★ PS3/PSPゲームレビュー★
用途の異なる3つのモード
これが新しい「サクセス」だ!
「実況パワフルプロ野球2011」
ジャンル:
  • 野球・育成ゲーム
発売元:
開発元:
  • KONAMI
プラットフォーム:
  • PS3
  • PSP
価格:
6,980
(PS3)
5,250円
(PSP)
発売日:
2011年7月14日
プレイ人数:
1~2人(PS3:ネットワーク対戦対応/PSP:アドホック対戦)
レーティング:
CERO:A(全年齢対象)

 株式会社コナミデジタルエンタテイメントの看板タイトルでもある、デフォルメされた選手で本格的なプレイが楽しめる野球ゲーム「パワプロ」シリーズの最新作「実況パワフルプロ野球2011」が7月14日にプレイステーション 3とPSP用として発売されたが、シリーズファンの方々はもうプレイされただろうか? 本稿ではまだ未プレイの人に向けて、本作の新要素の魅力に迫っていこうと思う。ゲームショップへ行こうかどうかと迷っているプレーヤーは、ぜひ本稿を参考にしていただきたい。なお、本稿ではPS3版を使用した。

 本作の目玉となるのが、やはりシリーズ独自の育成モードである「サクセス」モードだ。今回は、選手を育成する過程を物語のように楽しむことのできる「高校野球編」に加え、1プレイ5分ほどの短時間でサクッと選手を作成できる「サクサクセス」、作成した選手でチームを組んで試合を行い能力強化アイテムを勝ち取ることのできる「パワファーム」の3種類のモードが用意されている。どれも特徴があり、また、それぞれの要素がほかのモードの内容に密接に関係しているため、まずはモードごとの特徴を理解してもらうのが本作の魅力を語る上で重要だと考える。なので、本稿ではそこに重点を置いてレポートしていきたい。



■ 豊富なイベントでプロ入りを目指せ! 育成が楽しい「高校野球編」

 「高校野球編」は、とある高校球児がプロ入りするまでの1年間をアドベンチャーゲーム形式で追い、練習や試合を通じて選手を作り上げていく「パワプロ」シリーズの看板モードだ。本作では「パワフル高校」「アンドロメダ学園」「ときめき青春高校」の3つのストーリーがあり、どれも1回のプレイでは遊びつくせないほどシナリオ、イベントのボリュームが多い。

 「高校野球編」の醍醐味は、なんと言っても自分好みの選手をプレーヤー自身の手で作り出せるという点に尽きるだろう。野手ならばパワーヒッターにするのか、安打製造機を目指すのか。投手ならば最高球速を狙うか、変化球の鬼になるか。あれこれ考えながら練習やイベントをこなし、育成した選手が念願叶ってプロ入りした瞬間の快感は筆舌に尽くしがたいものがある。プロ入りした選手はサクセスモード以外のモードで使用可能になるため、「この選手はあんな高校生活を送ってたんだよなぁ……」、「この選手とこの選手はチームメイトで……」といったような思い入れが自然と生まれてくる。

 選手1人1人に強い思い入れが生まれる反面、1回のプレイ時間が長くなってしまいがち。怪我やドラフト指名なしで失敗となってしまった場合に失ってしまう時間が大きく、なかなか効率的に選手登録までたどり着くことができない。

 また、試合では実際に選手を操作しなければならないため、プレーヤーの腕前が育成に響くということも覚えておきたい。「パワプロ」初心者は、サクセスモード以外を遊んで少し練習してから「高校野球編」に望むといいだろう。


    「高校野球編」まとめ
  • 1回のプレイ時間は2時間程度。
  • 自分の好みに合った投手や野手が作成できる。
  • 豊富なシナリオやイベントが魅力。チームメイトとの友情や、彼女との付き合いが楽しい。
  • 実際に選手としてプレイする場面があるため、ある程度の腕前が必要。
高校球児としての1年間は長いようであっという間に終わってしまう。悔いのないように生活し、目指すは甲子園! そして全国制覇だ!
しっかりと試合で結果を残せばいずれかの球団からドラフト指名され、プロ野球選手の一員になることができる。逆に、あまり成績が振るわないと……


■ サクサク進んでサクサク育てろ! 選手作成に特化した「サクサクセス」

 「サクサクセス」は、本作から新たに加わったサクセスモードの新機軸だ。マス目に区切られたスゴロクのようなマップを、1マスにつき1ずつ減っていく体力の続く限り移動してゴールを目指すというもの。マップ上にはそれぞれ基本能力の増減や特殊能力の付与、ランダムイベントなどのさまざまなマスがあり、それらを回っていくことで選手を育成していく。1回あたりのプレイ時間が非常に短く、まさに選手をサクサクと作成していくためのサクセスモードと言えるだろう。

 「高校野球編」ほどではないが、マスがすべてシャッフルされたり、能力の底上げができる宝箱など、マップ上のイベントは非常に豊富。マップ上には「パワプロ」シリーズおなじみのキャラクターや実際の選手が徘徊しており、出会うことでさまざまな恩恵を受けることができる。実際に野球をする場面はないため、プレーヤーの腕前とは無関係に育成できるというのも評価できるポイントだ。

 もちろん、そう簡単に選手を量産できるというわけではない。選手登録まで進めるにはステージ5まで存在する各ステージのゴールまでたどり着かなければならない。ゴールした時点で選手登録をするか、次のステージへ行くかを選ぶ仕組みだ。

 ゴールまでたどり着いた際や、体力回復マスを踏むことなどで延命措置を図ることはできるが、基本的にはゴールまでの道のりと残り体力との闘いになるだろう。いかに効率的にマップ上を巡っていくかが強い選手を作成するカギになる。体力ゼロで失敗してしまうパターンがほとんどなため、失敗してもめげずに再挑戦しよう。

 難点は、狙ったとおりのパラメータの選手の育成が難しいという点だ。マップ上にどんなマス目が配置されるかは完全にランダムであり、またランダムで起こるイベントマスやお邪魔キャラの存在など、どんなマスを通ってもランダム要素がついて回るため必ずしも希望通りの選手が作れるとは言い難い。

 また、あまりに手軽に選手が作成できてしまうため、選手1人1人に思い入れを持つのが難しい。選手への思い入れは長い時間をかけてこその要素なのでこのモードの趣旨とは異なるが、やはりサクセスモードの醍醐味のひとつが失われてしまうというのは残念な気もする。

 とはいえ、オリジナルのチームを組むまでの時間を短縮できるという点において短時間で選手を作成できるメリットは大きい。骨太な「高校野球編」とは違い、日常の空いた時間を利用してサクッと育成できるのは魅力的だ。


    「サクサクセス」まとめ
  • 1回のプレイ時間は5分程度。(失敗を含めると、1時間で5人ほどの選手が作成可能だった)
  • とにかくプレイ時間が短いため、空いた時間やほかのモードの合間などに楽しめる。
  • 実際に選手としてプレイする場面はないので、プレーヤーの腕前は関係ない。
  • ランダム要素が強いため、狙ったパラメータの選手を作るのは難しい。
残り体力が気になってなかなかすべての能力上昇マスを巡ることはできないので、一芸に秀でた選手を作成するのは難しい。ただ、イベントの中にはいきなりどれかのパラメータがSランクになるようなこともあるため、一概に強い選手が作りにくいとは言えないあたりが悩ましい
【「サクサクセス」プレイ動画】

■ 試合に勝ってアイテムゲット! 作成した選手で戦う「パワファーム」

 「高校野球編」と「サクサクセス」で作成した選手でチームを組み、仮想のチームとオート試合を行なうのが「パワファーム」だ。しかし、ただ試合をするだけでなく、勝てば前述の2モードで使用することのできる能力強化アイテムを獲得できる。試合に勝ち進むことで、対戦できる敵チームのランクも上がり、より強力なアイテムが手に入れられるようになる。

 作成した選手が少ない状態でも、あらかじめパワファーム用に用意された選手を起用して試合をすることはできる。ただ、能力は非常に低いため、試合に勝つためには自作の選手と交代させなければならない。

 だが、いつでも試合ができるわけではない。試合をするには「パワチケ」と呼ばれるチケットが必要で、パワチケは「高校野球編」クリアで最大3枚、「サクサクセス」をステージ5までクリアーすることで1枚取得できる。

 つまり、育成に必要な能力強化アイテムを手に入れるには、先に何度か育成を済ませてパワチケを獲得しておかなければならない。さらに、試合に勝つには強い選手を作成しておく必要もある。しかし、強い選手を作るには能力強化アイテムが欲しいところで、アイテムを手に入れるには試合をしなければならず……と、一種のジレンマに陥ってしまいそうになるが、それを解消してくれるのが「サクサクセス」の存在だ。

 「サクサクセス」を効率よくこなすことでパワチケを溜め、適度に育っている選手で「パワファーム」の試合を行なう。能力強化アイテムが手に入ったら、それを用いて「高校野球編」をじっくりプレイしエースの選手を作る。強い選手ができたらチームに組み込み「パワファーム」の試合をこなしてランクを上げ、パワチケが足りなくなったらまた「サクサクセス」……といった具合に、今回のサクセスモードでできる3つのモードは、それぞれが密接に関係しあっている。どれか1つだけでは効率的に強い選手を作成することはできないため、真のエースを目指すならばどのモードも平均的にプレイしていくことが大切だ。


    「パワファーム」まとめ
  • 作成した選手で試合を行ない、勝てばアイテムが手に入る。
  • 試合するには「パワチケ」が必要。
  • 最初に用意されている選手がパラメータ的に心もとないので、まずは試合が成り立つぐらいの数の選手を作成する必要がある。
パワチケは9枚までしかストックできないため、選手を作るたびに定期的に「パワファーム」で試合をする必要がある。試合はオートで展開されるため、プレーヤーは結果を眺めているだけでいい
手に入れたアイテムは、あらかじめ所持させた状態で「高校野球編」や「サクサクセス」の選手育成に挑むことができる


■ 骨太な「高校野球編」と手軽な「サクサクセス」、今後のスタンダードになり得るか!?

 「パワプロ」シリーズのお馴染みのモードとして定着しており、作品によってさまざまにシステムや形を変えてきたサクセスモードだが、本作で新たに加わった「サクサクセス」はプレイ時間の短さという点において過去のどのシリーズよりも異質と言えるだろう。本来の「サクセス」モードの醍醐味である、じっくりと腰を据えて1人の選手を作り上げるというコンセプトとは真逆の方向性だが、誰でも簡単に選手を育成できるというのは非常に魅力的なポイントであると言える。

 無論、「サクサクセス」で選手を作るのは運の要素が強いという事実は否めない。だが、それを差し引いても手軽に、またビックリ箱を開けるときのようなドキドキ感を持ってプレイすることができる。

 筆者としては、こういったアプローチのサクセスモードも必要でなのではないかと考える。あくまで主軸は「高校野球編」のような骨太で遊び応えのあるモードにしておき、ちょっとした息抜きの時間にでも手軽に育成を楽しめる「サクサクセス」のようなモードがあれば、お互いの魅力を引き立たせ、相乗効果を上げることができるのではないだろうか。

 発売したばかりでこんなことを言うのもおかしい話だが、次回の「パワプロ」ではどんなサクセスモードが登場するのか、果たして「サクサクセス」のようなモードはスタンダードとしてプレーヤーに受け入れられるのか。今から非常に気になるところである。


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(2011年 8月 17日)

[Reported by 桃井サカコ(ねこひげ合同会社) ]