オンラインゲームレビュー

World of Tanks

シンプルで奥深い、王道を行く面白さ!
世界中の戦車をフィーチャーし、戦車戦の醍醐味を大胆に凝縮

ジャンル:
  • アクション
発売元:
  • ウォーゲーミングジャパン
開発元:
  • Wargaming.net
プラットフォーム:
  • WIN
価格:
無料
発売日:
2013年9月5日

9月5日にオープンした日本語公式サイト

 9月5日、「World of Tanks」の国内向けサービスがスタートした。本作はベラルーシのゲームデベロッパーWargaming.netが開発した基本プレイ無料のタンクバトルゲーム。2010年の運営開始より爆発的にファンを増やし、現在では全世界で7,000万ユーザーを擁する世界最大級の人気ゲームだ。

 ゲーム本体は今春にはすでに日本語化を完了していたものの、公式サイトや支払い・サポート関連のサービスは英語のままだった。それで今回、国内向けサービス開始にあたって包括的な日本語対応が行なわれ、現在では日本語版の公式サイトを利用できるようになっている。

 本作の特徴はなんといっても、ゲーム内容は極めてシンプルでありながら、ユニークな内容と深みある面白さを持ち、数千時間のプレイにも耐えるほどの後を引く魅力を持っているところだ。

  国内向けサービスの開始を皮切りにゲーム内での経験値倍増イベントや、ゲーム外ではアニメ「ガールズ&パンツァー」に絡めたキャンペーンも始まりつつある本作。ちなみに現在、10月頭まで各試合の上位プレーヤーに経験値倍増ボーナスが与えられるイベント実施中なので、これから始めるには最適のタイミングだ。

 本作はゲーム外の話題性が先行している節もあるため、存在が気になっているがまだ触れるには至っていない人も多いのではないだろうか。本稿ではそんな方々のために、筆者はプレイ歴1カ月の新参ながら、本作のゲーム的な魅力をバシッとご紹介していこう。

ひたすら戦車で戦うだけ……だが、ヒジョーに奥が深い!!

15対15の戦車戦が始まる
正面から貫ける弱点を狙い貫通
マズイ場所で履帯を切ってハメる

 本作は基本プレイ無料のオンラインゲームなので、課金情報の登録などは必要なく、プレイを開始するには公式サイトでアカウントを作成して、ゲームをダウンロードするだけでオーケーだ。クライアントソフトは丁寧に日本語化されており、戦車・装備の各種説明からゲーム内の音声まで完全に日本語だけで楽しめる。

 ゲーム内容は実にシンプル。バトルの基本フォーマットは15対15で戦われるチーム戦で、制限時間は15分、敵を全滅させるか陣地を占領するかで勝敗を競う。陣地の数と位置によって「通常戦」、「強襲戦」、「遭遇戦」と呼び名は変わるが、やることはほとんど同じ、15対15の戦車戦となる。

 基本的にゲームルールはこれしかない。およそ1km四方の山あり谷ありなマップで14両の味方と連携し、15両の敵車両と相対する。リスポーンシステムはなく、撃破されたら終わり。大抵の試合は5~10分で終わる。開幕突撃して真っ先に撃破されれば1分で終わることもある。

 これだけ素朴な内容であるのに、本作は抜群に面白い。それは、戦車戦ならではの醍醐味を丁寧に抽出してゲームが組み立てられているからだ。

 戦車戦は、人間が戦うFPS・TPSに比べてスローテンポだ。戦車は前後にしか移動できず、しかもその動きはゆっくり。大砲は1発撃てば主砲弾のリロードに数秒から十数秒かかる。いきおい、無心に撃ちまくる時間帯というのはそう多くなく、“次の一手”を考える時間帯が多くなる。

 どういう一手を考えるか。それは本作に存在する戦車戦ならではの概念に基いて思考される。貫通・装甲の関係、バイタルパート(重要防御区画)、そして視界と通信。それによって引き出される濃密な連携である。

 まず本作の戦車砲には“砲弾の貫通力”、車体には“部位毎の装甲厚”という概念があり、貫通力が装甲厚を上回らない限りは、命中しても跳ね返されて全くダメージが入らない。従って、撃つなら敵の装甲の薄い側面・背面を狙える位置にポジショニングするのが1番の戦術となる。

 また戦車には履帯・エンジン・燃料・弾薬庫・潜望鏡といったバイタルパートがあり、このウィークポイントを正確に撃ちぬくことができれば敵に追加ダメージを与えたり、移動・砲撃・その他の機能を一時麻痺させることもできる。

 だから常に、撃てば当たる状況でもよく考えて、いま1番有利になれる部位をしっかり狙って砲弾を叩きこむ。たとえ自分の砲では敵の装甲を貫通できなくても、履帯を切って動きを止めれば味方が仕留めてくれるかもしれない。

 眼前の敵はこちらを狙っているか?視界外の敵に狙われていないか?次弾発射のタイミングは?味方からも射線が通っているか?今どのパーツを破壊すれば有利になるか?1発の砲弾にそんな大量の思考が詰まっているのが本作の面白さだ。

敵の背後に肉薄、エンジン部分を狙撃し、トドメを刺した!

発見中の敵は一部でも露出していればシルエットで全体が確認できる
高速軽戦車で敵を発見しまくる
こちらは自走砲の砲撃視点。視界は完全に味方に依存している

 更に本作には「視界」という概念がある。いくら強力な砲でも、敵が見えなきゃ始まらない。索敵範囲内に入って、さらに視線が通って始めて、その敵が表示されるようになる。加えて、敵車の位置情報は無線範囲内にいる味方全員で共有できるという仕組みがある。たとえ自分からは遠すぎて見えない敵でも、味方の無線を中継して自分にも見えるようになる、というわけだ。

 そんな仕組みがあるため、機動力があり発見されにい軽戦車による前方偵察には大きな価値がある。軽戦車は火力的には無力でも、敵を視界に捉えることで味方重戦車・駆逐戦車・自走砲による砲撃を引き出し、チームの勝利に大いに貢献することができるのだ。

 以上の概念が組み合わさった結果、本作では戦車戦ならではの面白さを存分に味わうことができる。弱点への砲撃、装甲による防御、偵察に有利なポジションの獲得、機を見ての裏とり……。しかも、ガチの戦車シミュレーションとは違って、戦車戦の泥臭く面倒な部分は大胆にカットされており、ゲームとしての遊びやすさも高いレベルで備えている点がポイントだ。

 ギア操作なんてまったく不要で“WSAD”だけで戦車を操縦できるし、発見された敵車にカーソルを合わせれば赤いシルエットが表示されて、濃密なブッシュに隠れていても見えやすい。敵車に自動的に照準を合わせてくれるオートエイム機能もある。履帯などバイタルパートが破壊されても、一定時間で自動修理されるので撃破されずに生き延びれば再行動もできる。雑味を排除して美味い部分だけ凝縮したもの、それを醍醐味という。

 というわけで、本作はFPS・TPSの一種として見ることもできるが、本作のゲーム性質と一般的なFPS・TPSの性質を比べると、車のゲームで言うならF1レースとデストラクション・ダービーくらいにプレイ内容が違うのである。これだけオリジナリティに溢れユニークな内容を持つゲームだからこそ、全世界7,000万人もの人々が1度は体験しようとしたわけだ。

早期に発生しやすい軽戦車同士のカーチェイス(?)。相手の“目”を奪うべく必死に打ち込む
狙撃に優れた高精度砲を持つ戦車なら、視界を味方に任せ、少し下り目の位置から狙撃する戦法が有効
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(佐藤カフジ)