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「シュレディンガーズ・コール」プレビュー

心を丸裸にされるような不思議な体験

【シュレディンガーズ・コール】
5月28日 発売予定
価格:2,480円

 集英社ゲームズは、Nintendo Switch/PC用絵本を読んでいるかのように、優しさに包まれる感覚のノベルアドベンチャー「シュレディンガーズ・コール」を5月28日に発売する。価格は2,480円。開発はアクロバティックチリメンジャコが担当する。

 本作は世界最後の話し相手である主人公「メアリ」が、世界が滅亡する際に未練を残したキャラクターたちの話を聞く物語だ。メアリは記憶が消えつつあるキャラクターたちの話を書き留め、未練の本当の根幹を紐解いていく。そして最終的にはメアリ本人への物語へと繋がっていくものとなっている。

 基本的にノベルゲームではあるが、そのゲーム性はプレーヤーの心に大きく刺さるものになっていると感じた。今回は発売に先駆けて、本作をプレイすることができたので、本作の魅力についてお伝えしたい。なお、インタビューも合わせて掲載している。

【シュレディンガーズ・コール 2nd PV】

不思議な世界観がぐっとプレーヤーを引きつける

 はじめにストーリーを紹介したいところだが、実際にゲームを始めると大まかな操作説明以外は説明がほぼない。

 主人公はおさげ髪のメアリで、基本的には彼女の視点から物語を描く形になっている。一方で、どうしてこの部屋にいるのか、どうしてメアリが世界最後の話し相手なのか、なぜ世界が滅亡したのか、黒猫の「ハムレット」の正体は何なのか。何1つ説明されず、電話が鳴り、ガイド役のようなハムレットに促されるまま電話を取る。

主人公のメアリ
黒猫のハムレット

 この電話に掛けてくるのは生と死の狭間の21ナノ秒という刹那の時間の中にいるキャラクターたちだ。それぞれのキャラクターたちは何かしらの後悔や未練を抱えており、死んでも死にきれない状態となっている。ただし、そんな状況でもキャラクターたちの記憶は時間が経つにつれてどんどん薄れていく。

 主人公のメアリ自身も記憶を失っており、彼女も話をしている間は物事を忘れていく。そのためメアリは電話をするたび手帳にイラスト入りのメモを残してキャラクターたちの未練を整理していく。

 最終的に整理したメモを頼りにキャラクターたちの未練を断ち切っていき、キャラクターたちを成仏させるのがメアリの役割となる。

電話の向こうのキャラクターたちはどんどん記憶を失っていく
メアリも忘れてしまうため、手帳にイラスト入りのメモを記していく
最後にはメモを基に電話の向こうのキャラクターの未練を切る

 ゲームの流れとしてはメアリが電話を取り、電話口のキャラクターの悩みを聞きつつ情報を集めていく。やり取りの中では選択肢が出てくることがあるため適切なものを選ぶ必要があるほか、時には他のキャラクターの電話番号が入手できることもあり、そこでも解決の糸口を探っていく。最終的には抱えていた悩みを解決することで次の章へと進む。章ごとに異なるキャラクターが出てくるため、様々な未練に寄り添っていくことが目的になっている。

 本作の世界は鉛筆で描かれたような白黒の世界がメインとなっており、物語の序盤で暗い世界に黒電話がポツンと置かれている。その電話が突然鳴った時はホラーのような展開に少し怯えてしまった。また、電話を取るまで電話を掛けてきた人物がどんな人かもわからないのも怖さを感じさせる。

 時折挟まれる鮮烈な色を使ったイラストや音による演出も、物語が単調にならない工夫として印象深い。

序盤は黒い世界に黒い電話がポツンとあるのでかなり怖かった
時にドキッとするような鮮烈な色彩の演出もある

 どことなくホラーのような展開で始まるのでどんな怖い目に合うのだろうと身構えてしまったが、物語はむしろプレーヤーの心に訴えかけるものだ。

 本作は章ごとにそれぞれテーマが分かれており、1章はシカのルーシーというキャラクターが登場し、母親としての未練が描かれる。真相が見えるまではよくわからない断片的な物語がよりプレーヤーを引きつけていると感じた。

 本作ではメアリ以外のキャラクターは電話の向こうにいる会ったこともない動物として描かれている。最初はどうして動物なんだろうなと感じたが、物語を進めていくにつれて、その動物に少し自分を投影しているような気になるのがとても不思議な感覚だった。

ドキドキする演出もある
メアリ以外のキャラクターは動物の姿で描かれている

 本作は物語に集中できるように操作がとにかくシンプルになっている。今回はPCでのプレイだったが、ほぼマウスのクリックのみで物語を楽しむことができる。難しい操作は一切ないので、誰でも簡単にプレイできる。

究極の選択がプレーヤーの心を刺す

 プレイしているとプレーヤーに向けて、究極の選択のような選択肢が何度も突き付けられる。この選択によってプレーヤーが体験できる物語が少しだけ変わる。実は、選択肢は物語に対し大きな変化を与えるといったものではないのだが、この仕様も相まって、不思議なことに自分の心に正直に答えた方がいいような気になった。メアリが電話でやり取りをするキャラクターたちは未練を抱えた死にゆく存在であり、その未練に対し嘘をついてはいけないという想いが感じられたのかもしれないし、本作の世界観に飲まれてしまったのかもしれない。

 ただ本作ではダイレクトにキャラクターたちの感情に触れるため、時には思った以上に心に刺さり、少し休憩を挟もうという気持ちになることもあった。

究極の選択が多く悩むことも多かった

 それぞれの章ごとに、未練や立場が異なるため、プレーヤーの年齢や経験によって刺さるエピソードが異なりそうな点も興味深いと感じた。筆者は第2章が最初の質問から随分と心に刺さり、自分の存在価値を聞かれているようで少し辛かったが、物語としてとてもおもしろかった。

たまにプレーヤー自身が選択しづらい質問もある

 また、本作は英語や中国語にも翻訳されており、それぞれの言語で体験版をプレイしたプレーヤーにもかなり好評となっているようで、シンプルだからこそ文化が違ってもどんな人でもわかりやすいというところがまた1つ本作の魅力のように感じた。

 実際に本作をプレイして、シンプルな操作性と印象的な演出がプレーヤーをより引き込む作りになっていると感じた。ゲームをプレイしながら、時に自分自身の心へ問いかけられるようで、心を丸裸にされる感覚を味わえるのは新しい体験だという印象を受けた。

 新しい感覚のアドベンチャーゲームを探している方は是非ともプレイしてみてほしい。