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100%ゲーミングデバイスメーカー、SteelSeries新CEOインタビュー

シンプルイズベスト。ゲーマーにとって本当に役立つデバイスを目指す!

1月取材

 質実剛健のイメージで他の追随を許さないゲーミングデバイスメーカー、SteelSeries。デンマークに本拠を構えるこの企業に、最近になって新しいCEOが就任した。ゲームとプリフェラルの世界で25年の経験を持ち、昨年まではLogicoolのゲーミングデバイスブランド「Logicool G」の責任者であったEhtisham Rabbani氏だ。

SteelSeries CEO、Ehtisham Rabbani氏

 Logicoolといえばマウス、キーボード、ヘッドセットといったPC用プリフェラルおよびゲーミングデバイスの業界トップ企業。かたやSteelSeriesはゲーミングデバイス特化型のメーカーであり、やや毛色が違うことは確かである。

 SteelSeriesのCEOに就任して4カ月となるRabbani氏、日本ではまもなく発売予定の新製品「APEX M800」キーボードと「Sentry」アイトラッキングセンサーを引っさげて、このたび初来日した。PCゲーミングからモバイル、VRにいたるまで、業界大手のゲーミングデバイスメーカーとして目指すところを幅広く聞くことができたので、本稿でご紹介しよう。

100%ゲーミング特化型のメーカーとして、ゲーマーが実際に強くなれるデバイスを!

自身もゲーマーであり、ゲーミングに特化した仕事をしたかったというRabbani氏

――まずは、Logicoolを離れてSteelSeriesを選んだ理由を教えて下さい。

SteelSeries CEO Ehtisham Rabbani氏:Logicoolは素晴らしい会社で、今でも敬意を忘れていませんが、SteelSeriesに移ったことには理由があります。Logicoolは大きな会社ですからゲーミングに関することは事業全体から見れば一部ですが、SteelSeriesでは全ての事業がゲーミングに特化しています。私自身もゲーマーとして、ゲーミングに特化した情熱的な会社で仕事をしてみたいと思っていたんです。

 御存知の通り、ゲーミングデバイスの業界には3つの大きな会社がありますが(Logicool、Razer、SteelSeries)、100%ゲーミングに特化しているのはSteelSeriesだけなんですよ。そのビジネスが非常にハイテンポで成長を続けていることもSteelSeriesの魅力のひとつです。

――2009年から2015年にかけて、ビジネスの規模がおよそ5倍になっているというデータですね。

Rabbani氏:そうですね、まさに勢いのある時期に入っています。ただし日本ではここ数年、成長度合いは比較的フラットだったのですが、今年は新たな兆しが見えてきており、大きな成長を見込んでいます。私にとって日本は非常に重視しているエリアです。

――日本を重視する理由とは?

Rabbani氏:いくつかあります。まず、ゲーム市場が非常に大きいということです。もちろん、その市場の中心にあったのは長らくコンソールマシンだったわけですが、そこに変化が起こり始めていて、近年では急速にPCゲーミングの分野が成長を始めています。また日本ではe-Sportsの市場も立ち上がり始め、将来的には非常に巨大に成長することが明らかです。

 私達のビジネスには健全なコンソールゲームとPCゲームの市場、そしてe-Sportsの基盤が欠かせませんが、日本がまさにそういう市場になってきています。すでに日本のPCゲーミング市場は3,000万ドルの規模になっており、これを無視することはできません。

――日本ではコンソール中心の市場からモバイル中心への変化が非常に速いペースで起きているなど、他の国とは違った特性もあるかと思います。そのあたりについてはどう見ていますか?

Rabbani氏:おっしゃるとおりですね。ただ、北米や欧州でも一時は“PCゲームは死んだ”と言われた時代もありました。しかしF2Pの普及やe-Sportsの発展により、PCゲームはいまやゲーム市場全体で最も大きな分野になっています。

シンプルさが特徴といえるSteelSeriesのマウス

――ちなみに日本のPCゲーミング界隈ではLogicoolデバイスの人気がとても高いですが、RabbaniさんはLogicool在籍時に新しいゲーミングブランドである「Logicool G」をローンチしましたね。その時のスローガンが「Science Wins」だったと思いますが、SteelSeriesではどのような哲学を掲げていく考えですか?

Rabbani氏:やはり、最適な考え方は会社によって変わってくるものです。SteelSeriesは、言わば挑戦者的なブランドです。競合相手にLogicoolとRazerという2つの巨大な存在がいて、私達は末っ子ですね。その中で私達は、どうしてより優れているのか、より速いのか、より賢いのか、といった様々な点で、私達自身の強みを証明していかなければなりません。

 また世界には、努力を厭わずに練習を重ねるような、熱心で野心的なゲーマーがたくさんいます。彼らにとってゲーミングデバイスとはファッションではありません。どこの会社のロゴがついているかは関係ないんです。私達の使命は、そういったゲーマーの皆さんが実際にもっと強くなれるような、本当に意味のあるデバイスを提供することです。

最速キーボード「APEX M800」、そしてアイトラッキングセンサー「Sentry」の狙い

「APEX M800」キーボード
独自設計のスイッチ「Qs1」を実際に手に持って解説してもらった

――なるほど。実際、私もSteelSeriesのマウス「KANA V2」を愛用していますが(関連記事)、シンプルで飾りっけがない中で、性能やホールド感はしっかりしていますね。

Rabbani氏:ありがとうございます。その意味で、1月のCESで発表した2つの製品は自信を持ってお薦めできます。「APEX M800」キーボードと、「Sentry」アイトラッキングセンサーです。

――「APEX M800」は“最速”を謳うキーボードですね。具体的にどう最速なんでしょうか?

Rabbani氏:秘密はたくさんありますが、まず独自設計のメカニカルスイッチ「Qs1」がカギのひとつです。反応ポイントが1.5mmという浅い位置にあり、他のメカニカルスイッチよりも25%、メンブレンスイッチに比べると40%高速です。またメカニカルながら打鍵音がうるさくなく、スムーズにタッチできます。

――このスイッチは「APEX M800」専用になるんでしょうか?

Rabbani氏:「Qs1」はSteelSeriesのすべてのメカニカルキーボードのためにデザインされています。「APEX M800」が初採用となりますが、今後発売する他のメカニカルキーボードにも搭載することになるはずです。また私達はかねてよりMSIとの提携があるため、もしかしたらMSIから発売されるゲーミングノートPCのキーボードに「Qs1」が採用されることもあるかもしれません。

――実際に触ってみると、キーの感触はゲームコントローラーのボタンに近いものがありますね。押しも戻りも速いというか。

Rabbani氏:なるほど、そうかもしれませんね。「Qs1」で目指したのはメンブレンスイッチの快適さと、メカニカルスイッチのスピードや正確性を両立させることでした。2つの世界をひとつに統合したことで、これまでにない最高のゲーミングキーボードになったと自負しています。

「Qs1」スイッチ
LED、マクロ制御とは別にキー入力処理専用のCPUを搭載
全キーに独立型LEDを搭載。フルカラーで色の調整が可能
全キーのマクロ割り当てに対応。
「Sentry」アイトラッキングセンサー
秒間50回の視線追跡が可能。ストリーミングのほか、記録、保存も

――もうひとつの新製品はアイトラッキングセンサー「Sentry」ですね。これはかなり異色というか、ゲーミングデバイスとしては毛色が違いますが、そもそもこれを出そうと考えた理由は何だったのでしょうか?

Rabbani氏:ひとつは、いま、ストリーミングをするゲーマーが非常に多くなっているということです。その画面をただ流すだけでなく、プレーヤーが実際に見ている箇所を可視化することができれば、ストリーミングの臨場感がぐっと高まります。

 2つめの理由として、アイトラッキングでゲームの操作ができるようになれば素晴らしいのではないか、という考えもあります。現在は2つしか試せるソフトがないのですが、現在多数のゲームデベロッパーと話を進めていますので、今後対応タイトルが増えていくはずです。

 3つめの理由は、アイトラッキングがプレーヤーの能力向上に役立つことです。「Sentry」ではゲーム中の目の動きを記録することができます。特に世界的なプレーヤーがどこを見てプレイしているかは、トレーニングのために非常に役立つ情報になります。

――e-Sports的にゲームをプレイしている、ハードコアなプレーヤーが欲しがりそうですね。

Rabbani氏:まさに、より強くなるためのトレーニングツールとしては最強で、多くの方から高い反響を頂いていますし、多くのアワードも受賞することができました。北米と欧州では既に出荷が開始されていますが、日本では今後数週間のうちに販売を開始できる予定です。

――目でゲームを操作する使い方についてですが、Valveが以前、アイトラッキングセンサー版の「Portal」をGDCで披露していたことを覚えていますが、彼らとも対応ゲームの話をしていますか?

Rabbani氏:それは私の口からは言えません。ただ、少なくともValveの皆さんはとてもエキサイトしています(笑)。いずれにしても、現在は複数のゲームパブリッシャーと話を進めているところです。

モバイル用ゲームコントローラー「STRATUS」シリーズ。大きい方がXLバージョン

――昨年はPS4向けのヘッドセット、今年はアイトラッキングセンサーと、どんどん製品の幅を広げているような印象があります。今重視している分野、今後伸ばしたい分野というのはあるんでしょうか?

Rabbani氏:昨年から特に重視しているのはモバイルゲーミングの分野です。そこで昨年はモバイル用のゲームコントローラー「STRATUS」シリーズを発売しました。その中で特に私達が学んだことは、日頃からコンソールやPCでゲームを遊ぶようなシリアスなゲーマーの皆さんも、いまやタブレットでゲームを遊ぶ機会が非常に増えてきているということです。そこでモバイル用のフルフィーチャーなゲームコントローラーが強く求められているわけです。

 そういった方のために開発したのが「STRATUS XL」で、まさにパーフェクトな操作感を得られます。日本でもものすごく売れていまして、とても満足です。次の世代の製品も準備していまして、やがてモバイルゲーミングの分野でリーダーになりたいと考えています。コンソール向けの分野でも、近々アナウンスできることがあります。まだ言えませんが(笑)。

――それはコントローラーですかね?

Rabbani氏:ハッハッハッハッハッハ!

――例えばXbox Oneの標準コントローラーは、それはもう素晴らしいデキですが、そういったところに真っ向勝負しようという考えでしょうか?

Rabbani氏:まだ何も言えません(笑)。ただ、おっしゃるように各プラットフォーマーの標準コントローラーは素晴らしい出来栄えであることは間違いありませんね。

やがて“ゲーミング”の意味も変わる? VRプラットフォームの乱立には“ノー!”

デバイスの話となると身を乗り出すRabbani氏

――モバイルに話を戻しますと、スマホやタブレットの性能が凄い勢いで向上していますよね。近いうちに次世代コンソールの性能にも匹敵するのではないかというほどですが、この傾向について、プリフェラルメーカーとしてどう見ていますか?

Rabbani氏:素晴らしいことだと思います。私はPCでもモバイルでも同じゲームをプレイしたいんですよ。そして、その願いはマイクロプロセッサの性能が向上してきたことで、可能になりつつあります。

――究極的には、スマホサイズのスーパーコンピューターが1台あればいいんですがね。

Rabbani氏:本当にその通りですよ。例えば家の中で、マウスやキーボードやゲームコントローラーなどなんでも揃った環境でゲームを遊んでいるとします。ですが仕事にいくために電車に乗のらないといけません。そんなときにゲームをポーズして、全く同じゲームの続きをスマホで遊べれば最高ですよね。

――そういった時代になると、“ゲームプラットフォーム”という言葉の意味がずいぶん変わりますね。

Rabbani氏:おっしゃるとおりです。私は15年前、Activisionにいましたが、その当時、ユーザーはPCゲーマーになるか、コンソールゲーマーになるかの選択を迫られていました。そしてコンソールゲーマーはPCゲーマーを嫌い、PCゲーマーはコンソールゲーマーを嫌っていましたね(笑)。しかし今後、コンソールゲーミングもPCゲーミングもモバイルゲーミングも、やがて区別なくただの“ゲーミング”になるはずです。ゲーミングという言葉の指すもの自体が変わっていくんだと思います。

――いっぽうで、今年はVRゲーミングという分野が新たに立ち上がりそうです。大きなところでは、Oculus Riftの製品版が今年中に発売されることが期待されています。SteelSeriesとしてはVRゲーミングへの関心を持っていますか?

Rabbani氏:もちろんです。ただ、問題もあります。プラットフォームが多すぎることによって、ゲーミングに悪影響を及ぼすのではないかと心配しています。新しいVRデバイスが発表になるたびに、ゲームデベロッパーの悩みの種が増えるわけです。どのデバイスを対象にゲームを作ればいいんだろう?とね。結果的に、ゲームの開発はとてもゆっくりになり、ゲーマーの不利益になるわけです。

――市場の分散を危惧していると。

Rabbani氏:そうです。私達に必要なのは、別に新しいプラットフォームを作ることではなく、ただひとつの強力なプラットフォームです。であればこそ、多くのゲームデベロッパーが迷うことなくコンテンツを開発することができるでしょうから。

――それで言うと、CESではRazerからオープンソースのVRシステム「OSVR」が発表されたり、VRの業界団体Immersive Technology Allianceの発表が行なわれましたが、これらはどう見ていますか?

Rabbani氏:「OSVR」については失敗ではないかと思います。なぜなら、また新たに別のプラットフォームを作ることに他ならないからです。この分野では既にOculusが群を抜いて進んでいて、コンソールの分野ではSCEが良い仕事をしています。それに後発の小さい企業の製品もゾロゾロ出てきていますよね。そこにまた別のプラットフォームを増やしてしまうことは、正直に言って、ゲーマーにとっては良くないことだと思いますね。VRの業界団体についても、肝心のOculusが参加していない以上は、よくわかりません。

――確かに、Oculusは群を抜いています。SteelSeriesとしては、もしVR用の入力デバイス等を開発するなら、それはOculus向けになりますか?

Rabbani氏:もちろんです。私達はゲーマーが実際に必要とするところに製品を開発します。Oculusがこの分野で勝者となるなら、間違いなくOculus Rift向けに私達のデバイスを提供することになるでしょう。

――実は、既に何らかの計画が進行していたり?

Rabbani氏:それは言えません(笑)。

昨年のベストセラーとなった「Rival」
デバイスにはあくまでも質実剛健を貫くという

――ではSteelSeriesの基本的な製品であるマウスについてお伺いします。近年、CPIやレポートレートなど数値的な部分ではメーカーごとの違いがもうわからないレベルになってきていますが、その中でSteelSeriesとしてどのような違いを出していきたいと考えていますか?

Rabbani氏:ええ、ゲーミングマウスと言われる製品のほとんどは非常に高いCPIに、1msのレスポンス、ハイエンドなセンサーというものを売りにしていますね。ただ、高いCPIにはきちんと意味もあるんですよ。例えば4Kモニターの環境ではより高いCPIが必要になります。確かに4Kはまだニッチですけどね。

 その中で、私達がゲーミングマウスで目指すところの最も基本となるのは、シンプルさとエルゴノミクスです。マウスには30個もボタンは必要ありません。そんな数のボタンを100%使いこなせる人はいないと断言します。それよりも持ちやすさ、快適さ、ボタンの応答性、確実性、堅牢性が重要です。

――なるほど。確かに、SteelSeriesのマウスはシンプルなものばかりですね。昨年発売されたRivalもそうでした。今年も新モデルの投入はあるのでしょうか?

Rabbani氏:まだ具体的には言えませんが、今年も新しいゲーミングマウスを出します。

――ほほう、それについての質問は……。

Rabbani氏:答えられません(笑)。その前に、まずは新製品の「APEX M800」と「Sentry」をぜひお試しいただければと思います。

――わかりました(笑)。いろいろとお話しいただき、ありがとうございました。

Rabbani氏:こちらこそ。日本の皆さん、またお会いしましょう。

(佐藤カフジ)