Xbox 360ゲームレビュー

英雄は革命を導き、アルビオンの王となる
冒険、仲間、そして未来の選択をその手に!

「Fable III」

  • ジャンル:アクションRPG
  • 発売元:マイクロソフト
  • 開発元:Lionhead Studios
  • プラットフォーム:Xbox 360
  • 価格:7,140円
  • 発売日:10月28日
  • CEROレーティング:Z(18歳以上対象)
  • プレイ人数:1~2人


 初代の英雄がアルビオンを救って550年の時が過ぎ、新たな英雄はついにアルビオンの王となる。まだ見ぬ冒険、壮大な戦い、無数の仲間、そして無数の市民の命運を決める究極の「選択」。英雄として、王として、すべての未来はあなたの手の中にある。想像を絶する重圧と犠牲に、あなたは耐えられるか?!

 ピーター・モリニュー氏が率いるLionhead StudiosによるアクションRPGシリーズ第3作である本作「Fable III」は、プレーヤーが演ずる英雄が革命を起こし、王座を奪取し、王国を危機から救うための冒険譚を綴る、ちょっと大人向けのビターな作品だ。本作は自由度の高さから無辜の市民を殺めることも可能であるためCEROレーティングは18歳以上対象を示す「Z」となっているが、英国生まれのゲームならではのウィットに富んだジョークも多数散りばめられて、殺伐とした雰囲気だけに収まらない、独特のムードを持つ大作RPGに仕上がっている。



■ アルビオンを圧政から救うために! 今度の「英雄」は革命の指導者として冒険を開始する

産業革命の真っ只中にあるアルビオン。圧政が敷かれ、市民の不満は爆発寸前だ
王弟である主人公と忠実な執事ジェスパー。平和そのものの日常を破壊するのは兄王の悪政だ
護衛役であり、武道の指南役でもある老ウォルター。その強く賢い熱血漢ぶりは感動モノ
どちらを処刑するか?究極の選択を突きつけられる
王城を脱出し、ギルドの紋章を手にした主人公。その手には英雄としての力が宿り始める

 本作の舞台は、前作「Fable II」で貧民街出身の英雄がアルビオンを救ってから50年後の世界。前作の英雄は「いにしえの塔」にまつわる冒険の後、アルビオンの王となり、2人の息子(もしくは息子と娘)を遺してこの世を去っている。プレーヤーが演ずるのはその弟もしくは妹で、王国の継承権を持つ王子(王女)としてゲームをスタートする。前作と同様、冒険の開始時に主人公の性別を選ぶことが可能だ。以下、便宜上主人公を男性として話を進めたい。

 アルビオンは前作の英雄の治世を受けて長足の進歩を遂げ、産業革命の時代を迎えている。街や村に残る中世的なたたずまいと、工業地帯に広がる近代的な風景が同居する、なんとも魅力的な世界設定だ。首都バウワーストーンは都市圏を大幅に広げているが、王城まわりの市場や旧市街は前作の趣を留めており、「Fable II」をプレイしたプレーヤーならあまり迷わずに歩けることだろう。

 しかし、近代化の波が押し寄せつつあるアルビオンは大きな問題を抱えている。市民への重税、児童労働、反抗への無慈悲な刑罰。主人公の兄であるローガン王による圧政により、市民には重労働と貧困と理不尽な死という不幸が蔓延しているのだ。ゲームスタート時よりローガン王は無慈悲な君主として描かれ、政策改善を嘆願しにきた市民の代表を即決で処刑しようとする始末だ。

 この兄王の異常性に主人公も反感を抱きつつあり、ちょうど会いに来た幼なじみのガールフレンドのエリースと共に兄の蛮行を止めようとする。しかし、冷血な兄王は主人公に「それならば、市民を処刑するか、自分のガールフレンド(ボーイフレンド)を処刑するか、選べ」と究極の選択を強制する。

 「この外道が~!!」とばかりに兄王との訣別を決断する主人公。忠実なる執事のジャスパーと、熱血漢の老衛士ウォルターを引き連れ、時には導かれて、主人公は先代を継ぐ英雄として目覚めの時を迎える。そして、兄王ローガンの政権を打ち倒すため、圧政に苦しむ民衆とそのリーダー達を味方に付けるための冒険の旅に出かけるというわけだ。

 本作はその冒頭から、主人公が抱くべき強い目的意識を丁寧に描写し、あっという間にプレーヤーを「Fable III」の作品世界の中に心から飛び込ませてくれる。圧政からの開放を目指すという骨太のシナリオは、主人公が沢山の仲間を集めるための数々のクエストとしてゲーム的にも丁寧に織り込まれ、プレイを続けるうちに痛快な「上昇感」を得られ、プレーヤーを一気呵成に結末へ突進させる、そんな力強さに満ち溢れている。

 基本的なゲームシステムは前作と同じく、軽快なアクションRPGスタイルだ。プレーヤーの行動の選択による善悪への分岐、それによる見た目の変化をはじめ、NPCとの交流、金稼ぎのためのアルバイト、不動産の所有……といった社会的なプレイ要素も満載。本作ではメインシナリオが迷わず進める1本道スタイルで造られているいっぽう、多数の寄り道要素もあり、自由度高くアルビオンの冒険を楽しめるようになっている。もちろん、シリーズを通しておなじみのニワトリたちも多数登場。ニワトリレースで全財産をスッてしまわないようご注意を!


革命を率いるための冒険はアルビオンの辺境から全土にまたがり、主人公は無数の人物と交流しながら英雄として大きな成長を遂げていく



■ 善悪の道、進化する武器、金稼ぎ。前作を引き継ぐ独特の成長要素とアクション

「聖なる間」の地図から各地にワープすることができる
剣、銃、スペルを駆使して戦闘を展開
スペルのチャージ攻撃は非常に強力で、ついつい頼りがちになるかも?
銃撃で爆発物に引火させれば、敵のグループをまとめて始末できる
「統治の道」。ゲームの進行度に応じて各種スキルをアンロックできる

 王城を脱出後、いよいよ本作のメインシナリオの本番だ。「ギルドの紋章」を手にして英雄として目覚めた主人公は、革命の仲間を集めるためアルビオンの世界中を旅することになる。ちなみに各地への移動は、かつては「英雄ギルド」と呼ばれていた「聖なる間」にある円卓の地図にアクセスすればいつでも好きな場所にワープできる仕組みで、本筋の冒険以外の面倒な部分はバッサリと簡略化できるようになっているのが嬉しい。「聖なる間」には冒険中いつでも、スタートボタンを押すことで即座に入ることが可能だ。

 メインシナリオの進行は基本的に1本道で迷うことなく先に進むことができる本作だが、主人公そのものの成長やアクション要素、社交的な要素については大きな自由度が確保されている。

 まず戦闘アクションは、前作同様に「剣」と「銃」と「スペル(魔法)」を自由に駆使する軽快なスタイル。3つの攻撃手段はそれぞれX、Y、Bボタンに割り当てられており、Xボタンを連打することによるコンボ攻撃、あるいは長押しでのガード崩し技「フラッシュムーブ」、Yボタンでの銃撃とLトリガーと組み合わせての狙撃、それからBボタンの長押しによるチャージ魔法の発動といった形でシンプル。初めてのプレイでもすぐに慣れることができるだろう。

 そして今作では「経験値」の扱いがかなり変わっており、従来は剣、銃、スペルのそれぞれで敵を倒すことにより対応する経験値が得られるようになっていたが、今作では「ギルドの紋章」アイコンの示す数字に統一された。そのかわり、剣を使って敵を倒せば肉体的な「強さ」が向上し、銃を使えば「背の高さ」が、スペルを使えば「魔力」が成長、というふうに、個別に攻撃力がアップする要素は形を変えて継承している。

 今作でポイントとなるのは、この経験値を示す「ギルドの紋章」を高めるための方法が戦闘に限らないということだ。例えば街中で市民とコミュニケーションを取り、ある水準以上に好意を抱かれるか恐怖を与えることによって1ポイントの「ギルドの紋章」を得ることができるほか、各種クエストのアワードとして沢山の「ギルドの紋章」を獲得可能だ。このため戦闘そのものよりも、街中の社交的な行動や、クエストの達成によって主人公が大きく成長するという仕組み。

 こうして集めた「ギルドの紋章」は、「聖なる間」からアクセスできる異空間「統治の道」にて使用することができる。「統治の道」はゲームの進行度を表し、各地点が門で閉ざされた1本道の形状になっており、各地点に新たなスキルやアクションをアンロックするための宝箱が置かれている。例えば「魔法のスキルレベル2」の宝箱は「ギルドの紋章」40個という形。大抵は全てのスキルアンロックするほどの「ギルドの紋章」を持つことはできない。プレイスタイルに合わせてどのスキルを優先してアンロックするかが、本作における成長戦略の基本となっているわけだ。

 もうひとつの成長要素は、ゲーム初期よりプレーヤーに与えられる特別な武器、「英雄の剣」と「英雄の銃」にまつわるものだ。この2種の武器は、プレーヤーの戦い方や社会的な立ち振る舞いによってその姿、形状が変化していくようになっている。例えばお金を一杯稼いだら豪華な装飾がつき、スペルを駆使して敵を倒し続ければエキゾチックな紋様が付加される。このためプレーヤーそれぞれに異なるデザインの武器が生まれていくというのは面白い。しかし武器の性能そのものはスキルレベルに依存し、見た目以外のバリエーション変化があまりないのはちょっと惜しい。

 そして本作で前作以上に重要な存在となったのがゴールドだ。ゴールドは街で新しい服飾や武器、あるいは不動産を買うために使えるが、本作ではそれ以上の使い道が隠されている。ともかく沢山お金を稼いでおくことはとても重要なので、まずはアルバイトで資金を貯めて住居や店のオーナーを目指すのもいいだろう。

 前作にもあったアルバイトは、今作ではややシンプル化されており、「パイ職人」、「リュート奏者」、「鍛冶屋」の3種類にまとめられた。内容としては画面に表示される色付きのバーに合わせて対応するボタンを押していくだけのタイミングゲームになっており、難度が高いものほど1回あたりの成功報酬も高い。より収入を高めるためには高レベルの「職人」になる必要があるが、これも他の成長要素と同じく「統治の道」のスキル宝箱でアンロックする仕組みだ。

 より簡単で場合によっては大きな収益が期待できる不動産業は、かなり便利になった。本作の街や村に存在する全ての住居と店舗は購入可能で、貸し出しておけば5分おきに利益が入ってくる。多数の不動産を所有すれば5分置きに数万ゴールドの収入を得ることも可能だ。その際に面倒になりがちな不動産のメンテナンスは、「聖なる間」のミニチュアマップ画面から直接アクセスできるようになっているので、不動産王としてアルビオンの富を牛耳るというプレイは効果的で、そして楽しい。


得意な攻撃方法で敵を倒していけば、対応する肉体的能力が成長し、より効果的に戦闘を展開することが可能に

英雄シリーズの武具は、プレーヤーの振る舞いによってその形状を変えていく

アルバイトや不動産管理でお金を稼ぐ。本作では本当にお金が大切なのだ!



■ やがて英雄は王となり、アルビオンの命運をその手に握る

やがて主人公は王となる
王様は毎日が重い決断の連続。たやすく統治できるアルビオンではないのだ
懐かしいバウワーストーン市場。英雄としての重圧を忘れ、ここで新生活を初めてみるのも良いかも?

 プレーヤーが王として君臨した後は、本作のシナリオでいちばん面白く、ゲームの根幹に触れる部分なので詳しく書けないところなのだが、少しだけ触れておきたい。

 冒頭でも触れたように、主人公率いる革命軍の闘争は成功を収め、主人公は再び英雄として、そして国王としてアルビオンに君臨することになる。王様になったプレーヤーのなすべきことは……ともかく執事の出すスケジュール表に従って行動することだ。王様という立場では絶大な権力がある一方で、意外と自由は無いものなのだ。

 その中でプレーヤーは王国全土の命運に関わる、様々な問題を決裁することになる。究極の選択の連続だ。ここで民衆にやさしい善王として振舞うか、兄ローガンと同じ圧政の悪王として振舞うかは自由だが、ここまでシナリオを進めてきたプレーヤーにとっては、ただ善を成すことがこんなにも困難なことなのかと大いに苦悶することだろう。多くのプレーヤーが「良い人」を演じたがるという本作の傾向を逆手に取った、とことん残酷なシナリオが連続していく。

 さきほど本稿で「沢山お金を稼いでおくことはとても重要」と述べたが、その真意は実際にプレイして確かめてもらいたい。主人公はアルビオンの命運をその手に握るのとひきかえに多くのものを失うが、困難な道を歩んで全てを勝ちとることも不可能ではない。是非、そのあたりの顛末はプレーヤー自信の手と目で確かめ、その重さを味わって欲しい。王様としてアルビオン全体の問題を解決したあともゲームは続く。その後の世界でどのような評価を受けるかは、まさにプレーヤーの選択次第だ。

 また、王国の運命などは横に置いておいて、主人公の幸せだけを追求してみるというのも良いだろう。本作では前作と同じく街の住民と仲良くなり、結婚して子供を設けたり、もし同性の相手と結婚してしまったなら養子を得て家庭を築くこともできる。遊び人を演ずるなら各地で浮気をしまくって、セカンド家族、サード家族を養うことすら可能だ。

 さらに、前作では不可能だった、マルチプレイゲームで他のプレーヤーと結婚することもできる。マルチプレイでは「自分の世界に相手を招待する」という形で最大2名でのプレイが可能となっており、マルチプレイでのみ達成可能な「デーモンの扉」の問題や、各種の「実績」もあるので、ぜひフレンドと一緒に冒険を楽しんでみよう。

 その他、善の道を極めるも良し、悪の道を極めるもよし。本作は大変なボリュームがあり、メインシナリオをひととおり一直線にクリアするだけでも10時間以上の時間がかかるが、本作のすべてを楽しむなら2回目のプレイも含めてさらに数十時間のプレイ時間が必要になりそう。丁寧にプレイしていけば、アルビオンの世界に溢れる様々な世界設定の面白さにも触れることができるだろう。前作にも登場した様々な要素が、50年の時を経ておもしろおかしく変質、再登場してくる点にも注目してもらいたい。

 最後に、本作はメインシナリオが非常に強力で、惹きつける力があり、プレーヤーを一気に先に進ませようとする誘因に溢れている。それと同時に本作にはメインシナリオに劣らないほどのボリュームで多数の魅力的なサブクエストが用意されてもいる。つられるままにゲームを進めていくと、このサブクエストという美味しい部分をほとんど消化しないまま最後まで遊んでしまうハメになってしまうので、バランスよく本作を楽しみたい方には、意識的に横道にそれてサブクエストを楽しむというプレイスタイルをおすすめしておきたい。


【スクリーンショット】

(c) 2010 Microsoft Corporation. All Rights Reserved.

(2010年10月28日)

[Reported by 佐藤カフジ ]