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【特別企画】ゲームハード戦争に“PCゲーム機”勢力が参戦!!

CESで発表された新型ゲーム機を総覧。やがてゲームコンソールが消える日がやってくるのか!?

 CES 2013にて相次いで発表された3つのゲームハードウェアが、新たなゲーム市場のカタチを作り出す台風の目になるかもしれない。Valveの「Steam Box」、Razerの「Razer Edge」、NVIDIAの「Project SHIELD」だ。

 「Steam Box」はミニPC、「Razer Edge」はWindows 8タブレット、「Project SHIELD」はAndroidベースのゲーム端末と、ハードデザインにそれぞれの哲学の違いが現われているが、いずれもゲームハードとしてPCゲームの実行を前提としているのが共通点だ。

 しかしこれらは従来から存在している“ゲーミングPC”とは違うものだ。ゲーミングPCが一定の汎用性を確保しているのに対し、これらのデバイスはあくまでゲームマシンとしてデザインされており、いかめしくそびえ立つ汎用PCとは根本的に異なるアフォーダンスを持っている。だから、筆者はこれらをゲーミングPCとは言わず、“PCゲーム機(PC-Console)”と呼びたい。

 面白いのは、ソニー・コンピュータエンタテインメントとMicrosoftから次世代ゲーム機の投入が囁かれつつあるこのタイミングに発表されたことだ。今年中に新たなゲーム機戦争が勃発するに違いないが、そこに、ゲームメーカー(Valve)、デバイスメーカー(Razer)、GPUメーカー(NVIDIA)という、バックグラウンドの全く異なる3社が新概念のPCゲーム機を引っさげて名乗りを上げてきたわけである。

 ユーザーとしての関心はまず、“PCゲーマーに選ばれるのはどれか”、ということになるが、それ以上に、これら3つのゲームハードの登場は、“そもそもゲームコンソールは必要なのか”、という疑問を具体的な形で投げかけてくる。まずは三者三様の新ハードについて現状知りうる情報をまとめてみよう。

PCゲームハードのスタンダードアーキテクチャを目指すValveの「Steam Box」

Steam Big Picture
Xi3のモジュラー式PC「X7A」

 Valveはオンラインゲーム配信システム「Steam」を展開するゲームメーカーだ。「Steam」は登録ユーザー数5,000万人を数え、PCゲーム世界においてデファクトスタンダードのゲームプラットフォームとなった。昨年末には新UI「Steam Big Picture」を打ち出し、リビングルーム進出への強い意欲を見せている

 その「Steam」の利用を前提としてデザインされているのが、Valveから発表された「Steam Box」だ。「Steam Box」は特定のハードウェアというより、“Steam端末”というコンセプトを指す言葉で、具体的なプロダクトとしてはいくつかのバージョンがある。

 そのひとつは、CES 2013で展示されたXi3 Corporationのコードネーム「Piston」。これはモジュラー式のマイクロPCだ。ソフトボール大の筐体にストレージ、メモリ、CPU、GPUが収まっており、DisplayPortとHDMIでHD映像を出力することができる。

 ハードウェアとしてはXi3のモジュラー式PC「X7A」がベースとなっているという。「X7A」では最大1TBのストレージ、最大384個のストリーミングプロセッサを搭載する3.2GHzの統合型CPU(AMD A10シリーズと見られる)、最大8GBのメインメモリ、ギガビットイーサーを備える。

 スペック的には“「Crysis 2」クラスのPCゲームを容易に実行可能”とされるが、派生版である「Piston」も同様の構成かどうかはまだ明らかになっていない。ひとまず、販売価格を抑えるためフルスペックの「X7A」よりもスケールダウンは避けられないだろうが、現状で主流となっているPS3/Xbox 360水準の3Dゲームタイトルであれば楽々動かせる能力を持つことは間違いないだろう。

Xi3「X7A」。「Steam Box」プロトタイプのベースとなっている。

【Xi3 X7A モジュラーコンピューター PV】

 このほかにもValveは、自社開発を含め複数の「Steam Box」プロトタイプが存在することを明らかにしている。ここで重要なことは、かつてIBMがPC/ATアーキテクチャで行なったように、「Steam Box」もオープンなアーキテクチャになりそうなことだ。

 「Steam Box」のコンセプトで必須とされるのは、スイッチオンで「Steam Big Picture」を実行でき、全てをコントローラーで操作できることであって、特定のOSやハードウェアスペックを要求するものではない。技術的な縛りはなく、各ハードメーカーごとに独自の外観、機能を盛り込むことも可能。ゲーム機然とした「Steam Box」もあれば、いかついサーバーのような「Steam Box」もありうるのだ。

 例えば、現時点で存在が明らかになっているプロトタイプ「Bigfoot」は1台で8台のモニターと8個のコントローラーを接続でき、8セッションのゲームプロセスを同時に実行できるサーバータイプのハードウェアだ。対して「Littlefoot」と呼ばれるプロトタイプは可搬性を重視したモバイルタイプのハードウェアとして、それぞれ開発が進められている。

 また「Steam Box」では、Valveが近年とみに研究を進めている生理学的情報(バイオメトリクス)を利用したゲームコントローラーの使用が視野に入っているようだ。プレーヤーの興奮度を計測して次の展開を演出したり、視線をトラッキングして様々な入力・応答を可能にするアイディアである。

 最終的には、「Steam Box」で得られるゲーム体験の最もスペシャルな部分は、こういったバイオフィードバック装置を用いたゲームプレイに集約されるのかもしれない。そうなれば、モーションセンサーで差別化を図る次世代ゲーム機とは真っ向から対決する存在になるだろう。

【Steam Big Picture 紹介ビデオ】

(佐藤カフジ)