★ PCゲーミングデバイスレビュー★
最強ハイブリッドマウスがリニューアル!
デュアルセンサー搭載で更に高い完成度へ
「 Razer Mamba 2012」
ジャンル:
発売元:
  • MSY
開発元:
  • Razer
プラットフォーム:
価格:
発売日:

 MSY株式会社は、無線/有線ハイブリッドゲーミングマウス「Razer Mamba 2012」を8月19日に発売した。価格は13,800円。本製品は名称のとおり、2009年に14,800円で発売された「Razer Mamba」の後継機種。ゲーミンググレードの無線システムはそのままに、センサー性能を向上させたアップグレード版となっている。

 またセンサー部だけでなく、電磁寿命の向上やマルチカラーライティング機能の搭載など細かい機能もブラッシュアップされたほか価格も改訂されるなど、2年ぶりのモデルチェンジ版として順当な内容の製品だ。


■ 現行製品の中で最も完成度の高い無線/有線ハイブリッドマウス

「Razer Mamba 2012」
パッケージ内容物
レーザーセンサーの隣にオプティカルセンサーを搭載

 本製品最大の特徴はやはり、無線と有線の両方に対応したハイブリッドマウスであることだ。この点では旧バージョン「Razer Mamba」と変わりなく、ポーリングレート最大1,000Hzの無線インターフェイスを搭載、専用形状のUSBケーブルで接続時は完全な有線マウスとして動作する、という特徴を引き継いでいる。

 形状も変更なしだ。外形寸法は128×70×42.5mm(奥行き、幅、高さ)で、本体重量はバッテリー込みで129g、バッテリー無しで108g。かぶせ持ち、つまみ持ちの両方に適したフォルムであり、「Razer Mamba」に引き続き7つのボタンを搭載している。パッと見で違いを見つけることは不可能だ。

 では何が変わったのかというと、まずセンサーだ。背面を見れば一目瞭然で、中央のセンサーの横にもうひとつ、センサーがあるのだ。中央にあるのはレーザーセンサーで、その横にあるのはオプティカルセンサーである。

 MSYによるとレーザーセンサーそのものは「Razer Mamba」などに搭載されている3.5Gレーザーセンサーとほぼ同じものだが、「Mamba 2012」ではこれにオプティカルセンサーを組み合わせることによって「6,400dpi 4Gデュアルセンサーシステム」を構成している。3.5G+0.5で4Gというわけ。

 その狙いは、センサーの読み取りをより安定させることにある。3.5レーザーセンサーは、2本のレーザー光線のドップラーシフトを測定して表面の細かい凹凸を読み取るという原理上、凹凸が大きい場合に不安定な動作を見せる場合があったり、可視光による模様でトラッキングを確保するタイプのマウスパッド表面を苦手とする弱点がある。一方、オプティカルセンサーは高速CMOSカメラで表面を読み取る原理上、模様の無い表面でトラッキング不能となる弱点があるが、凹凸や模様がある表面では安定したトラッキング性能を持つ。この両者を組み合わせて、補完的に処理することで、幅広い状況で安定したトラッキングを実現するのが4Gデュアルセンサーシステムというわけだ。

 もちろん、マイクロソフトのBlueTrackセンサーのように、ガラス表面でもトラッキング可能というほどに万能になるわけではない。あくまでトラッキングの安定性を向上させるというのが4Gデュアルセンサーシステムのコンセプトだ。

 ハードウェア面では、そのほかにもバッテリーの連続使用可能時間がおよそ25%向上したという点が地味に嬉しい。カタログスペック上は連続16時間の使用が可能、実際は9~10時間といったところだが、ドライバソフトウェア上でLEDの発光を抑えるなどの調整を行なえば、13~15時間程度の連続使用も可能なようだ。非使用時には自動的にスリープモードとなりバッテリーを節約する仕組みがあるため、寝る間も惜しんでゲームをプレイするのでなければ2~3日は充電無しでも使える。

 充電は、無線ステーションを兼ねる充電ドックにマウスを置くか、USBケーブルを接続することによって行なう。USBケーブル接続時は有線マウスとして普通に使えるというのも従来の「Razer Mamba」と同じだ。このあたりの基本的な完成度はそのままに、センサーまわりの挙動を安定化したのが「Mamba 2012」であるという理解が適切だろう。


【Mamba 2012 基本スペック】
接続方式USB 有線/無線 ハイブリッド
センサーレーザー&オプティカル 4Gデュアルセンサー
分解能100~6,400 DPI (100DPI刻みで設定可能)
最大認識速度約5.08メートル/秒
レポートレート125Hz、500Hz、1,000Hz から選択
ボタン数7
電池寿命約16時間(連続使用時)
本体サイズ128×70×42.5mm(奥行き、幅、高さ)
重量129g


外観は、背面の追加センサーを除いて従来モデル「Mamba」と全く変わらず。人気マウス「DeathAdder」に近い、誰にでもなじみやすい形状だ

背面。電源ボタン、ケーブル着脱スイッチ、ペアリングボタン(通常使用せず)、バッテリー挿入口がある。有線モード時はバッテリーを取り外しても使える

有線モードへの移行は単に専用USBケーブルを挿すだけ。有線時はPCとの通信がUSB経由となり、無線ステーションは不要となる。またバッテリーが挿入されていれば充電が行なわれる

無線モード時の充電は、無線ステーションに置くことで行なう


■ 念願のリフトオフディスタンス機能を搭載。カスタマイズ性について

ドライバソフトウェア
リフトオフディスタンス調整機能

 ドライバソフトウェアを導入すると、マウスボタン、センサー、LEDライティングまわりのカスタマイズを行なえるようになる。ドライバCDなどは製品に付属していないので、Razerサイトからのダウンロードが必要だ。

 設定画面はおおむね従来機種「Razer Mamba」と同じ内容となっているが、センサーまわり、LEDライティングまわりは幾つかの機能が拡張されている。まずセンサー周りの追加機能を見てみよう。

 「Mamba 2012」では新たにリフトオフディスタンス調整機能が付加された。布系、樹脂系、金属系のいくつかのマウスパッドで試してみたところ、標準のリフトオフディスタンスは十円玉1.2枚分(2mm弱)ほどだ。ドライバソフトウェア上でこれを0~10の範囲内で調整でき、反応するギリギリの値を見出せば、FPSなど「マウスを置き直す」操作時のブレを抑えることができる。激しい動きを繰り返すアスリート系ゲーマーには非常に嬉しい機能だ。

 ちなみに、Artisan(グロウアップ・ジャパン)のマウスパッド「疾風」では設定0.5程度でリフトオフディスタンスが1mm以下の理想的な状態となった。これはマウスパッド表面の特性によって異なる値になるため、自分の環境に合わせて最適な値を見つけることが必要だ。それが面倒な向きには自動キャリブレーションの機能も用意されており、それを有効にしておくと、マウスパッドの表面特性に合わせて2mm弱程度の標準リフトオフディスタンスに自動設定されるようだ。

 またLEDライティングの調整機能も本製品で追加された部分だ。本製品ではLEDライティングの色を任意に選択することができるほか、色合いを赤→黄色→緑→青……というふうに順繰りに変化させるモードを選ぶこともできる。またバッテリー寿命を伸ばすために、無線使用時のLEDライティングの明るさを任意に調整することも可能だ。明るさ最大と最小の間では、バッテリーの持ち時間が3割ほども変わる。実用主義のユーザーであれば専らLEDライティングはOFFにして使うことになりそうだ。

 マクロ機能については「Mamba」と違いはない。従来よりすでに、キーボード操作、特殊コマンド、マウスボタン操作を含むたいていのマクロが作成できる機能が備わっているので、この点については改良の余地無しといったところだろう。

 また「Mamba 2012」では5つの設定プロファイルをマウス本体に記録し、オンザフライで切り替えることが可能だ。ただ、本体側に5つのプロファイルを記録するということもあってか、設定画面を呼び出したり変更を適用する際にマウス側メモリーの読み出し/書き込み処理が発生し、十数秒ほど待たされることがある。この点は従来の「Mamba」と変わらず、使用時にストレスを感じる部分だ。


DPI設定画面マクロ管理画面


プロファイル管理画面LEDカスタマイズ画面



■ センサー性能の向上は体感は難しいが、順当なアップグレード版として評価

参考までにポーリングレートのテスト。無線時は実効720Hz程度で、「Mamba」とほぼ変わらず
有線時は実効950Hz程度で、これも「Mamba」とほぼ変わらず

 結論から入ると、「Mamba 2012」で搭載された4Gデュアルセンサーシステムによる効果は、筆者が試した範囲では体感できるものではなかった。

 もともと「Mamba」に搭載されていた3.5Gレーザーセンサーは非常に性能が高く、レーサーセンサーにありがちな高速操作時の取りこぼしによるネガティブアクセラレーションも皆無だ。Razer、SteelSeries、Artisan各社の布、樹脂、金属系マウスパッド10種ほど試したところ、いずれでも「Mamba」と「Mamba 2012」のセンサー挙動に関する顕著な違いを見つけることはできなかった。

 違いを見つけるためには、わざとレーザーセンサーと相性の悪い表面で激しい操作をするなど意地悪なテストを行なう必要があるが、最近のマウスパッドでレーザーセンサーに最適化されていない製品は皆無であり、非現実的なのでそこまでは試していない。そういうわけで、「Mamba 2012」でのセンサー性能向上の程度は、正直なところよくわからない。

 むしろ「Mamba 2012」で注目すべきは、前述したリフトオフディスタンス調整機能の導入にある。FPSなど激しく大きな操作を求められるゲームで頻発する、マウスを持ち上げて置き直す操作で体感できる機能だ。リフトオフディスタンスを必要最低限の高さに抑えればブレが少なくなり、より正確な操作が可能となる。マウスパッド表面の特性に合わせて自動キャリブレーションしてくれる機能も◎だ。

 トップレベルのゲームシーンで実用となる無線マウスは他にほとんど存在しないだけに、地味ではあるが有効な改良が加えられた「Mamba 2012」の存在は、現在のPCゲーミングデバイスの世界に必要なものだと言える。前モデルより価格がちょっぴり(定価で1,000円)安くなったことも踏まえて、順当な後継機種であると評価できるだろう。

 有線マウスの限界パフォーマンスにこだわるユーザーであれば改めて本製品に乗り換える動機は薄いと感じるが、ワイヤレスの自由度を知るユーザーであれば、本製品はアップグレード先として有効だ。このジャンルで他に比較すべきレベルにある製品がほぼ無いだけに、今回のモデルチェンジを歓迎したい。




Amazonで購入

(2011年 8月 22日)

[Reported by 佐藤カフジ ]