(2013/2/14 00:00)
2008年秋に発売された「Dead Space」から4年あまり。第3作となる本作「Dead Space 3」では、主人公Isaac Clarkeを悩ませてきた諸悪の根源「Marker」との戦いが佳境に突入する。
全編を通してグロテスクな表現が全面に押し出され、人体の部位破壊と欠損表現がゲームプレイ戦略に取り入れられてきた本シリーズ。2作目では日本国内のレーティング制度にそぐわなさすぎる内容がたたってメインシリーズは1度もローカライズが行なわれず、海外版を直接購入するしかないというファン泣かせの状況だった。
今作もローカライズはなし。しかし英語&Windows版限定とはいえ、ワールドワイドの発売日から若干の遅れだけでDL版/パッケージ版を公式ルートから購入することができるようになった。なお、最近のエレクトロニック・アーツからのタイトルの例に漏れず、インストールと起動にはOriginへの登録が必須だ。
3作目としてストーリー展開にさらなる深みが加えられた本作だが、シリーズで守られてきたゲーム性はそっくりそのまま健在だ。不足しがちな弾薬を節約して戦うため、敵の頭、腕、足など各部位を的確に破壊して脅威を取り除くことがゲーム戦略上重要であり、戦闘と探索を通じて武器弾薬その他のアイテムを収集、自身の能力を強化していくという長期戦略の深みもある。また、ゲームの舞台となるSFチックな施設内に用意された数々の知的なパズルはかなりの手応えだ。
厳しく言えば遊びの内容がシリーズを通してほとんど変わらずマンネリ気味ではあるが、本作では武器のカスタマイズにとてつもない自由度が加えられ、プレーヤーの工夫次第でプレイの質に幅広い変化を加えられるよう工夫されている。そのあたりの変化も含め、本作のプレイを通じた印象をお届けしよう。
諸悪の根源「Marker」を巡る戦いは核心に迫る
「Dead Space」シリーズは2作目から映画的な演出を増して、より濃密なストーリーを楽しむ作品となってきている。本作で描かれるのは前作から3年後、西暦2514年における戦いだ。一定の予備知識がなければ話についていけず、面白さが半減する内容となっているので、まずは物語の背景、人物の相関を把握しておきたい。
2200年代に地球で発見された「Black Maker」から全ての物語が始まる。これは未知の技術で作られた一種のエイリアン装置であり、当初は無尽蔵のエネルギーを取り出せるように思われた。しかし、それは災厄の元であった。人間の死体を「Necromorphs」と呼ばれるゾンビ状の生命体に変えてしまい、近づく者には死の嵐が吹き荒れる。紆余曲折の末、この「Black Marker」は葬りされられたが、それは始まりに過ぎなかった。
100年後、資源の枯渇に直面した人類によって「Marker」の複製が作られてしまう。案の定、そこから得られるエネルギーの代償は、あまりにも高くつくことになった。災厄の原因となった「Marker」の複製は宇宙の各地に封印され、また長い時が過ぎていく。
さらに200年後、とある宙域で非合法の採掘を行なっていた工作船「Ishimura」が、放棄されていた「Marker」に接触、連絡を途絶してしまう。その事態を把握するために送り込まれたひとりのエンジニアこそ、本作の主人公Isaac Clarkeだ。
Isaacは初代「Dead Space」にて「Marker」の破壊に成功するが、その代償として恋人Nicoleを失った上、脳内に「Marker」の記憶を植え付けられてしまう。「Marker」を知りすぎたIsaacはもはやただのエンジニアではいられない。そして「Dead Space 2」では地球政府「EarthGov」に拉致されるなど散々な目に遭いつつも、新たなパートナーEllieとの出会いなどを通じ、騒動は一段落となる。
ここまでが前作までの背景とあらすじだが、結局、災厄の根源となっている「Marker」そのものについてはよくわからないままだった。そこで本作ではいったん、「Marker」のコピーが作られ大災厄を引き起こした200年前のでき事にフォーカスを移す。
ここからが、本作の冒頭で描かれるストーリーだ。舞台は極寒の惑星。プレーヤーが操作する、とある兵士は墜落したシャトルから「Codex」と呼ばれる装置を回収する。この装置は、「Marker」に関する何らかの切り札であるようだ。どうやら他の部隊はほぼ全滅している。野営所に戻り、指揮官に作戦の続行を上申するも……。これが本作のプロローグとなる。
そして物語は一気に200年後に移る。月面コロニーで半病人のような生活を送る我らがIsaac Clarkeに三度魔の手が伸びる。「Marker」を神として信奉するカルト教団「Unitlogy」が、人類の絶滅作戦を開始したのだ。「Marker」とひとつになり、ゾンビ状の「Necromoph」になることこそが新たな転生の形だと信じて止まない終末論者たち。彼らにとって、「Marker」を知り尽くしているIsaacは最大の危険人物である。
こうしてIsaacは、地球政府「EarthGov」最後の部隊(といってもたった2人だが)に拉致同然の形で同行させられ月面コロニーを脱出、遠方の宙域で調査作業を行なっているEllie一行に合流していく。そこはとある白い惑星の上空。200年前に廃墟と化した大艦隊の中で、「Marker」を巡る謎、その対抗策の糸口が解き明かされていく。
ここまでをひととおり把握して、ようやく本作の話の筋が理解できるようになる。本作は前2作と合わせて1個のトリロジーを形成しており、その面白さはゲームプレイが半分、ストーリー展開が半分という比重だ。もし本シリーズを始めようと思うなら、まず初代作「Dead Space」から順番にプレイしたほうが良いだろう。