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【GDC 2013】アナリストがこれまでのFree to Playゲームを振り返る

ソーシャルゲームの続編を成功させるのはなぜ難しいのか。F2Pゲームの未来は?

3月25日~29日開催(現地時間)

会場:San Francisco Moscone Center

 本日からゲーム開発者向けカンファレンスGame Developers Conferenceが開幕した。最初の2日間は終日1つのテーマについて掘り下げていく「チュートリアル」や、1つのテーマについて様々な視点からカンファレンスを行なう「サミット」が開催されている。

 「サミット」ではその中で「Free to Play(F2P)」というテーマが掲げられており、本ビジネスモデルについて13セッションが開催される予定。セッション数から見ても、ゲーム開発者にとってF2Pが大きな感心事であるとわかる。

 本稿ではそれらの中から「Free to Play Game Design: A Year in Review」というセッションのレポートをお送りする。登壇したのは、それぞれも開発メーカーのJoju GamesのJuan Gril氏、PlaydomのSteve Meretzky氏、FunsocketsのDave Rohrl氏の3名。

 このセッションは、アナリストがいくつかの観点からこれまでのF2Pゲームを振り返り、今後のF2Pゲームはどうなっていくのか、そのエッセンスを伝えるというもの。紹介されたエッセンスの中から特に興味深かった内容をお伝えしたい。

Joju GamesのJuan Gril氏
PlaydomのSteve Meretzky氏

Facebookからスマートフォンへメインプラットフォームが変化する年に

リサーチ会社が発表したFacebookとモバイルのゲーミング市場規模の予測データ。モバイル市場の伸び率に注目して欲しい

 F2Pモデルのプラットフォームといえば、最も大きなものはFacebookプラットフォームが挙げられる。特に2009年にリリースされた農場ゲーム「FarmVille」は爆発的な人気を起こし、Facebookプラットフォームは2012年まで順調に成長してきた。しかしこの先はどうだろうか。

 リサーチ会社のデータによると、Facebookのソーシャルゲーム市場は2012年は24億ドル、そして2013年に28億ドルの規模になると予測されているが、モバイルゲーム市場は2012年に45億ドル、2013年には56億ドルの規模になるとデータを発表している。規模も成長率もFacebookを上回るという予測だ。

 それぞれのプラットフォームのデータを見ると、2012年のFacebookのDAUは上位をZyngaが独占しており、2013年も1位こそKing.comに抜かれたもののZyngaは相変わらず上位を占めている。逆にiPhoneやAndroidoは様々なデベロッパーがしのぎを削る群雄割拠の状況で、2012年から2013年にかけて上位陣も大きく入れ替わっている。

 それではどちらのプラットフォームを選ぶのが良いのだろうか。Dave Rohrl氏はこう話す。「Facebookは上位が固まってきているのでブレイクするのは難しいでしょう。そういう意味ではモバイルも難しくなってきていますが、モバイルのほうが良いかもしれません」と話す。

 実際にFacebookでF2Pゲームを提供していたCrowdStarやKABAMといったデベロッパーはスマートフォンにシフトしている。Zyngaなどのデベロッパーも、Facebookとスマートフォン両方に力を注いでいるのがトレンドとなっているようだ。

2012年と2013年のDAU上位のデベロッパーのリスト

定番だからこそ動きづらい、ギャンブルゲームの強みと弱み

App Storeの売り上げランキングの上位を推移する「Big Fish Casino」

 スロット、ポーカー、ルーレット、ビンゴ……etcと様々なギャンブルをモチーフにしたゲームが人気を博している。例えばスロットやポーカー、ブラックジャックがプレイできる「Big Fish Casino」というゲームは、米国のApp Storeの売り上げランキングの上位を推移している。

 そんなカジノゲームだが、開発者から見るとプラスの面とマイナスの面があるという。プラスの面は、既にベースとなるルールが完成されているので、ゲームデザインに対するリスクは低く、プレーヤーに新たなルールを覚えて貰う必要がほとんどない。またマネタイズの手法もほぼ完成されている。

 その反面、ベースのルールが同じなので他社に簡単にコピーされたり、ユーザーが亜種となる新しいゲームに抵抗が生まれる可能性があるという。またギャンブルゲームを作成するためには高度な数学の知識も必要となる。

 マネタイズという面では非常に優秀だが、ゲーム内容が汎用的なので他の要素を上手く取り入れなければならないとの結論が出された。

現時点でもかなり多くのカジノゲームがリリースされている

なぜソーシャルゲームの続編を成功させるのは難しいのか

 ソーシャルゲームの続編を成功させる難しさについて、Zyngaの4タイトルの続編を例に上げながら紹介した。

 マフィアをモチーフにした「Mafia Wars」は2008年の4月にリリースされ、ピーク時のデイリーアクティブユーザー(DAU)は500万、現在のDAUは22万5,000だったが、続編の「Mafia Wars 2」ではピーク時のDAUは230万で現在のDAUはかなり少なくなっているという。

 農園ゲーム「FarmVille」は2009年の6月にリリースされ、ピーク時のDAUは3,400万、現在のDAUは175万となっていて、続編の「FarmVille 2」はピーク時のDAUは910万で、現在のDAUは800万とこちらは大成功と言える結果だ。

 街作りゲーム「CityVille」は2010年の12月にリリースされ、ピーク時のDAUは2,000万、今のDAUは110万だったが、続編の「CityVille 2」のピーク時のDAUは380万、今のDAUはこちらも散々な結果になっている。短期的に見ても、長期的に見ても不振な結果だ。

 カフェ経営ゲーム「Cafe World」では、2009年9月にリリースされ、ピーク時のDAUは1,000万、今のDAUは30万で、続編の「Chefville」はピーク時のDAUは720万、今のDAUは200万とまずまずの成果を残している。

 今回紹介したF2Pゲームの中では1個は大ヒット、1個はそこそこヒット、2個は失敗という結果になったが、ソーシャルゲームの続編を成功が難しい理由は何か。

 理由としては、ソーシャルゲームはパッケージゲームよりもMMOに近いからだと説明された。ゲームに明確な終わりがなく、プレーヤーはこれまでに使った時間や資源がある。そのためその時プレイしているゲームをやめない傾向にあるというわけだ。

これらのデータを見るとソーシャルゲームの続編の難しさがよくわかる

カードバトルゲームの本当に重要な部分

カードバトルゲームは米国でも人気があるという
EAの「Real Racing 3」というゲームでも車をコレクションする要素がある

 日本でも数多くのタイトルが生まれ人気を博しているカードバトルゲームだが、欧米でも「MARVEL War of Heroes」や「Rage of Bahamut」、「Blood Brothers」といったタイトルは多くのユーザーに人気があるという。

 これらのカードバトルゲームはバトルという表現をしているが、バトル部分はボタンを押して結果を待つというシステムのものが多く、これはバトルではないと話す。重要なのはカードをコレクションするという要素だ。

 これまでの人生の中で切手やスポーツ選手カードのコレクションをした人も多いだろう。そういう面で見ると、カードバトルゲームは成功しており、コレクション要素をゲームに導入するのは良いアイデアだと話された。

 なお最近リリースされたEAの基本無料レースゲーム「Real Racing 3」では様々な車を集めるというシステムが導入されている。コレクション要素は、カードバトルゲーム以外にも応用できることも合わせて紹介された。

F2Pゲームの未来はどうなる?

 それではF2Pプレイゲームは今後どうなっていくのだろうか。「それは誰にもわからない」、というのが、3人の結論だ。

 例えば「英単語のパズルゲームは廃れた」と言われていたが、いくつかのゲームは人気だし、「ドラゴンはコアゲーマーしか好まない」と言われていたが、「パズル&ドラゴンズ」の様にカジュアルゲーマーにも受け入れられている。他にも「隠されたアイテムを集めてゲームを進めるHidden Object Games(HOG)ゲームはFacebookでは大きな存在にならない」と言われていたが、人気を博しているのが現状だ。

 この様に、今の常識は未来の常識ではなくなる。その先は誰の予想をも超えて、「未来は大きく変わっていく」とセッションが締めくくられた。

F2Pゲームは変化が激しく未来の予想が難しい

(八橋亜機)