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本格アドベンチャー、「MURDERED 魂の呼ぶ声」インプレッション

幽霊の刑事が挑む連続殺人事件。オカルト趣味満載が楽しい

7月17日発売予定(PS4/PS3/Windows)

9月4日発売予定(Xbox One/Xbox 360)



価格:7,800円(税別)

 スクウェア・エニックスの「MURDERED 魂の呼ぶ声」は謎だらけの状況に対して、1つ1つ証拠を集めていくという昨今では珍しい、古いスタイルのアドベンチャーゲームを思い出させる作品である。主人公ロナンは刑事であり、冒頭、謎めいた連続殺人犯「ベル・キラー」に殺されてしまう。ロナンは幽霊となり、ロナン達が住む街セイラムに潜むベル・キラーを追うことになる。

 本作は主人公が幽霊であり、世界もまた死後の世界と現世が重なっている“ダスク”である。その世界の表現は独特で、オカルト好きの人には魅力たっぷりだ。この世の中に干渉できなくなってしまった幽霊が、連続殺人犯にどう立ち向かっていくのか? 物語にグッとのめり込まされるテーマだ。

 今回、発売に先がけてゲームの序盤部分を体験することができた。幽霊ならではの世界への関わり方、“普通の人”には感知することができない死と生の狭間にある“ダスク”、謎を解いていくゲーム性など、序盤といえ様々な要素が体験できたので、スクリーンショットとともに紹介していきたい。

自分を殺した犯人を追え! 幽霊ならではの捜査の面白さ

落下していくロナン。本作は主人公の死亡シーンからスタートする
死に別れた妻ジュリア。彼女の元に行くのが目的だ
証拠を見つけ出し推理していく。本作は本格的なアドベンチャーである

 「MURDERED 魂の呼ぶ声」はショッキングなシーンから始まる。高い建物の窓を突き破り、落下していくロナンの姿からゲームは始まる。道に叩きつけられてからすぐロナンは立ち上がるが、足下には自分の体が横たわっているのを発見し、驚く。“幽体離脱”というやつだろうか? ロナンは必死に体に戻ろうとするが、ロナンを突き落とした殺人犯「ベル・キラー」がロナンの銃を拾い上げ、瀕死のロナンの肉体に向かって引き金を引いた……。こうしてロナンは死んだ。

 気がつくとロナンの前には死に別れた妻・ジュリアの姿があった。再び一緒にいられるとロナンは喜ぶが、ジュリアは悲しげに首を振る。ロナンはまだやり残したことがあり、ジュリアのいる“橋のこちら側”に行くことができないという。ロナンのやり残したこと、それはベル・キラーを止めることだ。ロナンは“幽霊の刑事”として、ベル・キラーを追うことになる。

 ロナンは幽霊であり、誰も彼の言葉を聞くことはできないし、ものに触ることもできない。本作ではこの独特な立場で刑事の能力を活かして証拠を集め、真実を求めていく。できないことが多い代わりに幽霊だからこそできることもある。ロナンは生きている人に憑依し、その人の思考を覗いたり、憑依した人に自分の思念を流し込むことで行動を促したりできる。

 ロナンの最初の行動は自分の殺害現場での証拠集めだ。ここでは現場を歩き回り事件の鍵になりそうなものを丹念に探していく。「MURDERED 魂の呼ぶ声」ではこのように一定の範囲でアクセスできる証拠を探し、見つけ出すことで次のストーリーへ進んでいく、アドベンチャーゲームとなっている。周りに注意を配りながら丹念に証拠を探し、それを組み立てて謎を1つずつといていく。アクションや戦闘ではなく、“謎解き”がゲームの中心となっている。

 さらにロナンは残留思念のように残っている記憶や思念に干渉することで様々なオブジェクトを復元したり、逆に消し去ったりできる。ロナンの殺害現場を目撃した少女の記憶を見つけたことで、ロナンは少女を探そうとする。その少女はどうやらベル・キラーに狙われていたようだが……。この“復元”は収集アイテムを集めたり、次の場所に進むための足場を出現するのにも使う。

 アクション性としては、「悪霊」との戦闘がある。悪霊はロナン達幽霊のなれの果てで、特定の場所で悪霊がさまようなかを突破していかなくてはならない。悪霊は幽霊の残留思念に潜り込むことで隠れることができ、後ろを取ることで“浄化”できる。悪霊との戦いは探索が中心の本作でのスパイスとなる存在で、駆け引きは楽しい。体験できた部分では、悪霊をひき付けることができ、後ろを取りやすくなる「カラス」も登場した。今後さらにゲームを進めるにつれ、駆け引きの要素が増えてきそうで楽しみだ。

 ロナンの能力で面白かったのは“黒猫”に憑依でき、意のままに操れるところだ。黒猫を使うことでロナンは目指す少女の元にたどり着くことができた。幽霊と黒猫の組み合わせがいかにもオカルト風で楽しい。また、幽霊が通ることができない“穴”を通過するために、人間に憑依するといった要素もある。地形をクリアするためのパズル要素もこれから複雑化していきそうだ。

 「MURDERED 魂の呼ぶ声」は“幽霊”というテーマに正面から挑んでいる。壁はすり抜けられるのに、建物のドアは誰かが開けてくれないとくぐれなかったり、憑依することで人の心がわかったり、干渉できたり、テレビなどを勝手につける「ポルターガイスト現象」を起こすこともできる。便利なようで不便であり、理屈が通ってそうで理不尽な、“幽霊のルール”を独特の解釈で表現しているのが面白い。プレーヤーのオカルト知識を刺激し、独特の“幽霊観”にハマれる作品であると感じた。

【幽霊となって真実を追う】
ベル・キラーによって幽霊にされてしまうロナン。幽霊の住む世界“ダスク”には独特のルールがあるようだ
物的証拠を探したり、他人に憑依して心を読み、事件の証拠を集めていく
アパートの中を歩き回る。普通の人は幽霊には気が付かない
自我を失った幽霊、悪霊との戦い
現場の人物達を復元する。ロナンが殺されたとき、少女が隠れていたようだ
幽霊では通れない“穴”を憑依することで越える
黒猫に憑依。自由に操れる

(勝田哲也)