PS3/Xbox 360ゲームレビュー

世界最大のスポーツイベント開幕!
ワールドカップを「FIFA」で遊びつくそう!

「2010 FIFA ワールドカップ 南アフリカ大会」

  • ジャンル:サッカー
  • 発売元:エレクトロニック・アーツ
  • 開発元:Electronic Arts
  • 価格:5,040円(PS3/Xbox 360) / 3,990円(Wii/PSP)
  • プラットフォーム:PS3 / Xbox 360 / Wii / PSP
  • 発売日:5月13日
  • プレイ人数:1~4人(ローカル対戦) / 2人(オンライン対戦)
  • CEROレーティング:A(全年齢対象)


ワールドカップを目指して!

 世界最大のスポーツイベント、FIFAワールドカップ 南アフリカ大会がいよいよ開幕だ。エレクトロニック・アーツは、これにあわせてサッカーゲーム「2010 FIFA ワールドカップ 南アフリカ大会」を、プレイステーション 3 / Xbox 360 / Wii / PSPの4プラットフォームで5月13日に発売する。

 本作は唯一のFIFA公式ライセンスのサッカーゲームであり、ワールドカップを予選から完全再現するタイトルだ。本作のベースとなっているのは、昨年秋に発売されたEA Sportsのメガヒットタイトル「FIFA 10 ワールドクラスサッカー」。そこからさらに進化したゲームシステムを備えて、イベント連動のビッグタイトルが誕生した。

 本作にはFIFAワールドカップ南アフリカ大会にエントリーした全199の国と地域を代表するナショナルチームが収録され、本大会に出場する国、予選で敗れた国を含めて全てのチームでプレイできる。それだけでなくゲームとしても非常に完成度の高い作品となっており、ワールドカップをゲームで楽しむための最高の1本だ。



■ FIFAワールドカップ南アフリカ大会を様々な角度で楽しめる

多数のゲームモードを搭載
地球儀モードでは各国の能力やニュースを見たり、国歌を聴くことができる

 FIFAワールドカップ南アフリカ大会の全行程を様々な角度で楽しめるようにするため、本作には多数のゲームモードが搭載されている。199の国と地域の代表を選んで自由に対戦できる通常マッチング、リアルの日程どおりに予選・本戦を任意のチームで戦える「2010 FIFA ワールドカップ」モード、代表の1員となって戦い抜く「キャプテンモード」、予選の様々なドラマを追体験できる「南アフリカへの道」、さらにオンラインモードとして「オンライン FIFA ワールドカップ」などなど。

 また、ワールドカップはサッカーファンならずとも楽しめる4年に1度きりのビッグイベントということで、本作で初めてサッカーゲームをプレイするというユーザーのために、各種の「練習モード」を搭載。また、複雑なボタン操作をせずともプレイできる「2ボタンコントロールモード」が利用可能だ。これを使えば複雑なドリブルやオフザボールの動きは秀逸なAIが担当してくれ、ユーザーはパスとシュートの2操作だけでゲームを楽しむことができる。

 そして、ワールドカップを楽しむために友人や家族たちと集まることがある方は、皆で一緒に遊べる4人協力プレイ機能にも注目したい。PS33やXbox 360版で、4つのコントローラーを接続して、同じチームを4人で操作しても良いし、2対2で対戦してもいい。パスを交換してチャンスメイク、ゴールを決めて盛り上がろう。

 オンライン要素として注目したいのは、「バトル・オブ・ネーションズ」というリアルの国別対抗機能が搭載されていることだ。本作のオンライン対戦モード「オンライン FIFA ワールドカップ」でサポートする国を選び、オンラインで展開するリーグ戦を戦い抜くことで、得た勝ち点が国毎に集計される。これによって国同士で競争するというもので、ワールドカップ開幕に併せて大いに盛り上がりそうだ。


国の威信を賭けてボールを追いかける。盛り上がるスタジアムの雰囲気を感じながら、ワールドカップをゲームで楽しもう


・ゲーム性も大幅に進化、サッカーをより楽しく、奥深く

胸で味方にボールを渡す
ゴールの形が増え、緊迫感が増した

 初心者でも遊べるようにという配慮がなされた本作だが、それと同時にコアプレーヤーも満足できるものに仕上がっている。本作のベースとなった「FIFA10 ワールドクラスサッカー」から様々な改良、ブラッシュアップが行なわれており、前作でも評価の高かったゲーム性が、さらに磨かれているのだ。

 まずプレイを始めて即座にわかるのが、選手の各種動作のクイックネスがぐっと向上していること。「FIFA 10」以上に、プレーヤーの感覚どおりに動かせる。それでいて追加された多数のモーションのおかげか、理不尽な動きでボールをプレイすることは全くと言って良いほど見られない。

 モーションと言えば、本作にはコアプレーヤーが待ち望んだ機能が搭載されている。「胸パス」だ。従来の「FIFA」シリーズでは、浮き球を腰より上、頭より下の部位で扱う場合に、いちどトラップして、ボールが落ち着いてからようやく次の操作に移れるという状態だった。

 それが本作ではよりクイックに、ボールが地面に落ちる前に扱えるようになったし、ボールとの接触に合わせてパスボタンを押せば、胸や肩で狙った方向にダイレクトパスを送り出すことができる。リアルのサッカーで見られる風景が、またひとつ「FIFA」で再現できるようになったわけである。

 シュートモーションも複数追加されており、従来ならトラップするしかなかった微妙なボールをダイレクトで蹴ることができるケースが増えた。またシュートそのものもバランスがよりそれらしくなっており、「FIFA10」では決まりそうになかった角度からでもゴールを決めることができる。これからは、ゴールへの角度が大きい場所でもしっかりシュートコースを切らなければなるまい。

 そういった意味で、本作はシリーズの正統進化の流れをくむ作品であり、単なるイベント連動のスペシャルバージョンとして片付けられるものではない。是非、従来の「FIFA」シリーズや、他の本格派サッカーゲームで腕を鳴らしてきたプレーヤーも、本作に触れてサッカーゲームの進化を体験してみて欲しい。


「FIFA 10」から多くの面でゲーム性に変化が見られ、より洗練された印象を受ける。ピッチ上の風景を表現するグラフィックスもさらに自然な感じになった

今作でも様々なカメラモードが利用できる。左から順に「プロ」、「テレ」、そして今作で新たに追加された4人協力プレイ用の「協力プレイカメラ」。よりピッチを広く見渡せるので、ソロで使っても面白い


■ スタジアムの雰囲気は最高潮! あなたの応援するチームはワールドカップを掲げられるか?

予選・本戦でリアルの組み合わせを再現。カスタムも可能
日本代表のホーム戦は埼玉スタジアムでプレイできる

 1人プレイでは、本作のメインである3つのゲームモードでワールドカップを存分に楽しめる。まず、「2010 FIFA ワールドカップ」モードでは、予選、本大会いずれかの段階から、任意のチームを選んで連続的にプレイすることができる。まずはこのモードで本作のゲーム性を体験してみるといいだろう。

 予選、本大会のいずれでも、ゲームをスタートする時点で、グループの組み合わせを「リアル」、「カスタム」のいずれかに指定することができる。「リアル」では、全199チームが出場した予選も、32チームが出場する本大会も、現実同様の組み合わせが再現される。好みのシナリオを描きたいなら「カスタム」を選ぼう。

 日本代表チームでアジア予選からプレイするなら、当然最初のグループの相手はバーレーン、オマーン、タイという組み合わせだ。2007年10月から始まるスケジュールに沿って、ホーム&アウェイで総当たり戦。グループをトップで勝ち抜いたら、最終予選グループでワールドカップへの切符を目指す。途中には現実同様の親善試合も組まれるため、カップを掲げるか、敗退するまで30試合以上の長丁場になる。

 実際にプレイして驚いたのが、本作では南アフリカの大会用スタジアムだけでなく、各サッカー主要国のスタジアムまで再現されていることだ。例えば、日本代表でプレイした場合、ホームの戦いは埼玉スタジアムで行なうことになる。他の国でプレイしようと考えている皆さんも、見覚えのあるスタジアムが出てきて「おっ」と思うかもしれない。特に南米・ヨーロッパあたりはかなり再現度が高い。

 そしてこのホーム&アウェイというものが、本作ではゲーム的に影響するようになっている。アウェイで戦う場合、どうしても選手の調子が下がり気味になってしまうし、ホームならいつも以上の力が出せる。南米などは高地のスタジアムが多いが、そうすると気圧の影響でスタミナが切れやすくなるなど、現実同様のメカニズムが表現されているのだ。

 さらに、それらのスタジアムを埋める観客の雰囲気もよく再現されている。応援文化は地域によって異なるものだが、本作では国別、あるいは地域別に応援のチャントや演奏、鳴り物のサウンドをよく再現している。例えば英国でプレイすると「女王陛下万歳」のチャントが聞こえてきて、南米のチームだとドンチャカドンチャカと鳴り物が聞こえてくるという按配だ。アジアについては、残念ながら地域レベルの再現になっているらしく、具体的にこれというよりは、「日本や韓国っぽい」サウンドを再現するに留まっている。

ピッチサイドからスタンドの様子までよく再現され、スタジアムの演出も完全にワールドカップ仕様。試合を盛り上げてくれる大切な要素だ

・実在の選手で活躍するか、バーチャルプロで成長するか?「キャプテンモード」

自分の分身を代表に所属させてプレイ。もちろん実在選手でもプレイできる
監督の信頼を得て、目指せキャプテン

 本作をより体感的に楽しむなら、ぜひ「キャプテンモード」をプレイしよう。このモードでは、プレーヤーが代表選手のうちひとりだけを操作して、予選や本戦を戦い抜いてキャリアを積んでいくことができる。実在の選手を使ってもよいし、「FIFA 10」で作成したバーチャルプロ(自分自身の分身的なキャラクター)をインポートして使ってもいい。

 そのどちらにしても、プレーヤーが担当するキャラクターはプレイの結果に併せて成長していく。はじめは代表Bチームの選手として、そしてやがてはA代表に選出され、キャプテンとなって代表チームを勝利に導くことが目標だ。その間に与えられるキャリア上の小目標(ゴールを上げるなど)を達成するたびに、選手の能力が強化されていく。

 「バーチャルプロ」を使う場合は成長要素がよりダイナミックなものになる。「FIFA 10」でフットボールモンスター級にまでマイキャラクターを育てた人も多いかと思うが、本作では一端、ゲーム開始時にバーチャルプロの能力が初期値に戻される。具体的には2部リーグのスタメンレベルの能力だ。これを使って結果を出していけば、試合ごとに劇的な成長を遂げ、最後はまたフットボールモンスター級の選手に成長していく。

 リアルの選手、バーチャルの選手、いずれを使うにしても、日本代表のような世界的に中堅レベルのチームをプレイするなら、プレーヤー自身の活躍が何よりも勝利への道を開くことになる。フォワードをプレイするならゴールをバンバン決めて、ディフェンダーをプレイするなら相手を完全シャットアウトして、予選、本戦を闘いぬこう。もしカップを掲げることができれば、その達成感はとても大きい。


それぞれのプレイは細かく採点される。ミスが多くても得点など大きな活躍をすれば高い点数が狙えるので、チャンスを逃さず積極的にプレイしよう


・不可能を可能にせよ! 「南アフリカへの道」モード

予選のドラマチックな状況を再現。「あそこでこうしてれば…」というイフを楽しめる

 各地域予選からワールドカップの行方を追ってきたサッカーファンの皆さんにおすすめなのが「南アフリカへの道」モードだ。このモードでは、ヨーロッパ、南米、アジア、オセアニア、北中米カリブといった各地域について、ワールドカップ予選で起きた劇的な状況を追体験することができる。

 例えばこうだ。「ボリビアに5本目のゴールを決められて、アルゼンチンは唖然としています。1人少ない状態でボリビアに追いつくことができるのでしょうか?」。このシナリオでは、アルゼンチンをプレイし、67分の時点でゲームをスタート。目標を達成するためには少なくとも5得点を上げる必要がある。

 「リアルに起きた劇的な状況を再現する」というのがこのモードの基本なので、南米のシナリオにはどうしてもアルゼンチンがらみのものが多く、思わず苦笑してしまう。最終的には本戦出場を勝ち取ったアルゼンチンだが、その道程は監督マラドーナの人生同様、波乱万丈なものだったからだ。

 アジア地域には日本代表がらみのシナリオもひとつ用意されている。最も多くのシナリオが用意されているのはヨーロッパなので、欧州サッカーファンの皆さんならより深くこのゲームモードを楽しめるはずだ。

 多くのシナリオをクリアして、1万ポイント獲得すれば「2006 FIFA ワールドカップ ドイツ大会」のエピソードもプレイできる。難易度は難しめのワールドクラスか最高のレジェンド固定であり、「ロスタイムだけで3点取れ」というような難しいものもあるので、かなりのスキルとやりこみが求められるモードだといえよう。


残り時間23分で5点取れといわれても、いきなりできるものではない。まずは練習。相手の弱点を探りつつ、同じ状況を何度も繰り返してプレイできるのがこのモードの良さだ
各地域毎に様々なシナリオが用意されていうる。まずは自分の好きな代表チームのシナリオを探してみよう


■ 「バトル・オブ・ネーションズ」で国ランク勝負!

「オンライン FIFA ワールドカップ」
サポートすると決めたチームは変えることはできない

 「バトル・オブ・ネーションズ」はオンライン派のプレーヤーのために用意された刺激的な機能だ。これは本作のオンライン対戦モード「オンライン FIFA ワールドカップ」と連動するもので、各プレーヤーがサポートする国を選び、その国でオンラインのリーグを戦うことによって、その国にポイントが付与されるというもの。

 どの国を選ぶかは、プレーヤーの居住地域によらず自由に選ぶことができる。つまり、日本に居住する皆さんは日本代表を選んでもいいし、別に好きなチームがあるならそちらを選んでもいい。したがって、どうしても強豪国のランクが上がりすぎるのではないかと思われるのだが、筆者が取材した時点では中堅国であるメキシコがトップ。やはりワールドカップが開幕直前ということもあって、自国の代表チームをサポートしたいと考えるプレーヤーが世界的に多数派であるというのが実情だろう。

 さてその対戦形式だが、通常のオンラインプレイと同じ、1対1の形式となっている。各プレーヤーは、開始時にワールドカップ予選を模した4チームからなるグループリーグに属する。ちなみにこのグループは最初は空っぽで、ランダムマッチングでどこかの国とプレイするたびに、そのグループが埋められていくという仕組みになっている。

 最初のグループを勝ち上がれば、最終予選、そして本戦と、プレイするたびにステージが上がっていく。1つの対戦を終えても進行状況は保存されているので、1日に1戦づつ進めることもできる。もちろん、1日潰して一気に本戦までプレイしてもいい。

 こうして戦いを繰り広げて、より多くの勝ち点を上げれば、サポートする国の総合ポイントに貢献することができる。これによって最終的な国別のランキングが決まってくるので、ワールドカップ本戦が開幕ともなれば、いやがおうにも世界中で盛り上がってきそうだ。腕に自身のあるサッカーゲーマーの多くに是非参加してもらいたい。


オンラインで対戦して、勝ち点をサポートする国に追加。プレイ人口の多い国が有利なのだろうか?


■ 最後に、日本代表の再現性について

中村俊輔
松井大輔
本田圭佑

 本作「2010 FIFA ワールドカップ 南アフリカ大会」は、これまでに発売されたワールドカップがらみのゲームの中で、間違いなく最高傑作だ。スペイン代表やイングランド、ブラジルやアルゼンチンといった欧州・南米の強豪チームを好きな方なら、すべての面で本作に満足できることだろう。

 その一方で、やはり気になるのが我が日本代表の再現度。まずビジュアル面について言うと、残念ながら満足できる水準にあるとは言えない。基本的に本作は、ヨーロッパのサッカーシーンを再現する「FIFA10」に基づいたグラフィックスを用いているので、ヨーロッパの強豪リーグに属する選手の再現度はすこぶる高いのだが、Jリーグ所属の選手などは「誰これ?」という状態なのだ……。

 日本代表チームで最もよく再現されているのは、やはり中村俊輔。欧州リーグで長年プレイしてきたことで、グラフィックスもしっかり作られている。次点で松井大輔。こちらもフランスリーグで長くプレイしているおかげか、「これはそうかもしれない」レベルには作られている。その他、長谷部誠や本田圭佑は汎用パーツの使い回しになっているのは残念である。

 ただ、能力値については反映が早いということもあって、それなりに納得のできる数値が採用されている。例えば中村俊輔はパス能力が非常に高いし、本田圭佑はフィジカル系の能力が日本代表のなかで抜きん出ている。松井大輔はドリブルに強い選手として再現。日本代表のなかで最も総合値が高いのは本田圭佑だ。

 またスタメンとリザーブについては、現在は仮のリストとなっている。スタメンに関しては岡田監督が重用してきた選手が中心に構成されているので、現実のものと大幅に変わることはない。デフォルトのシステムとしては4-2-3-1で、トップ下に本田圭佑、ストライカーに岡崎慎司を置けば、概ね現在の最新チーム状況を再現できるのではないだろうか。

 選手リストについては、現実の正式メンバー発表を反映したアップデートが6月頭に行なわれる予定。そうなれば現実に完全に一致するものとなるので、いささかの違和感を抱えることなく日本代表をプレイできるようになるはずだ。

 ちなみにピッチサイドに再現された岡田監督は激似。監督についてはひとりづつ丁寧に作りこんだようで、各国代表監督がとてもリアルに映像化されている。しかも本作は、解説に岡田監督が起用されているので、日本代表をプレイすると実況席とピッチサイドの両方に岡田監督が居ることになるが、そこはご愛嬌だ。


【スクリーンショット】

(c) 2010 Electronic Arts Inc. EA, EA SPORTS and the EA SPORTS logo are trademarks or registered trademarks of Electronic Arts Inc. (c) The Official Emblem and Official Mascot of the 2010 FIFA World Cup South Africa and the FIFA World Cup Trophy are copyrights and trademarks of FIFA. All rights reserved.

(2010年5月13日)

[Reported by 佐藤カフジ ]