恐怖と絶望を描くサバイバルホラー最新作「バイオハザード6」がついに発売された。今作では「レオン・S・ケネディ」と「クリス・レッドフィールド」のシリーズを代表する2人の主人公に加え、アルバート・ウェスカーの息子「ジェイク・ミューラー」が登場。さらに、謎をまとう女スパイ「エイダ・ウォン」ほか、総勢7人の主人公が4つの物語を展開していく。
ゲームプレイでは、アクション性が大幅に高まり、オンラインCo-op(2人協力プレイ)や、画面分割による2人プレイももちろん可能。ゾンビやジュアヴォといった敵になってストーリーをプレイ中の他のプレーヤーを襲う「エージェントハント」、シリーズ定番のスコアアタックモード「ザ・マーセナリーズ」もあり、楽しみ方もさらなる広がりを見せている。そんな本作のレビューをお伝えしていこう。
― Story ― ゾンビが闊歩するアメリカ【トールオークス】にて、大統領暗殺の容疑をかけられたレオン。 |
■ 7人の主人公と4つのストーリーで多彩な「バイオハザード」の魅力をみせる
レオン編は王道をいくホラーテイストの「バイオハザード」。ゾンビが溢れるトールオークスの街は、ラクーンシティを彷彿とさせる |
冒頭でも述べたように、今作最大のポイントは「レオン編」、「クリス編」、「ジェイク編」、「エイダ編」とストーリーが4つ用意されており、それぞれの立場と視点、それぞれ別々の場所での物語が楽しめるようになっているところだ。
シリーズを重ね“「バイオハザード」に求められるもの”も多彩になった。それは、忍び寄るようなホラー、激しい戦いのバイオレンス、迫りくる圧倒的な脅威による恐怖など、様々なものがあるだろう。それに対して今作は、それぞれの物語に異なる恐怖や絶望が込められている。
「レオン編」では、暗がりから忍び寄ってくるような恐怖から始まり、ラクーン事件を彷彿とさせる街全体に溢れかえるゾンビの群れなど、サイレントなホラーやスケールの大きな絶望が描かれている。レオンは、パートナーのヘレナとともに、生き延び、謎を解き、事件の真相へと迫っていく。
「レオン編」は、忍び寄るような恐怖と、街中にゾンビが溢れる絶望、秘密めいた場所の謎解きなど、「バイオハザード」の初期シリーズを思わせるテイストとなっている |
一方、「クリス編」で描かれるのは、激しい戦いでありバイオレンスだ。これまでの「バイオハザード」シリーズではあまり描かれなかった、バイオテロ部隊BSAAの“部隊規模の戦い”が豊富に描かれているのがポイント。BSAAの隊長であるクリスは、パートナーであるピアーズをはじめとした部隊の隊員と共に、今作で起きる大規模なバイオテロに立ち向かっていく。
また、クリス自身の身に起きている変化にも着目していきたい。クリスは冒頭では記憶を失っていて、日々、酒場に通い詰めては、酔った勢いに任せて暴れる厄介な客になっている。一体、彼に何があったのか。初代「バイオハザード」から長く戦い続けているクリスは、これまでのシリーズでも戦う中での様々な変化や心境が描かれてきた。今作で描かれている物語では、ある意味で彼の強さと弱さの両方を感じさせるものかもしれない。その先にあるものが一体どんな結末を迎えるのか。物語の見所だ。
「クリス編」で描かれるのは、激しい戦いによるバイオレンスな、近作の「バイオハザード」に近い魅力。BSAAの隊長として部隊を率いてバイオテロに立ち向かうという、これまでになかったテイストのシーンが展開される |
そして、新キャラクターの「ジェイク・ミューラー」と、ラクーン事件以後、時を経てエージェントとなった「シェリー・バーキン」の2人が主人公の「ジェイク編」。ジェイクは自らの出生については知らずに育ち、東欧の紛争地域「イドニア共和国」で傭兵として反政府軍に参加していた。そこで配られた“栄養剤”によって異変が始まっていく。
彼らは、変異した反政府軍の傭兵たち、バイオテロを引き起こした組織のB.O.W.「ジュアヴォ」達、さらに、異常な耐久力を持つB.O.W.「ウスタナク」に、常に追われ続ける。倒す事ができず、執拗にジェイクを追い続ける捕縛者「ウスタナク」の脅威に晒され、レオンやクリス達とも全く異なる特殊なシチュエーションが展開されていく。
新キャラクター「ジェイク」とエージェントとなったGウィルス保有者「シェリー」。2人にはB.O.W.の「ジュアヴォ」になってしまった傭兵達や、捕縛者「ウスタナク」が迫る。脅威からの逃避行だ |
世界中で起こるバイオテロ。その背後には「ネオアンブレラ」というキーワードが見え隠れする。全ての謎は、3つのストーリーをクリア後に出現する「エイダ編」で明らかになっていく |
今作ではこのように、それぞれの視点、それぞれの想い、それぞれの戦いが描かれるのだが、その物語が時に交差していくのも魅力となっている。例えばクリス達が、レオン達に出会うシーンがあり、ジェイク達がレオン達に出会うシーンもある。
さらに“直接出会っていなくても同じ場所にいて影響を与えていた”という場面もあって、複数の物語を楽しむと、その時その場所で何が起こっていたのかが理解できるようになっていく。例えば、「迫りくる脅威から運良く逃れられた……」という場面でも、実はその時、同じ場所で別の誰かがこんなことをしていた……というようなことがわかっていく。別のペアの物語を楽しむほどに、今作の物語の実像がはっきりと理解できるようになっていく。
それぞれの物語中に登場するシチュエーションも非常に多彩で、プレイ中には、「え、こんな場面もあるの!? 自分で操作するの!?」と思わず驚いたシーンもあった。「バイオハザード」らしさを多彩に持つだけに留まらず、エンターテイメント性も豊かな作品だ。
ストーリー展開は、どの物語も緊迫した場面の連続。緊張の緩和になるようなゆったりとした場面もあるにはあるが、それは極力短めにされており、次から次に緊迫したシーンへ突入していく。退屈させないジェットコースター的な作りだ。それだけにプレイ時間の密度は高く、短時間のプレイでも良い意味での疲労感や満足感が得られるものとなっていた。
なお、レオン、クリス、ジェイクの3組の物語をクリアすると、謎に満ちた女スパイ「エイダ・ウォン」が主人公のエイダ編をプレイ可能になる。今作のバイオテロの影に見え隠れするエイダの存在。そして、彼女とともに浮かび上がるキーワード「ネオアンブレラ」。その謎がエイダ編をプレイすることで解き明かされていく。
エイダ編の大きな特徴は、彼女には味方と言える存在が誰もいないことだ。他の主人公達はそれぞれにペアを組んでいる6人だったが、彼女は1人で、このバイオテロ事件の中を活動していく7人目の主人公となっている。倒れた時に助けてくれる存在もなく1人進んでいくその心細さは、ある意味、最も“怖さ”を感じさせるところがあった。「バイオハザード」の初期作品の根本的なホラー感を1番楽しめるのはエイダ編かもしれない。
■ “ゾンビ”が待望の復活!! B.O.W.の二段構えで多彩な恐怖を描く
今作では、シリーズ作としては久しぶりに「ゾンビ」がたっぷりと登場! そのおぞましさは、やはりホラーには欠かせない |
生物兵器のB.O.W.もゾンビとはまた異なる脅威としてより多彩に。今作では再生能力が高く、変異を起こす「ジュアヴォ」が脅威となる |
今作では「ゾンビ」が敵として復活しているのも大きなポイントだ。前作ではゾンビの登場は無かったが、今作ではゾンビとB.O.W.の二段構え。
もちろんそれぞれに特徴があって、まずゾンビは動きはのろいものの数が多く、ジリジリと詰め寄ってくる。いきなり走ってくることもあれば、地面を這いずって近づいてくることもあり、さらに一定距離から飛びかかってくることもある。生半可な銃では撃っても反応が小さく押し返せず、うめき声をあげながらジリジリと近づいてくる。その姿はおぞましく、独特なプレッシャーがあって、ホラーというテイストにおいてゾンビという存在が優れているのを実感させてくれる。
一方のB.O.W.には様々な種類がいるが、最も多いのは「ジュアヴォ」と呼ばれる種類。ジュアヴォは初期状態であれば人間に近く、理性的な行動を取ってくる。武器を上手く扱い、機敏に行動する(ゾンビも武器を手にしている種類がいるものの、その扱いは粗雑で緩慢だ)。
ジュアヴォの特徴は“再生能力の高さ”にあり、撃たれた損傷箇所も即座に再生するのだが、その時に“変異”を起こす。再生した後の姿は人間とはかけ離れたものになるので、攻撃すればするほど姿がクリーチャーに変わっていくというわけだ。
さらに、ジュアヴォが変異を繰り返した果てに“サナギ”と呼ばれる姿になることもあって、その中から“完全変異体”という人間の姿とはかけ離れたクリーチャーが生まれる。サナギの中から何が出てくるのか最初はわからないいやらしさと、時間差で二段階に迫ってくる恐怖がある。特に入った途端にサナギが並んでいる部屋は、「どんなタイミングで孵化してくるのか」という、死体がいつゾンビになって起き上がってくるのかわからない不安に襲われる。
うめき声をあげながら襲いかかってくる死体の「ゾンビ」と、攻撃するとどんどん人型から遠ざかった異形へと変異していく「ジュアヴォ」。これら、異なるおぞましさを持つクリーチャーが今作の恐怖感を増している |
グラフィックスのクオリティの高さは前作をさらに超え、より“自然に”、大規模なバイオテロの起きている異常な世界を描いている。MTフレームワークベースで作られているところは前作同様だが、今作はMTFW2.4で作られており、前作よりもリッチなグラフィックス表現になっているという。詳しくは西川善司氏の「西川善司の3Dゲームファンのためのグラフィックス講座・E3特別編その1」をご覧頂きたい。
筆者がプレイして特に印象的だと感じたのはキャラクター表現。特に「眼」の描き方だ。意思を感じさせる眼で、どのシーンでも表情が印象に強く残る。今作ではどのキャラクターも非常に感情豊かに描かれていた。髪の毛や服などの、いわゆる“揺れ物”の動きもとても自然。ぜひ、こういった細かなところにも着目してもらいたい。
■ アクションが大幅に増え上達の幅がアップ! ただし「QTEの多さ」や「視界の狭さ」など、遊びはじめには苦労する点も
画像のような倒れ込みながらの射撃など、アクションが豊富になった |
ストーリーの構成以上に今作での大きな特徴と言えるのが、“アクション性の大幅なアップ”だ。かつて「バイオハザード」と言えば“撃つ時には立ち止まる”というお約束があったわけだが、今作では移動しながら撃てるし、回避などの移動アクションも豊富になった。
L1ボタンで構えてからR1ボタンで射撃するが、構え中に左アナログスティックと×ボタンを同時に入れれば、前後左右の好きな方向に回避できる。さらに、回避してから×ボタンを押し続けていると回避した方向に倒れ込んだまま射撃することもできる。例えば迫りくるゾンビに撃ち続け、それでも攻撃されてしまうという瞬間に、後ろ方向に飛び退くようにジャンプして回避しながら撃ち、そのまま倒れた姿勢でさらに撃つという動きができる。
移動においても「ダッシュ」、そしてダッシュから滑り込む「スライディング」ができるようになり、さらにスライディングから倒れたままの姿勢で銃を構えて撃つという動きもできる。スライディングからの構えでは、アナログスティックを手前側に入れておけば滑りながら反転して真後ろを向いて銃を構えることが可能だ。
また、障害物に隠れてそこから体を少し出して射撃する、いわゆる「カバーアクション」も可能で、スライディングから障害物の影にそのままカバーするという動きもできる。
これらの動きにより、迫りくるクリーチャーの攻撃を回避、そこから倒れたまま撃ち、すぐさま立ち上がってダッシュからのスライディング、滑り込みつつ反転してまた撃つといった動きもできる。今作ではこうしたアクションを上手く使えるようになっていくところに上達の幅があり、やりこみのポイントになってくる。
ダッシュからスライディング、そして倒れ込みつつ反転して構えという連続したアクションも可能に。敵から距離を取りつつすぐさま攻撃に転じられる | |
スライディングから障害物の影に隠れる「カバーアクション」へと繋ぐこともできる |
格闘攻撃がいつでも出せるようになったのも今作での大きな変化 |
もう1つのアクション関連の大きな特徴が、「格闘攻撃」をいつでも繰り出せるようになったことだ。体力ゲージのほかに「フィジカルコンバットゲージ」という時間の経過により回復する“スタミナ”とも言えるゲージがあり、そのゲージがある限り、格闘攻撃を繰り出せる。格闘攻撃は手軽かつ強力なので、特に弾が残り少ない時には頼もしいアクションだ。ただ、頼りすぎて気づくとフィジカルゲージが空っぽになっているという場面もあるので、うまくバランスを保って使っていくのがポイントになる。
これがプレイが進んで上達してくると、よりピンポイントに使えるようになっていく。L1+R1の同時押しで「クイックショット」という、近距離の敵を瞬間的に撃ってひるませるというテクニックがあるのだが、これで敵をひるませ、そのまま格闘攻撃でトドメを刺すといった、弾もフィジカルコンバットゲージも節約できる攻撃が可能だ。
また格闘攻撃は、敵の攻撃にタイミングよくあわせて出すと「カウンター攻撃」になる。威力も高く、正面以外からの不意打ちにも対応できるテクニックだ。タイミングを外すとこちらがダメージを受けてしまうので慣れや練習が必要だが、うまく使えるようになると非常に気持ちがいい。
こうしたクイックショットからの格闘やカウンターといったテクニックを移動アクションを駆使しながら上手く使えるようになると、これまでの「バイオハザード」シリーズにはなかった魅力を楽しめるようになっていく。クリア後の周回プレイでは、ぜひそうした新アクションを駆使するプレイスタイルも試してみてもらいたい。
敵の近接攻撃にあわせて格闘を出すと「カウンター」に! 防御方法になっているだけでなく威力も高い。決まった時の効果音も気持ちいい |
今作では「スキル」を装備し、スキルレベルを高めることで能力をアップできる |
今作の難易度は、初回プレイを難易度ノーマルでクリアして振り返ってみると結構高めだと感じた。弾が基本的に必要最低限の量になっていて、残弾を節約する意識が出る分、ゾンビやジュアヴォの出現に脅威を感じるところがある。それでいて、弾が全く手に入らなくてクリア不能(いわゆる“詰み”)になることがなかったのは、カプコンのギリギリをついてくる厳しめバランスの良さを感じさせた。
この“初回プレイは結構厳しめのバランスに感じた”というのには、本作に“スキル”による成長要素があるところも大きな理由となっている。敵を倒すと手に入るポイントでスキルが獲得可能で、3つのスキルを装備できる。攻撃力のアップや防御力のアップ、アイテムドロップ率のアップなど様々な効果があり、スキルにはレベルアップさせて効果が高まるという要素もある。やりこんでスキルレベルが高まれば、ノーマルでも、さらにその上のベテランやプロフェッショナルでも通用するようになるというわけだ。初期状態での難易度ノーマルが難しいということであれば、その下のアマチュアからプレイするのもありだろう。
厳密にQTE的と呼べるイベントシーンでのものは大幅に減り、アクション操作の一環として組み込まれたものが増えている |
QTE的な仕掛けよりも筆者が気になったのは、ステージギミックによるいわゆる“初見殺し”が突発的にあったところ。もう少しヒントがあったら嬉しかった |
視界が狭いことが、フリーカメラの扱いづらさにも繋がってしまっているのは非常に残念。慣れれば大丈夫だが、初回プレイ時に気になってしまうだろう |
基本的なゲームプレイ以外だと、いわゆるQTE(クイックタイムイベント)的な要素の存在が気になるところだろう。所詮QTEは、画面に表示されたボタン操作を素早くタイミングよく行なうという要素だが、今作のアクションは何度か失敗できるものがだいぶ増えている。それにより理不尽に思えてしまう「失敗=即死」というものはかなり減った。
ただし、厳密にはQTE的な操作とは異なるのだが、クリーチャーに掴まれた時のいわゆる“レバガチャ”などを含め“QTE的な操作入力の要素”そのものの多さは結構目立つだろうか。そこが根本的に気になるという声はあるかもしれない。むしろ、筆者がそれよりも気になったのは“プレイ中のシチュエーションによる即死”が結構多いことだ。
例えばゾンビと戦っている最中に列車や車が迫ってきて、それに轢かれたら即死するというシチュエーションがある。1度経験すれば簡単に回避できるいわゆる“初見殺し”だ。他にも、迫る脅威から新アクションであるスライディングで逃げるシーンは、理解する前に1度は失敗してしまうだろう。筆者的にはそうした死んで覚える“死に覚えゲー”的な場面も嫌いではないのだが、そうした場面ではもう少しインフォメーションがあってくれたら、より遊びやすかったかもしれない。
他に気になったところだと、やはり“視界の狭さ”がある。カメラ位置がキャラクターに近く、画面の半分をキャラクターの上半身が占める。それが、周囲が見渡せず不意打ちに驚くという恐怖演出やパニック演出になっているのだが、やはり遊びづらいという気持ちも沸いてしまう。今作では右アナログスティックで視点を自由に操作できるのだが、それもプレイ初期には視界の狭さと相まって遊びづらさに繋がってしまっていた。
また、調べるものや操作するオブジェクトが、キャラクターの向きがあっていないと触れないのだが、フリーカメラによりこれが合わせづらくなっているのも気になったところ。もう少しオブジェクトの判定がアバウトに成立してくれるとストレスがなくて良かったかもしれない。
いずれもしばらくプレイをして慣れてしまえば……という要素ではあるのだが、プレイし始めたばかりの第一印象として、どうしても気になるのは否めない。今作がアクション操作の面でも新要素を意欲的に取り入れているからこそ、その魅力を知る前の段階でインターフェイスが障害になってしまっている点を非常に残念に思う。
■ 2人協力プレイ(Co-op)の楽しさはもちろんとして、今作ではクリーチャーになれる「エージェントハントモード」も楽しめる
オンラインでの2人協力プレイ(Co-op)も前作以上に楽しめる。PS3版は接続エラーが頻発していたが、メンテナンスによりだいぶ改善されてきた |
画面分割によるオフラインでの2人プレイももちろん可能 |
前作同様、今作でも、2人協力プレイ(Co-op)がオンラインでも、画面分割でのオフラインでも楽しめるのは大きな魅力。本作のオンライン要素は、特にPS3版では発売直後からあまりのプレイ人数の多さからサーバーがパンク状態になったのか、エラーが頻発していたのだが、10月12日のメンテナンス以後はかなり改善された。
2人協力プレイの魅力は、1人でプレイしている時にCPUが操作するパートナーが非常に優秀で、瀕死にならず、弾も無制限に持っているため、ストレスなくプレイできる。ただ、スムーズ過ぎてちょっとあっさりしていると思うところもある。それが2人でのCo-opでは、互いに瀕死になったところを助け合い、厳しい場面を何度かトライを繰り返しクリアできた時の喜びと面白さを味わえるというわけだ。
また、今作は前作以上にダイナミックな演出が多く入ってプレイを盛り上げてくれるし、シチュエーションも非常に多彩なのだが、その全てで2人プレイがきちんと遊べるようになっているところに驚かされた。
さらに、今作ではオンラインでプレイして入れば、2人プレイを楽しんでいるプレーヤー同士が接続され4人同時プレイになる場面「クロスオーバー」が起きる。前述の、ストーリー展開の中で別の物語のペアが出会う場面で自然にマッチングされるわけだ。片方が画面分割プレイ、もう片方がオンラインCo-opという組み合わせでもクロスオーバーが可能。
そうした場面では例えば、クリスとジェイク、ピアーズとシェリーがそれぞれにペアとなって行動するような互いの組み合わせが変わる場面もあり、それが4人プレイで起きる。今作でのバイオテロ事件に対して異なる物語を歩むキャラクターたちの出会いを、プレーヤー単位で実際に実現するこの仕組み。不思議な感じも受ける新しい面白さなので、本作をプレイするならぜひCo-opからのクロスオーバーも体験してみてもらいたい。
オンラインCo-opはルーム制のシステム。プレイ開始時にルームの設定を決め、そこに参加者が入ってくる。エージェントハントの乱入許可や、無限弾の許可など、細かく設定できる |
ストーリーをプレイ中の他のプレーヤーの世界に、クリーチャーとして参加できる「エージェントハントモード」も楽しめる |
クリーチャーそれぞれに固有の能力や攻撃方法があり、非常に細かく作られている。とはいえ、プレーヤーキャラクター達のほうが動きやすく、工夫せずに相手プレーヤーを倒すのは難しい |
オンラインプレイには、ストーリークリア後に楽しめるようになる大胆な新モードがある。自分がゾンビやB.O.W.といった敵クリーチャーになって、ストーリーをプレイ中の他のプレーヤーを襲う「エージェントハントモード」だ。
エージェントハントモードは、接続先のプレーヤーがプレイ中のシーンに登場する敵(ボス以外)のいずれかになり、そのシーンをクリアされるまでに相手のプレーヤーキャラクターを倒すことが目標となる。操作するクリーチャーは自動で決まるが、クリーチャーのプレーヤーは何度死亡しても復帰できる。基本的にはプレーヤーキャラクターのほうがやはり強いのだ。
この操作できるクリーチャーの種類は非常に豊富で、いわゆるボスなど、一部だけに登場する特殊なクリーチャー以外ならそのほとんどが使用できるようだ。そして、それぞれのクリーチャーの動きやアクションも非常に凝っている。例えばゾンビであれば這いずって近づいたり、ジュアヴォであれば手に持った青竜刀で斬りかかったりと、そのクリーチャー固有の能力で戦えるようになっている。
このモードは言わば、“他プレーヤーのストーリープレイの障害に自分がなれる”というもので、面白い“嫌がらせ”みたいな楽しみ方になっている。他のクリーチャーに気を取られている隙を突いたり、物陰に隠れて襲うなど工夫次第でプレーヤー撃破を狙っていける(シーンによってはロッカーの中に隠れることもできる)。
面白いモードなのだが、実際にプレイを重ねてみるとなかなかうまくいかないところもある。クリーチャー側は何度でも復帰できるのに対して、プレーヤーキャラクター側は1度やられたらダメというハンデはあるが、そのバランスを考慮してもプレーヤーキャラクターのほうがだいぶ有利だ。
クリーチャー側は、あくまでストーリー中のクリーチャーと攻撃方法やそのモーションが同じなので、アクションの発生が遅めで動きものろい。今後プレイが進んで戦い方がどこまで伸びるかが未知数ではあるが、クリーチャー側にもう一工夫できるチャンスがあったら、より熱い戦いになったかもしれない。
その戦力差の決定的な要素になっているのが、スキル「無限弾」の存在。プレーヤーキャラクター側が無限弾のスキルを所持していて撃ちまくられると、さすがに手も足も出ない。マッチング設定で、無限弾の使用を許可しているかどうかがわかるようにして欲しいところだ。
そうしたところはあるものの、エージェントハントの接続を許可しプレーヤーキャラクター側の視点から見ると、やはりプレーヤーが操作するクリーチャーは脅威であり新鮮。ハント側のプレイに慣れているプレーヤーが一目散にこちらを狙ってくるのは、シビアさが段違いだ。このように、いろいろと新しい魅力の詰まったモードなので、ぜひ体験してみてもらいたい。
様々なクリーチャーになって実際にその能力が使えるのが醍醐味。そのクリーチャーがどんな能力を持っているのかが普通にプレイしているよりも具体的にわかる。使用するクリーチャーと、相手側が無限弾を許可しているかどうかが選べるようになってくれたら、もっと遊びこめると思うのだが…… |
シリーズ作でもおなじみのスコアアタックモード「ザ・マーセナリーズ」ももちろん健在。アクション性が高まったことで、このモードもより面白くなった |
シリーズ作でおなじみのスコアアタックモード「ザ・マーセナリーズ」は今作でも健在。ザ・マーセナリーズは特定のステージの中で制限時間いっぱいまでクリーチャーをひたすら倒すというモードで、クリーチャーを連続して倒すことで得られるコンボボーナスを維持しつつ、ステージ中にある残り時間延長のオブジェなども壊してタイムを延長しつつ、ハイスコアを狙っていく。ステージの作りを理解し、使用するキャラクターの武器や能力をどう使うのかなど、攻略を構築していく面白さがある。
このザ・マーセナリーズはそれ自体の魅力に加え、スキルポイント稼ぎとしても有用だし、各キャラクターの特殊コスチュームも使用できるのが嬉しいところ(ただストーリー本編では特殊コスチュームが使えないのが少し寂しい)。連動Webサービス「RESIDENT EVIL.NET」でも特殊コスチュームが入手できるので、そちらも忘れずにチェック頂きたい。
どんな戦い方をすればスコアが伸ばせるか、攻略の面白さがある「ザ・マーセナリーズ」。画像のように特殊コスチュームを使用できるのも嬉しい |
■ 豊富な新要素で“変異”を感じさせる「バイオハザード6」
圧倒的なスケールとクオリティで迫るストーリー、アクション要素の大幅なアップ、クロスオーバーやエージェントハントといった、新しい変異を感じさせるところもあり、「バイオハザード」らしさと新しさ、そして可能性の広がりをも感じさせる作品となっている |
エイダを含め7人の主人公で様々なテーマや物語と共に、恐怖と絶望を描いている最新作。展開されるシーンの圧倒的な迫力とクオリティの高さ、バイオテロのスケールの大きさ、人間ドラマの表現や深さなど、これまでの「バイオハザード」シリーズとはひと味もふた味も異なる意欲作だ。「バイオハザード」らしさを色んな形で持ちつつも、その中のところどころに新しい「バイオハザード」の誕生や片鱗も感じさせるものとなっている。
最も大きいのはアクション要素の豊富さ。回避アクションや移動アクション、いつでも出せるようになった格闘など、これまで銃火器かナイフに限定されていたシリーズ作から比べると、飛躍的にアクションの幅が広がっている。それだけに上達の幅があり、それに伴って本編のみならず、「ザ・マーセナリーズ」の面白さも非常に高まった。
意欲的な新要素を豊富に持っているだけに、視点の狭さなど多少アンバランスなところがあり、もう少し工夫して欲しかったところもあるのだが、ゲームプレイに慣れてくるとそれ以上に、新しい要素の魅力が上回っていく。プレイの上達と相まって、今作は遊べば遊ぶほどに味が出てくる“スルメゲー”のようなところがあると思う。本レビューでも、あれこれ色々指摘はしているが、プレイ後の満足度は非常に高い。
今作には“変異”というキーワードもあるが、それはそれぞれにストーリーをプレイするプレーヤーがマッチングされる「クロスオーバー」と、プレーヤーがクリーチャーになれる「エージェントハントモード」に強く感じらせるものがあった。
1つの物語に対してキャラクターそれぞれの視点があり、それを楽しんでいる別々のプレーヤー同士の進行が絡み合い、さらにクリーチャー側でもまた別のプレーヤーが入ってくる。今作ではまだ“変異を感じさせるもの”として限定的に楽しめるものとなってはいるが、オンラインが溶け込んだ先の新しい進化を感じさせるものがある。
全体のボリュームも、難易度ノーマルでのストーリー全クリアまでで約30時間ほどとなり、高難易度のクリアやスキルの開放、ザ・マーセナリーズのやりこみなど、さらに遊びこんでいくことを考えると、たっぷり遊べる。「RESIDENT EVIL.NET」ではイベントが順次行なわれていくし、オンラインのマッチングも改善されてきて、Co-opを楽しみやすいゲームとしても抑えておきたい1本。シリーズファンならずともオススメしたい。
(C)CAPCOM CO., LTD. 2012 ALL RIGHTS RESERVED.
※文中の操作表記はPS3版に準拠しています。
□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□「バイオハザード15周年記念」公式サイト
http://www.capcom.co.jp/bio_series/
□「バイオハザード6」のページ
http://www.capcom.co.jp/bio6/
(2012年10月17日)