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「クロックタワー」の遺伝子を持つ「Project Scissors」、その一端を明かす!

インディーで制作するのは、クリエイター発信のおもしろさを表現するため

インディーで制作するのは、クリエイター発信のおもしろさを表現するため

「Project Scissors」は、インディーゲームを集めたイベント「Indie Stream Fes 2014」で発表された。

――今回はインディー制作ということですが、インディーといってもあいまいといいますか、解釈としてはすごく幅広いと思います。お考えになられるインディー像とは?

河野氏: 制作のスタートの話だと思っています。ヌードメーカーも今までずーっとそうでしたけど、最初に契約を決めて、企画内容を決めて、いくら掛かりますと。その結果頂けたお金の範囲内だったら安心して作れますね、というのが今までの一般的な流れです。

 インディーの場合、その契約やお金の保証がないところからスタートしている。今回もできるだけ出資してくださる方を募りたいとは思っています。でも、最終的に投資されるバジェットがいくらになるかわからないけど、私達はとにかくもう作りたいから、どんどん作っていこう! というところからスタートしています。

 グラフィックスのクオリティなんかも「とりあえず100万でもいけるような安っぽいので作って」みたいに作るのではなく、結構ガチッとしたところからいこう! と。最悪途中で資金が尽きればブツギリになるけれども、そういった問題はなんとか乗り越えらるようにやりましょうと。でも「こういうものを出したいんだから、これつくろうよ!」というところからのゲーム制作のスタートは、全然違いますよね。マーケットリサーチだなんだというところから乖離した「面白いと信じるものを作りたい!」という純粋な欲求からスタートしています。

――「作りたい!」という想いと、クオリティを優先させたなかで、できるところまで走る。

河野氏: 「50点のクオリティのデータが100%集まってます」というゲームではないんです。そりゃ今の大作ゲームと比べたら劣っているかもしれませんが、目指しているクオリティで、それが20%~30%しかできなくても、それはしょうがないや! と。とにかく志や目線は高くもった状態で走ってみようよ! っていうところからうちはやってますね。まったく先が見えないから、面白くてしょうがないですよ!

――ユーザーからすると、ちょっと不安なところがありますけど。早く出してくれ! 遊びたい! みたいな。

河野氏: 私も銀行にいくたびに不安になりますけどね(笑)。

――クラウドファンディングは視野にいれていらっしゃいますか?

河野氏: 今は色々な資金調達を考えています。9月に開催された「Indie Stream Fes 2014」でも、そういったことを考えて制作開始を発表させていただきましたけど、やはりお声がけいただいた会社さんもありますし、そのあたりは色々と調整中です。

――どこか出していただける会社さんがあれば、それはそれでいいということですね。

河野氏: そうですね。

――映画はゲームの制作より、制作規模が小さくてもスタートできるかと思うのですが、インディーの精神性みたいなものはいかがですか?

清水氏: (「『Project Scissors』のゲームがヒットすれば、映画化も考えたい」という発表会での発言を受けて)とにかく今はゲームありきの話なので、どうなるかわからないですけど……ボクも河野さんと同意見というか「なるほど!」、「ぜひ自分にもできることなら」と思わされたのは、インディーとして発信するというクリエイティビティの自由性があるところですね。

 大手のゲームだと何億、何十億もかけて「う~ん、うまくビジネスとして成立しそうにないからストップ」と制作がストップしてしまうことは平気である。ただ、そういうのって誰がイニシアティブを握っていて、誰が強い想いでその企画をスタートさせたのかというのがフタをあけてみるとわからない。途中で止まった企画の人に色々きくと、誰も責任を負おうとしてないんですよね。

 それと真逆で、インディーでの制作は資金とか諸々大変だし先も見えないところはありますが「こういうことをやりたいんだ!」という河野さんの想いが元々強くて、その想いに賛同したクリエイターが参加してきた。もちろん、色々な代表作を作ってこられた方々の信頼や知名度を使ってお金を集めたいっていうのもぶっちゃけありますけど、精神性としては「ゼロから始めるんだ!」、「ボクらはこういうのを作りたいんだ! みんな協力してくれないか!」、「こういうゲームをやりたいと思わないか!?」というところからスタートしています。本当はそういった方が面白いんじゃないですか。映画でもゲームでもそう思っていたので……そういったこともあって参加させてもらいました。

河野氏: 正直、マーケットリサーチありきの時代がゲーム業界は長かったんですよ。でも、それだけで上手くいくなら、コケるゲームはないですからね。全部リクープして大儲けしてるはずなんですよ。しかし、それもなかなか上手くいかない時代になってきて、ほとんどソーシャルゲームだけがある程度そのなかで戦っている状況です。

 だったら、「もう1回自由なクリエイター発信のゲームがあってもいいじゃない?」という所を、ちょっと訴えかけてみようかなと。他のどこかの会社さんにお金を出してもらって、その会社さんに迷惑をかける結果なら問題ですけど、まぁとりあえず自分達でやるんだからいいじゃない! っていう。責任は取るんだから。

――だからこそ「そういう制作手順の作品だから面白い!」っていうのもあるんでしょうね。マーケティングも大切なんでしょうけど、それでは個性が出ないこともありますから。

河野氏: 正直ホラーに関していうと、一定額を投下する時にマーケティングでどういうゲームがいいかというフローチャートを作ると、どうしてもホラーテイストのFPSとか、ゾンビものとかになってしまうんです。フローチャートの行き先がもう2種類くらいしかないんですよ。でも、そういうゲームはもうあるから。

 「クロックタワー」みたいなメインストリームから外れたゲームを作るには、やはりマーケティングありきではない作り方をするしかない。そのかわり、コアなユーザーさんや待ってくれているユーザーさんっていないわけではないですから。5億、10億とか50億といった大きなお金ではなく、ある程度の小さいお金であればリクープする目処は立つんじゃないかと思うんです。

 そういった作品をきちんとしたパブリッシャーでリリースするとなると、どうしてもグラフィックスのクオリティなりなんなりで一定のお金をかけなくてはいけなくなるじゃないですか。でもインディーだったら、ユーザーのみなさんもインディー制作のハードルで見てくれますから、「グラフィックスにはある程度目をつぶるけど、ちゃんと面白かったらそれはそれでいいよ」という視点で見てもらえるじゃないですか。そうなると、ある程度は予算が抑えられるので、そのなかで面白さに注力できますから。

――なぜ清水監督に依頼したのでしょう?

河野氏: 映像表現とかアイデア面とか、自分だけでは限界を感じていて、より面白くするには新しい血を入れなくてはならないと思ったんです。でも同じ入れるんだったら、私が尊敬できる方のアドバイスで勉強してみたいというのがあって、そうなったときに、もちろん三上真司さん(Tango Gameworks。最新作は「サイコブレイク」)とかもおられますけど、今忙しいので。もちろん清水監督も暇じゃないですけど!(笑)。ゲーム業界ではない方、ゲームのクリエイターの方はよく飲んだりもするので、今まで意見をきいたことがないジャンルの方から聞いてみたいなと思ったんです。

 そうなったとき映画「呪怨」って、「すごいな!」と思うところがいっぱいある。特に思ったところは、昼間でも室内は閉めたら真っ暗になるでしょ。昼間でも安全じゃないんだよ? といったところなど「なるほど!」って結構驚かされました。これ私が子供の頃、自宅で留守番しているときに感じた恐怖感そのままだ! (あの恐い感じに)ようやく説明をつけてもらえた。そういう凄さを感じた方と仕事がしたかったので、清水監督に「お願いできないですか?」というアプローチをしてみました。

――だから「ゲーム業界以外」だったんですね。

河野氏: そうですね。ゲーム業界はみんな仲良しだったりして、クリエイター同士飲んだりしますから。そういう意見交換も楽しいですけど。もっともっと新しいことを知りたいんです。

――「呪怨」は1度ゲーム化されました。その時「あまりゲームをプレイしない」とおっしゃっておられましたが、今回は制作の現場でどんなことができると考えておられますか?

清水氏: 詳しいゲームの展開とかは河野さんにお任せしつつ、河野さんのほうでどんな新しいことをやろうとしているのか、相談にはのるようにしています。

 ゲーム業界の方々から出ない発想が出せればとは思っています。まずボクから「なぜハサミなのか?」とか根本的なところから聞いて「それにはこういう由来と背景がある」、「こうなったらどうだろうか?」といったアイディアを出させてもらったり意見交換をしたりしています。

 そういった中で、河野さんのほうから「そうそうそう! そういった意見が欲しかったんです!」と言ってもらえたとき「あっ、参加した意義があるかな」とボクも安心したんです。なんかその、感覚的な部分ですね。ハサミの斬る感覚に似たようなもので、精神的な、日常からの延長上にあるものという発想の仕方で、なんらかでもボクのアイデアが河野さんに取り入れていただければとは思っています。

 ただ映画と違い、ゲームはプレイする方にどう直接訴えかけるかといったところがありますし動きも変わってきますので、そのへんは色々と情報をきいて勉強しつつ、ボクなりの発想を伝えていければとは思っています。

――では、常に情報を共有しながら、制作の重要な段階で色々見せてもらいながらお話しになっているということですね。

河野氏: もう設定作りの結構早い段階から情報を共有していただいています。根っこの部分から参加していただいている感じです。ゲーム画面もヌードメーカーで見ていただき「じゃぁこの映画を観ると参考になるよ」っていうアドバイスをいただいたり。

――ちなみにその映画は?

清水氏: 日本でも10月25日から封切りになった「キョンシー」っていうタイトルの香港映画で、昨年僕がプロデュースしました。ビジュアルの作りとか参考にならないかと思って、河野さんに試写を見ていただいて。幽霊の描写をどのように見せるか? など「呪怨」の時よりも進化した形として作ったので今回の参考になれば……と、河野さんに見てもらって「どうですか?」と。

(船津稔)