★DSゲームレビュー★

タッチペンで車強盗! DSならではの「GTA」
暴力と陰謀渦巻くリバティシティにようこそ

「グランド・セフト・オート:チャイナタウン・ウォーズ」

  • ジャンル:アクションアドベンチャー
  • 発売元:サイバーフロント
  • 開発元:Rockstar Games
  • 価格:6,090円
  • プラットフォーム:ニンテンドーDS
  • 発売日:10月29日
  • プレイ人数:1人、協力・対戦プレイ対応
  • レーティング:CERO Z(18歳以上のみ対象)

 「グランド・セフト・オート:チャイナタウン・ウォーズ」(以下、「チャイナタウン・ウォーズ」)はニンテンドーDSの機能を活かした「GTA(Grand Theft Auto)」フランチャイズのスピンアウト作品だ。プレーヤーは中国からリバティーシティを訪れたホァン・リーとなって、中華系マフィアトライアドの陰謀劇の中に踏み込んでいく。

 2008年にPS3/Xbox 360/PC向けに発売された「Grand Theft Auto IV(『GTA IV』)」ではこれまでにないリアルさとスケールで描かれたリバティーシティにおけるダークなシティライフが存分に描かれた。それに比べると本作のグラフィックスはシンプルであり、スケールも小さくなっている。しかし、実際にプレイしてみることで猥雑な街の感じ、ユニークなキャラクター、ダークで深いストーリーと、「GTA」シリーズのエッセンスをきちんと受け継いでいるのがわかる。加えて、DSでしか体験できないゲーム性を組み入れているのだ。本稿では、「チャイナタウン・ウォーズ」ならではの魅力を紹介していきたい。



■ 画面の奥に広がる緻密で猥雑なリバティーシティ。復讐を誓うホァンが嵐を巻き起こす

上下2画面で表現される新たな「GTA」の世界。キャラクターは小さく表示されるが街のスケール、ストーリー、ボリュームなど、作品のパワーはシリーズを受け継いでいる
主人公ホァン・リー。彼の登場でリバティーシティが動き始める

 「チャイナタウン・ウォーズ」の主人公ホァン・リーの父親は中華系マフィア「トライアド」のメンバーだった。しかしある日、父は何者かに殺されてしまう。リー一族の次の族長に指名されたのは、リバティーシティーに住む叔父のケニー・リーだ。ホァンはケニーに求められるまま、族長の証である宝剣を持ち、リバティーシティーを訪れることになる。

 しかし空港に降り立ったホァンはいきなり手痛い歓迎を受ける。突然現われた殺し屋どもに襲われ頭を撃たれ意識を失い、剣を奪われてしまう。意識を取り戻した時は何者かの車の中。ホァンを拉致した連中はホァンが死んでしまったと思いこみ、死体を処理するためにクルマごとホァンを海に投げ捨ててしまう。クルマのガラスを破り、何とか脱出したホァンはケニーの家までたどり着くが、剣を奪われたと知った叔父は激怒する。

 剣はリバティーシティのトライアドのボス、シン・ジャオミンが欲しがっていた。ケニーはシンに取り入るために剣が必要だったのだ。剣を奪われるという失態の他、様々な失敗も重なっていたようで、ケニーの組織の立場は危うくなってしまった。ホァンはケニーを助けるため、彼の仕事に手を貸すようになる。やがてシンの息子チャン・ジャオミンや、組織のトップをねらうチョウ・ミンといった人物もホァンに接触してくる。彼らがねらうのはもちろん「次のボスの座」だ。ホァンは彼らの依頼をこなしつつ、父を殺したのが誰なのかを探っていく……。

 高いストーリー性、ユニークなキャラクター、街のリアリティー、ドライブの楽しさ、細部まで作り込まれたこだわり……「チャイナタウン・ウォーズ」は「GTA」シリーズが持つエッセンスをDSで実現した意欲作である。グラフィックスは基本的にキャラクターの頭上から見下ろす形の2D風になっている。グラフィックスそのものは3Dで描かれており、イベントシーンではカメラが斜めになり建物の全景が映し出されたりする。結果として、「2.5D」ともいえる、独特の質感を生み出している。

 プレーヤーの姿は小さく、クルマは小さな箱のようで、ちょこちょこと動く姿は一見かわいらしい。しかし、街を走ってみると、建物の看板や、高架を進む鉄道など、様々なところで細かい作り込みに驚かされる。各地域によって走っている車が違ったり、あちこちで住人達のトラブルが起きていたりと、「GTA」シリーズならではの「猥雑な街」がそこにある。またキャラクターは、会話シーンではアメコミ風のタッチで描かれ、細かい表情まで見れるのも面白い。

 舞台は「GTA IV」と同じリバティーシティ。「GTA IV」と比べれば西の大きな島がなく、入れる店が少ないといった形にはなっているものの、広大なフィールドが用意されている。ストーリー的な関係性はないようだが、「GTA IV」をプレイした人ならば、街を歩くことで同じ地名や、土地の雰囲気が似ている所を発見できて楽しくなること請け合いである。

 「チャイナタウン・ウォーズ」は「DSというハードで『GTA』のエッセンスをいかに活かすか」にスタッフが果敢に挑戦した作品である。特に、タッチペンを使ったアクションが多彩で楽しい。タッチペンを使って、ダッシュボードをこじ開け配線を繋いだり、電子ロックを外すといったクルマ泥棒の手順をプレイできたり、火炎瓶を作ったり、スクラッチカードを削るなど、これまでの「GTA」にはなかった“感触”を盛り込んでいる。

 タッチスクリーンでPDAを直接操作しGPSやメールの受け取りなどもできる。この他にも、タクシーを呼び止めるときにマイクに向かって「タクシー」と呼んで止めたり、体に火がついたときは息を吹きかけると消えたりと、せっかくだからDSの機能をフルに使ってやろうという気合いが感じられる。DSでしかできない独特のアプローチが面白い。

「GTA」シリーズの大きな魅力はストーリーにある。今作のストーリーのテーマはマフィアの「内部抗争」である。中華系マフィア「トライアド」で誰がナンバーワンの座に就くか。ホァンの来訪を機に、組織の幹部達がそれぞれの思惑で動き出していく。各幹部はホァンを利用しようと様々な依頼をしてくる。これまでのシリーズでも組織内の内部抗争は描かれてきたが、全体の長いエピソードの一部という場合が多く、数ミッションをこなしていくうちに、依頼者は自滅したり、対抗者に倒され消えていったが、今作の幹部達はいくつものミッションをしぶとく生き残り、そして対抗者をつぶすための暗躍を続けていくのだ。これまで以上のドロドロの抗争劇は本作の注目ポイントである。

 登場キャラクター達も見事なまでに“クソ野郎ども”が揃っていて楽しい。叔父のケニーは口の利き方は尊大で一見人物が大きいように見えるが、実際はかっこつけの小心者だ。ボスの息子というホァンと似た境遇にあるチャンは部下を物のように使い、ことあるごとに自分の立場を自慢するイヤな奴である。この他にも自身も麻薬中毒で内部監査から逃れるためだけに点数を稼ごうとする悪徳警官のウェイド・ヘストンなどが登場する。今作は登場人物の数そのものはシリーズで比べると多くはないが、いくつものエピソードで人物像が掘り下げられているのが面白い。

 「チャイナタウン・ウォーズ」は「GTA」シリーズのテイストを受け継ぎながら、独特の世界を作り出した作品である。シリーズのファンにとってはこれまでのテイストがきちんと再現されているところに驚かされるだろう。携帯機ならではの「ミニチュア感」も味わって欲しいところだ。シリーズ初挑戦のDSユーザーにももちろんお勧めしたい。ボリュームたっぷりの、濃くて危険な世界があなたを待っている。陰謀と危険、そしてアメリカンドリームが詰まったリバティータウンにようこそ!


左からう叔父のケニー・リー、トライアドのボス、シン・ジャオミンとどら息子チャン・ジャオミン、悪徳警官のウェイド・ヘストン
ゲームのオープニング。一族の宝剣を奪われ、命からがら脱出したものの、ホァンを待っていたのは叔父の叱責だった。ホァンが求める父の敵はこの街にいるのだろうか?



■ タッチペンで車泥棒! 様々なアイデアが詰め込まれたタッチスクリーン

ゴミ袋をのけて武器を調達。シンプルな絵だが、ゴミをどけるとゴキブリが飛び出してきたり、思わず顔をしかめてしまう演出は、さすが「GTA」という感じだ

 「チャイナタウン・ウォーズ」の最大の特徴がタッチスクリーンの活用である。タッチペンを使ってのアクションには様々なアイデアが盛り込まれていて楽しい。中にはゴミ箱の中からゴミをかき分けてアイテムを探すというのもある。

 トライアドは、武器供給手段としてゴミに武器を隠して受け渡しをしているのだ。タッチペンを下から上に滑らせてゴミ箱の蓋を開け、ゴミ袋をタッチペンでドラッグして下にある隠された物を取り出すのだ。時には、魚の頭や食べかけのハンバーガーが捨てられていることもある。

 タッチペンを使ったアクションで「基本的」とも言えるのがクルマ泥棒だろう。クルマにはドライバーを突っ込んで左右に回すものから、ダッシュボードのねじ穴を外し、配線を直結させるもの、解析機を出して暗証番号を盗み出すものまである。

 これまでのシリーズでは、車泥棒を行なうシーンは非常に簡略化されて表現されていたが、実際にやっていたのはこういう事なのか、というのが実感できる要素である。リアルな感触が楽しめる一方、実際に作業するため時間がかかる。このため、警察に追われているときなどは止まってる車に手を出さず、道を走っている車を奪うのがいい。走っている車ならばエンジン始動の手間がないからだ。

 また、タッチペンで銀の部分をはがす「スクラッチカード」もある。当たりの賞品に「隠れ家」が用意されているものもあり、お金に余裕があるときは大当たりを求めてついつい何枚も買ってこすってしまう。「これも外れ、はい次」という感じでタッチペンをがしがし動かしながら、どんどん枚数を消費していくのはギャンブル狂になったかのようでちょっと荒んだ気持ちになるのが面白い。

 タッチペンはゲーム内のPDA操作にも使う。ホァンが使うPDAはGPSやドラッグ取引のチェック、メール管理など多彩な機能を持っており、タッチペンでの操作は、実際のPDAを使っている気持ちになる。ちなみに、「チャイナタウン・ウォーズ」では武器の購入は武器屋に行くのではなく、武器の販売サイトにアクセスして購入するようになっている。注文してしばらくすると自宅前に武器や防弾チョッキの入った小包が郵送される仕組みだ。ミッションが終わって自宅に帰るついでに注文、といった感じで「便利な時代になったねえ」などと思ってしまった。

 タッチペンは火炎瓶や手榴弾の投擲にも使う。投げる方向をドラッグで定めタッチペンを離すことで投擲する。ヘリコプターから火炎瓶を投げるようなミッションもあれば、トラックから追走するトラックに向かって荷物を投げるようなミッションもある。投擲武器は強力で、タッチペンでの投げ操作の習熟がゲーム攻略の鍵になっている。

 また、火炎瓶に関しては、タッチペンを使い、コイン式のガソリンスタンドで作るところからはじめる。じょぼじょぼと給油機からガソリンを垂れ流して瓶に入れていく作業は、たぶんわざと「おしっこを的に当てる」という、多くの小学生男子が経験したであろう遊びの感触を持たせている。こういうちょっと下品な遊び心も「GTA」シリーズのウリだ。

 タッチペンを使ったユニークなミッションとしては、ポンコツのモーターボートで海上の取引に向かうものがある。調子の悪いモーターボートは度々エンストする。エンジンが止まった場合は始動装置のコイルにロープを巻き付け(巻き付け部分を円を描くようにタッチペンでなぞる)、その後に力を入れてロープを引かなくてはならない(タッチペンで素早くロープのグリップを引く)。このエンストがよりによって銃撃戦のど真ん中で起きるのだ。エンジンが止まっている間は応射もできず、焦る気持ちを抑えながらスタート作業をしなくてはならない。

 この他にも刺青を彫ったり、ジェル状のプラスチック爆弾を散布したり、金庫のダイヤルを回したりと、実に様々な使い方をする。「チャイナタウン・ウォーズ」はタッチペンによって、これまでのシリーズとは違う感触を持った作品になっている。スタッフのアイデアを楽しんで欲しい。


ドライバーを突っ込んだり、ダッシュボードをこじ開けたり、タッチペンで「車泥棒」を体験できる
タッチペンを使った一例。火炎瓶作り、スクラッチカード、刺青彫り。他にも色々なアイデアが詰め込まれている
便利なPDA。GPSを上画面で表示することができる機能もある。この設定はシステムメニューで設定できる


■ 手強い警察。ドラッグ取引で大金を得て、最強火器で立ち向かえ!

売人マップ。安く仕入れた物を高く売りつけることで大もうけできる
警察との戦い。今作は警戒度を下げるのに苦労する

 ゲーム操作は、DS版独自の見下ろし画面を採用しているため、非常に独特の感触を持っている。特に車の運転時はスピードが速く、最初は直角のカーブなどを曲がるのが難しいだろう。また、マップは下画面に表示されているが、ルートを確認すると起動してもメインである上画面から目が離れてしまい、事故の原因となる。システムのオプションでGPSのルート案内を上画面にも表示できる機能があるので、これの活用がオススメである。

 こうした操作の違いもあるのか、「チャイナタウン・ウォーズ」では「GTA IV」に比べて、警察を振り切るのが難しく感じた。「GTA IV」は警察の警戒範囲を抜け出せば逃げ切ることができたが、今回警戒度を下げるのは「パトカーを破壊する」事が必要なのだ。武器による攻撃はダメで、事故を起こさせて自爆させなくてはならない。

 猛スピードで追いかけてくる車両に車を当てコースアウトさせたり、カーブをいきなり曲がって追いかけようとしたパトカーを壁に激突させるのだが、ある程度のスピードが必要で、慣れが必要だ。スピードが遅いときには、警官に車から引きずり出される危険もある。引きずり出されればその場で警察につかまり、ミッション失敗になってしまう。このため、警察に足を引っ張られ何度もミッションをやり直すということも多かった。

 運転には慣れが必要だが、それでもノリノリのBGMと共に街を流す感じは楽しいし、カーチェイスにも興奮させられる。ゲームを進めていけばどんどん本作ならではのドライビングテクニックを身につけていける。ただし、ドライブ時には、至る所にいるパトカーに軽くぶつかっただけで追いかけ回されるので要注意だ。安全に目的地に行きたければ、「GTA IV」同様タクシーが便利である。つかまえれば自動で目的地まで運んでくれる。

 戦闘に関しては、見下ろし画面のため敵が見つけやすい。操作にあわせてキャラクターの向きそのものが変わってしまうが、敵をロックオンすればずっとそちらの方向を向いて移動できる。素早く敵の方を向き、ロックオンして強力な火器で撃ち倒すというのが戦闘を切り抜けるコツだ。身を隠して慎重に隙をうかがうよりも力押しの方がうまくいく印象だ。ただ、この戦い方は自分の身も危険にさらしてしまう。マシンガンを相手にするときなどは注意が必要だ。防弾チョッキは必ず着込んで戦いたいところである。

 「チャイナタウン・ウォーズ」ではメインのストーリーミッションの他、様々なサイドミッションがある。これまでの作品とシリーズ同様、パトカーや消防車、タクシーなどを奪うと警官やタクシー運転手となれるミッションの他、特定の場所に出現するNPCが引き金になるミッションがある。今作ではさらに、「ドラッグディーラー」という新要素が盛り込まれている。

 リバティータウンにはいくつもの地下組織がドラッグを流通させている。それぞれの組織は買い取り商品と販売商品が設定されており、相場が変動している。プレーヤーはそれらの相場を見て安いドラッグを買い取り、高く売りつけることで大きな儲けを得ることができる。街にはたくさんの売人がいて、彼らと知り合うことで「特別情報」がよせられる。大量に余ってしまった商品や、緊急で必要になった商品の情報を教えてくれるのだ。これを利用すると、ゲームの序盤から大金を得ることができる。

 大金を得られれば、リバティータウン内にいくつもの拠点を持てるようになるし、高価な武器も買える。しかも特別情報が連続して舞い込むこともあって、筆者はメインミッションそっちのけで金稼ぎに奔走したこともあった。ミッションクリアの資金だけでは強力な武器を揃えるのは難しい。強い武器は相手の射程外から撃てたりと、ゲームの難易度を下げてくれるのだ。ドラッグの取引はゲームを進めるための大きな助けとなってくれるだろう。


建物の影や公園の隅にいる売人と接触。知り合えば特別情報を教えてもらえる
海上でのボートの戦いや、車での戦いなど、本作でも街全体が戦場だ。防弾チョッキや強力な武器など準備万端で臨みたい


■ ブラックユーモア溢れるミッションの数々、ギャング達の陰謀劇の行き着く先は?

「Flatliner」のミッション。心臓が止まったら、タッチペンで心臓をプッシュだ
クリアしたミッションは何度でも楽しむことができる。最短タイムを目指せ!

 「チャイナタウン・ウォーズ」ではユニークなミッションが数多く用意されている。ミッションを受ける前の会話も楽しい。今作に関しては、特に「足の引っ張り合い」が楽しい。その前に受けたミッションでのホァンの活躍が原因となって依頼者が追いつめられ、失敗を挽回するためにホァンに依頼する、ということも多いのだ。

 幹部達の対立を煽るかのように、ホァンは危ない橋を渡りながらトライアド幹部達の依頼を受けていく。その先にホァンは何を見つけようとしているのか、破滅に向かって進んでいるようなキャラクター達がラストはどうなっていくかもとても気になるところだ。ホァンの父の敵は誰なのか、空港で奪われた剣はどこにあるのか、ゲーム終盤で明かされる意外な真実にも注目したい。

 根底にシリアスなストーリーを持ちながら、タガの外れたブラックユーモアに満ちているのが「GTA」シリーズの特徴である。「チャイナタウン・ウォーズ」でももちろんそのノリは健在だ。「Flatliner」というミッションでは、ホァンは心臓病の犯罪者を乗せたトラックを強奪する。建物にぶつかったり、他の車にぶつかると犯罪者の心臓はたちまち静止してしまう。プレーヤーはタッチスクリーンに映る人体を激しくプッシュし蘇生させるのだ。パトカーは容赦なくぶつかってくるし、道は狭いしで、大忙しのミッションである。

 「Dragon Haul Z」は、銀行強盗をやって逃げる際、チャイナタウンのお祭りに紛れ、竜の衣装をかぶって逃げ出してしまおう、というミッション。竜の衣装は細長く、何人もが列を作って動かしていく。ホアンはその先頭だ。警官達や観客の前で、ぐるぐる回ったりパフォーマンスをしていく。火の噴く仕掛けまでも装備されており、アクションをする度に観客が歓声を上げフラッシュをたくのが楽しい。「ドラゴンボールZ」のパロディーと思われるタイトルも含めて、ユニークなミッションである。

 「Sa-Boat-Age」はボスのどら息子チャン・ジャオミンが依頼してくるミッション。桟橋に呼び出されたホァンはピカピカのボートを見せられる。敵対組織からボートをかっぱらったという。開口一番チャンは「レースしようぜ!」といってくる。チャンはピカピカのボート、ホァンは小さな水上バイクである。あきれ顔のホァンを置いて、意気揚々とチャンはボートに乗り込みスタートする。仕方なくホァンは水上バイクで追いかける。チャンのボートは圧倒的スピードでホァンを引き離したものの、煙を出し、エンストしてしまう。敵対組織がチャンを海上に孤立させるための罠だったのだ!

 チャンめがけて進んでくる敵対組織の刺客達。ホァンは仕方なく、水上バイクで駆け回り敵を撃退していく。このミッションでは、ピカピカのボートを自慢するために、ホアンにはみすぼらしい水上ボートに乗せて「レースしようぜ!」と言ってくるチャンの“痛さ”が楽しい。「お前はドラえもんのスネ夫か」と思わず突っ込んでしまう。チャンはことあるごとに金持ち風を吹かせ、仲間の手柄を平気で横取りしたりと、“最低”エピソードが特に充実している。権力者を父に持つ息子として、ホァンの歪んだ鏡のような存在で、考えさせられるところもあるキャラクターである。

 「チャイナタウン・ウォーズ」は1度受けたミッションを再び受けられる機能がある。ストーリーそのものは十数時間程度でクリアできるが、ミッションをやり直してストーリーを再び味わったり、サイドミッションをやりこんでみたり、名所を見つけにドライブしてみたりとさまざまな楽しみ方ができる。

 また、ゲームと本体を2つ持ち寄れば通信プレイも楽しめる。20種類のコースが用意されたレースや、目標をいかに早く撃破できるか、足を引っ張り合っての対戦プレイも可能だ。この他に、「基地防衛」として友達と協力して襲いかかってくるギャングから基地を守るミッションも用意されている。ノリの良い友達が一緒ならばゲームはさらに楽しくなるだろう。

 「チャイナタウン・ウォーズ」は「GTA」のエッセンスを、DSというハードの特性で描き出した作品である。「GTA」ファンは特に注目してもらいたい作品だ。プレイしてみれば、熱狂的で、猥雑で、楽しくて、激しいリバティーシティがDSの中で息づいていることを感じられるはずだ。ぜひ、めくるめく内部抗争の渦に飛び込んで欲しい。


チャンがさらわれる「Jackin' Chan」。炎上する車を、奪った消防車で消火してチャンを助け出せ!
「Slaying With Fire」では、裏切り者が1人出ただけでチャンは部下に対してヘリから火炎瓶攻撃をする。チャンの最低ぶりがわかるミッション
ウェイドを捕まえたギャングはガトリングガンを手に襲いかかってくる。まともに撃ち合っては勝ち目がない、どう戦うか?
こちらはサイドミッション。タクシーや消防車の他、中華料理の出前など多彩なミッションがある。それぞれ連続してクリアしていくと様々なボーナスが入手できる
こちらは通信プレイ。レースやミッション、対戦の他に協力プレイも用意されている

(C)2009 Rockstar Games, Inc.

(2009年 10月 29日)

[Reported by 勝田哲也 ]