★DSゲームレビュー★

野球好き人間のハートをくすぐりまくる
お手軽シミュレーション

「プロ野球チームをつくろう!2」

  • ジャンル:スポーツ育成シミュレーション
  • 発売元:株式会社セガ
  • 価格:5,229円
  • プラットフォーム:ニンテンドーDS
  • 発売日:発売中(5月21日発売)
  • プレイ人数:1~4人 DSワイヤレスプレイ対応
  • CEROレーティング:A(全年齢対象)

 プレーヤーはプロ野球チームのGM(ゼネラルマネージャー)となり、チーム経営や試合中に采配をふるって日本一を目指す定番シミュレーション、「野球つく」こと「プロ野球チームをつくろう!」シリーズの最新作。2009年シーズン開幕前(3月4日時点)の選手データを搭載しており、今作「プロ野球チームをつくろう!2」(以下「野球つく2」)は、最大4人のプレーヤーが同時に対戦できたり、日本代表チームを率いて世界一を目指す新モード「野球つくJapanロード」を搭載しているのが特徴だ。

 筆者は「サカつく」シリーズこそ数タイトルやり込んだ経験はあるものの、「野球つく」に本格的に挑戦するのは今回が実は初めて。よって歴代シリーズ作品との比較を論じることはできないので、この点についきてはあらかじめご容赦いただきたい。とはいえ、元々スポーツおよびスポーツゲームは大好きなので、10年以上も続く人気シリーズの魅力ははたしてどこにあるのか、興味深くプレイさせていただいた。

 また、5月21日に掲載した、本作品のプロデューサーであるセガの馬場保仁氏のインタビュー記事も、合わせてご一読いただければ幸いだ。


■ カンタン操作でテンポよくゲームが進む超快適設計

 ゲーム初心者、あるいは筆者のような「野球つく」シリーズ未経験者であれば、シミュレーションと聞くとゲームのルールが難しく、なおかつ慣れるまでには相当の時間が必要になるのでは? と身構えてしまう人が少なからずいるのではないかと思われる。

 だが、こと本作品に関してはそんな心配は一切ご無用。ゲーム中の操作はすべてタッチペン1本で簡単にできるので、コマンド入力のたびに何度もボタンを押す手間がなくてとても快適だ。ゲーム中はさまざまなメニューやコマンドが登場するが、画面をパッと見ただけでタッチする場所が直感的にわかるようになっているので、操作方法で困ったりすることはまずないと言っていい。

 キャンプやドラフトなどの各種イベントが発生すると、その都度画面の見方や操作方法などを丁寧に説明したチュートリアルが必ず表示される。ここでの操作も総じて簡単で、なおかつ多くのイベントが同時に発生したりすることはないので、遊んでいるうちに自然とその仕組みを覚えられる。また、日程を進めた後に新しい情報が発生したメニューは必ず「!」マークのついたアイコンで知らせてくれるため、プレーヤーがうっかり大事な情報を見落とさないように配慮している。

 これならシリーズ初心者であっても、ゲームの途中で何度もマニュアルを読み返したり途中で投げ出したりせず、まったくストレスを感じることなく遊べるだろう。試合に勝とうが負けようが、1シーズン通して本編をプレイすれば、おおよそのゲームのコツはつかめるはずだ。

メニュー画面では、実行したい項目を直接タッチペンで触れるだけですべての操作が可能。打順や一軍・二軍の入れ替えなどもサクッとできてしまう
新たなイベントなどが発生するたびにチュートリアル画面でその内容を丁寧に説明してくれる。情報が更新されたメニューは「!」ですぐに教えてくれるのでとても親切だ

 本編のゲームの目標は、10年以内にチームを日本一に導くことにある。途中で資金がマイナスになるとゲームオーバーになってしまうが、試合では何回負けても解任されることはないので、じっくりと腰を据えてチームの育成に時間を費やすことができる。選手の給料など、毎月末に必ず支払う経費の合計額はトップメニュー画面に常時表示されるので、資金の管理も実に簡単だ。

 シーズンオフになると、ドラフトやFAでの選手獲得のために多額の資金がどうしても必要となるが、ドラフト直前には毎年必ずお助けイベントとして融資会社が登場するのも嬉しい配慮だ。1年目のシーズンには無償で3億円が、2年目以降はショップを担保(※翌年5月まで差し押さえられて使用不能になる)にしてなんと5億円を無利子で貸してくれる。プレーヤーにはなるべくゲームオーバーになってほしくないという、開発サイドの気遣いが見て取れて非常に好感が持てた。

 使用するメニューは、大きく分けて「経営」、「グラウンド」、「情報」、「人事」、「日程進行(※これを選ぶと試合に移行する)」の5種類で、日程の進行前であればどれでも自由に実行できる。従来のシリーズでは、メニューによってはデータの読み込みに時間がかかり、次のターンが始まるまでしばらく待たされるケースがしばしば見受けられたが、こと本作品ではそのようなことはまったくなく、驚くほど早いテンポでゲームが進む。

 中でも筆者が特に感心したのは、試合にかかる時間が極めて短いこと。試合中の画面を一切見ずにスキップさせればほんの数秒で、直接自分で試合の指揮をとった場合でもわずか5、6分ほどですんでしまう。しかも、試合の途中からでもいつでもスキップができる(※1プレイごとにスキップすることも可能)ので、遊んでいて実に爽快だ。

 当初はシミュレーションゲームという特性上、“1度に数時間単位で遊ばなければゲームを十分に楽しめないだろう”と思っていたが、いざ始めてみたらほんの10分ほどの空き時間でも遊べるようになっていたので大いに驚き、いい意味で見事に裏切られた。これなら通勤・通学などの移動中でも気軽にできるので、携帯ゲーム機用タイトルとしてしっかりチューニングされていることが実感できる。

月末に支払われる経費の合計額は必ず頭に入れてプレイすることが必要。毎月末に表示される収支のバランスを見つつ、プレーヤーは球団GMとして今後の資金繰りをどうすべきかを考えなければいけない
試合をスキップしたいときは、「結果を見る」と書かれた部分をタッチするとたったの数秒で試合が終了する。スキップした試合のスタッツ(個人成績や得点経過)を見ることももちろん可能
試合中はプレーヤー自身が選手交代などの指揮を直接とることも可能。打った瞬間にアウトとわかる凡フライなどを飛ばしたいときは、画面をタッチをすれば瞬時に次の場面にスキップできる

■ プレーヤーのお好み次第でいろいろな遊び方が楽しめる

 チームの日本シリーズ制覇以外にも、ひたすら選手の育成に専念したり、個人記録の更新を狙うなど、プレーヤーの腕や好みによって数多くの遊び方ができるのも本作品の優れたところである。

 筆者はまず最初に、本編の1番の目的である日本一を目指すことに専念してみた。全部で3種類のチームを作って試したみた結果、最短では7年目のシーズンで日本一になることができた。どのチームでも最初の1、2年目はダントツの最下位だったが、選手の育成や能力の高い監督の招聘など補強が進むにつれて成績が少しずつ上昇し、同時に楽しみもどんどん増していった。

 試合を消化するにあたり、自分自身が直接指揮をとる方法と、試合終了まですべてスキップする方法とで勝率が変化するかどうかも調べてみたが、筆者が見た限りでは特に顕著な差は発生しなかった。最終的には、相手ランナーを確実にアウトにできる「隠し球」などのGMスキル(※試合中に使用できる、ショップで購入できるスキルのこと)が使える分、直接指揮したほうが勝率は高まると思われるが、プレイ時間をなるべく短縮したいという人はスキップ機能を大いに活用したい。

 日本一を達成後、筆者はOB選手(※実名で登場する引退選手のこと)を片っ端から集めることで、さらにゲームを楽しむことができた。自身が元々野球少年だったこともあり、当時あこがれた原辰徳や山田久志、掛布雅之などといった往年の名プレーヤーたちが、自らのチームでメキメキと力をつけていく姿は見ていて実に楽しい。時には自軍の主力選手を放出してでも、意中のOB選手をトレードで獲得することに夢中になったりして、球団GMとしてのなり切り感を十分堪能できた。

 腕に自信のある人は、シーズンまたは通算個人記録の更新(※王貞治のシーズン55本塁打などが一例)を狙ってプレイするといいだろう。更新した記録と選手名は「記録の殿堂」画面内にずっと保存されるので、プレーヤーのモチベーションアップにとても役立つ。

 さらに、ショップで売っているイベント用のアイテム「ベースボールクエスト」を購入して、全種類制覇にチャレンジにするのも面白い。あるいは、同じくショップで売っている各種スキルを集めて選手を強くしたり、さらにこれらを組み合わせることで登場する上級スキルを探し出すなど、いろいろやり始めたらきりがないほど遊び方が豊富に用意されているのだ。

 たとえ10年目のシーズンが終了しても、11年目以降も継続してプレイすることができるので、自分で100%納得がいくチームができあがるまで、それこそ50年でも100年でも末永く楽しめるのが、本作品の大きな魅力だ。

オヤジ世代には嬉しい、かつて一世を風靡したOB選手が多数登場。筆者のような元野球少年であれば、彼らのコレクションをするだけでも十分楽しめるハズ
通算およびシーズンの日本記録更新を狙うのも1つの楽しみ方。「ベースボールクエスト」や、特定の条件を満たすと発生するイベントの完全制覇にチャレンジするのもまた面白い

■ 対戦プレイの面白さと初心者救済機能を兼備した「野球つくJapanロード」

 「野球つくJapanロード」モードは、相手プレーヤーと総当り形式で対戦する「ドラフト編」と、日本代表チームを率いて世界一を目指す「世界大会編」の二部構成になっている。

 「ドラフト編」はその名のとおり、最初に10名の選手をドラフトで獲得するところからスタートする。本編の球団経営モードと同様に、チーム立ち上げ時には平均的な能力の選手が多いため、ドラフトでの戦力補強は極めて重要なポイントとなる。選手が競合した場合は当然ながら抽選となるので、おのずと他のプレーヤーとの駆け引きが生じる。

 また、特定の条件を満たした選手を集めると、「スーパーカートリオ」、「同級生トリオ」、「マシンガン打線」などのコンボが発生し、ボーナスとして「野球つくポイント」(略して『YP』)と呼ばれるポイントが加算される。このポイントは試合前にショップでアイテム類を買うためのお金代わりに使えるので、ポイントを多くためたほうがより有利に戦える。

 獲得するとコンボが発生する選手には、「1P」、「2P」などとプレーヤーごとに必ず画面にヒントが表示されるので、初めて「野球つく」をプレイする人でも問題なくすぐに楽しめる。ヒントは相手チームのものもすべて見られるので、自チームのコンボを作るだけでなく、相手のコンボを邪魔するための選手をあえて狙うことも可能。以前に掲載した馬場氏のインタビュー記事でもすでに触れたが、例え指名リストに有名選手がいなくなった後でも、コンボを巡ってさまざまな駆け引きが生じるのが面白い。

 さらに試合終了後には、勝ったほうが相手チームの好きな選手を1人(※5点差以上で勝ったときは2人)強制トレードで獲得することができる「はないちもんめトレード」もアツい。勝てば有頂天、負ければもちろん主力選手を引き抜かれてショックなので、1人で遊ぶよりもみんなで対戦したほうがはるかに盛り上がる。

獲得するとコンボが成立する選手には常時マークが表示される。自軍のコンボの獲得を急ぐか、それとも他人の邪魔をするべきかの駆け引きが生じる
試合終了後のプレイ内容に応じてもらえるYPを利用してショップで買い物ができる。試合後には勝者側が相手の好きな選手をトレードで引き抜くことも可能

 「世界大会編」は、第一部終了後のチームがそのまま日本代表となり、全3試合をノックアウト方式(※負けた時点でゲームが終了となる)で戦うというもの。1人プレイ時には、たとえ第1部でビリになっても自動的に第2部へ進める親切設計になっているが、本モードにはもう1つの重要な初心者救済システムが存在する。

 第2部の終了後、獲得したYPをアイテムや賞金などに引き換えて、なんと本編の球団経営モード用にセーブしたチームへ送品および送金ができるようになっている。データを送ると(日本代表チームの)チームデータは消えてしまうが、これを利用すれば本編で万が一赤字になりそうになっても、本モードで賞金を稼ぐことでゲームオーバーを回避できてしまうのだ。

 異なるチーム間でデータをやり取りするという、およそ常識的にはあり得ないシステムだが、とことんまで初心者を助け、より長く遊んでもらおうとするゲームコンセプトは筆者としても大いに賛成だ。しかも第一部に限れば、筆者の体感ではCPUチームの強さはかなり甘めに設定されているようなので、なかなか勝てずにストレスがたまるようなことがないのもこれまた嬉しい。

第2部の「世界大会編」は負けた時点で即終了。ゲーム後にはチームデータが消えるのと引き換えに、YPで購入したアイテム類を本編のチームにプレゼントできる

■ いつでもどこでも気軽に楽しめる、忙しい社会人にもオススメの1本

 カンタン操作で初心者でもすぐに楽しめるのが魅力の「野球つく2」。試合時間が極めて短く、ちょっとした空き時間を利用して遊べるので、普段忙しい受験生や社会人でも自分に合ったペースでじっくりと楽しめるのが素晴らしい。また、試合中にはランナーがゲッツー崩しのためのスライディングをしたり、「レーザービーム」のスキルを持った外野手による剛返球が見られるなど、野球好きなら思わずニヤリとしてしまう演出が多数盛り込まれているのも嬉しいところだ。

 野球少年・少女はもちろんのこと、筆者としては特に社会人に本作品をおすすめしたい。前述したように、資金がショートさえしなければ何回負けてもゲームオーバーにならないので、始めのうちは勝敗を一切度外視して、少年時代に憧れたOB選手をひたすら集めるだけでも十分面白い。職場の同僚や野球好きの友人といっしょに遊べば、ますますゲームが楽しくなることだろう。

 「100年遊べる」の看板に嘘偽りはまったくなし。自分自身で納得のいくチームが完成するまで、「野球つく2」をとことん遊びつくしてほしい。


(C)SEGA (社)日本野球機構承認 NPB BIS 日本プロ野球公式記録使用

(2009年 6月 24日)

[Reported by 鴫原盛之 ]