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本格アドベンチャー、「MURDERED 魂の呼ぶ声」インプレッション
地縛霊に、ポルターガイスト、“建物の幽霊”など、オカルト感たっぷりな表現
(2014/7/16 00:00)
地縛霊に、ポルターガイスト、“建物の幽霊”など、オカルト感たっぷりな表現
今回体験できたのは幽霊が見える少女ジョイとの出会いまで。ジョイは霊能力を持っており、ロナンと普通に会話もできる。しかしそのために普段から自分のことを知ってもらおう、願いを叶えてもらおうと寄ってくる幽霊に悩まされているという。ロナンも最初はジョイから拒絶されてしまう。
ジョイは同じように霊能力を持ち、警察に協力していた母親の行方を捜している。母親はベル・キラーを追っていたという。2人の掛け合いの会話も面白い。ロナンとジョイは事件を追うコンビとなりそうで、今後の展開に期待したい。
メインのクエスト以外にもサブクエストも用意されている。ジョイのいる教会に向かう途中、ロナンは海辺に立つ少女の幽霊と出会う。彼女は自分がなぜ死んだか、どうしてここにいるかわからないという。このクエストは少女のいる周辺地域を探索することでクリアすることができた。本作ではこのようなサブクエストがいくつか用意されているようだ。
「MURDERED 魂の呼ぶ声」はやはり幽霊との関わり合いが楽しい。海辺の少女のようなクエストもあるが、本筋とは関係ない幽霊もたくさんいる。少女につきまとい怖がらせている霊もいれば、自分が死んだことに気が付かずこちらの言うことにも耳を貸さず、ずっと1カ所に留まり続けている霊もいる。いつからそうしているのかずっとテレビを見続けている幽霊もいた。地縛霊や、人に取り憑く霊、何となく人の気配がある場所など、幽霊話は様々な形があるが、本作は独特の解釈でこれらを再現している。
ロナンが所属する現実と重なる隙間の世界“ダスク”の表現もいい。コンクリートや煉瓦で立てられた建物の1部が木製の建物になっていたり、古い荷台が置いてあったり、燃え続ける建物があったりする。これらは過去のセイラムの姿だと思われるが、“建物の幽霊”といえる表現が良いし、壁はすり抜けられるのに、ダスクのオブジェクトはすり抜けられないという縛りも理にかなっているような気がする。
本作の幽霊や街の表現は、「私達の世界にも、目に見えないダスクが存在するんじゃないか?」という想像を刺激する。幽霊が近くにいることに全く気が付かないアパートの住人や、街の人々の描写が、ゲームの世界と現実の我々の世界をうまく近づけている。ゲームの中の地縛霊のように、建物の影に膝を抱えてうずくまる幽霊がいるんじゃないか……そう思わせられるところが楽しい。
もうひとつ、「ロナンの人物像」も本作ではとても丁寧に書かれているところに注目だ。ロナンは全身に入れ墨をしている。あまり裕福ではなく、周りで犯罪ばかりが起きる地域で生まれ育ったロナンは、幼い頃から犯罪に手を染め、逮捕歴もある。そんなロナンが刑事の妹であるジュリアと出会い更正を決意し刑事になったのだ。彼の全身の入れ墨は犯罪を起こしたり、ジュリアと出会ったり、人生のイベントの印として身体に刻まれたものだ。
ゲーム中、様々な場所でジュリアの立場からロナンを見たメモや、ロナンが人生を振り返る形でこれまでのロナンの半生が描かれる。プレーヤーは彼が死んだ直後からロナンに関わるという形だが、ゲームを進めていく中でロナンという人物を理解していく。しかし彼はすでに死んでいる人物で、「これからの未来」はない。このロナンのキャラクターとしての掘り下げが、物語としてどう繋がっていくのかは、興味深いところだ。
気になった部分ではアクションパートである悪霊との駆け引きだ。敵が後ろを向いている時に後ろをとる、という戦い方なのだが、敵の感知の判定が少しわかりにくい。また悪霊から逃げる駆け引きも少しわかりにくく感じた。もう少しコツをつかめば見えてきそうなところもあるが、悪霊に見つかった時に逃げるタイミングや、反撃するタイミングなど、もう少しゲーム性を練り込んでも良かったのではないかと感じた。
今回体験できたのはあくまで序盤だが、「MURDERED 魂の呼ぶ声」は本格的な推理アドベンチャーゲームとして楽しめる作品だという感想を持った。最近こういう推理にフォーカスしたゲームは少ないのではないだろうか。そして“幽霊”に対するこだわりが楽しい。プレーヤーを怖がらせる演出過多の方向ではなく、異世界をのぞくような雰囲気と、オカルトの知識を刺激するところも好感を持った。オススメの作品である。
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