★PS3ゲームレビュー★

アクションRPGの楽しさを
再認識させてくれるステキな1本

「3Dドットゲームヒーローズ」


  弊誌記事など、さまざまな媒体で情報が公開されるたびに「なんだこれ!?」と多くの人を惹きつけてきた期待のアクションRPG「3Dドットゲームヒーローズ」が、ついに発売日を迎えた。レゴやダイヤブロックを思わせるキャッチーな3Dグラフィックスに、ファミコン時代の名作RPGをモチーフにしたパロディの数々。オールドゲーマーなら思わずニヤリとせずにはいられない。

  かくいう筆者も、最初の取材で本作の魅力にコロリとやられてしまったクチ。かの名作タイトルを彷彿とさせるゲームシステムには、数々の“リスペクト”が凝縮されている。数多のパロディも「これ○×やんけ!」とツッコんだ時点で、既に竹内氏ら開発チームの術中に陥ちているといっていい。かつてディスクシステムが「煙を吹いて壊れるじゃないか」と思うほど遊んだ、“ゲームが楽しくて仕方なかったあの頃の自分”を瞬時に呼び覚ますプレイ感覚。主なターゲットはファミコン世代だというが、筆者としてはむしろ“ナウでヤングなユーザー”に、むしろ積極的に触っていただきたいと思う。さて、本レビューはゲーム序盤のインプレッションを中心にお届けする。




■ 奇をてらわない王道ストーリー ~ファミコン時代のRPGのお約束が満載~

本作は主人公の3Dモデルをドット絵さながらにポチポチとエディットできる。一見すると難しそうだが、16×16×16のブロックを配置していくだけ。レゴ、ダイヤブロック、粘土など、子供の頃を思い出していじくりだすと、これがまた本編さながらに熱中してしまう

  ゲームの舞台は、世界の片隅にある「ドットニア王国」。神の力を秘めた6つのオーブと、それを守る6人の賢者によって守られてきた、小さな国。遠い昔、オーブの力に目をつけた闇の魔王が、怪物を呼び出し王国を襲う。だが、激闘の末、ひとりの若者によって闇の魔王は封印された。そして……長い平和の時代が過ぎ、王様の命令により国全体が3D化された頃、事件は起きた。闇の魔王を封印したオーブが、王国を我が物にしようと企む悪しき神官「フューエル」に盗まれてしまったのだ。地にあふれでる魔物たちの群れ。王様は、この危機を救ってくれる“新たな勇者”に白羽の矢を立てた。もちろんそれは、プレーヤーが操作する主人公のことだ。

  ゲーム開始時、プレーヤーは6タイプの主人公から好きなものを選択する。それぞれエディターで外観を変更することも可能。キャラクターのLIFE初期値は、勇者が5つ(MAGICはゼロ)、バランス型の王子(王女)が4つ(MAGICはひとつ)、学者が3つ(MAGICはふたつ)と、若干差がつけられている。ただし、戦闘アクションなどは皆共通で、LIFEとMAGICはそれぞれゲーム中にアイテムをとることで少しずつ成長することもあり、実質的には見た目以外は何を選んでもほとんど一緒。さらにいえば、本作はロードしてゲームを再開する際にキャラクターのタイプが変更できてしまう。「RPGなんだから、最後までずっと同じキャラで通したい」などといったこだわりがなければ、ロードのたびに気分次第でタイプを変えるといった遊びかたもアリだ。

  導入部では、後世で闇の魔王が復活したときに備えるべく、勇者が自らの剣を封印しにいくまでの回想シーンを、プレーヤーが実際に操作して再現する。これは主人公が見た夢という設定で、短いパートにつきアッサリ終了する。朝になり目が覚めると、王様に呼び出された主人公が、夢の中で見た“封印された剣”こと「いにしえの剣」を実際に取りにいくことになる。いにしえの剣を無事ゲットして勇者たる資格を証明して見せた後は、王国の各地に散らばった「6つのオーブ」と「6人の賢者」を探すべく、冒険の旅に出ることになる。

  さて……このように導入部の展開をざっくりまとめると、なにやら堅いお話のように聞こえるが、既報の記事などで多くの方がご承知のように、本作のシリアス度はかなり低め。封印された剣を取りにいく際も、一応王様は「はい/いいえ」と選択肢を与えてくれるが、拒否したところで「ちょっとした、いたずら心じゃろ? わしも若い頃はそうじゃった」などとまったく取り合ってくれず、実質“強制的”に勇者への道を歩かされることになる。本作には、こうした「ファミコン時代のRPGのお約束」が、フィールド内のあちこちに散りばめられている。ネタによっては相当マニアックなものが含まれているため、気づいた人は是非ニヤニヤと楽しんでいただきたい。その一方で、「元ネタをまったく知らない」、「ファミコン時代のRPGに詳しくない」人は本作を楽しめないか? といわれればさにあらず。シンプル操作のアクションRPGとして丁寧に作られており、特に「とっつきやすい作品」を求める人にはうってつけの内容といえる。


キャラクターのタイプは6パターン。名前は7文字まで使用可能。ロード時にタイプが再選択できるという独特のシステムがあるため「最後までこのキャラでいく!」と決めている人以外は、ここで特に悩まなくてもいいかも
王道路線にファミコンRPGのパロディを散りばめた独特のストーリーが展開される。やはり王国たるもの、悪役に狙われてナンボといったところか
かつて闇の魔王を封印した伝説の勇者の回想シーン。プレーヤーが実際に操作するが、それはあくまでも主人公が見た夢のなかの話。目が覚めると、王様の使者が主人公を招集しにくる。真の勇者を証明すべく「ふつうのけん」と「ふつうのたて」を手に主人公は伝説の剣を取りにいく
一応お約束ということで、ピカピカの城内を見物がてら色々な人に話をきいてみよう。役に立つもの、立たないもの、さまざまなメッセージが聞ける
衛兵に「装備を整えるなら城の西にあるレジャックの村」と教えられるが、伝説の剣を取り戻すのは小手調べにすぎないため、城を出たらそのまま目的地に直行してもいい。2体の石像を撃破したら、ここからが真のスタートだ

【あちこちに散りばめられたファミコンRPGのパロディ】
ゲーム中、あちこちにファミコンRPGのパロディが顔を出す。メジャータイトルを中心に使われているため、さすがに「なにひとつわからないよ!」という人はほとんどいないだろう
建物に出入りするときなどに表示されるロード画面が秀逸。こちらはRPGに限らず、さまざまなファミコン作品がモチーフ。かなりのバリエーションが用意されているようだ




■ アクションRPGの楽しさを存分に味わえる、シンプルで快適な操作性と戦闘アクション

  アクションRPGのキモといえば、やはり操作性。ファミコン時代を最大限リスペクトする本作だが、基本システムは物理エンジンなど最新技術がふんだんに用いられている。ファミコンテイストを損なわない範疇で快適さが確保されており、黎明期のゲームにありがちな「ああもう、いちいち操作がひっかかってイラつく!」などといったことは微塵もない。基本操作は、左アナログスティックでキャラクターの移動、○ボタンで剣による攻撃、×ボタンでアイテムや魔法の使用、R1ボタンで正面からの攻撃をガード。あとは、必要に応じて△ボタンでメニューを呼び出したり、L1でマップを表示させるといった程度。×ボタンで使用するアイテムも、R2/L2ボタンで瞬時に切り替えられる。

  剣攻撃は、ボタンを押した瞬間に「ビュッ!」と凄まじい速さで繰り出され、キビキビとした動作が実に小気味いい。LIFEが最大値のときは剣それ自体が大きくなり、ダメージを受けたままの状態だと通常サイズに戻る。街の鍛冶屋で強化すれば、長さや幅をさらに拡張でき、剣によっては「なんじゃこりゃ!?」といった常軌を逸したサイズまで伸ばすことが可能。ただし、あまり大きくするとオブジェクトにひっかかりやすくなるため、鍛冶屋で「貫通能力」を強化しておくことをお忘れなく。巨大な剣を振り回す様子は、もはや“バカゲー”の領域だが、だからといって、ただ大きくすれば無敵かといえば、そうではないのがフロム・ソフトウェアらしいところ。敵の攻撃が厳しくなる中盤以降で常時最大を維持するには、相応の立ち回りテクニックが必要とされるからだ。

  フィールドに散在する敵モンスターは、遮へい物がない状態で縦横の軸線が重なるか、一定の距離まで接近すると、主人公を発見して攻撃してくる。剣による攻撃は前後左右の4方向にしか繰り出せないため、基本的には敵モンスターからの先制攻撃やカウンターのリスクを伴うことになるが、“回転攻撃”を上手く使えば、敵モンスターからの反撃リスクを最小限に抑えられる。回転攻撃は、○ボタンを押した瞬間に左アナログスティックをグリッと回せば、その方向に剣が回転して一定範囲をまとめて攻撃できるというもの。これを利用すれば、縦横の軸線をあわせることなく敵モンスターを攻撃できる。ダメージを負っていて剣のサイズが小さいときなどは非常に有難く、前述の貫通能力と併用すれば、比較的安全地帯な場所から一方的にダメージを与えることも可能だ。

  敵モンスターは、突撃してくる肉弾系のほか、遠距離から弓や体液を飛ばしてくる、剣では倒せない、水中から突如出現、石化、こちらのコントローラー入力と正反対に動く、ランダムにウロつくなど、さまざまなタイプが登場する。オーブが隠されている各神殿に登場するモンスターは、ゲームが終わりに近づくほど強力かついやらしい攻撃で迫ってくる。サコ敵は、倒された際にランダムでゴールド、矢、爆弾、LIFEやMAGIC回復などのアイテムを落とすため、少々のダメージであれば回復アイテムは“運任せの現地調達”で十分まかなえるが、中盤以降は少なくとも2~3つくらいは回復アイテムを準備していくべきだろう。


主武器は剣。敵が落したアイテムも剣でゲットできるのが地味にありがたい種類によっては下に紹介しているカスタマイズが必須だが、繰り出した瞬間に左アナログスティックをグリッと回す「回転斬り」が爽快感バツグン。軸線をあわせることなく攻撃できるマストテクニックだ
鍛冶屋で剣をカスタマイズできる。各項目は上限が決まっている。プレイスタイルにもよるが、新たな剣を入手するまでの間隔は長め。スタート時の剣も、それなりに強化しつつ先に進んだほうがいい。後半に登場する剣をMAXまで鍛えると、もはや「ネタだよね?」といった感じになるが、これは実際にプレーヤー自身の目で確認していただきたい。なお、強さ以外のカスタマイズ項目は、体力MAX時のみ反映される。便利な回転攻撃や貫通能力も、デフォルトで装備されていない剣は被ダメージ状態だと使えなくなってしまう点に注意
見た目の可愛さに反して、容赦なく攻撃してくる敵モンスターたち。たまに王冠をつけている奴もいたりして、どこか憎めない




■ 郷愁を誘うマップ構成 ~未知の領域を踏破し、奥へとグイグイ進んでいく永遠不滅のカタルシス~

  ファミコン時代のアクションRPGといえば、パズル的なマップ構成も不可欠な要素のひとつ。リスペクト全開の本作には、オールドゲーマーの郷愁を誘うさまざまな“マップ上の仕掛け”が施されている。ゲームをはじめたばかりの頃は限定されていた行動範囲が、爆弾やワイヤーロッドなどのアイテムを入手することで、少しずつ広がりを見せていく。

  マップのボリュームは、フィールド、ダンジョン(神殿)ともにファミコン時代を思わせる適度なサイズ。オブジェクトが映り込むお城の床、きらめく水面、画面に奥行きを与える被写界深度など、あちこちでPS3のハードパワーが炸裂するフィールド。その上を、全体マップでブラックアウトしている未知の領域をめざし、グイグイと足を踏み入れていく。スクラッチを少しずつ削っていくような愉悦感と、行く手をさえぎる新たな仕掛けや敵モンスターとの出会い。手探りで少しずつ進んでいく独特の感覚……アクションRPG好きにはたまらない至福のひとときだ。

  オーブが隠された神殿は、フィールド探索をはるかに上回る刺激に満ちあふれている。敵モンスターの攻撃も厄介だが、落とし穴、動く柱、さまざまな効果を持つスイッチ、移動する刃、魔法攻撃を打ち出す砲台、踏むと別の地点に飛ばされるワープ床など、いかにも! といった仕掛けが目白押しで、これがまたゲーマーの挑戦意欲をかきたてる。新たな仕掛けに出会うたび、「そうそう、これってあのゲームにも使われてたよなぁ」と、しばし感慨に浸ってしまう。全体的な難易度は、往年のアクションRPGに比べると若干マイルドな印象。ただし、以前の記事でご紹介した、一定条件を満たすと出現する裏・高難易度モード「フロム」は、この限りにあらず。標準難易度で物足りない人は、折を見てぜひ挑戦していただきたい。


未知の領域に足を踏み入れ、スクラッチを削るように探索エリアを広げていく。行く先々で頭を悩ませる、ちょっとした謎や仕掛けを解くのがこれまた楽しい
6つある神殿は、冒険におけて重要な節目となる場所。先に進むごとに、単純なパワープレイは通用しなくなっていく。どれもやりがいがあり、挑戦意欲をかきたてられる。アクションRPGならではの醍醐味だ
神殿のクライマックスといえば、やはりボス戦。クリアすると石碑が出現し、そこにいけばいつでもボスを復活させて再び戦えるようになる。ただし、復活したボスを倒してもお金は得られない




■ 単純明快、秀逸なとっつきやすさ ~ゲームらしいゲームが遊びたい人にもオススメ~

  初出時は色メガネで見られがちだった本作だが、実際に製品版を通してプレイすると、アクションRPGとしての“素性の良さ”に改めて気づかされる。単体のアクションRPGとしても丁寧に作られており、適度なノリとテンポで気持ちよく遊べる点は、ファミコン世代以外にも十分な訴求力がある。変な言い方かもしれないが、媚態アリアリのコッテリしたゲームにはない、常時“腹八分目”のボリュームとテンションが、実にいい塩梅なのだ。

  パロディ要素についても、本作の場合“エッセンス”として適度な役割を果たしており、多すぎて鼻につくといったことはない。プレーヤーが疎外感を覚えないよう、元ネタもファミコンRPGの作品群からバランスよく取り入れられている。いずれもさりげなく配置されており、知っていればニヤリといった具合で、知らないからといってシラケるような使われかたは皆無。この辺りにも、開発チームのバランス感覚とセンスの良さがうかがえる。

  前述のとおり、メインターゲットはファミコン世代。「最近めっきりゲームで遊ばなくなったなぁ」という“かつてのファミっ子”たちも、最新技術でコーティングされた“懐かしい味わい”が堪能できる本作なら、途中で投げ出すことなく、最後まで冒険をやり遂げることができるはず。いつでもセーブできるため、ちょっとした合間にサクッと遊べるのもポイントが高い(ただし、1度やり始めると、これがなかなか……)。極めてオーソドックスな内容ながら、ある意味これほど“ゲームらしいゲーム”も、最近なかなか見当たらない。変な先入観も理屈も不要。アクションRPGの“根っこの部分”の楽しさを再認識させてくれる、本当にステキな作品だ。


メインストーリー以外にも、サブクエストやミニゲームが複数用意されている。人によっては本編以上にハマってしまうかも?




(C)2009 FromSoftware, Inc.
(C)Tim Martin
(C)1985,2008 IREM SOFTWARE ENGINEERING INC.
Licensed by Tozai, Inc.

(2009年 11月 5日)

[Reported by 豊臣和孝]