PS3/Xbox 360ゲームレビュー「DmC Devil May Cry」

DmC Devil May Cry

こだわりのモーションは手触りも抜群に良い! スタイリッシュアクションの本質はばっちり

こだわりのモーションは手触りも抜群に良い! スタイリッシュアクションの本質はばっちり

アクションモーションの良さは特筆もの。スピーディーながら起伏のあるモーションで、リズム感と手触りが良い。武器の軌跡を描くエフェクトもかっこいい

 なんといっても「デビル メイ クライ」として大事なのは、軸であるゲーム性“スタイリッシュアクション”だ。多彩な攻撃方法、移動アクションの繋ぎ、そのどれもがかっこいい。これが大事だろう。

 これまでの取材等から伺うと、「DmC」はNinja Theoryが開発を行なったが、このアクションについてはカプコンも相当にアドバイスをし、長い時間をかけて作り上げていったという。それだけに今作のアクションの手触りの良さは特筆すべきものがある。

 まず、個々のモーションが素晴らしい。武器を振り始め、トップスピードに達し、慣性の余韻を残しつつ止まっていく。こうした理念がしっかりとあって、モーションに起伏のあるリズムを作っている。ボタンを押したレスポンスから、眼でモーションのかっこよさとリズムを感じ、それを次々に放ち繋げて気持ちよさを味わっていく。「デビル メイ クライ」ひいてはこうしたコンボアクション系のゲームで最も大事な点が、うまく作られていると感じた。

 そんなアクションだが、「DmC」のダンテの武器やアクションは、「DMC」シリーズ作の良さを結集させ、そして新しいエッセンスを加えたような、いいとこ取りな良さがある。

 まず基本となる長剣「リベリオン」と、2丁拳銃の「エボニー&アイボリー」。巨大なカマで広範囲に斬る「オシリス」、重量感のある斬撃を放つ斧「アービター」、高速回転する刃を投げる「アキュラ」、重い打撃を浴びせるガントレット「エリクス」等々。

 この他にもまだ武器があり、それぞれに固有技がたくさんある。最初は基本技のみとなるが、プレイを重ねホワイトオーブを溜めていくと手に入るアップグレードポイントダンテのアビリティや武器のスキルを修得し、少しずつ使いこなしていくというのは「DMC」を踏襲。2周目以降は解放した武器やアクションを最初から使えるのも同様だ。

 こうした武器は、L2/R2で切替できるようになっている。「DmC」のダンテは悪魔スパーダと天使エヴァの間に生まれた子供であり、天使と悪魔のハーフ。エンジェルモードはL2を押したまま、デーモンモードはR2を押したままで発動し、各アクションを使い分けていく。

 このL2/R2で能力を瞬時に切り替えられるというギミックも感触が良く、アナログスティックやボタンの操作をしたままで、指を大きく動かさずに切り替えられる。コンボのスピード感やリズムを損なう事もない。

 また、敵を引っ張る「デーモンプル」、敵の懐に近寄る「エンジェルリフト」も魅力で、敵を吹っ飛ばし、デーモンプルで引き寄せてコンボを続けたり、跳ね上げた敵にエンジェルリフトで近づき、空中コンボを決め、さらに別の敵をデーモンプルで空中に引き寄せて、そいつにも空中コンボを決めることができる。「Devil May Cry 4」のネロを思わせるところもあるが、距離をコントロールできるこの2つの能力によって、コンボの多彩さが大きく広がっている。ずっと空中に居続けるような動きも可能だ。

 この「デーモンプル」と「エンジェルリフト」は、ステージの足場移動にも使われる。エンジェルリフトで空を飛ぶように移動したり、デーモンプルで足場を引き出したり。2段ジャンプ、ジャンプからのダッシュも可能で、移動系もやりたい動きがしっかりと揃っている。

通常時はノーマルモードで戦いながら、エンジェルモード(L2を押したまま)とデーモンモード(R2を押したまま)を瞬時に切り替えられるのが今作のアクションのポイント。武器も多彩
引き寄せる、近寄るアクションも魅力。デーモンプルで敵を引き寄せ、エンジェルリフトで一気に近づく。空中に居続けるような動きも自由自在。足場移動に多く使用する
デビルトリガーを発動し、ダンテの内なる力を解放! 発動の衝撃で敵を吹き飛ばし、スローモーションな動きの中、圧倒的な攻撃力で敵を叩きのめせる

 この「DmC」のスタイリッシュアクションのポイントとしては、非常にコンボが繋げやすいところにあるだろう。L2/R2を駆使してモードチェンジするというところは若干複雑さがあるものの、コンボ自体は何からでもどれにでも繋げられるという印象がある。難しく考えずともかっこよさと気持ちよさをひたすら追求できるぐらいに手軽だ。

 一方でそのトレードオフになってしまった弊害というのも感じたところがあって、それは“なんでも繋がりすぎる”というところだ。コンボ探求としては「この技からこれに繋げられるかな?」といった工夫をしつつの模索が楽しかったりするのだが、本作のアクションは試すまでもなく距離さえ合っていれば大体繋がる。手軽に楽しめるゆえに、細い道を辿るようなコンボ探求の奥深さが多少薄いだろうか。

 もう1点残念だったのは「挑発」アクションがないところ。今作のダンテはラフな口汚さがとても魅力的で、それだけにその個性をいかんなく発揮して、自分の操作で悪魔を挑発できたら楽しかっただろうなぁと感じる。この2つは、筆者が今作でちょっと残念に感じたところだ。

日常世界が突如、現実と魔界の狭間「リンボ」へと変わっていく。文字で敵意を表現する演出もストレートでわかりやすい

 世界観、ひいてはステージのセンスも独特で優れている。現代社会のおそらくイギリス周辺をモチーフにした日常が、マッドで壊れた“リンボ”の世界へ変貌していく。地面が割れ、空中に跳ね上がり、色合いもグラデーションを帯びてダークに変容していく。そのほとんどがカットシーンではなくリアルタイムで変わっていく様子は圧巻だ。

 リンボに落とされる時に建物等に浮かび上がる文字もユニークな演出だ。襲来している悪魔の意思が伝わってくる。もちろんそれは、全編をとおしてダンテの命を狙う悪意であり、文字で直接的に意思表示される妙に実体を感じさせるものがある。

 敵の悪魔も独特なセンスだ。その最たるものはニュースメディアを牛耳る悪魔ボブ・バーバスと思うが、雑魚敵でもエンジェルモード、デーモンモードを使い分けないとダメージを与えられない敵や、居合い斬りのようなスタイルで襲いかかってくるドレカヴァクなど、スタイルや特徴、それに対抗する手段も様々だ。相手の攻撃モーションにカウンターを決める「パリィ」という要素もある。瞬時の判断とそれを上手く決めた時の気持ちよさを、よどみなく動き続けるコンボの中に組み込んでいける。

リンボに落とされると、リアルタイムに地形が変わっていく。現実世界にも影響があり、画像のように奇抜な事件になっていく
敵も様々なタイプがいて、赤い敵はデーモンモード、青い敵はエンジェルモードでないとダメージを与えらない。カウンターの「パリィ」を上手く決めればチャンスが作れる
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(山村智美)