PS4/Xbox Oneゲームレビュー

シャドウ・オブ・モルドール

「中つ国」を舞台にした作品ならではの濃い世界観

「中つ国」を舞台にした作品ならではの濃い世界観

映画でおなじみのゴクリは本作でも重要な役割を担う
モルドールの地で苦難の戦いを続ける仲間と再会する
徐々に明らかになるエルフの記憶。この場面は……

 エキサイティングなアクションと、ネメシスシステムに加え、「シャドウ・オブ・モルドール」の魅力は「世界観」にある。本作は「ホビット」と、「ロード オブ ザ リング」の間の時代を舞台としている。特に「ロード オブ ザ リング」のファンにはニヤリとさせられる要素が盛り込まれている。

 まず主人公タリオンがレンジャー(野伏)なところがいい。映画のアラゴルンのような野性味を感じさせる男で、モルドールの地を“走り回る”。特に岩を飛び越したりする時にタイミング良くボタンを押すと、一時的に特殊な加速ができる所などはストライダー(馳夫)の異名を思い出させる。薬草を見分け、体力回復に利用するところもレンジャーならではだ。

 エルフの死霊はゲームを進めていくことで名前が明らかになるが、トールキンの小説に詳しい人ならもっと早い段階で「彼は○○だな」と気が付くだろう。彼の記憶の中で、サウロンは「ロード オブ ザ リング」の劇中そっくりな姿と、もう1つの姿を見せる。ここも「おお、小説の記述と一致する描写だ!」と感心させられるところだ。

 幽鬼の力を使うと映画のフロドが「1つの指輪」をはめたシーンのように周りの風景がぼやけ、闇の力を持った者が浮かび上がる。タリオンはこの力で標的となるウルクを見つけ出すのだが、さらに「エルフの記憶」が思い出されるところが面白い。また、「アーティファクト」という探索の要素があり、ここで見つけることができる遺物は、モルドールの歴史や、レンジャーの活動、ウルクの奴隷にされた人々の生活といった“記憶”がこもっており、これらに触れることで作品世界をさらに楽しむことができる。

 なによりも、「ウルクの生活」に踏み込み、モルドールという地を掘り下げているのが楽しい。筆者はかつて「ロード オブ ザ リングス オンライン」をプレイしていたとき、プレーヤー達の「中つ国」の知識に驚かされたことがあるが、そういった濃いプレーヤーにも本作はオススメである。

 これまでの作品では、「敵」としてだけ描写されていたウルクの権力抗争、力だけが支配する過酷な世界をきちんと描写し、なおかつその習性を利用してウルク達を壊滅させようというゲームに仕上げている所に本作の面白さがある。ウルクを洗脳するアイコンが“手”で、エフェクトが白いところは、「白の手」を紋章に自分だけのウルクの軍勢を作り出した魔法使い「サルマン」を思わせる。

 そして「ゴラム」が、映画そのままの姿で登場するのも注目ポイントだ。指輪に魅入られたゴラムはタリオンにとりついたエルフの死霊を「輝く主」と呼ぶ。彼はこの物語でどんな役割を果たしていくかとても気になるところである。

 「シャドウ・オブ・モルドール」は優れたアクションゲームであり、過酷な習性を持つ蛮族を、たった1人の男が壊滅に導くというダイナミックなテーマを、きちんとゲームシステムで表現している。「革新的なゲームをプレイしてみたい」というゲームプレーヤーにオススメしたい。「俺は新しいゲームをプレイしている」と感じられるはずだ。そしてトールキンの作品が好き、という人は本作の世界観をたっぷり楽しんで欲しい。

 ネメシスシステムは、1度のプレイだけではなく、再度ウルクに挑むことで全く違うゲーム展開を楽しめる。本作は1プレイに40時間近くはかかるボリュームたっぷりなゲームではあるが、くり返し遊ぶのも楽しいゲームだと感じた。筆者自身はまだ20時間、まだまだプレイの途中であるが、先が非常に気になるし、1度クリアしたら、もう1度最初からプレイし、ウルクの軍勢に全く違うアプローチをしてみたいとも思っている。「何度でも楽しめる」という点も、ネメシスシステムの面白いところだと思う。斬新で激しく、楽しいゲームである。この年末、ぜひ触れてみることをオススメする

【世界観の魅力】
フィールドに隠されたオブジェクトや、アンロックされる知識から世界観が掘り下げられる
ドワーフに出会うことで巨大生物への騎乗方法を学ぶ
ストーリーはゲームオリジナルであるが、「中つ国」の知識が深まる
Amazonで購入

(勝田哲也)