PS3/Xbox 360 ゲームレビュー

総合格闘技のち密な攻防をリアルに再現した傑作
「UFC(R) 2009 Undisputed」

  • ジャンル:格闘
  • 開発:ユークス
  • 価格:7,140円
  • プラットフォーム:プレイステーション 3 / Xbox 360
  • 発売日:発売中(10月15日発売)
  • プレイ人数:1~2人
  • CEROレーティング:B(12歳以上対象)

 つい数年前まで“日本が最大のシーンだ!”とまで言われた総合格闘技。2007年、国内最大級の興行「PRIDE」が、運営団体であるドリームステージエンターテインメント(Dream Stage Entertainment、以下:DSE)の法人解散とともに消滅。以来、日本における総合格闘技からは浮動票的な一般客が離れていき、熱心なマニアたちがシーンを支える構図となっている。

 だが、海外では日本とはまったく異なる展開で、右肩上がりの隆盛を極めようとしている。1993年にアメリカのコロラド州デンバーで開催された総合格闘技大会「Ultimate Fighting Championship(以下:UFC)」。一時は過剰な暴力性などを理由に共和党上院議員を中心とした反対派から猛烈なバッシングを受け、最大の収入源であるケーブルTVの中継が終了。零細CS放送のペイ・パー・ビューに移行し、興行可能な州エリアをさまよい歩くなど一気に衰退していくかに見えたが、米Zuffa, LLC(以下:ズッファ)の買収から状況が一転する。

 ズッファはまずルール整備に着手するとともに、健全なスポーツビジネスとしてラスベガス興行を展開。以後、ケーブルTVへの復帰、選手層の拡充を続け、今では全米屈指のプロスポーツとしてポジションを確立しつつある。先日の三社共同記者会見では、解説者で元総合格闘家の高阪剛氏が「今、アメリカの格闘技ジムでは“金網”を設置しているところが増えている。ファイターたちは、UFCでの闘いを想定して、そこで練習を積んでいる」というコメントを残している。かつて日本のリングを向いていた総合格闘家たち。いまやその視線の先は、すべて「UFC」のオクタゴンに向いているといっても過言ではない。

 本作は、その「UFC」をモチーフにした格闘ゲーム。開発元は、プロレスゲームでつとに有名な株式会社ユークス。筆者も「闘魂烈伝」や“エキプロ”こと「エキサイティングプロレス」など、数々の作品やシリーズで楽しませてもらったクチなので、当然のように本作にも非常に期待していた。ただ……前述のように、悲しいかな、今の日本国内における総合格闘技の知名度は、決して高いものではない。かたや、前述の会見でも触れられたとおり、先行発売された海外では既に300万本を超えるセールスを記録している。このギャップを、ほんの少し、1本でも埋められれば……そんな想いから、本作のレビューを担当させていただいた。なお、レビューにはPS3版を使用した。Xbox 360版も同内容につき、購入される方はお好きなほうを選んでいただきたい。




■ コントローラーのほぼすべてのボタンを使用 ~系統別に整理された肌で理解できる作り~

 総合格闘技、プロレス、格闘ゲームといえば、操作が複雑なのが常。本作は“リアル志向”につき、ごたぶんに漏れずコントローラーのボタンをほぼすべて使用する。だが、それぞれ左右の手足、ガード、上下などと系統だてて割り振られているので、ちょっとプレイすれば直感的に身体になじんでくるので「うわ、こんなの無理だよ!」などと食わず嫌いせず、まずはチュートリアルからジックリ触ってみることをオススメしたい。丁寧に作られているので、ゲームのコツをつかむ意味で、上級者も1度はチュートリアルをプレイしてみるべきだろう。

 基本操作は「スタンディング」、「クリンチ」、「グラウンド」、「サブミッション」と、それぞれ状況や局面にあわせて変化する。これは総合格闘技における典型的な局面をきちんと再現するための仕様で、決して難しいものではない。後述するが、本作は“総合格闘技の各局面を、流れに沿って丁寧に再現する”ことに尽力している。ゆえに難しいのは最初のうちだけで、慣れるに従い「各局面で必要とされる動き=操作」は、おのずと身体が先に覚えることになる。頭で整理し、戦術を組み立て、あとは練習(操作)で結果を出す。このあたり、本物の総合格闘技に通じるものがあるのではないだろうか。

 各局面の操作系をざっと説明すると「スタンディング」は“打撃”と“間合い”が中心。左スティックでファイターの移動。左スティックを軽くチョコンと入力するとステップ。走りたいときはスティックを押し込んだまま倒す。コントローラーの右側にある4つのボタンは、それぞれ左右の手足に割り振られており、直感的に打撃が繰り出せる。打撃は、間合いやスティックで、ジャブ、エルボー、ストレート、フック、膝蹴りなどに変化。また、L1ボタンを押したまま打撃ボタンを押すと繰り出される「テクニックシフト」による打撃は威力が高く、ここ1番で確実にヒットさせたい攻撃。L2と同時押しすれば、ボディやローキックなど下段攻撃に変化する。

 なお、すべての打撃は画面左下に表示させることもできる「スタミナゲージ」を消費する。スタミナゲージが切れると動作が緩慢になるばかりか、攻撃以上に防御面で危機的状況に陥る。特に、L1を使ったテクニックシフトによる打撃はスタミナ消費が激しく、乱用は自分の首を絞めることにもなりかねないので要注意だ。

 攻撃同様、防御も上下の部位に大別されており、R1ボタンで上ガード、R2ボタンで下ガード。ガードボタンで構えたまま左スティックで移動も可能。打撃を見切る、もしくは予測してキャッチしたいときは、上なら右スティック上、下なら同下で「カウンター・グラップル」が使える。キャッチ後の動きは、ストライカー、グラップラーなどファイターのタイプによって異なる。これはファイター選択時の「ボクシング」、「レスリング」などファイターのテクニックでも判別がつくが、まずは色々なファイターを使ってみて、それぞれの違いを体感してみるといいだろう。


頭部やボディにダメージが蓄積すると“ロック状態”になることがある。一定時間で回復するが、回復するまでに一定量のダメージを叩き込まれるとレフェリーが止めに入りTKOとなってしまう
L1ボタンを押しながら繰り出すパンチは強烈だが、スタミナ消費が激しい上下ガードは常に忘れないように。攻撃やダッシュモーション中などは無防備なので、迂闊にやると上画像のような悲惨な結果に……


 相手に「クリンチ」したいときは右スティックを相手側に、タックルはL2ボタンを押したまま右スティックを相手側にそれぞれ倒す。クリンチ、タックルを防ぎたいときは、右スティックを相手と逆方向に入力。テイクダウンに持ち込みたい、あるいは持ち込まれそうになったときは、右スティック回転もしくは打撃ボタン連打。個人的な体感では、寝技が得意なファイターのタックルは、どれだけ連打で悪あがきをしても潰せる確率がそれほど高くないイメージがある。ストライカーでプレイしているときは、あきらめて次の展開に備えるのが筆者の常だが、このあたり実はもうちょっと頑張れるのかもしれない。

 クリンチでは、打撃ボタンで各攻撃、L2ボタンで高さシフト、R1とR2ボタンで上下の打撃ガード、右スティック上下でカウンター・グラップル、L2ボタンを押したまま右スティック相手側でタックル、右スティック相手側で「トランジション(ポジション移動)」、右スティック相手と反対側でグラップル・ブロック、L1ボタンと右スティック上下左右で投げ。テイクダウンに持ち込むor持ち込まれたときの攻防は、これまたスタンディング同様。基本的には、距離による打撃の変化がないスタンディングだと思えばいい。左スティック押し込みで、仕掛けた側がクリンチを一方的に解除できるのが唯一の違いだ。


クリンチ時の操作はスタンディングの延長と考えればいい。基本的には投げでテイクダウンを狙いたいが、ファイターによってはそこから一発逆転の返しを狙われるため非常に危険。このあたりの仕掛けが実に熱い


 「グラウンド」は、本作最大のポイント。左右パンチボタンで頭部への弱打撃。L2ボタンを押しながら左右パンチボタンだと腹部への弱打撃に変化。強打撃は、左スティックを相手側に倒したままパンチボタン。可能なポジションであればキックボタンでボディに弱膝攻撃が叩き込める。L1ボタンはスタンディング同様のテクニックシフト。R1とR2ボタンで上下の打撃ガード。グラップル・ブロックと、後述するトランジション・リバーサルは右スティック左または右。「サブミッション」を仕掛けるときは右スティックを押し込む。

トランジションの相関図(マニュアルより抜粋)

 「トランジション」こと“ポジション移動”は、ある意味、本作最大のポイントだと思われる。総合格闘技に詳しくない方は「なんのこっちゃ?」と思われるかもしれないが、ポジションとは、大雑把にいえばお互いが組み合った状態で、仕掛けている側から見た「位置関係」のことだ。トランジションには“マイナー”と“メジャー”のふたつがあり、それぞれ理論だてられた“優位性”がある。ひらたくいえば、本作におけるトランジションとは、総合格闘技で“組み合った状態で、いかに優位性を保つか”の攻防を再現したものだ。ちなみに、マイナーとメジャーの差は成功率と効果の違い。メジャーのほうが成功しづらいが、より有利なポジションが取れる。

 トランジションの操作は、本文右画像にあるとおり“ピラミッド構造の上”を目指すのが基本となる。より優位なポジションを取り、確実に仕留めにいく。逆に、仕掛けられた側は、なるべくピラミッドの底辺を目指すか、トランジション・リバーサルで攻防をひっくり返す“一発逆転”を狙っていくことになる。基本操作は、右スティックニュートラルから、上下から左右いずれかにグルリと1/4回転でマイナートランジション。それよりもやや大きく、斜め方向を含め3/8回転させるとメジャートランジションとなる。どうしてもわからないときは、スタートボタンでポーズ→「アクションリスト」で、今の局面と可能な行動などが即参照できる。このあたりは、チュートリアルやCPU戦でしっかりと身につけておきたいところだ。

 一気に形成をひっくりかえせるトランジション・リバーサルは、相手の攻撃を見てタイミングよく右スティックをちょこんと入力。トランジション操作全体にいえることだが、基本“レバガチャ”ではほとんど成功しない。タイミングが重要で、きちんと“読んであわせる”ことが大切だ。逆にトランジション・ブロックとサブミッションは、右スティックをしっかりと入力すること。トランジション関連は、いわゆるアーケードライクなバチバチの2Dor3D対戦格闘ゲームをやり慣れた人にはもどかしい操作かもしれないが、総合格闘技の攻防を表現するうえで絶対に欠かせないもの。特に、ここまで丁寧に作りこまれている作品は、そう滅多にお目にかかれるものではない。普段ゲームをやらない人でも、総合格闘技ファンなら、この部分を実体験するだけでも十分手にする価値があるといえる。


トランジション関連の操作は、相手の動きを良く見て“タイミングを見極めて”入力していくのがコツ。サブミッションを決めるとき以外のレバガチャは禁物




■ 総勢80人のファイターが実名で登場 ~オリジナルファイターのエディットも可能~

 本作は「UFC」を主戦場とする5階級(ライト、ウェルター、ミドル、ライトヘビー、ヘビー)、総勢80人のファイターが実名で登場する。各ファイターに対する予備知識がない人でも「トータルレベル」と「ファイトスタイル」で、相対的な強さやスタイルがひと目でわかるようになっている。選択画面でボタンを押せば、パワー、スピードなど詳細なパラメータを表示することも可能だ。

    各階級に登場するファイター一覧
    【ライト】
    ジョー・スティーブンソン、ケニー・フロリアン、ネイト・ディアズ、マック・ダンジグ、スペンシャー・フィッシャー、ショーン・シャーク、BJ・ペン、ロジャー・フエルタ、タイソン・グリフィン、グレイ・メイナード、チアゴ・タバレス、ジョー・ローゾン、リッチ・クレメンティ、マーク・ボーチェック、エルミス・フランカ、フランク・エドガー
    【ウェルター】
    ジョルジュ・サンピエール、カロ・パリジャン、マット・ヒューズ、ジョシュ・コスチェック、ディエゴ・サンチェス、ジョン・フィッチ、マット・セラ、マイク・スウィック、マーカス・デイビス、チアゴ・アウベス、クリス・ライトル、ベン・サンダース、ジョシュ・バークマン、カイル・ブラッドリー、マット・アローヨ、アンソニー・ジョンソン
    【ミドル】
    ダン・ヘンダーソン、アンデウソン・シウバ、リッチ・フランクリン、マイケル・ビスピン、ケンドール・グローブ、クリス・リーベン、ジェイソン・マクドナルド、ネイト・マーコート、ドリュー・マックフィールズ、ヒカルド・アルメイダ、エヴァン・タナー、岡見勇信、デミアン・マイア、マルティン・カンプマン、アミール・サダロー、ターレス・レイチ
    【ライトヘビー】
    チャック・リデル、ランペイジ・ジャクソン、フォレスト・グリフィン、ティト・オーティズ、ショーグン・ルア、キース・ジャーディン、リョート・マチダ、ヴァンダレイ・シウバ、ラシャド・エヴァンス、ステファン・ボナー、ジェームス・アーヴィン、ウィルソン・ゴヘイア、ヒューストン・アレクサンダー、中村和裕、チアゴ・シウバ、ティム・ブッシュ
    【ヘビー】
    ガブリエル・ゴンザーガ、ミノタウロ・ノゲイラ、ブランドン・ヴェラ、ブロック・レスナー、シーク・コンゴ、フランク・ミア、エディ・サンチェス、ケイン・ヴェラスケス、ヒース・ヒーリング、アンドレイ・アルロフスキー、ミルコ・クロコップ、ファブリシオ・ヴェウドゥム、ティム・シルビア、マーク・コールマン、アントニー・ハードンク、ジャスティン・マッコーリー

 

  エディットモード「クリエイト・ア・ファイター(以下:CAF)」で作成したファイターは、エキシビションモード、オンラインモードで使用可能。後述するキャリアモードでもオリジナルファイターをエディットすることはでき、作ったファイターはエキシビションモード、オンラインモードで使用することはできるが、逆にCAFで作り上げたファイターをキャリアモードで使用することはできない。これはキャリアモードにおいて、最初から強いファイターでプレイできないようにするためだ。

 エディットは、ベース、ファイトスタイル/アトリビュート、外見、トランクス/その他の4項目が基本。サブメニューは多岐にわたり、初期状態でも非常にバラエティに富んだファイターが作れる。外観は、髪型や体型はもちろんだが、もみあげ、口ヒゲ、あごヒゲ、無精ヒゲ、体毛といった“毛”に対する異質のこだわりが目を引く。UFCはプロレスと違い、あまりにも派手なマスクやリングコスチュームが禁止もしくは制限されているため、個性を出せるところは全部頑張ろう! ということなのだろうか? それにしても……この体毛に関するこだわりは、なんというか「普通」ではないものを感じる。

 顔の造作などは、頭のサイズからアゴの先端にいたるまで、エキプロシリーズばりに徹底的に作りこめる。体毛同様、タトゥーに関する機能も相当なこだわりようで、全部で10レイヤーを重ねることが可能。レイヤーは、コピー、移動もできて実に使い勝手がいい。トライバル、アート、文字などそれぞれ選択が可能で、貼りこむ位置まで細かく指定できる。トランクスも、ロング(スリット別)、ミディアム、ショート、カスタムと選び放題。サポーターなども装着できる。UFCのルールの範囲内で、表現できる個性はほぼすべて網羅している、といってもいいだろう。個人的には、プロレスラーばりの外観が作れるとか、もっと破天荒さというか“自由度”があってもいいかなと思ったが、「UFC」の世界観を大きく逸脱してしまうため、このあたりは致し方ないといったところか(そういうのは「スマックダウン」シリーズで楽しめばいいし)。


UFCは身につけるものなどルールが明確に規定されているため、いわゆる“エキプロ”シリーズのような小道具がほとんどない。その分(?)頭部の造形、体毛、タトゥーに関してはことのほか細かくエディットできる




■ やりこみがいのあるゲームモード ~メインはオリジナルファイターで挑む「キャリア」か~

 ゲームモードは、オリジナルファイターを作って「UFC」ファイターとして頂点を目指す「キャリア」、好きなファイターをマッチングさせて闘う「エキシビション」、オンラインで世界中のプレーヤーとしのぎを削る「ONLINE」、過去の名勝負を再現する「クラシックファイト」、ゲームの基礎が学べる「チュートリアル」、記録やアンロック項目を参照する「ゲーマーレコード」、ONLINEとエキシビションで使えるオリジナルファイターを作成する「クリエイト・ア・ファイター」が用意されている。

 アンロックにも関係してくるため、恐らく初期にもっともプレイするであろうゲームモードは「キャリア」だろう。事前にオリジナルファイターを作成し、トレーニングスケジュールを組んで試合にのぞむ。試合に勝っていけばランクがあがり、やがてタイトルマッチに挑戦することになる。だが、ただ単にベルトを獲得しただけでは、本当の王者とはいえない。タイトルを防衛し、多くの人に感動を与える勝利を積み重ねてこそ、真の王者。そして、その道は険しく、果てしなく長い。

 トレーニングスケジュールは、1週間単位で種類と内容を指定するだけの簡単なもの。トレーニングとスパーリングでそれぞれ効果が異なるため、ファイターの体調を考慮して選択していく。試合のある前週は「休息」できちんとスタミナを回復しておかないと、ヘトヘトのまま試合に臨むことになる。内容のある勝利を積み重ねてCRED(クレッド)をためていけば「スポンサーがつく」など、さまざまなイベントが発生する。スポンサーのロゴを着用したトランクスで試合に出場すれば、試合後にもらえるCREDにボーナスがつく。CREDが増えれば招待キャンプトレーニングがさらに充実と、いいこと尽くめ。まずは、試合に勝つ→CERDが増える→能力をより伸ばすといった“正のスパイラル”を築いていきたいところだ。

  UFCファンは「クラシックファイト」にも要注目。前述のとおり、本モードは過去に行なわれた名勝負を再現するというもの。各試合ごとに決められた「判定で勝つ」などの条件をクリアすれば、名勝負のムービーがアンロックされる。その試合を知らなくても、単純に条件クリアを目指すだけでも十分楽しいが、なによりも「その試合に思い入れがある」人がプレイすれば、さらにエキサイティングな経験になるはず。プロレス系のゲームではよく見かけるモードだが、総合格闘技では比較的珍しいのではないだろうか。他のゲームモード同様、熱いプレイが堪能できるはずだ。


アンロック条件に関係することもあるが「キャリア」モードは相当やりこむことになるはず。己の分身を作り「UFC」の世界に飛び込む。その様子は、さながら「ジ・アルティメット・ファイター」のようだ
過去の名勝負を再現する「クラシックファイト」は、一定の条件をクリアすると試合のムービーが閲覧できるようになる。既に見た人はもちろん、観たことがない人も楽しめるモードだ




■ 総合格闘技の攻防を丁寧に再現 ~ガチプレイに耐えうる傑作~

 本作は、総合格闘技の攻防を各局面ごとに、実に丁寧に再現している。スタンディングでの攻防は比較的シンプルだが、大きなウェイトを占めるグラウンドでの攻防は、かなり念がいっている。レバガチャなどの適当な操作は通用せず、きちんと状況とタイミングを考えてプレイする必要がある点は、非常にポイントが高い。

 ただ、あまりにも生真面目に作り上げてしまったせいか“ファイターの個性”を表現するという点では、本来左利きのファイターが右利きで構えて闘うなど、ちょっともったいないかな? と感じられる部分もある。ただし、これは工数やバランス調整を考えると「仕方ないかな」といったレベルの問題。個性を出そうとして“壊れキャラ”が生まれてもオンライン対戦がつまらなくなるだけだし、ここはゲーム全体のバランスやプレイアビリティを最優先とした開発陣の英断を讃えたい。

 これまで、総合格闘技やプロレスゲームで「リアル」に試合を再現しようとしたなら、まずはプレーヤー同士が暗黙の了解でもって“自制”する必要があった。勝利という1点に結果を絞ったとき、ゲーム的な仕様、バランス調整、バグなどの諸条件が、画面内の展開と現実の試合を大きくかけ離れたものにしていたからだ。「ちゃんと現実の試合っぽくプレイしようね」とお互いをしばりあってやらないと、画面内の試合は現実にまったく近づいていってくれなかったし、プレイする自分たちも「そういうものだ」と最初からあきらめていた。近年、ゲーム機の性能が進化し、グラフィックスのクオリティが向上しても、この状況は大きく変わることはなかった。

 だが、こと本作に関しては、そういう心配はしなくていい。最初から全力で相手を倒しにいこうと思うなら、やりたいことをすればいい。だが、それが理にかなっていなければ、ただ自爆するだけ。そして、理にかなった方法で相手を追い詰めていこうとしたなら……そこには、現実の「UFC」と(完全に一致とまでは、さすがにいわないが)酷似した展開がある。ちょっと余裕を見せてやろうと、方向キーで挑発するリスクも同様。もしかしたら、ただ単にシステム的な穴などに筆者が気づいていないだけなのかもしれないが……現状、そういう落とし穴的な要素は見当たらない。「ちょっとスーパーマンパンチが便利すぎるかな?」という気もするが、オンライン対戦で乱発してもアッサリ読まれて終了につき、エッセンス程度と考えれば全然問題ない。心も身体も全力全開で闘え、遊べる。そんな総合格闘技のゲームが目の前にあることが、今はただただ嬉しい。




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(2009年 10月 22日)

[Reported by 豊臣和孝]