DSゲームレビュー

絶妙に仕組まれたトリックを暴いていくのが楽しい
良作パズルゲーム

「コロぱた」

  • ジャンル:パズル
  • 発売元:有限会社LukPlus
  • 価格:5,040円
  • プラットフォーム:ニンテンドーDS
  • 発売日:発売中(2009年12月24日)
  • プレイ人数:1人
  • CEROレーティング:A(全年齢対象)


 母親からおつかいを頼まれたヒロインのひまわりを、さまざまなアイテムや仕掛けを利用して指定された場所へ連れて行くなどして、規定の条件を満たすとステージクリアとなるパズルゲーム。全128ステージ構成で、1面から順にクリアしていくたびに遊べるステージが増えていく仕組みになっている。

 発売されてからしばらくの時間が経過しているが、本作品ならではの非常に興味深いゲーム内容を知ってもらいたく、今回レビュー記事を執筆した次第である。“普段はパズルゲームを遊ばないよ”という人も、ぜひご一読いただきたい。



■ プレーヤーがヒロインを直接操作するのは不可能。攻略のカギはアイテムの使用法にあり

 本作品は、各ステージごとにクリアするための条件がまったく異なっている。たとえば1面はひまわりを指定された場所に連れて行くことが条件なのに対し、2面は★マークの地点をすべて通過またはアイテムを投げるなどして旗を立てるといったように、各ステージごとにさまざなまなルールが設定されている。

 プレーする手順は、まず十字ボタンまたはA、B、X、Yの各ボタンを押してマップ全体を見渡すところから始まる。マップの形状をある程度把握したら、次に画面左側のリストに表示された木の板やボールなどのアイテムを、タッチペンを使ってマップの任意の場所に設置する。アイテムのセットを終えたら、画面左下にある再生ボタンをタッチペンで押すか、L、Rいずれかのボタンを押すと、ひまわりおよびマップ上に配置された仕掛けやアイテム類が一斉に動き出す。そして再生中に決められたクリア条件を満たせば、晴れてそのステージはクリアとなって次のステージへと進むことができる。

 再生を開始すると、ひまわりは左右いずれかの方向に歩き出すが、途中で目の前にボールや砲丸などのアイテムがあった場合は拾って正面に投げる性質がある。これを利用して投げたボールを★マークに当てて旗を立てたり、あるいはマップ上に置かれたドミノを倒したりすることができるので、ひまわりにいつ、どのタイミングでアイテムを投げさせるのか、よく考えて置き場所を決めることが攻略上とても重要なポイントとなる。なお、途中でクリアに失敗した場合は再生ボタンまたはL、Rボタンを再度押せば、瞬時にひまわりおよびアイテムの配置を再生前の元の状態に戻すことが可能だ。

 説明がちょっと長くなってしまったが、百聞は一見にしかずということでまずは右の1面のムービーを見ていただきたい。

 まず試しにアイテム類を何も設置しないまま再生すると、ひまわりは画面の下に落ちてしまうのでクリアできないことがわかる。そこで、アイテムの木の板を先ほど落ちた部分にセットしてからもう1度再生してみると、木の板を足場となってひまわりの落下を防ぐことに成功した。しかし、このままではひまわりが段差を昇ることができないため、まだクリア条件である矢印の地点まではたどり着くことができない。それならばと、木の板の設置場所を微調整して周囲の床と水平にセットしたところ、ひまわりは無事目的地に到達してクリアすることができた、という例である。

 このようにして、再生後にひまわりがどのように動くのかを予測しつつ、アイテムの設置場所を考えながらプレイしていくことが「コロぱた」攻略の第一歩となるのである。

 ムービーを見れば明らかなように、本作品では主人公をプレーヤーが直接操作することができないのがミソであり、他のパズルゲームとは一線を画すところである。再生中はアイテム類の操作が一切できず、またボタンを連打したり反射神経などのスキルが要求されることは一切ないので、アクションゲームが苦手な人でも安心して遊べるようになっている。

 ただ操作システムに関しては、アイテムの置き場所を1度動かしてしまうと、途中でキャンセルして直前の位置に戻すことができない点が唯一不満だった。だが、ひとつのステージ内に登場するアイテム数は多いところでもせいぜい5、6個程度しかなく、やり直しが比較的容易にできるのでキャンセル機能がなくてもプレーヤーに不快感を与えることは特にないだろう。

 パズルの内容とは別に筆者が評価したいポイントは、たとえ何回ミスをしても途中でゲームオーバーにはならず、プレーヤーの失敗を責めるような演出が一切存在しないこと。このため、攻略法がなかなか見つからなくて困ったときでも、筆者はプレーしていてストレスを感じることがまったくなかった。

 ゲームを中断したいときは、スタートボタンを押してメニューを表示させ、「タイトルに戻る」を選択すればいつでもすぐに終了することができる。オートセーブ機能もついているので、電源を1度切った後でも再開時には前回プレーしたステージからすぐに遊べるのも嬉しいところ。また、いずれのステージでも再生してからクリアにかかるまでの時間がせいぜい10~30秒程度しかないので、電車で移動中などのちょっとした空き時間を利用して気軽に楽める。



■ 難しいけど思わずヤミツキになってしまう、絶妙かつ巧妙に仕掛けられたトリックの数々

 操作方法はいたって簡単だが、いざ攻略しようと思うとこれが実に手強い。筆者の体感では、誰でも簡単にすぐクリアできるのは最初の1面と2面だけで、3面以降はプレーヤーが頭をひとひねりもふたひねりもしないと解くことのできない、実に巧妙なトリックが随所に散りばめられている。

 まず知っておかなくてはいけないのが、ひまわりには「ごきげん」と「体力」の2種類のパラメーターがあり、これらの値によって行動パターンが変化する特徴があること。一例をあげると、ひまわりが「ごきげん」の値が高いときにはボールを手で拾って投げるのに対して、低いときは足で蹴飛ばすようになるため、ボールの軌道も投げたときと蹴った場合とでは当然ながら異なってくる。

 このアクションの違いを利用して、ひまわりをクリアへと導くテクニックは随所に登場する。最もわかりやすい例が、以下のムービーに収められた5面である。何もせずそのまま再生すると、ひまわりはただ無造作にボールを投げるだけで、クリアするための条件を何ひとつ満たすことができない。そこで、まずアイテムのバナナの皮を利用してひまわりをわざと転ばせ、「ごきげん」を悪くしてしまう。すると、ひまわりがボールを蹴飛ばすようになるので、ボールが見事仕掛け(くるくる板)にぶつかり、他の仕掛けを連動させることでクリアすることができるという仕組みになっているのだ。

 5面をクリアするまでのムービーを見れば明らかなように、ひまわりがどちらのアクションを選択するかで、その後の展開が大きくガラリと変わってしまうことがよくおわかりいただけるだろう。なお「ごきげん」の値は、ひまわりがマップ上にいるペットの猫をなでたりすると上昇し、逆に高いところから落ちたりすると下がるようにもなっているので、アイテム以外の方法でもプレーヤーが意図して「ごきげん」をコントロールすることも可能だ。

 右のムービーを見ているうちに気づいたかもしれないが、「体力」は一定時間ごとに少しずつ減少し、ひまわりが移動中にケーキやあめなどのアイテムを発見すると、これを拾って食べることで回復することができる。「体力」が高いときには、ひまわりは小走りで素早く動けるが、低いときはいかにも元気がなさそうにテレテレとゆっくり歩く。また「体力」が高いときに限り、コンテナなどの重い物を手で押して動かすことができるという特徴もある。

 ただし、「ごきげん」または「体力」のいずれかのパラメーターが途中でゼロになってしまうと、ひまわりがその場で泣き出して行動不能となり、クリア失敗となってしまう。なので再生中はアイテムの設置場所だけでなく、ひまわりがパラメーター切れを起こさないよう常に注意しながら行動を観察することも必要となってくるのだ。

 木の板で簡単な足場を作ってみたり、あるいはボールをバケツに向かって投げたりドミノ倒しをするなど、一見すると小さい子どもの他愛のない遊びを集めただけなのかと思いきや、いざプレーしてみるとこれが実に面白い。まるでNHKの教育番組である、「ピタゴラスイッチ」でおなじみの「ピタゴラそうち」を自分自身の手で作っているような楽しさがあることが、本作品最大の魅力なのである。

 さらに面白いのが、右のムービーに収録した19面のようなステージである。マップを一見しただけでは、3個のボールをいったいどうやって使えばいいのか、おそらくほとんどの人がピンとこないであろう。ではいったいどうすればクリアできるのか、自分なりに推理しつつ、ムービーを途中で省略せずに最後まで見ていただきたい。

 いかがであろうか? ボールをコンテナの下に置き、「ころ」の代わりにしてその場からどかしたり、シーソーが傾かないように足場の代わりとして使うことに気づかなければ絶対にクリアできないことがおわかりいただけるだろう。つまり、プレーヤーの頭の中が「ボール=投げるためのもの」という一般常識にとらわれている間は、攻略の鍵すらもまったくつかめないことになるわけである。

 かく言う筆者も、ゲームを始めた当初はこれらの使用法にまったく気付かず、いろいろ試行錯誤を繰り返しているうちに偶然発見したりして、目からウロコが落ちるほどに感動させられた。これ以外のステージでも、常識を度外視した数々の謎を解明したときには、このうえない快感がこみ上げてきてゲームがますます面白くなるのだ。

 トリックを見破るのも一筋縄ではいかないが、どのステージでもアイテムを設置する場所の正確さもかなりシビアに要求される。場合によっては、置き場所がほんの数ドット分ズレただけでもクリア不可能になってしまうことがあるので、背景のグラフィックスなどを基準にして丁寧にセットすることが必要だ。このようなドット単位で位置を調整するプレー感覚は、とりわけ1980年代からゲームを遊んでいる世代にとっては、それこそ涙が出るほどに嬉しくなることだろう(筆者もそのうちの1人だ)。

 さらに木の板などのアイテムは角度を変えてセットすることも可能で、これを利用してひまわりやボールの動きを微調整することも可能。また扇風機やはさみなどのアイテムは、左右の向きを変えただけで再生後の展開がガラリと変化することもしばしば起きる。あるいはびっくり箱や犬を吠えさせるなどしてひまわりを驚かせ、歩く方向やスピードを調節しながら目標地点に向かわせるといったテクニックが要求されるステージも存在するのだ。わずか数秒しかない再生時間の間に、ひまわりや仕掛けが動き出したらどうなるかという「未来図」を頭の中で描きつつ、アイテムの設置パターンをあれこれと考えるのが、俗な言い方をすればとにかくアツい。

 それにしても、ボールや木の板など日常にごくありふれた物ばかりを使用していながら、よくぞこんなに多くの仕掛けやトリックを思いついたなと、筆者はプレーするたびに感心することしきりであった。悩みに悩んだ末にステージをクリアしたときには、謎を解いた嬉しさと同時に、「よくぞこんなアイデアを思いついたな!」という感動が同時にわき上がるのも、本作品ならではの面白さであると言っても過言ではないだろう。数多くの巧妙なトリックを編み出し、なおかつきちんとクリアが可能となるよう的確に調整した、開発者の並々ならぬセンスにはもはや脱帽である。

【スクリーンショット】
ボールや砲丸は、ただ投げる以外にもさまざまな使い方が存在する。そんな常識にとらわれない発想の数々が、本作品をさらに面白くしている
ステージによってはドミノや台車などの仕掛けや、はさみで線を切ったりイヌやネコをおどかして走らせる場面も登場。あの手この手のアイデアで、プレーヤーの頭脳の限界に挑戦する



■ シンプルな内容ながら思わずヤミツキになる良作&労作。ぜひチャレンジされたし!

 正直に話すと、筆者はいわゆる「萌え系」のキャラクターが活躍する作品はジャンルを問わずまったく好みではないため、本作品についても発売当初は完全にノーマークであった。ところが、いざ始めてみるとこれが実に面白く、あっという間に夢中になって長時間遊んでしまった。

 またも私的な話で恐縮だが、筆者はさまざまなアイテムの配置や使用法を考えているうちに、幼い頃に近所の友達と積み木や野球などで遊んだ思い出もよぎったりして、いい意味で童心に返りながらゲームをタップリと堪能することができた。おそらく開発スタッフの面々も、幼少の頃に遊んだ体験や経験をもとにしてこのゲームを作り上げたのでではないだろうか。あっと驚く数多くのアイデアを発案し、ここまで面白いゲームに仕上げたスタッフのみなさんにはあらためて敬意を表したい。

 後半に進むと、1ステージ進めるだけでまる1日がかりになってしまうほど難易度の高いステージも登場するが、その分、謎を解き明かしてクリアしたときの快感は格別だ。さらに全ステージをクリアしてしまった後でも、Wi-Fi接続により追加ステージをダウンロードして楽しめるサービスを用意しているのも嬉しい配慮だ(※追加ステージは全ステージクリアしていなくてもダウンロード可能)。追加ステージはどれもかなり難しいが、たとえクリアすることができなくても、ただ適当に仕掛けを置いて遊ぶだけでも十分楽しめるので、一見の価値はある。

 またヒロインのひまわりは、ケーキを食べたり物を投げたりするアクション全般がとてもかわいらしく描かれているので、この手のキャラクターが好きな人にとっては、たとえクリアに失敗したときであっても、ひまわりのかわいい動きによってストレスを緩和してくれる効果もあるだろう。さらに、3面をクリアするごとに「萌え」の要素をかなり意識したデモシーンが見られるようにもなっているので、これをモチベーションにしてゲームを楽しむのも一興である。

 ソフトの発売からしばらく時間が経ってしまったが、追加ステージも毎月刻々と配信されているので、今からでも遅くはない。簡単操作で誰でも気軽に楽しめ、奥の深い謎解きパズルが楽しめる「コロぱた」は、筆者が自信を持っておすすめできる良作である。

【スクリーンショット】
追加配信ステージも傑作&難問ぞろい。難しくも面白い、あっと驚くユニークな仕掛けの数々は必見


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(2010年3月5日)

[Reported by 鴫原盛之 ]