのが主な流れだったが、UFCで重要なファクターを占めるケージの攻防が追加され、リアル感がグッと増した



■ 100名を超えるUFCファイターが参戦 ~サウスポー、独自モーションなど個性を再現~

 「UFC」は、ライト、ウェルター、ミドル、ライトヘビー、ヘビーといった5階級にわかれており、今作は「UFC 2009」を上回る100名以上のファイターが実名で登場する。前作レビューと同様の表記で恐縮だが、今回は現役選手のほか、PS3版限定特典として“レジェンド”と呼ばれる殿堂入りファイターも収録されているため、気になるファイターが収録されているかぜひチェックしていただきたい。



●各階級に登場するファイター一覧

【ライト】
宇野薫エフライン・エクスデロ
エルメス・フランカカート・ベルグリーノ
クレイ・グイダグレイ・メイナード
ケニー・フロリアンコール・ミラー
ジェンス・パルヴァー(※2)ジョー・スティーブンソン
ジョー・ローゾンショーン・シャーク(※1)
スペンシャー・フィッシャータイソン・グリフィン
ディエゴ・サンチェス(※1)デニス・シバー
テリー・エティンネイト・ディアズ
BJ・ペン(※1)フランク・エドガー
マット・セラ(※1)ロス・ピアソン
【ウェルター】
アミール・サダーラーアンソニー・ジョンソン
カーロス・コンディットカロ・パリジャン
キム・ドンヒョンクリス・ライトル
ジェイムス・ウィルクスショーン・シャーク(※1
ジョシュ・コスチェックジョルジュ・サンピエール
ジョン・フィッチダスティン・ヘイズレット
ダン・ハーディチアゴ・アウベス
ディエゴ・サンチェス(※1)パウロ・チアゴ
BJ・ペン(※1)フランク・トリッグ
ホイス・グレイシー(※2)マーカス・デイビス
マイク・スウィック(※1)マット・セラ(※1)
マット・ヒューズマルティン・カンプマン(※1)
【ミドル】
秋山成勲アラン・ベルチャー
アンデウソン・シウバ(※1)ヴァンダレイ・シウバ(※1)
ウィルソン・ゴヘイア(※1)岡見勇信
クリス・リーベンケンドール・グローブ
ダン・ヘンダーソン(※1)ダン・ミラー
チェール・ソネンデニス・カーン
デミアン・マイアドリュー・マックフィールズ
ネイト・クォーリーネイト・マーコート
パトリック・コーテヒカルド・アルメイダ
ビトー・ベウフォート(※1)マイク・スウィック(※1)
マイケル・ビスピン(※1)マルティン・カンプマン(※1)
リッチ・フランクリン(※1)
【ライトヘビー】
アンデウソン・シウバ(※1)ヴァンダレイ・シウバ(※1)
ウィルソン・ゴヘイア(※1)キース・ジャーディン
クシシュトフ・ソシンスキージェイソン・ブリルズ
ショーグン・フアジョン・ジョーンズ
スティーヴ・キャントウェルステファン・ボナー
ダン・ヘンダーソン(※1)チアゴ・シウバ
チャック・リデルティト・オーティズ
ビトー・ベウフォート(※1)フォレスト・グリフィン
ブランドン・ヴェラ(※1)マーク・コールマン(※1)
マイケル・ビスピン(※1)マット・ハミル
ライアン・ベイダーラシャド・エヴァンス
ランペイジ・ジャクソンリッチ・フランクリン(※1)
リョート・マチダルイス・カーニ
【ヘビー】
アントニー・ハードンクアンドレイ・アルロフスキー
エディ・サンチェスガブリエル・ゴンザーガ
キンボ・スライスケイン・ヴェラスケス
ジェームズ・マクスイニーシェーン・カーウィン
ジャスティン・マッコーリージュニオール・ドス・サントス
ステファン・シュトゥルーフダン・スバーン(※2)
チャック・コンゴトッド・デュフィー
パット・バリーヒース・ヒーリング
ファブリシオ・ヴェウドゥムフランク・ミア
ブランドン・ヴェラ(※1)ブレンダン・シャウブ
ブロック・レスナーマーカス・ジョーンズ
マーク・コールマン(※1)ミノタウロ・ノゲイラ
ミルコ・クロコップムスタファ・アルターク
ロイ・ネルソン

 

    (※1) …… 他階級でも選択可能なファイター
    (※2) …… プレイステーション 3版限定ファイター

 前作ではファイターの構えやモーションがほぼ共用されていたが、「UFC 2010」ではオーソドックス、サウスポー、さらにはスイッチが導入され、リアルさがグッと増した。これについては、ユークスが開催したイベントにて、UFC現役ファイターの岡見勇信さんが「前作はオーソドックスになってて、サウスポーの僕はちょっと違和感があった。今作ではそれが解消された」とコメントしている。

 構えだけでなく、固有の技(スキル)が多数盛り込まれているのもうれしい。そのファイターだけが持っているスキルはもちろん、バックハンドブローやハイキックなど、同じカテゴリのスキルでも通常とは異なるモーションを持つファイターが設定されていたりと、随所に開発チームのこだわりが見てとれる。サラベリーなど新たに加わったスキルも多数あり、全テクニック数は前作の倍(600種類)以上と膨大なボリュームを誇る。


【オーソドックス、サウスポー、スイッチ】
前作は全員が右利きのオーソドックスだったが「UFC 2010」はサウスポー、左右いつでも切り替えが可能なスイッチが追加され、よりリアルになった


【ファイター固有など新モーションを多数導入】
コアなUFCファンほどうれしい新要素。気になる方は、無料体験版でもいいのでぜひ1度ナマでご覧いただきたい



■ 充実したゲームモード ~メインのキャリアは演出が多彩になり、より楽しく進化~

 ゲームモードは、エキシビション、ゲーム(タイトル、タイトルディフェンス、トーナメント、アルティメットファイト、キャリア、イベント)、オンライン(エキシビション、キャンプ、ランキング、イベントカードダウンロード)、クリエイトファイター、チュートリアルなどが用意されている。

 シングルプレイのメインモードは、やはり「キャリア」ということになるだろう。キャリアは、オリジナルファイターをエディットして総合格闘家としてUFC殿堂入りを目指すモード。出身地、名前、年齢、外観、ボイス、ファイター能力、スキルなど、前作以上に細かくエディットできる。外観ひとつとっても、体型はもちろん、輪郭、タトゥー、顔の傷、ホクロ、さらには体毛の濃さにいたるまで、圧倒的な項目数と多機能ぶりに改めて驚かされる。衣装もブランド品からオリジナルまで、UFCで見かけるものはほぼ完璧に再現できる。

 キャリアは1週間単位で進行。トレーニング、スパーリング、キャンプ招待、クールダウン、ゲームプラン、アクションといった各メニューを選択するたびに時間が過ぎていく。トレーニングで身体能力、スパーリングでスキル、キャンプで技を習得しつつ、クールダウンによる疲労回復をおりまぜながら試合に備えるのが基本的な流れ。ジムの練習生としてアマチュアからスタートするが、すぐプロになることも可能。活躍すればズッファ代表のダナ・ホワイトに見込まれUFCファイターとしてデビュー。総合格闘家として12年の歳月を過ごす。

 前作のキャリアはメールでほぼすべての説明が行なわれていたが、今作はムービーシーンなど演出が豪華になった。アマデビューから、ダナに見込まれてUFCに参戦、ゲストとして勝利予想、試合後のインタビューなどなど、淡白だった前作とは比較にならないほど進化。WOWOWでUFC関連の番組を見ている人は、思わずニヤリとしてしまうシーンもあるはずだ。全体に満足いく内容だが、個人的にひとつだけ気になったのは、ファイター育成が効率至上主義に陥りがちなこと。エディットファイターの能力は時間の経過にしたがい自然減するが、30、50、70と設定された値に到達すると、それ以下にはならない。コツがわかれば10年目の最終調整でいかようにも完成形を目指せるが、能力低下の抑制を踏まえた“過程”で画一的なプレイになりがちなのが惜しい。この辺り、もう少し自由度に振幅があれば、より楽しさが増したように思われてならない。


【エキシビション】【タイトル/タイトルディフェンス】【トーナメント】
好きなファイターを選んで対戦させられるモード。対人のほかCPU同士の対戦を鑑賞することも可能だファイターを選び、UFCチャンピオンに昇りつめていく様子を体験。獲得後はディフェンスモードで防衛戦が楽しめる4人、8人、16人の対戦トーナメントが作成できる。人数が足りないときはAIにプレイさせることも可能

【アルティメットファイト】
前作でおなじみの、UFCで過去行なわれた名勝負を再現するモード。リワードをクリアするとスペシャルムービーがアンロックされる

【キャリア】
いちファイターとなってアマチュアからスタート。UFC参戦後、さまざまなイベントをこなしつつ殿堂入りを目指す。前作はメールですべて処理されたイベントが、ムービーなどの演出で飛躍的にパワーアップ

【イベント】【オンライン】
オリジナルのイベントカードを作成して楽しむモードオンライン対戦のほか、他プレーヤーと組んで対戦や練習ができる「キャンプ」モードを搭載。ひらたくいえばチームを組むようなイメージ。ランキングを競うこともできる

【クリエイトファイター】【チュートリアル】【ゲーム履歴】
オリジナルのファイターを作成。外見、衣装、モーションなど、エディット項目は多岐にわたる基本を知らなければ、勝てるものも勝てない。マニュアルに目を通し、ここで実戦形式で学ぶとなおよし各モードの結果やアンロックなどをチェック。ゲーム内で獲得したポイントでショップメニューコンテンツを購入するのもここ



■ よりリアルさを増したUFCファン必見の仕上がり

 前作の完成度が高かったこともあるが、約1年という短期間ながら、ケージポジション、新モーション、ファイターなど、ファンのツボをおさえた数多のブラッシュアップは、手放しで評価したい。目を見張るような強烈な進化はないが、前作で足りなかった部分が丁寧にフォローされており、チャージ式のサブミッションなど新たな試みも行なわれている。簡素なマニュアルなどとっつきにくさは否めないが、チュートリアルが丁寧なので、特に問題にはならないはずだ。

 有利不利がハッキリ出るケージポジションは賛否両論あるかもしれないが、オンライン対戦でよくケージに張り付けにされている筆者でも“ケージはUFCを象徴する存在”ということで「次回作でトラジションのふり幅が大きくなればいいかなぁ」くらいに思っている。このあたり、現実のUFCの進化にあわせてゲームでの攻防もより多様化していくことを期待したい。

 前作のレビューと似たような記述になってしまうが、本シリーズはガチでやればやるほど“面白さ”が染み出てくる。もちろん「あっ、これは……」というところもないわけではない。総合格闘技に興味がなくても、対戦格闘ゲームが好きな人であれば、必ずどこか気に入ってもらえるポイントがあると思う。モノがいいだけに、あとは只々オンラインの国内対戦人口が増えてくれることだけを願っている。国内地上波で定期放映されていない「UFC」は一般層への浸透度が低く、ゆえにオンライン対戦は海外ユーザーが圧倒的多数を占める。WOWOWでUFCを見ており、なおかつゲームが好きなら「UFC 2010」をぜひ1度プレイしていただきたい。そして、本作ならではの熱い対戦に目覚めてくれれば、これ以上なにも言うことはない。



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(2010年10月25日)

[Reported by 豊臣和孝 ]