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「クロックタワー」の遺伝子を持つ「Project Scissors」、その一端を明かす!

ヌードメーカー・河野一二三氏 × 映画監督・清水 崇氏インタビュー
コアなホラー映画談義に発展!「Project Scissors」はルチオ・フルチ感溢れるホラー?

9月29日 収録

「Project Scissors」のロゴ

 ヌードメーカーは、「クロックタワー」の遺伝子を持つホラーアクションアドベンチャー「Project Scissors」の開発を進めている。9月に開催された「Indie Stream Fes 2014」で発表され、大きな反響を呼んだ。

 「クロックタワー」とは、スーパーファミコン用アドベンチャーとして発売され、その後プレイステーションなどに移植。現在もプレイステーション 3/PSP用ゲームアーカイブスやWii/Wii U用バーチャルコンソールなどでプレイすることができる。古城に引き取られてきた美少女が、大きな“ハサミ”を持った追跡者に追いかけられるという展開、そして捕まれば反撃できないという絶望感など、当時のゲームプレーヤーに衝撃を与え、今もファンは多い。

 主人公の女性キャラクターがホラー映画「フェノミナ」の主役を務めたジェニファー・コネリーを思わせる面影で、その展開と相まってイタリアンホラーテイストを醸し出していたし、影響を感じさせた。

 監督・ゲームデザインは河野一二三氏だが、このほど、「『クロックタワー』の遺伝子を持つ」という「Project Scissors」の制作を発表した。現状ではプラットフォームの一部と使用される凶器が“ハサミ”であること、またゲームディレクターとして河野一二三氏の元、一部スタッフについて明らかにされている。

 クリーチャーデザインは、「サイレントヒル」シリーズの背景・クリーチャーデザイン・アートディレクションなどを手掛けた伊藤暢達氏、企画・ティザー映像演出については「呪怨」、「輪廻」、「魔女の宅急便(実写版)」を手掛けた映画監督の清水崇氏が参加している。

 さらに音楽は戸田信子氏が手掛けることが決定した。戸田氏は、「Metal Gear Solid」シリーズのカットシーン楽曲を映画音楽作曲家のハリー・グレッグソン=ウィリアムズ氏と共に手掛けたり、Microsoftの「HALO4」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XIV: 新生エオルゼア」などの音楽も手掛けている。

 「Project Scissors」はインディーで制作されるという。このほど、河野一二三氏と清水崇監督に、「『クロックタワー』の遺伝子を持つこととは?」、「インディーで制作するということ」といったことを伺うと同時に、ホラー映画談義にも花が咲いた。一見ゲームとは関係ないようだが、テーマの関連性やどのようにゲームに影響してくるかが垣間見えるだろう。

【河野一二三氏】
【清水崇監督】
ヒューマンで「クロックタワー」、「クロックタワー2」を企画・ディレクションを行ない、その後2002年にヌードメーカーを設立。独立後は「鉄騎」、「無限航路」等を手掛けてきた
1998年にテレビのショートドラマで監督デビュー。その後「呪怨」シリーズがヒットを記録し、ハリウッドに進出。この春には「魔女の宅急便(実写版)」の監督も務めた。先日「劇場版 稲川怪談 かたりべ」、香港映画「キョンシー」などのプロデュース作が公開された

ゲーム業界と映画監督がタッグを組んでなにが行なわれているのか?

なぜインディーなのか?といった話題から、ホラー映画に関する話題までざっくばらんに語ってもらった

――そもそも、今なぜ“Jホラー”なのでしょうか?

河野一二三氏: 私が作ろうとするホラーで重視しているのが「追い詰められる」とか「じわじわ真綿で首をしめられる恐怖感」なんです。そういう部分で、肉体性より精神性を重視するところでは、やはりJホラー的なメンタリティが重要と思ったんです。特にここ最近は、とりあえずゾンビでグチャグチャやってりゃいいみたいな、そんなのばかり目立ってましたから違う方向でと。

――海外とかは、特にそうですよね。

河野氏: それはそれで素晴らしいゲームはあるけど、あちらに任せておけばいいなと。別にわざわざ私が作らなくても、いいゲームがいっぱいある。精神的な雰囲気を重視したようなゲームって、なかなか出てこない。そういう部分で、あえて今作るのであれば、それかなと。

――清水監督は河野さんから1番最初にお話がきたとき、河野さんの想いを受けたと思われますが、どのように感じられましたか?

清水 崇氏: まさにいま、河野さんがおっしゃった部分に関わると思うのですが、物理的、直接的に殺害するとか、殺される、追い詰められる怖さではなく、精神的な怖さを大切にしています。

 河野さんからは、力のある男性よりも内面的に強い女性の怨念とか、そういうものを取り入れた作品にしたいというお話しをいただいた。そういうことであれば、ボクも協力できるかもしれない。もちろん「クロックタワー」に代表される、河野さんが得意とするハサミを使った部分がなにか関わってくるのかな? という期待もあります。そういうところで融合できると、欧米とは異なる「日本人クリエイター陣が集まってこそ発信できるものができるのではないか」というところに賛同した次第です。

今回も凶器はハサミ。なぜハサミなのだろうか?
クリーチャーデザインは伊藤暢達氏

――河野さんに伺いたいのですが、いま振り返って「クロックタワー」で凶器としてハサミを採用された意味はどういった所にあったのでしょう?

河野氏: そもそも今回の作品ですが、「クロックタワー」というIPではありません。ですから、武器を変えられるなら、別の武器を考えようとも思ったんですよ。しかし色々考えた結果、ハサミに勝てる武器がなかった。理由は凄くシンプルで、ハサミが身近なもので、すごく痛みを想像しやすい。

 ナイフであればスパーン!って斬られたり、銃であればパーン!って撃たれ一瞬で結果が出るじゃないですか。ハサミって1回“ぐにっ”てはさまれて「痛い、痛い、イタイ!」となったところに、さらに「ブチッ!」ってやられるのは、1番“痛そうな感じ”が凄い。結局、ハサミに戻った感じですね。

――誰もが想像できるから、というところが重要ということですね。

河野氏: 大事ですね。共感性は大事です。ハサミに匹敵する武器で同じくらいインパクトがあるといえば、やはりチェーンソー。でもチェーンソーはもう“ある”んですよね。

 それこそダリオ・アルジェントの映像作品でも、ルアーだかリールみたいな変な武器を使って殺す映画があるのですが、それだと全然わからない。どんなギミックでどう殺しているのかわからないから、全然「ピン!」とこないんです。

清水氏: チェーンソーとかって、それ自体が電動で動くし、バイブレーションで直接的な感覚は伝わってき難い。ハサミは自分の力だけなので切断時の感覚が直接伝わるし、子供のときから工作やらなにやらで紙やダンボールを斬るときに使っているじゃないですか。それで、人の指を斬ったら? とか想像しやすいんですよね。本当はボク、そういう痛そうなのは苦手なんですけど(笑)、たしかに身近な伝わりやすいところからっていう意味でいうと、ハサミって子供から大人まで使うし、文化に関わらず世界中で感覚として伝わりやすい。実は凄く上等な手段ではあると思うんです。

――ハサミの場合、「斬るんだ!」という攻撃側の意図が明確に感じられますよね。チェーンソーは電動で勝手に動きますけど。

河野氏: 軽くはさまれるまではあるでしょうけど、そこから最期までジョキッ!ってやるって、やはり明確な殺意ですよね。

清水氏: 包丁やナイフよりも感覚が伝わりやすいんですよね。

河野氏: スパッ!と斬れてくれれば気が楽なのですが、“グニッ!”って1回はさまれるのが不快感を増しますね。

清水氏: 「ハサミを持って突っ走る」というタイトルの映画があるのですけが、それだけでちょっとやばそうじゃないですか(笑)。「誰に!? どんな人が持って走るの!?」みたいな。

河野氏: それ何映画なんです!? (笑)。ホラーじゃなさそうですが……。

清水氏: 少年の心のドラマです。原題もそのまま「Running with Scissors」でいい映画なんですけど、タイトルを聞いただけで凄くやばそうな感覚が伝わる。ハサミにはそういう力が、なんかあるんだと思うんです。

――はじめは「バーニング(1981年公開のホラー映画)」などの影響もあったのかと思っていました。

河野氏: もちろんそれもあります! 子供の頃はあのシルエット(映画「バーニング」のメインビジュアルで、男がハサミを持っているシルエットが描かれている)が恐ろしかったですし。ただ先ほど監督ともお話をしていたんですけど、(劇中にでてくるハサミが)思っていたほど大きくなかったですよね。

清水氏: そうですね。大人になって観直すと「あれ? こんなに小さいハサミだったっけ?」って。

河野氏: いまだにイメージのなかでは、あのハサミはすごくでっかいものですよね。

清水氏: 正体がわからないシルエットからも、怖さを感じられたのでしょうね。

河野氏: シルエットというのが良かった。顔とかハッキリ見えていたら全然怖くない。

――ハサミの持つそういったメタファーや精神性が、今回も使用された大きな理由なんですね。精神的に追い詰められるところがテーマになっている。

河野氏: そこは外せないですね。

(船津稔)