「帰ってきた魔界村」レビュー
帰ってきた魔界村
伝説の2Dアクションが新しいビジュアルのもとに復活。ヒリヒリした高い難易度がチャレンジ精神をかき立てる
- ジャンル:
- アクション
- 発売元:
- カプコン
- 開発元:
- カプコン
- プラットフォーム:
- Nintendo Switch
- 価格:
- 3,990円(税込)
- 発売日:
- 2021年2月25日
2021年2月25日 00:00
カプコンが2月25日に発売するNintendo Switch用アクションゲーム「帰ってきた魔界村」。主にアーケードや家庭用機で、手練れのアクションゲームファンに挑戦を挑んできた「魔界村」シリーズの最新作で、初代「魔界村」と第2弾「大魔界村」をモチーフにした2Dアクションとして登場する。
主人公におなじみの騎士アーサーを据え、オリジナルのストーリーのもと、シリーズを踏襲するヒリヒリとした難易度の2Dアクションとして作られている本作。今風のゲームシステムも取り入れられた本作のレビューをお届けしていきたい。
「魔界村」と「大魔界村」をオマージュしたステージをオリジナルのストーリーで描く
本題に入る前に「魔界村」シリーズについて少しだけ触れておこう。初代「魔界村」は1985年にアーケードゲームとしてリリースされた。鎧を着た騎士アーサーが、武器を使って魔物達と戦っていくステージクリア型のスクロールアクションで、魔物がはびこる魔界のおどろおどろしいグラフィックスとその雰囲気は当時のゲームセンターでも目を惹いた。何度もミスをすることで覚える“初見殺し”の高い難易度と、ゲームを2周しないとクリアできないという展開も、そのタイトルを広く知らしめる要因となった。ステージ内で入手できる武器を戦況やプレイスタイルによって持ち替えたり、1度ミスをしてもアーサーの鎧がはがれるだけでゲームを進められたりするといったゲームシステムは、当時としてはかなり斬新で、その後のアクションゲームに少なからず影響を与えたことは間違いない。
1988年に「大魔界村」(アーケード)、1991年に「超魔界村」(スーパーファミコン)、2006年に「極魔界村」(PSP)といった続編や、アーサーのライバル的存在である魔物「レッドアリーマー」を主役とした「レッドアリーマー魔界村外伝」(1990年、ゲームボーイ)といったスピンオフもリリースされ、近年はそれらがクラシックタイトルとして復刻される機会も多く、リアルタイム世代でなくても遊んだことがある人は多いはずだ。
この「帰ってきた魔界村」は、初期シリーズである「魔界村」と「大魔界村」がモチーフで、本作独自に創作されたストーリーのもと、登場する魔物やステージ、ゲームシステムの一部などをこれら2作品からアレンジして引用している。
ゲームを機動して驚かされるのは、その独特のビジュアルだ。公式には“動くファンタジー絵巻”をうたっていて、巻物に描かれた紙人形劇風のオープニングビジュアルから、そのままの質感でゲームへと繋がっていく。ゲーム中の画面も「魔界村」シリーズのダークな世界観や、ほどよくデフォルメされたキャラクターの雰囲気は残しつつ、紙人形のような動きでプレイヤーを楽しませてくれる。冒頭の2ステージは選択式で、それぞれは「魔界村」と「大魔界村」のステージをオマージュしているのも、ファンには嬉しいところである。
最高難易度がデフォルト設定。ゲーマーのチャレンジ精神をかき立てる
ゲームはこれまでのようなアーケードゲームのスタイルとは異なり、残機の概念が存在せず、何度でもチャレンジできるようになっている。スコアもあるが、ステージをクリアした段階で計算される仕組みで、ミスをするたびにリセットされる仕様だ。正直なところゲームを極めるまでスコアを意識することはあまりないかと思われるが、あって邪魔なことはなく、シリーズの伝統を考えれば、あったほうがいいのは間違いない。
ゲームはセーブファイルごとに難易度の設定が可能で、「伝説の騎士」、「孤高の騎士」、「若き騎士」、「見習い騎士」の4段階から選ぶことができる。最も難しい「伝説の騎士」が最初に選べるのが「魔界村」シリーズらしい仕様であるが、一方でミスをしてもその場で復活できる「見習い騎士」まで用意されているのは嬉しいところ。ただし「見習い騎士」に関しては、ゲーム全編を見られるわけではないようだ。
”「大魔界村」をコンティニューしてクリアできる”程度のスキルの筆者は、まず「伝説の騎士」を選んでみたのだが、これがとにかく大変だった。ゲームは従来の「魔界村」シリーズに則り、鎧を着たアーサーが武器を手に、いくつかのエリアに分かれたステージを進んでいくわけだが、この難易度では他の難易度で要所に設置される、ミスをしたときの再開ポイント「復活の旗」が設置されない。例えばステージ1の「墓場」は、ゾンビの大群が現れる序盤から、動く足場の途中に巨大なグリーンモンスターが出現する湿地を抜け、最初のレッドアリーマーと遭遇したあと、急な坂を下り、小さな動くイカダで川を飛び越えてようやく次のエリアへとたどり着く。次の復活の旗が見えたところでイカダを踏み外し、エリアの最初からやり直しとなったときは、思わず手にしたコントローラーをどうにかしようと思ってしまった(寸前で踏みとどまったが)。
強敵が突然現われる、思わぬところから弾が飛んでくる、足場が崩れて落ちるといった“初見殺し”のポイントも健在で、少しずつ進めては、ミスをして戻されるの繰り返しだったが、決してクリアできないわけではないという手応えもあって、そのギリギリの難易度が、プレイへのモチベーションを維持させてくれた。
ゲームはミスした数が規定数を超えると、一時的に難易度を下げた状態での再プレイを選択ができるようになるのだが、筆者はこの墓場ステージのボス「一角獣」を倒すまで、難易度を下げた状態で半日を費やし、ミスをした回数は161回にも及んだ。次に選んだ「氷の町」もクリアまで同じぐらいの時間がかかり、このままではレビューとして成立しない可能性もあったために、途中で難易度を「若き騎士」まで落として最初からプレイしてみることにした。するとそれまでの苦労が嘘のように、実に快適に進められることができたのだ。出現する魔物の数の調整、鎧の耐久力が上がる、チェックポイントが増えるなど、難易度に関わる変更が反映されているわけだが、何より高難易度でプレイした経験がプレイに生きているのである。そういう意味では、まずは「伝説の騎士」を選んでみて、「無理!」と思ったら難易度を下げていくのがいいかもしれない。
アーサーのスキルを開放する「オービィ」を見逃すな!
アーサーの武器は、一部新しいものが登場しているが、システムは基本的に従来のシリーズと同じものだ。また鎧は黄金の鎧が登場していて、これを装着すると武器が強化されるという「超魔界村」の青銅の鎧と同様の仕組みになっている。そして本作独自の要素として「オービィの木」によるスキルシステムが存在する。ステージ中に隠れている不思議な生物「オービィ」を見つけ、それをこの木に戻すことで、スキルを得られるのである。スキルには「大魔界村」の魔法の要素の他に、武器の所持数のアップや、鎧が脱げた直後の一撃が通常の3倍になる「パンツパワー」など、身に付けるだけで発揮されるものもあり、スキルが多いほど、ゲームクリアの助けになることは間違いない。
オービィは各ステージに何匹隠れているかが提示され、さらにステージクリア後は次に進む前に同じステージをもう一度挑んだり、選ばなかったほうのステージをプレイすることもできるので、より多くのスキルを持って進むという手段もある。またオービィは一度取ればその後ミスをしても取ったことになっているため、見つけたら優先的に取っていくのがいいかと思う。ちなみに宝箱とオービィは、特定の場所を通過する、または武器を当てることが出現条件となっている。
手練れのアクションゲーマーはもちろん、ビギナーもフォローする完成度が嬉しい
確かに難易度の高いゲームなのだが、実際に触ってみると決して不条理ではなく、各ステージの構造や敵の配置、そしてアーサーのアクションを理解していれば、クリアは決して夢ではないと実感できる内容であった。「魔界村」シリーズなので、当然2週目以降も視野に入れたプレイも意識すべきであり、かなり手応えのあるプレイを楽しめるのではないだろうか。その一方で、規程の難易度下でゲームの速度を変えられる「魔時計」の設定や、乱入による2人協力プレイなど、なかなか進められない人へのフォローもあり、総合的な完成度は高いと感じられた。
「魔界村」と「大魔界村」が収録された「カプコンアーケードスタジアム」も先日リリースされたばかりなので、この機会にぜひそれぞれを並行してプレイして、「魔界村」シリーズの今昔を味わってみてほしい。
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