Wiiゲームレビュー

2Dならではのゲーム性を3Dの世界に見事に適合させた
極上のアクション

「ソニック カラーズ」

  • ジャンル:アクション
  • 発売元:株式会社セガ
  • 価格:6,090円(Wii版)
       5,040円(DS版)
  • プラットフォーム:Wii/ニンテンドーDS
  • 発売日:発売中(11月18日発売)
  • プレイ人数:1~2人
  • CEROレーティング:A(全年齢対象)


 海外でも絶大な人気を誇るセガの歴史的なキャラクター「ソニック」。メガドライブで初登場した頃、あの「マリオ」をも驚かせた。ライバルのプラットフォームゲームになかった速さ、高速で走ることによる爽快感が楽しめる独特のゲーム性に、当時のプレーヤー達は魅了された。セガはユニークなゲーム性を確立することに成功して、「ソニック」はあっという間に人気チャートのトップに上がり、確固たる地位を獲得した。

 しかし、グラフィックスが3Dへと変わってから今まで、ソニックは2D作品時代ほど“頑張れなかった”と僕は感じていた。2D時代にあったゲーム性を3Dの世界でうまく表現できていないように感じられた。1番の課題はあの独特な速さ、あの独特な爽快感を3Dで再現できるようになること。しかし、ソニックの速い動きには3Dカメラがついていけなかったり、プレーヤーのせいでもないのに、突然に崖に落ちることも多かった。それによるフラストレーションが大きかった……。

 「どうやったら最高の3D『ソニック』を作れるのか?」……ソニックチームは試行錯誤の末に、「ソニック カラーズ」という作品に辿りついた。2D作品ならではのゲーム性に、若い世代のユーザーが好む豪華な3Dグラフィックスが組み合わさったゲーム。果たして、約束は本当に果たされたのだろうか? ファンとして過去に何度も不満を感じた僕は、それほど期待をせずに「ソニック カラーズ」を遊び始めた。2時間。4時間。6時間……10時間が経った。1周目をクリアして、今、僕が感じているのは、強い罪悪感だ。開発者達の言葉を信じていなかったことによる罪悪感。

 「ソニック カラーズ」は本当に皆が待ち望んでいた、極上3D「ソニック」だ。過去の3D作品の問題は全て乗り越えられたと言い切れる。もちろんこのゲームでも崖に落ちることはあるが、それは間違いなくプレーヤーのせいだ。全てが“音速”で動いているのに、プレーヤーは画面の中で起きていることをいつもコントロールできるということに本当に驚いた。3Dで進行するパートとメガドライブの作品を彷彿とさせるサイドビューパートとのバランスも絶妙だ。アクションとパズルも、まさに黄金比率! 本作の本当の価値を知るためには、レビューの続きを要チェック!

 なお、本作はWii版とDS版が発売されており、カラーパワーの一部が共通ではあるが、ステージ構成やゲームシステムは別ものとして制作されている。今回はWii版のレビューをお届けする。



■ エッグプラネット・パークへようこそ!

 「ご来場のみなさん!エッグプラネット・パークへようこそ!パークの中で悪の計画をつぶしたり、悪者をやっつけることは固くお断りします。ルールは守りましょう」

 ソニックの宿敵ともいえる「Dr.エッグマン」は今回、宇宙で巨大なアミューズメントパークを建設することにした。地球から宇宙へと繋がる、史上最長のエレベーターでパークにアクセスできる。一見、来場者が楽しめるように作られたパークかのように見えるが、エッグプラネット・パークのアナウンスの内容をよく聴いてみると……ピンとこないことが多く含まれている。「Dr.エッグマン」の野望の影を感じとったソニックは、仲間の「テイルス」と共に、パークを訪れることにした。もちろん、ソニックの直感は当たっていた……。

 こういうシンプルでありながら、ちゃんと「ソニック」というゲームのアイデンティティを大切にするストーリーは秀逸だと思う。過去には、ダークなイメージのキャラクターを登場させた作品もあったが、「ソニック」ならばやはり、カラフルな世界観、ユニークなキャラクター、コミカルなやりとり、おとぎ話のような設定。個性的なサブキャラのフェスティバル。これこそが、「ソニック」の完璧レシピじゃないだろうか?

イントロで流れるデモはムービーを使っているが、本編のほとんどのデモはゲームのエンジンを使用しているエッグマンはもちろんのこと、サブキャラのみんなも個性的。特にエッグマンの側近であるロボット、キューボットとオーボットのやりとりは面白すぎる!宇宙が舞台だけに、キュートな宇宙生物も多く登場する。例えば、ヤッカーというエイリアンが、エッグマンに追われているところをソニックに助けられる


 舞台のエッグプラネット・パークも、目が幸せになれる“カラーの祭り”だ。ワールドは全部で6つのエリアに分かれており、プラス、エッグマンとの対決が待ち受けているファイナルエリアが存在する。各エリアは開発者達の優れた想像力の賜物。各アトラクションは特定の“要素”をテーマにしており、グラフィックスの面でもゲーム性の面でも数々の面白いアイデアが盛り込まれている。ちなみに、各エリアの名前と特徴は以下のようになっている。

【トロピカル リゾート】
エッグ観覧車やリゾートならではの景色を楽しめるエリア
【スイート マウンテン】
全てが甘いケーキでできているお菓子好きにはたまらないエリア
【スターライト カーニバル】
宇宙戦艦に囲まれたコースが魅力のエリア
【プラネット ウィスプ】
まだ建設中の危険や障害物満載のエリア
【アクアリウム パーク】
海洋生物との触れ合いを楽しめる、主に水中に展開するエリア
【アステロイド コースター】
小惑星の間を通るコースターや無重力地域のあるエリア


 本作は「トロピカル リゾート」から始まるが、ACT1(ファーストステージ)をクリアすると、初めてエリアマップが公開される。エリアマップには各ACTにアクセスできるポイントが設置されており、ソニックを遊びたいステージに持っていくと、ACTが始まる。エリアマップにもソニックチームのこだわりぶりを感じた。背景のアニメーションもキュートだし、流れる音楽もポップな感じで、プレーヤーを「ソニック」の独特な世界に誘ってくれる。

 そして、「トロピカル リゾート」の6つのACTをクリアすると、ボスとの対決ステージへアクセスできるようになる。ボスも本作の見所の1つ。最初のボスは、ソニックを攻撃してくる巨大な観覧車なのだ。観覧車の攻撃を避けつつ、コアとなっている中央の部分を狙わなければならない。耐久力は優れているわけではないが、コツを掴まないかぎり倒せないボスばかりなので、洞察力も試される対決になる。

本作の見所の1つ、ボス戦。コツを掴まないかぎり倒せないボスばかり


 「トロピカル リゾート」をクリアすると、ワールドマップが明かされる。基本的に6つのエリアで構成されているが、最初から全てのエリアにアクセスできるわけではない。とはいえ、ゲームの進行は一方的でもない。「トロピカル リゾート」が終わると、2つの新エリアが選択できるようになる。プレーヤーは好きな順番にエリアに挑戦できるし、途中で他のエリアとの行き来もできるので、ゲームは自由度の高い形をとっていると思う。

ワールドマップにはエッグシャトルも表示されている。それを選択すると、全エリアのACTをお休みせずに続けてプレイしていく。サバイバルモードと考えて欲しいエリアマップには、これまで集めたスペシャルリングや獲得した最高ランクなど、やり込み的な情報も表示されている




■ 2Dと3Dの理想のコラボレーション

 本作のファーストステージは、レースゲームを思わせるような3D視点で始まる。床に設置されたダッシュパネルや、ブーストゲージで溜まったエネルギーを使って一時的に速度を上げることができる。メインの目標は走行することによる爽快感を味わうことだが、コースには敵も現われたりするので、その時に重宝するのが、ソニックのホーミングアタックだ。Aボタンを押すと、ジャンプし、もう1度押すと、自動的にターゲットされる敵に向かってホーミングアタックを行なう。昔の作品と違って、どの敵がターゲットになっているのか、画面に表示されるロックオンアイコンで視覚的にわかるようになっているので、攻撃の対象を誤ることがなくなった。おかげで、ミスする確率も減少し、ゲーム性のさらなる向上に繋がったと思う。

走行中にBボタンを押すと、ドリフト走行ができる。レーシングゲームのような爽快感が楽しめる!場合によって、走行中の左右の動きが固定される。十字ボタンの右と左を押すとクイックステップを行ない、簡単に横移動ができる例えば、カーチェイスのようなシチュエーションも新しく導入された。後ろから迫ってくる敵車を左右の車線に移りつつ、かわさなければならない
このステージでは少しずつ構築される床を走行しながら、敵機が撃ってくるショットをかわさなければならない。緊張感は最高値に達する!走行中のコースにも、仕掛けが盛り沢山! 床のジャンプボードやスプリングを活用すると、秘密エリアへと導かれる場合もあるので、周囲の仕掛けには注意しておこうお馴染みのグラインドレールが登場するステージも多く用意された。十字ボタンの左右を入れると、グラインドステップを行ない隣りのレールに飛び移ることができる


 少し走ってみると、3D視点は昔の作品を連想させるサイドビューへと切り替わる。ステージやキャラクター達はもちろんポリゴンで表現されているが、ゲーム性はメガドライブ時代の作品に非常に似ているので、昔からのファンには特に嬉しいパートになっていると思う。ちなみに、ほとんどのステージが、3D視点パートとサイドビューパートを交互に展開する。サイドビューで始まるステージもあれば、3D視点でスタートするステージも用意されている。割合や長さが変動する場合もあるが、全体的に分析すると、そのバランスは完璧だといえる。

サイドビューパートではリズムが少し遅くなり、ジャンプの正確さといったファクターが重要になるソニックは様々なアクションが行なえる。例えば、壁に向かってAボタンを押すと、三角跳びができる「ソニック」シリーズのトレードマークともいえるループなどもステージの所々に設置されている


 ここで本作の3D視点パートはなぜ遊びやすくなったのか、少し考えたいと思う。昔の3D作品では、例えば、コースから崖に向かってジャンプすると、落ちることがしばしばあった。なぜかというと、ソニックの行動範囲というものにはそれほど制限がなかったからだと思える。本作では行動の自由が減らされたことと引き換えに、ゲーム性が格段に上がったわけだ。ステージは確かに3D視点で展開しているが、コースの左右に“透明な壁”が設置されていることが多いので、例えば、間違ってコースの外に向かってジャンプをしてしまっても、崖に落ちないようになっている。実は、ゲームが進むと、“透明な壁”のない3D視点パートも現われるので、危険を見分けることが少し難しくなる。といっても、ミスをしやすくなるところでは、画面に危険を知らせる「!」マークのアイコンが表示されるので、そこで減速したりして注意すれば、問題なくピンチを乗り越えられるだろう。



■ プレイがさらに深くなるカラーパワー

 ソニックの可能性をさらに拡大させた、本作ならではの新要素、カラーパワーの存在。ソニックはステージ中の所々にあるウィスプというキュートな宇宙生物からカラーパワーを借りることができる。カラーパワーの発動はWiiリモコンを振ればOK。この特殊な能力でソニックは一時的に別の形態へと体を変身させることができる。カラーパワーは全部で7つ用意されており、パワーの使い方をマスターすると、ステージに隠されたスペシャルリングや別ルートを発見できるようになる。

【シアン・レーザー】
十字ボタンで狙いを定めた後、ソニックがレーザーになってその途中にある敵や障害物を壊したり、壁に反射して通常のソニックでは行けないところまで到達できる
【イエロー・ドリル】
ソニックがドリルに変身して水中や地中を突き進むことができるようになる。ただし、地中ではゲージがなくなると窒息してしまうので、その前に地上に出なければならない
【ブルー・キューブ】
ソニックがキューブになって、落下した衝撃で地震を起こすと障害物を壊したり、敵にダメージを与えることができる。さらにブルーリングをブルーブロックに変え、足場として使うことができる
【グリーン・ホバー】
ソニックがホバーに変身して空中を移動できるようになる。連続しているリングの近くでBボタンを押すと高速移動(リングダッシュ)を行なうこともできる
【オレンジ・ロケット】
ソニックがロケットになって、空に向かって上昇する。ゲージがなくなると、ダイビングで地面に向かって降りていく。これで空中に散らばったリングを拾ったりできる
【ピンク・スパイク】
あらゆる表面にくっ付いて、重力と関係なく壁や天井などを進めるようになる。これで普段行けない足場へと到達できる
【パープル・フレンジー】
ソニックが暴走しながら突き進む。障害物や敵を食べれば食べるほど大きくなって、最大サイズになるとリングを吸収できるようになる


 幾つかの例外を除いて、カラーパワーを使える場所はステージがサイドビューになっているときだ。なお、初めてステージに挑む時、全てのパワーが使えるわけではない。その能力を持ったウィスプに出会うと、初めてそのカラーパワーを使えるようになるのだ。そして、新しいカラーパワーを獲得した時点で前のステージに戻ると、そのパワーを利用できるようになる。カラーパワーを生かすことで1度目のプレイで行けなかった場所に進めるようになるので、2度目のプレイがさらに楽しい内容になっていると思う。

 もっと詳しく言うと、ゲームをクリアするまでの1周目では、カラーパワーの存在をそれほど意識しなくてもいい。カラーパワーを使わないと進めない場面も幾つかあるが、殆んどの場合はカラーパワーを使わなくてもステージがクリアできるようになっているので、「ソニック」ならではの爽快感をさっと楽しみたい人はカラーパワーのためにわざわざ走るのをやめる必要はない。

 カラーパワーの重要性が圧倒的に増すのは2周目からだ。ゲームをクリアすると、ステージが増えるわけでないが、全てのカラーパワーが揃っている状態なので、それらをうまく利用して、各ステージに隠されたスペシャルリングを本格的に探し始めることになる。正確に言うと、各ステージには5つの赤い色のスペシャルリングが用意されている。それらを比較的簡単に見つけられるステージもあれば、発見が非常に難しいステージもある。特に僕が難しく感じたのは、「アクアリウム パーク」の水中パート。スペシャルリングは本当に予想できない場所に隠されているので、難易度の高い挑戦が好きなプレーヤーにはたまらない内容になっていると思う。全部で180存在するスペシャルリングを集めると、素敵なサプライズが待っている!と言いたいところだが、現段階では160しか集めていないので、まだ何も言えない。ソニックチームの寛大さに期待したいところだ。

 カラーパワーの導入で、前の作品にあまりなかった“謎解き”や“パズル”要素も増したといえる。3D視点で進むステージはアクションや走行がメインになっているが、サイドビューのパートはパズル色が濃くなる。そして、前述したように、アクションとパズルとのバランスは絶妙だ。

 カラーパワーはどれも斬新で面白いが、その操作性に完全に納得しなかったケースもあった。例えば、「シアン・レーザー」を使おうとしているとき、思うように狙いを定められない場面があった。この位置だと正面の壁に反射できると思っても、狙いを定めてみると、好きなポイントに定められない時もある。本当にまれなシチュエーションなので、気にしなくてもいいのかもしれない。

 それより少しフラストレーションを感じたのは、「ピンク・スパイク」に変身した時の操作方法の不明瞭さ。ソニックが壁や天井にくっ付いて進むのだが、進行する為にどの方向に十字ボタンを押せばいいか、少し戸惑う場面があった。進行と後退は十字ボタンではなく、ボタンで行なうようにしたほうがよかったのかもしれない。

 他のカラーパワーは問題なく使いこなせるので、最高の満足感を得られる。僕が特に病みつきになったのは、「イエロー・ドリル」だ。地中の奥に向かって進むドリルを操るのは最高に楽しい。さらにゲージがなくなると窒息してしまうので、地中に散りばめられたカラーパワーを補給しながらの緊張感たっぷりの探索になっている。個人的には、「イエロー・ドリル」を1つのアクションパズルゲームとして発売して欲しいぐらい、とても完成の高いパートになっていると思う。

地中では秘密の部屋を発見することもある。その部屋は硬いブロックに囲まれていることが多く、ドリルを使って掘らなければならない地中ではもぐらのようなロボットも徘徊しているので、敵にも気を付けながら進まなければならない怪しいパイプを発見した! そこに入ったら、スペシャルリングが隠された秘密のエリアに進めることは間違いない!




■ 2人で遊ぶと楽しい! エッグマンズ ソニックシミュレーター

 速すぎるステージ展開がメインの理由になっていると思われるが、ストーリーモードのステージでは「2Pモード」というものは存在しない。しかし、Wiiにお似合いの協力プレイが実現するようにソニックチームは専用のモードを作ってくれた。名前は「エッグマンズ ソニックシミュレーター」。ストーリーモードと違って、グラフィックスはいかにもシミュレーター然とした無機質なものになっている。ソニックもロボットのような姿をしており、背景も幾何学的な形をとっているので、本編とはまた違う雰囲気を醸し出している。

 目的は本編とほぼ同じ。ほとんどサイドビューになっているステージの中を進み、敵を倒したり、リングを拾ったりしながら、ゴールを目指す。このモードはもちろん1人でも遊べるが、1.5Pと2Pという、2つの協力プレイモードが用意されている。1.5Pでは、もう1人のプレーヤーがリモコンを持ち、1Pをサポートしたい時だけAボタンを押し、画面に現われることができるようになっている。2Pでは2人のプレーヤーが最初から同時に表示されているので、お互い足をひっぱらないように慎重に進まなければならない。ミスを免れるためには、ある貴重な機能が追加された。速度を調節できるし、先頭を走るプレーヤーの最高速度も制限できるようになっている。ソニックチームのこの配慮に感謝!

 エッグマンズ ソニックシミュレーターでは協力プレイでしか味わえないシチュエーションも用意された。例えば、パンチングボールという仕掛けは、両サイドから交互にアタックすると沢山のリングを獲得できる仕組みになっている。シングルプレイでもアタックできるが、2人のほうが、リングが獲得しやすくなる。さらに協力プレイではカラーパワーを同時に使うとパワーが合体するという特徴もある。例えば、ブルー・キューブの場合、リングを分裂できるようになり、ピンク・スパイクの場合、2人の間にエネルギーが発生する。協力してうまく利用すれば、高得点に繋がるチャンスにもなる。

ちなみにエッグマンズ ソニックシミュレーターで遊べるステージは本編で集めたスペシャルリングの数によってだんだん増えていく



■ 最高のビジュアルとサウンドに織り成されたパレード

 今回の「ソニック」はゲーム性に優れているだけでなく、ビジュアルの面でも最高のレベルに達していると思う。“音速”で動く3Dステージが処理落ちといったものを1回も見せず、クオリティーは最初から最後まで統一されている。今回はソニックチームはWiiというハードを最大限に活かせたと思うので、是非その驚くべき成果の目撃者になって欲しい!

 特にすごいと思ったのは、「スターライト カーニバル」エリアの、ソニックが宇宙戦艦の間を走るステージ。コースが少しずつ目の前で構築されていくという特殊なエフェクトに心を打たれた。グラフィックスが最高潮に達する場面でソニックの動きが制限されるものの、それでも全面的に納得できる内容になっているので、文句なしのデキだ。逆に言えば、動きが制限されているお陰で、ミスも避けられるし、素敵な景色も楽しめるので、開発者の選択は正しかったと思う。

 

コース内の動きが制限されている時は、画面にアイコンが表示される。ジグザグのアイコンはクイックステップが可能な合図だ。十字ボタンの右か左を押すだけで隣の“車線”へと横移動できる。クイックステップの導入で、3D視点ステージでの移動もシンプルになったし、その間に周囲の派手な演出もさらに楽しめるようになった


 サウンドも最高のクオリティーを誇っている。エリアによってはディスコ的な曲もあれば、ニューエイジ的な曲も用意された。使われた楽器も特異なものばかりで、聴くことによってプレーヤーはさらに盛り上がるに違いない。小さなことかもしれないが、ブーストゲージを発動させる時、音楽に特殊なエフェクトがかかったりするなど、細かいところにもソニックチームのこだわりというものを感じた。

 さらにハマったのは、カラーパワーを発動中のサウンド。1980年代のアーケードゲームを思わせるレトロな効果音が流れるから、ノスタルジックなサウンドに弱いプレーヤーは必ず感動すると思う。ゲーム性に関係するものではないが、こういうサウンド的な要素もプレーヤーの“盛り上がり度”を上昇させることは間違いない。

サウンドに関してのもう1つのこだわりを感じたのは、幾つかのステージで流れる、エッグマンによるアナウンス。よく聴くと、矛盾の多いセリフばかりで、エッグマンというヘンテコなキャラクターをさらに面白いものにしてくれていると思う



■ 全ての「ソニック」ファンに贈られた、待望の集大成

 ソニックチームの約束の言葉には嘘などなかった。「ソニック カラーズ」は僕の予想を遥かに超えた、極上の3D「ソニック」だ。それが実現したのは、長い研究と細かい作業の結果だろうし、2Dならではのゲーム性を3Dの世界に見事に適合させた結果でもあると思う。結局、「ソニック カラーズ」は派手な3Dグラフィックスで展開しているのに、2Dでのゲーム性をとても大切にしていると思う。

 例えば、3D視点のパートでは周囲に広いスペースがあるのに何故真っ直ぐにしか進めないのか、壁もないのに何故ジャンプで向こうに行けないのか、動きが制限される場面がよくあるが、ソニックの行動範囲に制限があるからこそ、もっと純粋にアクションに集中できるようになった。あと、遊びやすさが増したのは、ソニックの速い動きを自動的に追いかける、頼もしいカメラのおかげでもある。ホーミングアタック中にカメラが別のアングルに向いてしまった! といったようなハプニングは起こり得ないということだ。

 ゲームボリュームに関しても文句なし。コレクション要素を無視してゲームをクリアするには(プレーヤーによってもちろん変動するが)、8時間ぐらい必要だが、全てのスペシャルリングを集めたいとなると、時間のカウンターはその2倍以上になる。やり込み派ユーザーにとっては非常に嬉しいボリュームだろう。スペシャルリングのコンプリートよりさらに難しいのは、全てのACTで最高の「Sランク」を獲得することだ。Sランクを獲得するためには、費やされた時間だけでなく、集めたリングの数や、カラーパワーで稼いだスコアも大きく影響してくるので、最高の挑戦になると思う。

 しいて言えば、カラーパワーの操作性に改善の余地があるが、全体的に考えると「ソニック カラーズ」は本当に完璧に近い。今までの「ソニック」シリーズと比較しても最高のデキになっている。是非、この路線でシリーズを続けて欲しい!

(C) SEGA

ジョン・カミナリ(芸名)
国籍:イタリア 年齢:35歳
職業:俳優、声優、タレント、テレビゲーム評論家
趣味:テレビゲーム、映画鑑賞、読書(山田悠介)、カラオケ
主な出演作品:銀幕版スシ王子!(ペぺロンチーノ役、デビュー作)、大好き!五つ子(アンソニー・ジャクソン役)、侍戦隊シンケンジャー(リチャード・ブラウン役)、ピラメキーノ(テレビ東京、月曜~金曜 18時30分~19時放送中)
ブログ:ジョン・カミナリの、秘密の撮影日記
 イタリアで6年間テレビゲーム雑誌の編集部員として働いたあと、新しい刺激を求めて2005年に大好きな日本へ。子供の頃から夢見ていた役者の仕事を本格的に始める。堤幸彦監督の「銀幕版スシ王子!」で個性的なマフィアのボス、ぺぺロンチーノを熱演。現在もTVドラマやTVゲームなどで、俳優・声優として活躍中。日本語を勉強し始めたのは23歳のとき。理由は「ファイナルファンタジーVII」や「ゼノギアス」などのRPGの文章を理解するため。好きなジャンルはRPGと音楽ゲーム。「リモココロン」のような個性的なゲームも大歓迎。お気に入りのゲームは「ゲームセンターCX」と「ワンダと巨像」。芸名はイタリア人の友達に、本人が雷のように予想不可能なタイミングで現われるからという理由で付けられた。将来の夢は、「侍戦隊シンケンジャー」に出演した時から大好きになった戦隊モノにまた出演すること


(2010年12月8日)

[Reported by ジョン・カミナリ ]