PS3/Xbox 360ゲームレビュー「F1 2013」

F1 2013

「F1クラシック」モードの新規収録でスポーツゲームとして一皮むけた

「F1クラシック」モードの新規収録でスポーツゲームとして一皮むけた

クラシックモード。往年のマシンを体験できる
80年代マシンのデザインはまるで弾丸だ
シューマッハやプロストなど名ドライバーたちも
クラシックマシンならではのじゃじゃ馬っぷりがが楽しい

 最後に、本作の“豊富なコンテンツ”の一角を為すのがシリーズ初収録の「F1クラシック」モードだ。これは過去のF1シーンの一部を楽しめるモードで、初期状態では1980年~1988年のウィリアムズ、ロータス、フェラーリのマシンが5種類と、スペインのヘレスサーキット、イギリスのブランズハッチサーキットが収録されている。

 ロータスのマシンもあるということで、1980年代後半~1990年代初頭まで活躍した日本人初のフルタイムF1ドライバーである中嶋悟氏も登場する。どちらかというと筆者は中嶋悟氏の時代の少し後、90年代のF1に熱狂した世代なのだが、そちらは「90年代クラシックパック」としてウィリアムズとフェラーリの6車種を有料DLCに収録だ。

 ちなみにクラシックモードでのレースでは画面がセピア調となり、HUD上の速度計やライバルカーのネームタグ表示もなんだかレトロゲーム調となる。開発者のこだわりを感じ、そこまでレトロにしなくていいのに、と笑ってしまった。

 実際にプレイしてみると、マシンの挙動に時代を感じられておもしろい。パワーは現代のF1と変わらず、しかし空力やタイヤはまだまだ発展途上の時代。マシンがエンジンに振り回されるような感じで、ステアを切るたびに車体が揺さぶられるのだ。

 ステアリング後の揺り戻し、いわゆるお釣りも強く、タイヤがすぐスライドしてしまうので、スムーズな走りを実現するには現代のF1マシン以上の繊細かつ素早い操作が必要になる。2013年のマシンで言うなら、ちょうどウェットで走っているような感じだろうか?

 といった感じでオールドF1マシンの操縦は非常にテクニカルで、KERSもDRSも存在しないシンプルさの中にクルマを走らせる基本の面白さが詰まっている。これはもう別ゲームといっていいほどだ。

 ちなみにこのゲームモードにはレース単体で遊ぶ「グランプリ」、好きな車で単に走る「タイムトライアル」、オンラインランキングのある「タイムアタック」、様々なシチュエーションのレースに挑める「シナリオモード」といったサブモードがあり、それなりの遊びの幅は用意されている。

 ただ、正直なところまだまだコンテンツ量が少なく、特定の時代を完全再現するという理想には至っていない。各レースモードでは時代の違うクルマが並んで走ることになるため、平等なレースにならない。例えばチャレンジモードにはフェラーリ1988年型で全車両のごぼう抜きを要求するような内容もある。今のところは、あくまで古いF1マシンの挙動を楽しめますよ、というところに主眼がある。

 とはいえ、これはスポーツゲームとして本作をみたときに、重要な1歩だ。例えばサッカーの「FIFA」シリーズなどもそうだが、最新のシーズンを再現すると同時に、往年の選手やユニフォームを登場させることでその競技のファンに幅広く訴えるという試みは広く行なわれている。

 特にF1は時代を代表する名ドライバー、名車両、名勝負などなど歴史的なドラマの多い競技だ。「F1クラシック」モードの収録を第1歩として、今後DLCなどの形でさらにコンテンツが拡充されていけば、単なるレースゲームからF1のバイブルのような存在になりうる。全世代のF1ファンを楽しませてくれるだけでなく、テクノロジーの進歩や、安全基準の変遷などF1を通じてモータースポーツ全般に通じる様々な学びも得られるはずだからだ。

 そういう意味で「F1クラシック」モードの価値は大きい。この点はコードマスターズのさらなるコンテンツ拡充への努力に期待したい。

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(佐藤カフジ)